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順調だと思ってた妊娠
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心臓病センター榊病院 には臨床遺伝科もあり、お腹の子の成長を遺伝子レベルで診察する事ができる。
母体や胎児に心臓に疾患がある患者さんが全国からお産のために通ってる産婦人科もある。
「……エコーを見ると赤ちゃん、心臓に問題あるね」
お父さんと一緒に、外来診療時間の後に産婦人科部長の坂本部長に妊婦検診をして貰った。
普段は女医の和田医長に診て貰うけど、赤ちゃんの心臓に異常がないかをエコー検査で確認するために、心配症なお父さんが坂本部長にお願いした。
妊娠16周を過ぎれば、エコー検査で胎児の心臓に4つの部屋があることがみえる。
心臓の生まれつきの病気がわかる時期で、やっぱりかと覚悟はしていたけど、重度の複雑先天性心疾患があり、失神しそうになる。
重症大動脈弁狭窄症、動脈管依存性先天性心疾患、胎児動脈管早期閉鎖、胎児不整脈など、坂本部長が次々と病名をお父さんに伝え、早期に帝王切開で赤ちゃんを取り出して対処しないと胎内で死亡、もしくはお産の時に死産する危険性が高いと言われ、2人とも難しい表情を浮かべてた。
このケースは赤ちゃんの命を守ることが難しく、そして、お母さんもお産時に大出血して死亡する危険性がある。
「大丈夫。赤ちゃんも咲花ちゃんの命も守るから」
不安な私に坂本部長は、そう声をかけてくれた。そして、
「島田部長、32週ぐらいで帝王切開で赤ちゃんを取り出します。妊娠の継続で血流が増えるのと後産で出血過多を起こして咲花ちゃんの心臓が肥大を起こすかもしれないので、心臓外科で対処するドクターを探しておいて下さい。赤ちゃんの心臓のオペは島田部長がされますよね?」
坂本部長はお父さんと今後の対処法について話しだした。
毎日、外来診療の後にお父さん立ち合いで坂本部長に胎内エコー検査をして貰い、お父さんからも心臓エコーで私の心臓を診て貰った。
何かあれば緊急入院し対処する。
32週までは胎内で赤ちゃんを育てたい。
時間に融通が効く機械回しのオペ看をさせて貰い、看護師仲間に助けられながら妊娠生活を過ごしてた。
32週に入り、心室中隔欠損と臍帯静脈血流の逆流、心筋の非薄化,心拡大などの複雑先天性心疾患がある赤ちゃんの状態が悪くなり、私は絶対安静で産婦人科病棟に入院する事になった。
お父さんも坂本部長もいつも難しい表情をして、胎心エコーの画面をみてた。
胎動も弱くなっていて、かなり危険な状態という事が私もわかる。
「35週に予定帝王切開をする手筈にしてましたが、時期を早めた方がいいですね。明日の14時なら、可能です。心臓外科は執刀の人員確保できます?」
「後方スタッフはなんとかなるが、執刀医の方が調整できてない。咲花の心臓、お産でショック状態になり肥大を起こす可能性が高いから榊記念病院から柳瀬部長に来て貰って咲花の方を対処して貰う話はつけてるが、子供の方は調整ができてない。子供の心臓手術は俺だけでは対処できないからハーバードからアシストを要請してた。だから、予定を早めると来てもらうのは難しい。子供の方は重度過ぎて、日本で引き受けてくれる医師がいない」
天才ドクターといわれてるお父さん。
私の心臓をオペで造りかえてくれたけど、私のお腹の中にいる小さな赤ちゃんの心臓にメスを入れ、正常な状態に造りかえるのは無理だと思ってるようだった。
「島田部長なら……もう猶予がない事はわかってますよね。このままでは死産します。明日、柳瀬部長に来て貰えるよう連絡して下さい。島田部長なら、できますよ!!」
そう言って坂本部長は私の病室から出ていった。
「咲花に聞かせる話ではなかったな。咲花、明日までに赤ちゃんの第2執刀医を見つけるから、最悪、俺がひとりで執刀する」
お父さんが私の頭を撫で、そして私のお腹も優しくさすり、病室から出ていった。
明日、緊急帝王切開をする事が決定した。
