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第一部 婚約破棄されました
3、これは現実か??:上
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ポオオ~ン
という若干間抜けな音を立てるエレベーターくん。なんだいエレベーターくん、ゾウかいお前は、ゾウをリスペクトしているのかい?
…しかしあれである。毎日聞いているとこの音も可愛く思えてくるからおかしいものである。あれか、バカな子ほど可愛いとかそういうことだろうか。
驚異の洗脳力に対して眉間にシワを作りながら扉が開くのを見ていると、開いた瞬間「ちわっす!」という声と共にシュュンッと緑の閃光が駆け抜けた。ガラガラとダンボールを積んだ手押し車が出て来て走り去って行くのを靡く髪と共に見届ける。…あまりの速さに追い掛けた首が痛かった。あと若干影分身していた様な…。
流石の速さ、クロネコさん朝からご苦労様です。
合掌し、鞄を抱え直した。
「それは此処に積んでおいてくれ」という低く腰に響く美声のおじさんの声とクロネコさんの会話に、お隣の人かあ…と密かに会えるのを楽しみにしながらエレベーターに乗り込む。
さて…、いざ行かん、会社《せんじょう》へっっ!!
◇
コピーコピー…
席を立って印刷機の前まで歩く。思うのがこの印刷機の位置をもう少し近づけるべきだという点である。遠い、地味に遠い…、しかし耐えられる距離という絶妙さ。誰だ此処に置いたやつ。そもそも誰だ、通路に置くには少々邪魔という微妙を一周回って絶妙な大きさの印刷機を選んだやつ。しかも買い換えたばかりの最新というのが腹立たたしい。
そんなことを考えていたのが悪かったのか、今回初めて使う印刷機は高い声で不平を漏らした。
ピーッ、ピーッ!
な、なんだ?と見やれば紙詰まりである。最新のタッチパネル式の良いところは、自分の不調の原因を俺は此処が悪いんだゼ!と画面で教えてくれる点だろう。そう考えると前代のなんと横暴なことか…。おう、直せや姉ちゃん、…ああ?悪い所?そんなん自分で見つけろや!(叶恵訳)である。しかも最終的には色々病を併発して凄まじかったしな…。ひっきりなしに体調不良になるせいで、あの機種に関してはメカニックの如き知識量である。というか分解した方が早いと思ったり、ガタガタと震えるので昔の要領で原因不明の時は叩いて直したり……。
ん?……今思うとなかなかのご老体であったしな……、引退も仕方がなかったのだろう……うん。引導は渡してない筈だ……うん。
取り敢えず、ふむふむ、君は紙詰まりが原因なのだね、ではどれ中々の腕を持つ私が直してしんぜよう…と改めて印刷機をまじまじと見たところで動きが止まった。
なんだこいつ…
やばい…、まずコピー用紙を何処に収納してるの?取っ手何処?何故にそんなスリムでツルリ?
絶対見かけで選んだよね?という黒光りした冷蔵庫の様な最新型の印刷機。冷や汗が頬を伝う。未知との遭遇に、ひとまずタッチパネルを覗き込むことにした。
うむ、相変わらず俺は紙詰まりだゼ!と主張している。
落ち着け、とりあえずタッチパネルなのだ、紙詰まりの文字の部分を押してみようと、えいっと触ってみた。
ピーッ、ピーッ!
