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蓮華姫覚醒編
「不動明王の加護」
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「――いっくよッ!
炎王覇焔斬(えんおう・はえんざん)!!
――炎の刃が、お前を焼き斬るッ!!」
紅蓮の光が地を裂いた。
空気が震え、熱が波のように押し寄せる。
くりゅうが大剣に巻き付く。
その瞬間、あかりの大剣が炎を纏い、
まるで龍が咆哮するように火柱が伸び上がった。
――ずばぁぁんッ!
炎の斬撃が一直線に地面を抉りながら飛翔し、
念鬼の触手をまとめて切り裂く。
包丁の刃が空中で溶け落ち、黒煙となって弾け飛ぶ。
炎の刃は念鬼の身体を斬り裂き、地の果てまで飛んで行く。
たった一撃で、あの巨躯の念鬼が膝をついた。
「な……なんです、これ、出力が桁違いなのです……!」
地蔵が目を丸くする。
千手観音も思わず息をのむ。
「……まるで、神話の再現ね。」
だが、あかり本人は至ってマイペースだ。
「よしっ、もう一丁! 炎王覇――」
「まっ……ま、待ってぇえーーーっ!!」
千手観音が慌てて飛び込み、全力で抱きついた。
「だ、だめ! あれ以上撃っちゃ!」
「え? なんで? あとちょっとでトドメなのに!」
千手観音は、息を切らしながら必死に説明する。
「縁力を無駄にしないで、縁が消えるよ?聞いてない?
“未来の鏡”を壊さないと、念鬼は再生しちゃうの!」
「鏡?」
「そう! 悪縁鬼が作り出す“最悪の未来”が映る鏡。
それが壊れない限り、念鬼は何度でも蘇るの。
もし、念鬼が鏡に触れたら
――未来が確定して、誰も救えなくなる!」
あかりは大剣を肩に担ぎ直し、真剣な表情でうなずいた。
「なるほど。じゃあ、その鏡を壊せばいいんだね。」
「鏡は念鬼本体が健在だと、割れないから、ほぼ同時に壊す必要が
あって、しかも …それが、まだどこにあるか分からないの。」
千手観音の声が沈む。
「だから今は、鏡が見つかるまでここで食い止めるのが
――あなたと私の役目。」
あかりはにっこり笑った。
「了解です、千手さん! 怪我してるんでしょ?
ここは私に任せて!」
「え、でも――」
「一歩も通さない。不動明王の名にかけて!」
その瞬間、念鬼が咆哮した。
「グルァァァァァァ!!」
包丁触手が再び暴風のように襲いかかる。
だが、あかりは一歩も退かない。
大剣を地に突き立て、両手で印を結ぶ。
口が静かに開き、真言を唱える。
「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・カンマン……」
言霊が響いた瞬間、背の炎が唸りを上げて燃え上がる。
風が止み、世界が熱の色に染まった。
唱えるたびに炎が濃くなり――
赤が、朱に、朱が蒼に変わる。
「なっ……炎の色が……青くなっていく……!」
文殊が息をのむ。
青い炎――それは神仏の怒りを象徴する、“真火(しんか)”。
高熱を超え、魂すら焼く浄火。
触手が襲いかかる。
しかし――届かない。
あかりの身体を中心に、青い炎の壁が立ち上がっていた。
刃が触れるたび、音もなく蒸発し、焦げた風だけが残る。
死角からの念鬼の攻撃も、くりゅうが払いのける。
あかりは微動だにしない。
背中を守る、くりゅうを信頼していた。
「う、嘘みたいです……。
念鬼の攻撃が、届かないのです……。」
地蔵が声を失う。
「同化率・仏心融合度30から40%へ上昇なのです!」
「正気か?心を神に持って行かれるぞ。」
あかりは目を閉じたまま、静かに呟いた。
「これが――不動明王の力。」
包丁触手が次々に焦げ落ちる。
念鬼が苦しみ、咆哮を上げる。
だが、あかりは一歩も動かない。
それはまさに“動かざる壁”、不動そのもの。
千手観音が小さく呟いた。
「……不動。これが、あなたの祈りなのね。」
あかりは炎の中で微笑んだ。
「大丈夫。もう誰も、傷つけさせない。」
念鬼が最後の力を振り絞り、空間を歪ませる。
あかりは、絶望の悪縁鬼を睨む。
「おまえが、優子さんを!」
「ふはは。あいつの恋心に隠れた絶望を、
炙り出してやったのさ。」
「くりゅう、私、わかったんだ。」
「何がだい?」
「私、今、全然怖くない。これって…」
「不動明王が、私に力をくれたら。」
「そうだなぁ。普通の女の子じゃあ無理だよな。」
「これも縁なんだ。私、不動明王と出逢わなければ…」
「こんな風に戦えない。縁は、何も無いところから、
何かを生む、創造のエネルギーなんだ。」
「よくわかったじゃないか、あかり」
「だから、こんな風に、横取りするなんて。」
「絶対許さない!」
「ああ!やってやろうぜ!」
不動明王の蓮華姫、あかりの炎を見るや、
絶望の悪縁鬼は、苦々しく笑った。
「……フン、だが、これは分が悪いな。
また会おう、蓮華姫の諸君。
君達の希望が、熟す頃に。」
黒いもやが渦を巻き、姿を消す。
残されたのは、焦げた大地と、
蒼炎の蓮が咲き誇る戦場。
千手観音の瞳に、再び光が戻った。
「……希望、見えたわ。地蔵、虚空蔵、索敵再開!」
「了解!」
「了解!」
地蔵の小さな指が数珠端末を走り、虚空蔵の瞳が輝く。
「心界潜行…、開始。」
(第7話へ続く)
炎王覇焔斬(えんおう・はえんざん)!!