「咲花ちゃん、赤ちゃんも咲花ちゃんも助かるから!!」
柳瀬心臓外科部長だけでなく、伝説のきかいかオペ看と言われてた柳瀬看護師部長が鍛え上げたオペ看を引き連れて榊病院にきてくれた。
術式と手順についてのミーティングに2時間かかり、オペは15時から行われた。
お父さんは朝、顔を出し、それ以降は第2執刀医に赤ちゃんの心臓の状態とオペの手順についてをジェクチャーするため現れなかった。
「……かなり難しいオペになるから、でも大丈夫。あの2人に任せれば絶対に成功させる」
心室中隔欠損症や心房中隔欠損症といった心室や心房に穴が空いているタイプの疾患は、穴が小さければ自然にふさがるケースもあるが、必要があれば手術やカテーテル治療によって穴をふさぐ治療をしないといけない。
肺動脈弁狭窄など弁に問題がある疾患は、カテーテルに取りつけたバルーンを膨らませて狭くなっている弁を広げる治療や、人工の弁を入れる治療などを行う。
大動脈と肺動脈を入れ替える動脈スイッチ術、血管のバイパス手術、薬物療法などさまざまな方法がある。
先天性心疾患には多くの種類があり、重症度に関しても治療の必要がないもの、ゆくゆくの自然治癒が見込めるもの、早急に治療をしなければならないもの、難治性のものと幅広く、そのため、それぞれの疾患や重症度に合わせて適切な方法を選択する必要がある。
だから、複雑先天性心疾患はいくつもの疾患が重なり、判断が難しい。
子供心臓は成長と共に大きくから心臓の成長を阻害しないよう縫合しないといけなくて、一度メスを入れた場所は癒着が起きて、出血も多くなる事から、再手術ほど危険率が高くなる。
『心臓を短時間に造りかえ、正常な型にして、2度と手術しないですむようにする』
お父さんがそう私にいってた。
オペ室に入りら全身麻酔をし、緊急帝王切開が始まった。
柳瀬心臓外科立ち合いでベテランの坂本部長がメスを握り、赤ちゃんを私の胎内からとりだす。
機械回しは柳瀬看護部長が連れてきてくれた私が尊敬してる久保先輩が引き受けてくれた。
麻酔で眠りつく私に優しく「大丈夫、任せて」と声をかけてくれて、安心して眠りにつく事ができた。
母体や胎児に心臓に疾患がある患者さんが全国からお産のために通ってる産婦人科もある。
「……エコーを見ると赤ちゃん、心臓に問題あるね」
お父さんと一緒に、外来診療時間の後に産婦人科部長の坂本部長に妊婦検診をして貰った。
普段は女医の和田医長に診て貰うけど、赤ちゃんの心臓に異常がないかをエコー検査で確認するために、心配症なお父さんが坂本部長にお願いした。
妊娠16周を過ぎれば、エコー検査で胎児の心臓に4つの部屋があることがみえる。
心臓の生まれつきの病気がわかる時期で、やっぱりかと覚悟はしていたけど、重度の複雑先天性心疾患があり、失神しそうになる。
重症大動脈弁狭窄症、動脈管依存性先天性心疾患、胎児動脈管早期閉鎖、胎児不整脈など、坂本部長が次々と病名をお父さんに伝え、早期に帝王切開で赤ちゃんを取り出して対処しないと胎内で死亡、もしくはお産の時に死産する危険性が高いと言われ、2人とも難しい表情を浮かべてた。
このケースは赤ちゃんの命を守ることが難しく、そして、お母さんもお産時に大出血して死亡する危険性がある。
「大丈夫。赤ちゃんも咲花ちゃんの命も守るから」
不安な私に坂本部長は、そう声をかけてくれた。そして、
「島田部長、32週ぐらいで帝王切開で赤ちゃんを取り出します。妊娠の継続で血流が増えるのと後産で出血過多を起こして咲花ちゃんの心臓が肥大を起こすかもしれないので、心臓外科で対処するドクターを探しておいて下さい。赤ちゃんの心臓のオペは島田部長がされますよね?」
坂本部長はお父さんと今後の対処法について話しだした。
毎日、外来診療の後にお父さん立ち合いで坂本部長に胎内エコー検査をして貰い、お父さんからも心臓エコーで私の心臓を診て貰った。
何かあれば緊急入院し対処する。
32週までは胎内で赤ちゃんを育てたい。
時間に融通が効く機械回しのオペ看をさせて貰い、看護師仲間に助けられながら妊娠生活を過ごしてた。
