侯爵令嬢は婚約破棄される前に婚約破棄する

高萩

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第十七話

お昼を食べたいというウィルフリード様の付き添いでやって来た学食に着くと辺りが一層騒がしくなります。
復学したばかりの王太子様がやって来たのだから当たり前だけど視線が痛い。

「リアは何食べる?」
「私はもう済ませてるのでデザートだけにしようかと」
「リアのお勧めは?」
「男子生徒に人気があるのはハンバーグのセットです」
「じゃあそれにしようかな」

よほど楽しみなのか落ち着かない様子のウィルフリード様に笑ってしまう。食事を受け取るために出来上がっていた長い列に並ぼうとすると全員が道を譲ろうと左右に避ける。
これはウィルフリード様効果ですね。

「ここでは僕も普通の生徒だよ?気を遣わないで」

笑顔で応えるのがウィルフリード様です。もしこれが婚約者様だったら当たり前の顔をして、食事を受け取りに行くのでしょう。そもそも自分で取りに行ったりしないのが婚約者様か。
想像して苦笑いをしているうちに列が元に戻る。

「ちょっと待たせちゃうかもしれないからリア達は席を取っておいてもらえる?」
「私もデザートを…」
「席が取れなかったら嫌だし、デザートは僕が持って行くよ」 

王太子様を顎で使うような真似は出来ないのですが、席を取れずに待たせてしまうのも問題です。
今回は甘える事にしましょう。

「すみません。お願いしても良いですか?」
「うん。リアはプリンで良いよね?」
「はい、構いません。よろしくお願いします」

カルラを連れて席を探していると四人掛けのテーブルを見つけた。
あそこでいいわね。
後ろを振り向くとカルラも頷いて同意してくれる。

「リーザにもついて来てもらえば良かったわ」

エリーザも誘ったのだけど「お邪魔しちゃ悪いので私は遠慮しておきます」と満面の笑みで送り出されてしまったのだ。
周りから誤解されないかしら。
後ろにカルラが控えてくれるといっても席に座るのは私とウィルフリード様だけ。私達の仲を勘繰られてしまう恐れがある。
不安ですわ。

ぼんやりとウィルフリード様を待っていると急に周りが騒がしくなる。

「エミーリア!来い!」

喧しい声と共に現れたのは婚約者様。凄い剣幕で私に近寄り急に腕を強く掴んでくる。
痛い。本気で握ってきてる。
いくら馬鹿王子と呼ばれていても女性の扱いくらいは頭に入っているはず。
それすらも出来ないの…。

「痛いです!お放しください!」
「うるさい!黙ってついて来い!」

痛みで顔をしかめる私を無理やりどこかに連れて行こうとする婚約者様。
訳が分からない。今度はどんな言い掛かりをつける気なの。
思い切り引っ張られて痛みで涙が出てくる。

「お前は何をしているんだ」

急に痛みから解放される。
見ると婚約者様は腕を捻りあげられ、床に崩れ落ちていた。

「ウィル…」

私を助けてくれたのはウィルフリード様だった。

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