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瓦礫の祈り ――真実は崩壊のあとに生まれる
因果の塔(後編)―ざまぁの夜―
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春の夜は、桜の花びらが風に遊ぶ。
ホテルのバンケットホール。
新規プロジェクトの成功祝賀会。
天井のシャンデリアが波のように光を反射して、
誰もが笑っていた。
沙耶はその中央に立っていた。
白いジャケットの胸に社章が光り、背筋はまっすぐ。
もう、婚約破棄された女ではない。
「藤原リーダー、乾杯の挨拶を」
社長に促され、マイクを取る。
「皆さんのおかげで、このプロジェクトは形になりました。
……“丁寧に生きる”という言葉を、私は仕事の中で学びました。
行動が縁を変える。今日のこの場が、その証だと思います」
拍手が湧き、照明がひときわ明るくなった。
その中に、ひとりだけ沈んだ影があった。
佐伯だった。
左遷前の最終出勤日。
招待リストには載っていないのに、彼は理沙とともに現れた。
理沙は腕を組み、唇を吊り上げる。
「まあ、派手にやってるわね。
平社員がこんな会場、似合わないわ」
「専務の娘が追い出されたのに、
まだその口が利けるの?」と誰かが呟いた。
理沙の顔色が一瞬で変わる。
だが、彼女は強がった笑みを崩さない。
「出世ってね、家柄と運。あなたは、一生下で働く側よ」
佐伯が彼女の言葉に乗るように笑った。
「まったく、同感だ。君の“丁寧”なんて、
下請け仕事の合言葉だろ」
周囲が凍る。
悠が立ち上がった。
「リーダーは、誰より現場を守った人です」
若い声が会場の中心で響く。
「“丁寧に生きる”って、俺たちのチームでは口癖になってる。
……あなたたちは、誰を守りましたか?」
理沙が顔を赤くして、怒鳴る寸前——。
社長がマイクを取った。
「もう一つ発表がある。来期の組織改編だ」
「当社は合併を行い、上場する。
それも、このプロジェクトの成功あってこそだ。」
ホールの照明が落ち、スクリーンが点いた。
映し出された新体制表。
“新事業開発部部長 藤原沙耶”
そして、役員欄に見慣れない名前が加わる。
“代表取締役社長 三条悠”
ざわめきが広がった。
悠が一歩前へ出る。
「隠していてすみません。
合併の前にこの会社の現場を知るために入社していました。
……藤原さんは、僕の師匠であり、尊敬する人です。
彼女なしで、この成功はありませんでした。
そして、ご存知の通り、私たちは結婚します。」
わぁ!と会場が沸いた。
理沙の笑みが消える。
「え……新社長……?」
佐伯が青ざめた顔で、無意識に理沙から腕を引いた。
「俺、知らなかった……」
理沙は怒りと羞恥に震える。
「知ってたら、あなたなんかと——!」
その一言で、全員の目が凍った。
社長の声が低く響く。
「塔は、基礎がなければ崩れる。
虚飾で積んだ高さは、風で折れるだけだ」
会場の誰もが、まるで裁きを見届けるかのように黙っていた。
理沙はハイヒールの音を立てて去り、佐伯も無言で追った。
塔の残骸に、誰も拍手を送らなかった。
*
祝宴のあと。
夜の海沿い。
沙耶は会場を抜け出し、静かな波打ち際に立っていた。
白いジャケットを脱いで、潮風に肩をさらす。
あの人——恋九郎の言葉が、胸の奥で反響する。
“壊れた塔の跡に、光が入る”
視線の先には、Kokū Counselingの灯が見えた。
ドアベルを鳴らすと、香が柔らかく満ちた。
「お疲れさまでした」
恋九郎の声。
彼はもう、全部を知っているようだった。
「……先生。塔が崩れました」
彼女の笑顔は、涙を含んでいた。
恋九郎は頷き、カードを一枚置く。
《太陽 The Sun》
「崩れた塔の上に、太陽が昇る。
あなたは、悪縁を断ち、善縁を照らした」
彼の言葉に、沙耶は小さく息を吸った。
「ありがとうございます。……先生がいてくれたから」
