Substitute lover

鳴宮鶉子

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お互い別の人と

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「心愛、手術支援ロボットでのオペ依頼が殺到してるから、今日から簡単なオペを執刀しろ!!」

手術支援ロボット使用の方がオペ後の回復が早い。
それもあり、患者の多くが2ヶ月待ちなのにロボット支援手術を依頼してくる。

医療手術ロボット総司を東京大学病院は10台導入してる。
でも、年配の医師はロボット支援手術はしたがらずメスを握って執刀していて、使用する医師はいない。

「心臓外科と脳神経外科、消火器外科の部長から許可を得た」

予定手術の依頼書が山のように溜まっていき、院長も頭を抱えてた。

「医療手術ロボットのシステム開発に携わってるなら、実際に使用して手術して使い勝手を試してみろよ!!」

将生にのせられロボット支援手術の執刀をするのを引き受けたら、3ヶ月間、月曜日から金曜日までの毎日、朝から晩まで予定を入れられた。

テルパスにいつ出社したらいいのかと考えていたら、循環器外科に初期研修できてる吉原セレナ先生が将生に呼ばれて近づいてきた。

「テルパスに渡すデータは吉原セレナに持っていって貰う」

吉原先生は救急外来部長の御令嬢。
だからといって、なぜ彼女がテルパスの橋渡しの役に抜擢されたのかわからなかった。
医療ロボット中のデータは機密なもので、関係者以外に委ねる事はできない。

「お兄様の翔琉さんとは結婚前提でお付き合いさせて頂いてます」

翔琉が月に2~3回、お見合いをしてる。
テルパスの社長夫人になると思われてるのか、この役回りを任され、吉原先生は嬉しそうだった。

本気で翔琉が吉原さんの相手をしてるのか疑問に感じる。

今までにも翔琉とお見合い後に吉原さんみたいに私に対して牽制してくる人もいたが、結局は2週間もしない間に諦めてた。

「テルパスの次期社長の奥さんになる人なら打ってつけの人だろ」

将生は吉原先生が翔琉の奥さんになると思ってるようだった。

「わかりました。ただ、ロボットのデータを集めるのは私にさせて下さい」

「わかった。吉川に金曜日の仕事上がりに持っていかせるから、そのつもりで仕事上がりに準備しろ。じゃ、予定詰まってるからオペ室にいくぞ!!」

翔琉に逢いたいのに逢える機会を奪われ、それが辛くて、気持ちが沈む。

オペ室に入り、医療手術ロボットを操縦し、癌細胞の切除手術をこなしていく。

流石に心臓外科や脳神経外科の領域は任されてなく、でも、手術待ちで転移してしまってる患者さんもいて、全てを取り除くのに時間がかかってしまった。
休憩を挟みつつ、8時半から19時過ぎまでオペに入る。
1日を終えるとかなり疲労困憊になってた。

「救急外来にも2台、医療手術ロボット総司を入れる事になった」

アメリカで開発された医療手術ロボットジョブズよりは高額ではないが、総司が1台あたりの価格は約1億5000万円、年間維持費が約1200万円かかる。
国立大学の附属病院だからと何台も所有できる設備ではない。
オプションの装置や、メスや鉗子(かんし)など消耗品も高い。
東京大学病院は現時点で10台も所有してる。
追加で2台はテルパス的には収益になるからかなりありがたい。

「吉原部長が救急搬送された緊急度が高い患者に対して、迅速な対応をするために院長に交渉したらしい」

「……そうなんだ」

毎週金曜日に、翔琉はデータの入ったUSBを吉原先生から受け取った後、デートをしてるらしい。

USBを吉原さんに託す時に、彼女からデートプランについて聞くたびに胸が痛くなる。

高級ホテル内にあるレストランで食事をし、その後、一夜を共にするらしい。

吉原さんと毎週末に一夜を共にしてるなら、翔琉は前向きに結婚を考えて交際をしてるんだと思う。
だから、翔琉は、もう私の相手はしてくれない気がした。

翔琉が私以外の女性を抱いてるのを知ったショックと、それが許せない私がいて、金曜日の夜は気持ちが塞いでしまう。

そんな私を気づかってか、1週間のオペ祭りを乗り切ったご褒美と言って将生が、いつのまにか予約を入れてたレストランに連れて行ってくれて、そしてその日はそのままsuite roomに宿泊する。

疲れで夜明けまで体を求め合う元気はないけど、気晴らしになるから、その心遣いが嬉しかった。

現在、ロボット支援手術の待ちを解消するために、現在フル稼働で予定オペを行っていて、私もかなりいっぱいえっぱいだけど、将生も難易度が高い予定オペを執刀していて、帰宅後も明日のオペの術式の確認等をしていて余裕がないようだった。
だから、毎日求めてはくるけど、1日あたりの回数は減った。