威嚇された。
ご、ごめんと思わず謝る。気安く触らないでくれるかな?(気障らしさ増量版訳)の印刷機に、前代よ、カムバックッ!と一人途方に暮れた。
しかし此処までの間で予想よりも時間が掛かっている。仕方無い、恥ずかしいけれど助っ人を呼ぶかと覚悟を決めていると、不意に後ろから手が伸びて来て印刷機に触れた。
「何してるんですか」
「田中くん! 丁度いいところに」
タッチパネルを覗き込まれる。少し見上げればまたしても近い位置にある田中くんの顔。口調は呆れつつも、既に目線はタッチパネルの文字を読み、操作を始めている。タンタンと軽い音を立てるツータップが良くてワンタップがダメとはどういうことだ、と制作会社の悪意?に疑問を抱きつつ邪魔にならないように場所を移動した。
…うん、任せといてなんだが手持ち無沙汰である。いや、手伝おうとは思ったのだが、本当邪魔にしかならなそうなのだ。仕方無しに、束の間ぼんやりと今日も涼しげな天然七三、もとい天七三と一緒に横顔を眺める。そしてふと思った。肌のキメ、いい加減何の化粧水を使っているのか教えて欲しいと。厚化粧をしまくるわけではないが、こちとらお肌の曲がり角で大変なのだ。というか前よりキメのレベル上がってないか?使ってないとか嘘だろう?嘘だと言ってくれ田中くんよ。
かなり思考が脱線している間に田中くんはその細く長い指で操作を終え、しゃがみ込んで印刷機の横側を押した。
ん?と首を傾げて眺めていると、なんと其処からコピー用紙が出てくるではないか。
内心おおー!!と拍手喝采していると、一枚印刷して動作確認まで終えた田中くんは、立ち上がって「では」と少し頭を下げてから出て行った。
匠の技である。
はっとしてお礼を言おうとしたが既に近くに居ない。
まぁ席に座る時にでも言おうと、一先ず恐る恐る印刷機を突ついてからようやくコピーに取り掛かった。
◇
昼休みである。今までの私は寿退社してしまった友人と二人気ままに弁当を食べていた。一応手抜き満載ながらも手作りである。しかし今はぼっち。そうぼっち。だがメタモルフォーゼ進行中である私はもうぼっちに心痛めることは無くなったのだ!…たぶん!
師匠は言った。お昼時こそ狩りの時間だと。情報収集に務めるのだと。
そう、美華師匠、御年24歳、元々の猫の様なちょっぴり吊り目の大きな瞳やアヒル口を活かしたナチュラルメイクであざと可愛い作り、細めの柔らかな髪はゆるくカールさせている。ゴムで縛られ、首元をそっと彩って前へと流す…だけに見せ掛けた小顔効果を図った高等テク、華奢ながら徹底した自己管理によりきちんとくびれを作るなどなど。玉の輿を狙って日々努力するが、良い玉の輿には上司や同性間の関係も大事と考える彼女は、正に知能派ハンターといえるだろう。言葉通り仕事も出来る彼女は、時間を無駄にせずこの時間を有効に使うのだと私に教授したのだ。
しかしどうするべきか…
変身途中の私は、そうは思っても動き方が分からずに席の上で硬直した。机の上には一応で出した、赤い風呂敷に包まれたお弁当がでんっと居座っている。カチ…、コチ…と、常よりも一分が長く感じる。直視し続けるうちにリボン結びが何だか斜めっているように思えたので三度目の手直しを加えていると、意外と面倒見のいい師匠が痺れを切らして席から立ち上がった。
師匠の御座す方向から聞こえるガタッという音に従ってカクカクとゆっくり顔を上げると、絶対零度の目とかち合う。
目が言っている。
見ておけと
私は体を震わせながら頷いた。
りょうかいでありますっ
私が頷いたのを確認した師匠は顔を巡らせた。その顔には人のいい笑顔が張り付いているが、今の私なら分かる。あの細めた目の奥で獲物を物色しているのだと。
そして師匠は廊下から部屋へと入ってきた一人に目を付けた。
ううん?誰だろうか?
私がタマラン(玉の輿ランキングの略)を思い返していると、近くに居たまだピチピチの女子社員達が他部署の若いエリートだと黄色い声で噂していた。するりと自然な動作で近付き声を掛ける師匠。獲物を狩る猫科の如き忍び寄りである。
流石師匠…、情報収集力も目の付け所も行動力もピカイチです
どうやら何か聞きに来た彼を案内している。見守っていると、師匠は私に流し目を送った。どうやらそのままお昼を一緒に取る約束を取り付けたようである。彼女は態度で示す。どうだ、分かったか?