目が合った。
その瞬間、彼の胸が焼けた。
触れたい衝動と、抑える理性がせめぎ合う。
——惚れっぽい。
それでも、今のこれは違う。
彼はただ、彼女の幸福を祈りたいと思った。
それが、愛の最も静かな形だと知っている。
「藤原さん。あなたは、もう一人で渡れます」
「……はい。でも、先生とはまた話したい」
「ええ。風が変わるときに、また」
彼女が去ったあと、恋九郎は窓を開けた。
海の向こうで、鐘が鳴る。
あかりがそっと言った。
「塔が崩れて、太陽が昇りましたね」
「ええ。そして、また誰かが迷い込む」
「そのときも先生が風を通すんですね」
「……風は、勝手に吹くんです。
僕らはただ、窓を開けるだけ」
沈香の香が夜に溶け、外の風が部屋を満たした。
恋九郎はカードを整え、静かに微笑んだ。
――塔は崩れた。
そして、光は差した。
あれから一年が過ぎた。
春の風が、街のガラスを撫でていく。
会社の掲示板に、ひとつの報が載った。
〈佐伯遼一・椎名理沙 退職〉
理由の欄は空白。だが、誰も詮索しなかった。
プロジェクトを失った二人は地方支社へ左遷されたのち、
半年も経たずに姿を消した。
風の噂では、離婚したという。
理沙は父の名を頼れず、
遼一はどの支社にも居場所を作れなかった。
虚飾の塔は、今度こそ完全に崩れた。
それでも、二人はどこかで信じていた。
“またチャンスがある”と。
遼一は小さなベンチャーを興したが、
過去の不正が噂として広がり、出資者は誰も現れなかった。
理沙は華やかなSNSを続けていたが、
フォロワーのコメント欄は冷たく、
いつのまにかアカウントも消えた。
誰も見ていない塔をもう一度建てようとして、
今度は誰にも土台を貸してもらえなかったのだ。
*
一方、会社は新体制のもとで穏やかに拡大していた。
代表取締役・三条悠。
誠実な風が、組織の隅々まで通っていく。
藤原沙耶は子会社「Kokū Works」の社長として、
女性リーダー育成プロジェクトを立ち上げた。
会議室の白いボードには、彼女の手書きの文字が残っている。
“丁寧に生きること。それが、最高の戦略になる。”
社員たちは、その言葉を“藤原スピリット”と呼んだ。
彼女のオフィスの窓辺には、黄色いラナンキュラスがいつも一輪。
光を受けて咲く花の姿は、どこかで見た笑顔と重なる。
悠はその花を見るたび、あの夜の約束を思い出す。
“守るから。何があっても。”
今も変わらず、彼はその言葉を胸に仕事をしている。
恋愛から始まった絆が、信頼に変わり、
そして“夫婦”という形を超えて、ひとつの企業を照らしていた。
*
同じころ。
Kokū Counseling。
窓の外で、海が青く光っている。
恋九郎は、机の上の封筒を手に取った。
差出人の名前を見ただけで、口元がゆるむ。
――“藤原沙耶”。
便箋には、穏やかな筆跡でこう綴られていた。
〈先生、お元気ですか。
私はようやく、自分の風を掴めた気がします。
これからも、丁寧に歩いていきます。
風は、あの日のままです。〉
行間には、小さな押し花。
ラナンキュラスの花弁が、淡く光を返していた。
恋九郎は静かに手紙を畳み、窓を開けた。
沈香の香が外へ流れ、海の風と入れ替わる。
「あの人、ほんとうに風を変えましたね」
背後からあかりの声。湯気の向こうで、
柔らかく微笑んでいる。
「ええ。あの風は、優しくて強い」
「先生、ちょっと寂しそうです」
「……少しだけ。けれど、それでいいんです」
恋九郎は、あかりの差し出した湯呑を受け取った。
温かさが掌に沁みる。
「縁というのは、不思議ですね。
離れても、風が吹くたびに思い出させてくれる」
「だから先生は、いつも窓を開けてるんですね」
「ええ。風は勝手に吹きます。
僕らは、風が通る場所を残しておくんです。」
外では、潮騒がかすかに鳴っていた。
塔の跡にはもう影はなく、
太陽の下で咲く花だけが静かに揺れている。
恋九郎は、湯呑を置いて微笑んだ。