「来週からは心愛も心臓外科で執刀するんだ。部長から術式の指示はあるが、かなり神経すり減るから、予習しといた方がいい」

東京大学病院以外のも含めて、3年間、オペの動画は全て目を通してきたけど、実際に操作を行ってないから、簡単なオペでも最初の頃は時間がかかりミスを犯しそうになった。
それもあり、前の日の夜に将生から予定オペの術式や操作方法について指導して貰ってる。

私は将生にかなり助けられてる。

私と将生の父親の櫻井将輝は東京大学病院で伝説の天才外科医と言われる人だった。
将生も医師として独り立ちしてから、難しいオペを執刀し、短時間で成功させてるのもあり、天才といわれてる。

異母兄妹だけど、このまま2人、助け合って生きていくのもいいかなと、私は思うようになった。


「……今日は生肉食べれるレストランじゃないんだ」

「さすがに俺も、内臓の映像ばかり見てた生肉喰いたくなくなる」

ディナーといえば鉄板焼きレストランがの将生。
生肉の握りや生肉のタタキと毎回生肉を5人前ぐらい食べてる人が、今日は珍しく海鮮料理が有名な老舗料亭旅館に予約を入れてた。

生肉ばかり食べてるイメージしかないけど、家での食事は魚料理中心で刺身やカルパッチョ、マリネをリクエストしてくる。
生だけでなく、煮付けや照り焼き、アヒージョも好き。
相馬の家では家政婦さんが作ってくれてたから料理を一切した事がなかった私だけど、結婚してからはキッチンに立ってる。
マンションの地下に食品スーパーの 成城石田があり、鮮度がいい質の高い食材が手に入るから、料理が楽しかったりする。

新鮮なお造り10品盛りにすき焼きと天ぷらと茶碗蒸しなどのコース料理を頂きながら、日本酒を口にする。
襖をあげればシングル布団が2組敷いてあり、仲居さん配膳が終わると呼ばないと入ってこない。
枕営業で使われたりする料亭で、部屋の外に仲居さんが常にいて、他の客と出会さないよう徹底した心配りをしてる。

「心愛、ホタテ好きだろ?ウニも」

北海道産の最高級の海鮮のお造りは本当に美味しくて、帰り際に吉原さんに会って気持ちが沈んでたのが晴れた。

「心愛、食べさせて」

人目を気にしないでいいからと、隣り合わせに座り、ボディータッチをしてきたり、食べさせあったりといちゃつきながら食事をする。

「片付けは後して貰って、あっちの部屋にいこう。俺、準備万端」

豪華な料亭を食べ終え、仲居さんに片付けて貰おうと立ち上がろとしたら、手を掴まれ、膨らんだ股間を触らされた。

「……デザートに心愛を食べさせて」

隣の部屋に行かず、そのまま押したおされて、唇に噛み付くようなキスを落とされ、トップスを捲し上げられると、膨らみを掴まれた。

「料亭でやるの、新鮮だな。余裕ない!!」

チュパチュパ掴んだ胸の頂を吸い、タイトスカートの中に手を入れ、ショーツとストッキングを剥ぎ取った、

「……布団の部屋にいこう。ここは嫌」

机の上には食器類がある。食器を落ちて大きな物音をたてたら、目立ってしまう。
高級老舗料亭旅館とはいえ日本家屋。
企業の接待、宴会や商談、要人や政治家の密談、タレント、芸能人の打ち合わせ等に使われることが多いが、防音対策は施されてなく、両隣と前後から声が漏れていて、少し気になった。

「……心愛、可愛い喘ぎ声を聞かせて」

「……無理っ」

私を抱き上げ、布団の上に下ろすと、将生が私を見下ろし、意地悪そうにいう。

仲居さんに片付けて配膳を貰わないといけないから、服は着たままで続きをする。

私の脚をM字に開脚させると茂みに舌を這わせ、敏感なとこを攻めてくる。

「……もっと淫乱な声を出して!!」

最近、仕事疲れで交わるだけの行為だったからかいつもよりも感じてしまうも、恥じらいで必死に堪える。

『……翔琉さん、ソコ……もっと触って下さい!!……あっ、あ、アン!!』

隣からAVビデオかと思ってしまうような生々しい声が聞こえ、悦楽に浸ってた体が正常に戻る。

『セレナさん、イッた?お風呂、先に入っておいで』

『翔琉さんと一緒に入りたい』

最悪な偶然で、隣の部屋に翔琉と吉原先生が宿泊するようで、2人のやってる声が聞こえ、ショックで体が強張った。

「……マジで。兄貴と吉原が隣の部屋って萎える。今日は泊らずに帰るか」

将生も指導医をしてる研修医の喘ぎ声を聞くのはさすがに生々しくて嫌なのか、私の乱れた服を治し、帰る準備を始めた。

「俺達は帰ってから続きをしよう」

将生が私の手を握り、料亭旅館からでる。私の頭の中で、翔琉と吉原先生が裸で絡まってる映像がずっと流れてた。




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