Substitute lover

鳴宮鶉子

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貴方の元へいきたい

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東京大学病院から徒歩10分のところにある将生が分譲してたタワーマンションの中層階21階。
3LDKの部屋に息子達と3人で暮らし始めた。

将生と一緒に寝起きをしていたキングサイズのベッドで、将也と翔太と川の字になって眠る。

入園式の次の日から、14時までの通常保育の後に、毎日、2人に、外国語、ソロバン、パズル、体操、ピアノ、バイオリン、レゴプログラミング、パソコンなどの課外教室から3~5こ選ばせて受講させた。

楽しいたいみたいだけど、19時までは受講するのは飽きるようで、早く帰りたいと2人は言ってきた。
だから手術部部長に息子達が小学校を卒業するまでは短時間勤務に変更させて貰い、8時半から17時迄の勤務で、予定オペの執刀をさせて貰う事にした。

でも、夜間の救命救急搬送のコールがきた時は2人を幼稚園の夜間預かりに預けて駆けつけた。

息子達と3人で暮らすようになったから、週末に医局に2人を連れて行くようになった。
将也が外科医の仕事に興味を持ち、将来、医者になりたいと言いだした。

そして、私も外科医としての仕事に専念したいから、テルパスの開発エンジニアの能力と技術のレベルをあげるために、病院勤務の後にテルパスの開発部へいき、社員に仕事の指示をし、教えたりサポートをした。

医療機器の開発に関しては翔太が興味を持ち、テルパスを継ぐと言ってた。

毎日慌しい日々を過ごしてるけど、充実してた。

翔琉とは、テルパスの仕事で言葉を交わすだけで、それ以外は関わらないようにした。

でも、息子達は私が開発部で社員達に仕事の指示をしてる間、専務室で翔琉に相手をして貰ってた。

相馬母が土曜日の午後に、息子達を連れ出す。その時に翔琉もいて、遊びに連れていったりしてる。

私は翔琉とは関わらないようにしてるけど、息子達にとっては叔父にあたるから、間を引き裂くような事はしなかった。

翔琉は何も悪い事はしてない。
吉原セレナと出会い、関わってしまったから、悲劇が起きてしまった。

この世には絶対に関わりあってはいけない人がいる。

そして、自分ではどうする事もできない人間関係のしがらみに、もがき苦しみ身動きができない時もある。

翔琉が置かれてた当時の境遇について、理解してる。

「医療手術ロボット竜馬の自動執刀機能は完璧だ!!」

医療手術ロボット竜馬による初のオペが東京大学附属病院で行われた。
敢えて、難易度が高い手術で使用し、機能の確認をする。

患者の腹部に小さい穴を開け、内視鏡と鉗子やピンセット、尖刀等のアームを入れさえすれば、後は医療手術ロボット竜馬が画像から患部を見つけだし、蓄積されたデータから最善の術式を表示し、問題がなければワンタッチで執刀を開始する。

AI機能搭載の医療手術ロボットは人が執刀する時に起きる手先が誤って起きるミスは起きない。
そして、術式に関しても蓄積データから最善な方法を提示するから誤った執刀にはならない。
画像処理で他の疾患部位も見つけ出す事もできる。

『癌細胞の切除と縫合は完璧だ。画像処理で人が気づかない癌細胞も反応して取り除くから、転移や再発の危険性が減るな』

『冠動脈バイパス手術も、ロボットアームの見事なメスと鉗子捌きで短時間でオペを終わらせた』

東京大学病院の院長に就任した神崎教授が、10台モニターで導入してくれて使用してくれたため、成功事例を多数挙げる事ができ、日本だけでなく全世界から注文が殺到した。
モニターで使用した医療手術ロボット竜馬は大学附属病院は東京大学病院でそのまま購入して貰い、私は手術部主任として執刀医をしながら外科医の指導にあたった。

『医療手術ロボット竜馬の執刀は瀬坂将生に似てるな』

将生の指導医を勤めてた外科医部長達が口々に言ってた。
オペの術式は8割は将生が執刀したオペのデータを使ってる。

将生は大学に通ってる時に、外科医になるために図書館に貯蔵されてる名医の執刀動画のDVDを片っ端から観て勉強していた。
天才ドクターといわれてた父 櫻井将輝を完璧に模倣できた。

将生のオペほど完璧なオペはないと私は思ってる。
外科医として多くの命を救っていくはずだった将生。
将生のオペの技術は医療手術ロボット竜馬に受け継がれた。

私は、医療手術ロボット竜馬の執刀を見て、将生の事を思い出し涙ぐんでた。


将生が亡くなって3年が経ったけど、いまだに私は立ち直れなかった。

将也と翔太を育てながら、外科医として医療機器開発エンジニアとして仕事に邁進してた。

だけど、将生でなく私が吉原セレナに殺されればよかったとか、将生と一緒に命を落とせばよかったと思うようになり、生きる気力がなくなっていった。

10年間開発に費やした医療手術ロボット竜馬が完成したのもある。
将也と翔太も4歳になり、何かあれば相馬の両親が預かってくれて2人も懐いていて、だから私がいなくなっても大丈夫な気がした。

将生の元へいきたい。

精神科医をしている友人を尋ねて回り、多飲すると死に至る精神安定剤の薬を手に入れた。

そして、将生の命日、私は将生が眠る巣鴨にある墓を1人参った後、マンションに戻り、集めた精神安定剤と睡眠薬を手に取り致死量に至る2倍の量を口に入れ、ミネラルウォーターで流し込んだ。

薬物自殺を謀った事を知られないよう、錠剤を瓶に入れて保管し、薬剤情報提供文書を家に残さなかった。

一度に500mg程度服用すると、口渇、便秘、めまい、眠気などを訴え、1500m以上を服用すると、昏睡、けいれん発作、低血圧、重篤な不整脈、高体温、横紋筋融解症、急性腎不全などが引き起きる。2000mg以上服用すると、致死的となる。心臓死、呼吸不全、急性腎不全が死因になる。

睡眠薬も多飲し、眠るように逝きたい。
Mサイズの薬瓶に入って錠剤を胃に流し込む。
睡眠薬も飲んだけど、不整脈が頻発して、全身性のけいれん発作を起こし心臓を押さえて倒れこんでしまう。

その時、家のドアが開き、将也と翔太が入ってきて、私は意識を飛ばした。



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