“あの人の幸せが、いちばん美しい結末だ。
窓辺のラナンキュラスが、春の風に合わせて小さく震えた。
ホテルのバンケットホール。
新規プロジェクトの成功祝賀会。
天井のシャンデリアが波のように光を反射して、
誰もが笑っていた。
沙耶はその中央に立っていた。
白いジャケットの胸に社章が光り、背筋はまっすぐ。
もう、婚約破棄された女ではない。
「藤原リーダー、乾杯の挨拶を」
社長に促され、マイクを取る。
「皆さんのおかげで、このプロジェクトは形になりました。
……“丁寧に生きる”という言葉を、私は仕事の中で学びました。
行動が縁を変える。今日のこの場が、その証だと思います」
拍手が湧き、照明がひときわ明るくなった。
その中に、ひとりだけ沈んだ影があった。
佐伯だった。
左遷前の最終出勤日。
招待リストには載っていないのに、彼は理沙とともに現れた。
理沙は腕を組み、唇を吊り上げる。
「まあ、派手にやってるわね。
平社員がこんな会場、似合わないわ」
「専務の娘が追い出されたのに、
まだその口が利けるの?」と誰かが呟いた。
理沙の顔色が一瞬で変わる。
だが、彼女は強がった笑みを崩さない。
「出世ってね、家柄と運。あなたは、一生下で働く側よ」
佐伯が彼女の言葉に乗るように笑った。
「まったく、同感だ。君の“丁寧”なんて、
下請け仕事の合言葉だろ」
周囲が凍る。
悠が立ち上がった。
「リーダーは、誰より現場を守った人です」
若い声が会場の中心で響く。
「“丁寧に生きる”って、俺たちのチームでは口癖になってる。
……あなたたちは、誰を守りましたか?」
理沙が顔を赤くして、怒鳴る寸前——。
社長がマイクを取った。
「もう一つ発表がある。来期の組織改編だ」
「当社は合併を行い、上場する。
それも、このプロジェクトの成功あってこそだ。」
ホールの照明が落ち、スクリーンが点いた。
映し出された新体制表。
“新事業開発部部長 藤原沙耶”
そして、役員欄に見慣れない名前が加わる。
“代表取締役社長 三条悠”
ざわめきが広がった。
悠が一歩前へ出る。
「隠していてすみません。
合併の前にこの会社の現場を知るために入社していました。
……藤原さんは、僕の師匠であり、尊敬する人です。
彼女なしで、この成功はありませんでした。
そして、ご存知の通り、私たちは結婚します。」
わぁ!と会場が沸いた。
理沙の笑みが消える。
「え……新社長……?」
佐伯が青ざめた顔で、無意識に理沙から腕を引いた。
「俺、知らなかった……」
理沙は怒りと羞恥に震える。
「知ってたら、あなたなんかと——!」
その一言で、全員の目が凍った。
社長の声が低く響く。
「塔は、基礎がなければ崩れる。
虚飾で積んだ高さは、風で折れるだけだ」
会場の誰もが、まるで裁きを見届けるかのように黙っていた。
理沙はハイヒールの音を立てて去り、佐伯も無言で追った。
塔の残骸に、誰も拍手を送らなかった。
*
祝宴のあと。
夜の海沿い。
沙耶は会場を抜け出し、静かな波打ち際に立っていた。
白いジャケットを脱いで、潮風に肩をさらす。
あの人——恋九郎の言葉が、胸の奥で反響する。
“壊れた塔の跡に、光が入る”
視線の先には、Kokū Counselingの灯が見えた。
ドアベルを鳴らすと、香が柔らかく満ちた。
「お疲れさまでした」
恋九郎の声。
彼はもう、全部を知っているようだった。
「……先生。塔が崩れました」
彼女の笑顔は、涙を含んでいた。
恋九郎は頷き、カードを一枚置く。
《太陽 The Sun》
「崩れた塔の上に、太陽が昇る。
あなたは、悪縁を断ち、善縁を照らした」
彼の言葉に、沙耶は小さく息を吸った。
「ありがとうございます。……先生がいてくれたから」
目が合った。
その瞬間、彼の胸が焼けた。
触れたい衝動と、抑える理性がせめぎ合う。
——惚れっぽい。
それでも、今のこれは違う。
彼はただ、彼女の幸福を祈りたいと思った。
