Substitute lover

鳴宮鶉子

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完全に嫌われてしまった side翔琉

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ずっと抑えていた心愛への欲情。
それが爆発し、俺は心愛を押し倒し、無理矢理犯してしまった。

ずっと触れて味わいたかった。

どんなに指でほぐしても濡れない膣内に欲望を埋め込む。

涙は溢れても、そこから甘い蜜が流れでる事はなかった。

昔はあんなに俺を求め、感じていたのに、将生の事をいまだに忘れられない心愛は、心も体も俺を受け入れなかった。


****

“翔琉、あんた、やらかしたね!!”

心愛に合わせる顔はないが、謝罪し、家から出ていくのを食い止めないといけない。

仕事を終わらせ、帰宅しようとしたタイミングでスマホからLINE通知の着信音が鳴った。

LINEを開いて確認すると、愛美から何度もメッセージが入っていて、心愛と2人で食事をしているようで、2ショット画像も添付されていた。

“朝イチで心愛ちゃんがアフターピルを求めてうちの病院に来たよ”

“私はあんたの味方だから、心愛ちゃんに排卵誘発薬を飲ませようかと思ったけど、双子ちゃんいるし、緊急避妊薬を飲ませたから”

“蒼月で1人で呑んでる。仕事終わったら来い!!”

愛美に間に入って貰って、3人で話せたらと思ったが、心愛は双子の世話で食事が終わるとすぐに帰ったようだった。

産婦人科医をしてるのに、悪酔いするぐらい酒を飲む愛美。
母親が院長をしていて、父親は東京大学病院の産婦人科部長をしてる。
父親に頼めば東京大学病院から医師を派遣して貰える。
だから、月に数回、思う存分、呑んだくれている。

「遅いよ!!心愛ちゃんと3人で話ができたらと思って、7時半までは足止めしてたんだよ!!」

BAR 蒼月でマンハッタンを飲んでる愛美。度数が低いカクテルにすればいいのに、高いカクテルばかりマスターに注文する。

「心愛ちゃんが、あんたが吉原セレナと銀座の料亭旅館 蝶花でやってる最中の声を聞いたって言ってたんだけど、本当?」

いつもながら、デリケートな事を率直に聞いてくる愛美。
5年もの前の俺が犯した過ち。

「最後までやってない。手術支援ロボット総司と内視鏡システム勇のデータの受け渡しで、あいつに会わざるはおけなかった。あのデータを他の医療機器メーカーに渡されたりしたらうちの技術をとられてしまう。そうさせないためにもあいつの機嫌を損ねることができなくて、引き渡しの時にデートに付き合い、あいつを満足させるために手だけでイカせてた。戸籍上、東大病院の救急科の部長の娘で卑下にもできなく、かなりストレスになった。まさか心愛にそれを知られてたなんて……」

セレナが心愛に俺とやってる声を聞かせようと計画してたのかもしれない。
異様にデカい声をあげていた。

「吉川セレナ、とんでもない女だったね。機嫌とりで手でイカせてたんじゃないかって心愛ちゃんには伝えたけど、完全にあんたが吉原セレナとそういう関係だと思ってたよ」

俺は心愛に、セレナと結婚前提で真剣交際をしてたと思われ、体関係もあったと誤解されてた。


「……心愛、ちょっといいか?」

酒は飲まず、30分ほど愛美と話してから、俺はすぐに家に戻った。

昨日の謝罪と誤解を解くために、心愛と話がしたかった。
だが、心愛はもう、双子を連れて寝室に鍵をかけてこもってた。
昨日の今日だから警戒されても仕方がない。

双子が起きてたら、「おかえり!!」と中に入れてくれたかもしれないが、双子はもう夢の中だった。

「心愛、言い訳にしかならないが聞いてくれ。俺は吉原セレナとは政略結婚候補として関わりはあったが、真剣交際はしてない。仕事が絡むから円満破談させないといけなくて、傷つける事なく相手が離れていくように接してた。他の縁談相手と違い、セレナは狂乱な女で、うまく破談にもっていく事ができなかった。心愛が“蝶花”で俺がセレナとやってたというのも、あいつの機嫌をとるために手でイカせてただけだ。データの引き渡しで会わざるはおけなくて、仕方がなかった」

ドアの前で、心愛に話しかける。
心愛は部屋の中にいるから、俺の声は届いてるはず。
だけど、言葉を返してくれなかった。

土曜日に心愛は双子を連れて、麻布の家から出て行った。

真面目な心愛だから、テルパスの仕事は請け負ってくれた。
病院勤務の後に双子を連れてテルパスにきて、新型医療機器開発を進めてくれた。

****

「翔琉、久しぶり!!」

「マサ、ショウ、夜ご飯はもう済んだか?」

「食べた!!今日は甘海老と帆立のカルパッチョにカルボナーラだった!!」

双子に夕ご飯を食べさせお風呂に入れてから、心愛はテルパスに顔を出す。

育児短時間勤務で予定オペの執刀を調整し、家事と双子の世話をしながらテルパスの仕事もする。

テルパスのエンジニアに仕事の指示し任せ、教えサポートし、心愛は社員の技術レベルをあげようとした。

心愛は、俺と仕事に関する事しか話さない。

ーー俺の事を完全に拒絶するようになった。

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