いや、無理っす師匠
私が無理と言っているのが分かったのか、師匠は青筋を立てた。この間笑顔だ。可愛い顔での威圧感のある笑顔にひぃっと内心で悲鳴を上げていると、先程の若者が丁度間に立った。姿の隠れる師匠。若者グッジョブである。
そのまま食堂にでも消えていく姿を目で追って一息吐いていると、会話していた女子社員達も同じタイミングで溜め息を吐いた。
「あーあ、美華先輩に取られちゃったね」
「でもあの人なら仕方ないよねぇ~」
「ねー、でもあんな勝ち誇った笑み向けるなんて性格悪いよ」
「たしかに。そういやこの前は加藤くんと食事に行ってたよ?」
「うそ、気になってたのに最悪」
「そう言えばこんな噂もあって…」
くすくすと笑う彼女達。思ったよりも、ギイィーッとキャスターの音は響いた。
「結構響くわね…」
苦笑しながら呟けば、彼女達は口を噤んでぱたぱたと走り去った。
所詮、私は盗み聞いていただけである。注意するのも変かもしれないが、先程言ったとおりこの場所は存外声が響く人がまだ多く居る場所だ。彼女達も本気の悪意などない会話での戯言だとは思うが、他人がどう受け止めるのかは分からない。例えば、先程の彼女達が美華ちゃんの笑みの意味を違えた様に。彼女達の為にも、気付いた方がいいとは思った。
…まぁ、ただ私が臆病者でどっちつかずの日和見主義っていうだけなんだけど…
ドラマの中の主役の女性なら、彼等に格好良く釘を刺すのだろうに。
美華ちゃんの側に立って文句言うわけでなく、かと言って注意すらしないわけでもなく、日和見な私の結局は唯の我が儘なのだ。
カチリと、針がさらに進んだ。さて、私はどうしようかとお弁当を持って考える。しかし結構な音を響かせてまで立ったのだ、このまま座るのも変である。
仕方ない、美華ちゃんも先輩も行ってしまったし、今日は一人で食べるかと顔を上げて、目が合った哀れな犠牲者を道連れにすることにした。
「田中くん、今日お昼一緒にどう?」
という若干間抜けな音を立てるエレベーターくん。なんだいエレベーターくん、ゾウかいお前は、ゾウをリスペクトしているのかい?
…しかしあれである。毎日聞いているとこの音も可愛く思えてくるからおかしいものである。あれか、バカな子ほど可愛いとかそういうことだろうか。
驚異の洗脳力に対して眉間にシワを作りながら扉が開くのを見ていると、開いた瞬間「ちわっす!」という声と共にシュュンッと緑の閃光が駆け抜けた。ガラガラとダンボールを積んだ手押し車が出て来て走り去って行くのを靡く髪と共に見届ける。…あまりの速さに追い掛けた首が痛かった。あと若干影分身していた様な…。
流石の速さ、クロネコさん朝からご苦労様です。
合掌し、鞄を抱え直した。
「それは此処に積んでおいてくれ」という低く腰に響く美声のおじさんの声とクロネコさんの会話に、お隣の人かあ…と密かに会えるのを楽しみにしながらエレベーターに乗り込む。
さて…、いざ行かん、会社《せんじょう》へっっ!!
◇
コピーコピー…
席を立って印刷機の前まで歩く。思うのがこの印刷機の位置をもう少し近づけるべきだという点である。遠い、地味に遠い…、しかし耐えられる距離という絶妙さ。誰だ此処に置いたやつ。そもそも誰だ、通路に置くには少々邪魔という微妙を一周回って絶妙な大きさの印刷機を選んだやつ。しかも買い換えたばかりの最新というのが腹立たたしい。
そんなことを考えていたのが悪かったのか、今回初めて使う印刷機は高い声で不平を漏らした。
ピーッ、ピーッ!