――炎の刃が、お前を焼き斬るッ!!」
紅蓮の光が地を裂いた。
空気が震え、熱が波のように押し寄せる。
くりゅうが大剣に巻き付く。
その瞬間、あかりの大剣が炎を纏い、
まるで龍が咆哮するように火柱が伸び上がった。
――ずばぁぁんッ!
炎の斬撃が一直線に地面を抉りながら飛翔し、
念鬼の触手をまとめて切り裂く。
包丁の刃が空中で溶け落ち、黒煙となって弾け飛ぶ。
炎の刃は念鬼の身体を斬り裂き、地の果てまで飛んで行く。
たった一撃で、あの巨躯の念鬼が膝をついた。
「な……なんです、これ、出力が桁違いなのです……!」
地蔵が目を丸くする。
千手観音も思わず息をのむ。
「……まるで、神話の再現ね。」
だが、あかり本人は至ってマイペースだ。
「よしっ、もう一丁! 炎王覇――」
「まっ……ま、待ってぇえーーーっ!!」
千手観音が慌てて飛び込み、全力で抱きついた。
「だ、だめ! あれ以上撃っちゃ!」
「え? なんで? あとちょっとでトドメなのに!」
千手観音は、息を切らしながら必死に説明する。
「縁力を無駄にしないで、縁が消えるよ?聞いてない?
“未来の鏡”を壊さないと、念鬼は再生しちゃうの!」
「鏡?」
「そう! 悪縁鬼が作り出す“最悪の未来”が映る鏡。
それが壊れない限り、念鬼は何度でも蘇るの。
もし、念鬼が鏡に触れたら
――未来が確定して、誰も救えなくなる!」
あかりは大剣を肩に担ぎ直し、真剣な表情でうなずいた。
「なるほど。じゃあ、その鏡を壊せばいいんだね。」
「鏡は念鬼本体が健在だと、割れないから、ほぼ同時に壊す必要が
あって、しかも …それが、まだどこにあるか分からないの。」
千手観音の声が沈む。
「だから今は、鏡が見つかるまでここで食い止めるのが
――あなたと私の役目。」
あかりはにっこり笑った。
「了解です、千手さん! 怪我してるんでしょ?
ここは私に任せて!」
「え、でも――」
「一歩も通さない。不動明王の名にかけて!」
その瞬間、念鬼が咆哮した。
「グルァァァァァァ!!」
包丁触手が再び暴風のように襲いかかる。
だが、あかりは一歩も退かない。
大剣を地に突き立て、両手で印を結ぶ。
口が静かに開き、真言を唱える。
「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・カンマン……」
言霊が響いた瞬間、背の炎が唸りを上げて燃え上がる。
風が止み、世界が熱の色に染まった。
唱えるたびに炎が濃くなり――
赤が、朱に、朱が蒼に変わる。
「なっ……炎の色が……青くなっていく……!」
文殊が息をのむ。
青い炎――それは神仏の怒りを象徴する、“真火(しんか)”。
高熱を超え、魂すら焼く浄火。
触手が襲いかかる。
しかし――届かない。
あかりの身体を中心に、青い炎の壁が立ち上がっていた。
刃が触れるたび、音もなく蒸発し、焦げた風だけが残る。
死角からの念鬼の攻撃も、くりゅうが払いのける。
あかりは微動だにしない。
背中を守る、くりゅうを信頼していた。
「う、嘘みたいです……。
念鬼の攻撃が、届かないのです……。」
地蔵が声を失う。
「同化率・仏心融合度30から40%へ上昇なのです!」
「正気か?心を神に持って行かれるぞ。」
あかりは目を閉じたまま、静かに呟いた。
「これが――不動明王の力。」
包丁触手が次々に焦げ落ちる。
念鬼が苦しみ、咆哮を上げる。
だが、あかりは一歩も動かない。
それはまさに“動かざる壁”、不動そのもの。
千手観音が小さく呟いた。
「……不動。これが、あなたの祈りなのね。」
あかりは炎の中で微笑んだ。
「大丈夫。もう誰も、傷つけさせない。」
念鬼が最後の力を振り絞り、空間を歪ませる。
あかりは、絶望の悪縁鬼を睨む。
「おまえが、優子さんを!」
「ふはは。あいつの恋心に隠れた絶望を、
炙り出してやったのさ。」
「くりゅう、私、わかったんだ。」
「何がだい?」
「私、今、全然怖くない。これって…」
「不動明王が、私に力をくれたら。」
「そうだなぁ。普通の女の子じゃあ無理だよな。」
「これも縁なんだ。私、不動明王と出逢わなければ…」
「こんな風に戦えない。縁は、何も無いところから、
何かを生む、創造のエネルギーなんだ。」
「よくわかったじゃないか、あかり」
「だから、こんな風に、横取りするなんて。」
「絶対許さない!」
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絶望の悪縁鬼は、苦々しく笑った。
「……フン、だが、これは分が悪いな。
また会おう、蓮華姫の諸君。
君達の希望が、熟す頃に。」
黒いもやが渦を巻き、姿を消す。
残されたのは、焦げた大地と、
蒼炎の蓮が咲き誇る戦場。
千手観音の瞳に、再び光が戻った。
「……希望、見えたわ。地蔵、虚空蔵、索敵再開!」
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(第7話へ続く)
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