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書きやすいペンでした
「ど、どうしよう…」
もち子さんは、ぶつかった時に落とした保手内くんのペンを持っている。
社内の試供品ペンを片手にあっちへうろうろ、こっちへおろおろ。
「いや、見ていて鬱陶しいからさっさと行きなさいよ」
同僚に呆れ顔で追い出されてしまったもち子さん。
彼女はいい友人を持っている…と思っている。
「も、保手内くん!」
「ん? 誰?」
「あ、さっきぶつかった人です」
「なるほど」
もち子さんも恋する相手への自己紹介に、これでいいのかとちらっと思う気持ちを流石に持っている。
そんな保手内くんは未だに相手の名前を知っていない。
◇
「これ…、落としたので」
もち子さんが真っ赤な顔を持ちながら安物のペンを差し出す。
それを見下ろした保手内くん。
「あ、別の使ってるからそれあげるよ」
にぱーと笑顔である。
近くに居た先輩は保手内《もてない》違うだろおおおと内心で叫んでいる。
保手内くんに悪気はない。
ただ、律儀な女の子だなという印象だけ残っている。
そんなこんなで去った保手内くん。
「も、もらっちゃった…」
社内のペンを片手にふるふると震えるもち子さん。
その姿は、思わずそっと胸ポケットの同じペンを先輩に隠させる力を持っていた。
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