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パジャマ女子会

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『久しぶりに凛花ちゃんだけ呼んで、おうち女子会したい』

伽音ちゃんの提案で、2月第2週の週末は、翔真と相葉社長は出入り禁止になった。
3日前に翔真に復縁を迫られ、週末に顔合わせするのが気まずかったから、伽音ちゃんに感謝する。

『伽音ちゃんからのバレンタインチョコレート欲しかったのに!!』

『相葉社長に義理チョコもあげる気ないですけど!!』

『伽音ちゃん、酷い!!』

金曜日の夜、LIN Aグループのテレビ電話で話す。

『たまには女子会したいの!!と、言う事で翔兄、相葉社長、明日は来ないでね!!』

相葉社長がかなり残念そうな表情を浮かべてた。

次の日、伽音ちゃんの家へ行く。
頼翔くんは、私しか来ない事を残念がってる。

「凛花ちゃん、バレンタイン、何作りたい?トリュフ?生チョコ?ガトーショコラ?」

リビングのソファーに座り、iPhoneで手作りチョコレートのレシピを検索してる伽音ちゃん。

テーブルにはAmazanの箱が置いてあり、中にはゴジョバやレンツ、ロイスの板チョコが入ってる。


「相葉社長にあげないんじゃなかったっけ?」

「うん。誤解されるの嫌だからあげないよ。自分用に作るの!!」

イベント事が好きな伽音ちゃん。
そういえば去年、友達チョコで洋酒入りトリュフとブランデー入りガトーショコラを貰った。

「私は今年も洋酒チョコ作る。在宅勤務だからアルコール入りチョコレート食べてもバレないし、私、洋酒チョコ好きなの!!」

伽音ちゃんらしい返答。
相葉社長には義理チョコも友チョコもあげるつもりはないらしい。

「翔真にはあげないの?」

「あげない。誤解されたら嫌だから。凛花ちゃんに今年もあげる」

伽音ちゃんが作る洋酒チョコは材料と配合率が絶妙に良いから、美味しい。

「凛花ちゃん、何作る?」

料理が苦手な私。難しそうなのは作れる気がしない。
チョコレートを溶かして型に流し込むだけでも、手際が悪いから、見すぼらしくなりそう。

「生チョコタルトはどう?私も少し、手伝うから!!」

タルト生地の中に口溶けのいい生チョコを注ぎ入れ、ナッツとドライフルーツで飾りつけたおしゃれなチョコレートのレシピを見せられる。

「タルト生地は出来合いだよね?」

「アーモンドパウダー入りで手作りするよ!!美味しいの作りたいじゃん!!」

伽音ちゃんが箱から板チョコを取り出し、キッチンへ向かう。
生チョコタルトで決定らしく、着いていく。

タルト生地がなぜか膨らんだり、生チョコを流し込む段階でチョコレートが固まり再加熱をしたりと、伽音ちゃんは自分用のチョコを作ってたから、私に指示しかしてくれず、かなりの失敗作を出してしまった。

「大丈夫!!材料はまだある!!失敗作は相葉社長にでもあげればいいよ!!」

伽音ちゃんは知らない。
相葉社長はかなりモテる。既婚者でもkittyの女性社員やクライアントのインフルエンサーの綺麗どころから、不倫でいいからと迫られてた。

「うん。インスタ映えする出来。翔兄にあげるでしょ?ラッピングしとこっか!!」

なんとか形になった生チョコタルト。
伽音ちゃんが、寝る前に冷えて固まったチョコを12個、可愛い箱に詰めて、赤と白の小さなハート柄のピンク包装紙でラッピングし、赤いリボンをつける。

「なっ、……なんで翔真にあげないといけないの?ぎ、義理チョコ?これ、本命チョコにしか見えないじゃん!!」

「うん。本命チョコ仕様。私、コンパの日の夜の記憶が戻ったんだ。で、あの夜、ホテルの部屋に送り届けてくれた時に翔兄に、抱いてと迫ったんだけど、俺には心に決めた女性がいるって拒絶され、私を放置して、出てった。後、温泉旅館に行った時にね、私、眠れなくて露天風呂に入ったの。その時に溺れかけて、翔兄にまた助けられたんだけど、翔兄、私の裸を見ても反応しなかった。私の事が好きじゃないのに、こうやってつるんでるの、凛花ちゃんの事が好きだからなんじゃないかなと思う」

伽音ちゃんの失っていたコンパの夜の記憶。
伽音ちゃんが翔真に迫っていた事実に驚く。
伽音ちゃんみたいな可愛くてスタイルいい子に迫られたら、たいていの男は、その場限りで流され、抱いてしまうと思う。

翔真は1度だけでなく、2度、伽音ちゃんを抱けるチャンスがあったのに、抱かなかった。

「あっ、私、翔兄の事が好きってわけじゃないから!!生まれ育った環境のせいで捻くれてて、酔っちゃうと、私、男を誘惑する悪い虫が出ちゃうみたいなんだ。だから、最近、お酒を飲む量、セーブしてる」

伽音ちゃんが翔真の事が好きなんじゃないかと思ってたら、否定された。

「翔兄と相葉社長のどちらか選べと言われたら、翔兄を選ぶけど、私、誰とも結婚をせず、親しい友達と仲良く生きていきたい。今年は頼翔がいるし、男……いらない!!」

伽音ちゃんに、私は結婚して、旦那さんに大切にして貰って幸せになって欲しいと思ってた。
だけど、伽音ちゃんは、そうではなかった。

「頼翔が相葉社長の息子という事実は変えられないから認めるけど、認知させないし、結婚なんて、絶対にしない。このまま、4人でわいわい仲良くしていけたらいいなとは思う」

ラッピングしたチョコレートを、溶けないよう、伽音ちゃんは冷蔵庫に入れてくれた。

「寝よっか。明日は翔兄と相葉社長をウチに招いてあげる?翔兄にバレンタインデーの日にデートの約束をしなよ!!」

伽音ちゃんと寝室に向かう。
シングルベッドが2つ置いてあり、伽音ちゃんは頼翔くんが眠ってるベッドに入り、空いてる方のベッドに私は横になった。

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