胃袋掴んだら御曹司にプロポーズされちゃいました

鳴宮鶉子

文字の大きさ
21 / 24

俺が守るから

温かい何かに包まれ、ぐっすりと眠ってた。
そういえば、小さい頃、父が出張でいない時に、両親の寝室で、母に抱きしめて貰って、眠ってた。
厳しい父だから、予定変更で深夜に帰宅した際は、容赦なく叩き起こされ、部屋に帰されたけど、母の温もりを感じられたその時間が私にとって、幸せを感じられる唯一の時間だった。

「……離して……下さい」

目覚めたら、白いワイシャツとネクタイが目に入る。
堅い胸板しがみつくように眠っていた私は、意識を失う直前の記憶を思い出す。

「離したら何しでかすかわからないから離さない」

早朝4時に起き、4時半に秘書の迎えで休日出勤だった雅人くん。
ほぼ休みなく働いていて、疲れが溜まってると思う。

「……トイレ行きたいの!!」

「お姫様、お連れします」

横抱きで抱き上げられ、トイレまで連れてかれ、降ろされる。

「あっち行って」

トイレの前で待たれるのは、嫌だ。

父の言いなりになって、雅人くんと結婚させられる現実から逃れたくて、方法を考える。

貯蓄は2500万円超えた。
隙を狙って、この家から抜け出し、また極貧日本一周旅行に出て、各地を転々と渡り歩き、身を隠そう。

貧困OL くららのチャンネル引退し、“放浪アラサー女子のその日暮らし”のYouTuboチャンネルを新たに開設して、その広告収入とLIVE配信の投げ銭で細々と生活をしよう。

「咲良、俺と結婚するの、そんなに嫌?」

「………」

雅人くんに対しては、不満はない。
好きかと言われたらわからないけど、嫌いではない。

共同生活が苦痛ではないから、一生この暮らしを続けてもいいとさえ、思ってしまっていた。

「咲良、俺と結婚したらあーくらいくの御令嬢からオアシスアマミヤの次期社長夫人になる。オアシスアマミヤの執行役員になって、オアシスアマミヤの戦力として働いて貰わないといけない」

「………」

母は形だけの執行役員で、視察を理由にハイクラスのホテルの高級ランチとディナーを浮気相手と食べ歩いて、あーくらいくの仕事は父と招かれたパーティに出席する以外は何もしていなかった。
私が幼稚園に通う前までは、私と兄を愛し育ててくれていたけど、モラハラが酷い父に嫌気をさし、子育てを放棄した。

「あーくらいくとは無関係になる。オアシスアマミヤ側の人間になる。仕事に関しても家族絡みの事も、俺が咲良の代わりに対応して、咲良があーくらいくと一切関わりを持たないようにする。咲良の事を俺が守るから、だからさ、俺を信じて、俺の奥さんになってくれないか?」


幸せな家庭に産まれたかった。

視察で訪れたファミレスや定食屋で、仲睦まじく食事をしているファミリーが羨ましかった。

食事中に好き嫌いで泣いたり、食べるのに飽きて暴れたりしてるのを見て、いいなと思った。
私がそれをやると帰ってから母が父に殴られ、私自身も数日間食事無しの罰を与えられるから。

家庭環境が異常だったから、身包み剥がされ極貧生活を強いられても、幸せに感じた。

大手飲食店グループの御令嬢という身分で、衣食住や教育には恵まれていたかもしれないけど、生きる事が辛かった。

オアシスアマミヤも生活用品・家電メーカーとして飛躍的に業績をあげてる。

私は普通の生活を送りたい。

「……無理。御曹司とは結婚したくない」

雅人くんは父や兄とは違うのはわかる。
だけど、怖い。

「咲良を……手放したくない。東京から離れて、海外で暮らすならどうだ?咲良の父と兄の接触がなければ、俺たち、上手くいく。咲良を全身全霊かけて守って幸せにするから、だから、俺を信じて」

雅人くんとの共同生活は、気づいたら3ヶ月を過ぎていた。
寝起きと食事を共にし、仕事中も常に傍にいる。
雅人くんが隣に居ないと落ち着かなくなり、そわそわしてる私が居て、常に孤独でいたからか、誰かが側にいる温もりに甘えたくて、その葛藤に、混乱する。

「……仕事はリモート会議でなんとかなる。東京を離れた方がいいと思うから、宮城に行こう」

精神状態がかなりおかしい状態になった私に対し、雅人くんは手を差し伸べる。
その日のうちに、新幹線で仙台に向かう。
ランチ用に作ったアフタヌーンティーのサンドイッチやキッシュ、ケーキは雅人くんがタッパーに詰め、新幹線内で少しだけ口にした。

雅人くんは、私の事を大切にしてくれてる。
それだけは、理解していた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

「職場では隙のない完璧な先輩が、家ではゆるニットで甘えてくる。それでも彼女は、まだ俺の恋人じゃない」

まさき
恋愛
会社では完璧で、誰も近づけない先輩。 そんな彼女と、俺は同じ部屋で暮らしている。 「…おかえり」 ゆるニット姿の彼女は、家でだけ甘い声を出す。 近い。甘い。それでも―― 「ちゃんと付き合ってから」 彼女は知っている。自分が好きになりすぎることを。 嫌われるのが怖くて、迷惑になるのが怖くて。 だから一歩手前で、いつも笑って止まる。 最初から好きなくせに、言えない彼女と。 気づいているのに、待っている俺の話。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。