な、なんだ?と見やれば紙詰まりである。最新のタッチパネル式の良いところは、自分の不調の原因を俺は此処が悪いんだゼ!と画面で教えてくれる点だろう。そう考えると前代のなんと横暴なことか…。おう、直せや姉ちゃん、…ああ?悪い所?そんなん自分で見つけろや!(叶恵訳)である。しかも最終的には色々病を併発して凄まじかったしな…。ひっきりなしに体調不良になるせいで、あの機種に関してはメカニックの如き知識量である。というか分解した方が早いと思ったり、ガタガタと震えるので昔の要領で原因不明の時は叩いて直したり……。
ん?……今思うとなかなかのご老体であったしな……、引退も仕方がなかったのだろう……うん。引導は渡してない筈だ……うん。
取り敢えず、ふむふむ、君は紙詰まりが原因なのだね、ではどれ中々の腕を持つ私が直してしんぜよう…と改めて印刷機をまじまじと見たところで動きが止まった。
なんだこいつ…
やばい…、まずコピー用紙を何処に収納してるの?取っ手何処?何故にそんなスリムでツルリ?
絶対見かけで選んだよね?という黒光りした冷蔵庫の様な最新型の印刷機。冷や汗が頬を伝う。未知との遭遇に、ひとまずタッチパネルを覗き込むことにした。
うむ、相変わらず俺は紙詰まりだゼ!と主張している。
落ち着け、とりあえずタッチパネルなのだ、紙詰まりの文字の部分を押してみようと、えいっと触ってみた。
ピーッ、ピーッ!
威嚇された。
ご、ごめんと思わず謝る。気安く触らないでくれるかな?(気障らしさ増量版訳)の印刷機に、前代よ、カムバックッ!と一人途方に暮れた。
しかし此処までの間で予想よりも時間が掛かっている。仕方無い、恥ずかしいけれど助っ人を呼ぶかと覚悟を決めていると、不意に後ろから手が伸びて来て印刷機に触れた。
「何してるんですか」
「田中くん! 丁度いいところに」
タッチパネルを覗き込まれる。少し見上げればまたしても近い位置にある田中くんの顔。口調は呆れつつも、既に目線はタッチパネルの文字を読み、操作を始めている。タンタンと軽い音を立てるツータップが良くてワンタップがダメとはどういうことだ、と制作会社の悪意?に疑問を抱きつつ邪魔にならないように場所を移動した。
…うん、任せといてなんだが手持ち無沙汰である。いや、手伝おうとは思ったのだが、本当邪魔にしかならなそうなのだ。仕方無しに、束の間ぼんやりと今日も涼しげな天然七三、もとい天七三と一緒に横顔を眺める。そしてふと思った。肌のキメ、いい加減何の化粧水を使っているのか教えて欲しいと。厚化粧をしまくるわけではないが、こちとらお肌の曲がり角で大変なのだ。というか前よりキメのレベル上がってないか?使ってないとか嘘だろう?嘘だと言ってくれ田中くんよ。
かなり思考が脱線している間に田中くんはその細く長い指で操作を終え、しゃがみ込んで印刷機の横側を押した。
ん?と首を傾げて眺めていると、なんと其処からコピー用紙が出てくるではないか。
内心おおー!!と拍手喝采していると、一枚印刷して動作確認まで終えた田中くんは、立ち上がって「では」と少し頭を下げてから出て行った。
匠の技である。
はっとしてお礼を言おうとしたが既に近くに居ない。
まぁ席に座る時にでも言おうと、一先ず恐る恐る印刷機を突ついてからようやくコピーに取り掛かった。
◇
昼休みである。今までの私は寿退社してしまった友人と二人気ままに弁当を食べていた。一応手抜き満載ながらも手作りである。しかし今はぼっち。そうぼっち。だがメタモルフォーゼ進行中である私はもうぼっちに心痛めることは無くなったのだ!…たぶん!
