契約結婚に子作りは入ってません!!

鳴宮鶉子

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父との面会と別れ

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「……来望、一緒に来てくれ!!」

平日中日の昼下がり、一花ちゃんと社長室でひばり軒の鶏と野菜の黒酢あんかけ定食を食べていたら、樹副社長が慌て入ってきた。

「……父が危篤って、病院から連絡が入った」

回復の兆しがあった広樹元社長の突然の急変。
タクシーで病院に向かい、抗体検査をした後に、特別個室に入室する。
コロンウイルスが流行しているのもあり面会は3人まで。
病院から清華副社長にも連絡がいってるはずだけど、戸籍上の妻なだけだから、現れない。

癌細胞を取り除く手術により、内臓がつぎはぎだらけになり、これ以上は治療が施しようがない状態になっていた。
内臓の炎症による猛烈な痛みを和らげるために大量のモルヒネを投与し、なんとか意識を保っていた。

「樹、来望を連れてきてくれてありがとう」

消化器が機能してなく点滴による栄養補給で生き存えていたのもあり、体は痩せ細り、声も弱々しくなっていた。

「……来望に最後に会えて、良かった。樹と幸せな家庭を築き、幸せになってくれ」

死を覚悟していた広樹元社長。
呼吸器を外し、最後の言葉を私と樹副社長に伝え終わると、意識を失い、眠るように息を引きとった。


形だけの妻、清華元副社長は、広樹元社長の死亡連絡をメールで送信するも、すぐに駆けつけてこない。
遺体を葬儀場に移し、遺族だけで行う密葬の通夜と葬儀にスカイシーの社長を伴って出席するも、参列客のように式典のみ参列し、すぐに帰っていった。
会社が執り行う社葬には、副社長を辞任してる立場だからと出席しなかった。

「……広樹元社長に合わせる顔がないんだと思います」

樹副社長にそっくりな顔貌をしたスカイシーの社長が、私と樹副社長に頭を下げる。

「……母とは思ってないので、気にしないで下さい」


****

「来望、……これにサインをして」

広樹元社長が亡くなってから、2ヶ月後。
終業後帰る支度をしていたら、樹副社長から離婚届を渡された。

「仮面夫婦で居続ける必要はない。……離婚しよう」

広樹元社長が亡くなり、社葬と偲ぶ会が無事に終わったのもあり、契約結婚を続ける必要が無くなったから、樹副社長から離婚を切り出された。

「来望が社長を辞めたいっていうなら、俺が継ぐ。だけど、来望が本当に好きな男と結婚したら、その相手に社長の座を引き渡す。あーくらいくは来望の子孫が継ぐべきだと思う」


スカイシーの社長と清華元副社長の息子だという引け目から、樹副社長はあーくらいくを継ぐ気にはなれないらしい。

智司社外取締役もスカイシーを退職し、あーくらいくの常務取締役に就任した。


「……離婚したくない。樹さんの奥さんで居続けたい」

あーくらいくに入社してから、3年になる。
入社してしばらくは、樹さんの事をちょっかいばかり出してくる異母兄と思っていた。
それが、半年後に策略婚させられ、関係がギクシャクした。
だけど、子作り同居を始め、一緒にいるのがとても居心地がよく、気づいたら、かけがえのない存在になっていた。

「……樹さんの事が好きです。愛しています。一緒に居たいです!!」

樹さんと離れたくなくて、涙が溢れ出てくる。
彼に抱きつき、すがる。

「……同情じゃないの?」

「違う」

「じゃあさ、俺にキスできる?」

ふと気づく、広樹元社長が亡くなるまで、女の子の日以外はほぼ毎日子作りしていたけど、キスだけはしていなかった。
好きでない相手とはキスは酷だろうと、唇を奪わなかったと、気づく。

「キスしていいの?」

「ああ」

つま先立ちをし、樹さんの首に腕を回し、唇を重ねた。
ミントの香りが私の口内に入ってきて、割り入れられた舌が私の舌と絡む。

「……来望、大切にする。一緒愛する事を誓う」

「私も、樹さんの事を死ぬまで愛し続けるから!!」


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