それが、愛の最も静かな形だと知っている。
「藤原さん。あなたは、もう一人で渡れます」
「……はい。でも、先生とはまた話したい」
「ええ。風が変わるときに、また」
彼女が去ったあと、恋九郎は窓を開けた。
海の向こうで、鐘が鳴る。
あかりがそっと言った。
「塔が崩れて、太陽が昇りましたね」
「ええ。そして、また誰かが迷い込む」
「そのときも先生が風を通すんですね」
「……風は、勝手に吹くんです。
僕らはただ、窓を開けるだけ」
沈香の香が夜に溶け、外の風が部屋を満たした。
恋九郎はカードを整え、静かに微笑んだ。
――塔は崩れた。
そして、光は差した。
あれから一年が過ぎた。
春の風が、街のガラスを撫でていく。
会社の掲示板に、ひとつの報が載った。
〈佐伯遼一・椎名理沙 退職〉
理由の欄は空白。だが、誰も詮索しなかった。
プロジェクトを失った二人は地方支社へ左遷されたのち、
半年も経たずに姿を消した。
風の噂では、離婚したという。
理沙は父の名を頼れず、
遼一はどの支社にも居場所を作れなかった。
虚飾の塔は、今度こそ完全に崩れた。
それでも、二人はどこかで信じていた。
“またチャンスがある”と。
遼一は小さなベンチャーを興したが、
過去の不正が噂として広がり、出資者は誰も現れなかった。
理沙は華やかなSNSを続けていたが、
フォロワーのコメント欄は冷たく、
いつのまにかアカウントも消えた。
誰も見ていない塔をもう一度建てようとして、
今度は誰にも土台を貸してもらえなかったのだ。
*
一方、会社は新体制のもとで穏やかに拡大していた。
代表取締役・三条悠。
誠実な風が、組織の隅々まで通っていく。
藤原沙耶は子会社「Kokū Works」の社長として、
女性リーダー育成プロジェクトを立ち上げた。
会議室の白いボードには、彼女の手書きの文字が残っている。
“丁寧に生きること。それが、最高の戦略になる。”
社員たちは、その言葉を“藤原スピリット”と呼んだ。
彼女のオフィスの窓辺には、黄色いラナンキュラスがいつも一輪。
光を受けて咲く花の姿は、どこかで見た笑顔と重なる。
悠はその花を見るたび、あの夜の約束を思い出す。
“守るから。何があっても。”
今も変わらず、彼はその言葉を胸に仕事をしている。
恋愛から始まった絆が、信頼に変わり、
そして“夫婦”という形を超えて、ひとつの企業を照らしていた。
*
同じころ。
Kokū Counseling。
窓の外で、海が青く光っている。
恋九郎は、机の上の封筒を手に取った。
差出人の名前を見ただけで、口元がゆるむ。
――“藤原沙耶”。
便箋には、穏やかな筆跡でこう綴られていた。
〈先生、お元気ですか。
私はようやく、自分の風を掴めた気がします。
これからも、丁寧に歩いていきます。
風は、あの日のままです。〉
行間には、小さな押し花。
ラナンキュラスの花弁が、淡く光を返していた。
恋九郎は静かに手紙を畳み、窓を開けた。
沈香の香が外へ流れ、海の風と入れ替わる。
「あの人、ほんとうに風を変えましたね」
背後からあかりの声。湯気の向こうで、
柔らかく微笑んでいる。
「ええ。あの風は、優しくて強い」
「先生、ちょっと寂しそうです」
「……少しだけ。けれど、それでいいんです」
恋九郎は、あかりの差し出した湯呑を受け取った。
温かさが掌に沁みる。
「縁というのは、不思議ですね。
離れても、風が吹くたびに思い出させてくれる」
「だから先生は、いつも窓を開けてるんですね」
「ええ。風は勝手に吹きます。
僕らは、風が通る場所を残しておくんです。」
外では、潮騒がかすかに鳴っていた。
塔の跡にはもう影はなく、
太陽の下で咲く花だけが静かに揺れている。
恋九郎は、湯呑を置いて微笑んだ。
“あの人の幸せが、いちばん美しい結末だ。
窓辺のラナンキュラスが、春の風に合わせて小さく震えた。
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