師匠は言った。お昼時こそ狩りの時間だと。情報収集に務めるのだと。
そう、美華師匠、御年24歳、元々の猫の様なちょっぴり吊り目の大きな瞳やアヒル口を活かしたナチュラルメイクであざと可愛い作り、細めの柔らかな髪はゆるくカールさせている。ゴムで縛られ、首元をそっと彩って前へと流す…だけに見せ掛けた小顔効果を図った高等テク、華奢ながら徹底した自己管理によりきちんとくびれを作るなどなど。玉の輿を狙って日々努力するが、良い玉の輿には上司や同性間の関係も大事と考える彼女は、正に知能派ハンターといえるだろう。言葉通り仕事も出来る彼女は、時間を無駄にせずこの時間を有効に使うのだと私に教授したのだ。
しかしどうするべきか…
変身途中の私は、そうは思っても動き方が分からずに席の上で硬直した。机の上には一応で出した、赤い風呂敷に包まれたお弁当がでんっと居座っている。カチ…、コチ…と、常よりも一分が長く感じる。直視し続けるうちにリボン結びが何だか斜めっているように思えたので三度目の手直しを加えていると、意外と面倒見のいい師匠が痺れを切らして席から立ち上がった。
師匠の御座す方向から聞こえるガタッという音に従ってカクカクとゆっくり顔を上げると、絶対零度の目とかち合う。
目が言っている。
見ておけと
私は体を震わせながら頷いた。
りょうかいでありますっ
私が頷いたのを確認した師匠は顔を巡らせた。その顔には人のいい笑顔が張り付いているが、今の私なら分かる。あの細めた目の奥で獲物を物色しているのだと。
そして師匠は廊下から部屋へと入ってきた一人に目を付けた。
ううん?誰だろうか?
私がタマラン(玉の輿ランキングの略)を思い返していると、近くに居たまだピチピチの女子社員達が他部署の若いエリートだと黄色い声で噂していた。するりと自然な動作で近付き声を掛ける師匠。獲物を狩る猫科の如き忍び寄りである。
流石師匠…、情報収集力も目の付け所も行動力もピカイチです
どうやら何か聞きに来た彼を案内している。見守っていると、師匠は私に流し目を送った。どうやらそのままお昼を一緒に取る約束を取り付けたようである。彼女は態度で示す。どうだ、分かったか?
いや、無理っす師匠
私が無理と言っているのが分かったのか、師匠は青筋を立てた。この間笑顔だ。可愛い顔での威圧感のある笑顔にひぃっと内心で悲鳴を上げていると、先程の若者が丁度間に立った。姿の隠れる師匠。若者グッジョブである。
そのまま食堂にでも消えていく姿を目で追って一息吐いていると、会話していた女子社員達も同じタイミングで溜め息を吐いた。
「あーあ、美華先輩に取られちゃったね」
「でもあの人なら仕方ないよねぇ~」
「ねー、でもあんな勝ち誇った笑み向けるなんて性格悪いよ」
「たしかに。そういやこの前は加藤くんと食事に行ってたよ?」
「うそ、気になってたのに最悪」
「そう言えばこんな噂もあって…」
くすくすと笑う彼女達。思ったよりも、ギイィーッとキャスターの音は響いた。
「結構響くわね…」
苦笑しながら呟けば、彼女達は口を噤んでぱたぱたと走り去った。
所詮、私は盗み聞いていただけである。注意するのも変かもしれないが、先程言ったとおりこの場所は存外声が響く人がまだ多く居る場所だ。彼女達も本気の悪意などない会話での戯言だとは思うが、他人がどう受け止めるのかは分からない。例えば、先程の彼女達が美華ちゃんの笑みの意味を違えた様に。彼女達の為にも、気付いた方がいいとは思った。
…まぁ、ただ私が臆病者でどっちつかずの日和見主義っていうだけなんだけど…
ドラマの中の主役の女性なら、彼等に格好良く釘を刺すのだろうに。
美華ちゃんの側に立って文句言うわけでなく、かと言って注意すらしないわけでもなく、日和見な私の結局は唯の我が儘なのだ。
カチリと、針がさらに進んだ。さて、私はどうしようかとお弁当を持って考える。しかし結構な音を響かせてまで立ったのだ、このまま座るのも変である。
仕方ない、美華ちゃんも先輩も行ってしまったし、今日は一人で食べるかと顔を上げて、目が合った哀れな犠牲者を道連れにすることにした。
「田中くん、今日お昼一緒にどう?」
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