32週に入り、心室中隔欠損と臍帯静脈血流の逆流、心筋の非薄化,心拡大などの複雑先天性心疾患がある赤ちゃんの状態が悪くなり、私は絶対安静で産婦人科病棟に入院する事になった。
お父さんも坂本部長もいつも難しい表情をして、胎心エコーの画面をみてた。
胎動も弱くなっていて、かなり危険な状態という事が私もわかる。
「35週に予定帝王切開をする手筈にしてましたが、時期を早めた方がいいですね。明日の14時なら、可能です。心臓外科は執刀の人員確保できます?」
「後方スタッフはなんとかなるが、執刀医の方が調整できてない。咲花の心臓、お産でショック状態になり肥大を起こす可能性が高いから榊記念病院から柳瀬部長に来て貰って咲花の方を対処して貰う話はつけてるが、子供の方は調整ができてない。子供の心臓手術は俺だけでは対処できないからハーバードからアシストを要請してた。だから、予定を早めると来てもらうのは難しい。子供の方は重度過ぎて、日本で引き受けてくれる医師がいない」
天才ドクターといわれてるお父さん。
私の心臓をオペで造りかえてくれたけど、私のお腹の中にいる小さな赤ちゃんの心臓にメスを入れ、正常な状態に造りかえるのは無理だと思ってるようだった。
「島田部長なら……もう猶予がない事はわかってますよね。このままでは死産します。明日、柳瀬部長に来て貰えるよう連絡して下さい。島田部長なら、できますよ!!」
そう言って坂本部長は私の病室から出ていった。
「咲花に聞かせる話ではなかったな。咲花、明日までに赤ちゃんの第2執刀医を見つけるから、最悪、俺がひとりで執刀する」
お父さんが私の頭を撫で、そして私のお腹も優しくさすり、病室から出ていった。
明日、緊急帝王切開をする事が決定した。
「咲花ちゃん、赤ちゃんも咲花ちゃんも助かるから!!」
柳瀬心臓外科部長だけでなく、伝説のきかいかオペ看と言われてた柳瀬看護師部長が鍛え上げたオペ看を引き連れて榊病院にきてくれた。
術式と手順についてのミーティングに2時間かかり、オペは15時から行われた。
お父さんは朝、顔を出し、それ以降は第2執刀医に赤ちゃんの心臓の状態とオペの手順についてをジェクチャーするため現れなかった。
「……かなり難しいオペになるから、でも大丈夫。あの2人に任せれば絶対に成功させる」
心室中隔欠損症や心房中隔欠損症といった心室や心房に穴が空いているタイプの疾患は、穴が小さければ自然にふさがるケースもあるが、必要があれば手術やカテーテル治療によって穴をふさぐ治療をしないといけない。
肺動脈弁狭窄など弁に問題がある疾患は、カテーテルに取りつけたバルーンを膨らませて狭くなっている弁を広げる治療や、人工の弁を入れる治療などを行う。
大動脈と肺動脈を入れ替える動脈スイッチ術、血管のバイパス手術、薬物療法などさまざまな方法がある。
先天性心疾患には多くの種類があり、重症度に関しても治療の必要がないもの、ゆくゆくの自然治癒が見込めるもの、早急に治療をしなければならないもの、難治性のものと幅広く、そのため、それぞれの疾患や重症度に合わせて適切な方法を選択する必要がある。
だから、複雑先天性心疾患はいくつもの疾患が重なり、判断が難しい。
子供心臓は成長と共に大きくから心臓の成長を阻害しないよう縫合しないといけなくて、一度メスを入れた場所は癒着が起きて、出血も多くなる事から、再手術ほど危険率が高くなる。
『心臓を短時間に造りかえ、正常な型にして、2度と手術しないですむようにする』
お父さんがそう私にいってた。
オペ室に入りら全身麻酔をし、緊急帝王切開が始まった。
柳瀬心臓外科立ち合いでベテランの坂本部長がメスを握り、赤ちゃんを私の胎内からとりだす。
機械回しは柳瀬看護部長が連れてきてくれた私が尊敬してる久保先輩が引き受けてくれた。
麻酔で眠りつく私に優しく「大丈夫、任せて」と声をかけてくれて、安心して眠りにつく事ができた。
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