LOVE TRIANGLE

鳴宮鶉子

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優秀な他の男にときめく

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品川駅から徒歩で5分の所にあるソミーシティーと呼ばれてる地上20階、塔屋2階、地下2階の本社オフィスビルの15階から19階に代表的な業種の電気機器の開発販売メーカーのソミーがあり、4月1日《いっぴ》から私は15階の新規事業部門で、エンタテインメントロボットの開発事業に異動になった。

「ロボット開発部門は子会社化させたんじゃないの?」

「新規技術開発自体はソミーが主体で動く。商品化の開発設計する会社として子会社化させた」

朔兄がAIロボット開発に関して指揮をとるらしく、私はそのプログラムを組む仕事を任される事になった。

ソミーのAI技術とロボット開発は世界的にも高評価をされてる。
産業用ロボット、医療・介護用ロボット、災害用ロボット、家庭用ロボットなどを開発していて、現在、かなり受注を受けてる。
その対応で大貴は猫の手を借りたいぐらい忙しいらしく、同じオフィスビル内で働いていても全く会う事がない。
メールや電話をマメにくれる人ではないから、最長2週間連絡がなかった事がある。
用事もなく連絡を入れるのも気が引け、私と大貴の間に距離ができた。

アフターファイブにディナーに誘われたり、週末におうちデートしようと連絡がきても、3回誘われたら1回だけ行き、それ以外は先約や仕事を理由に断った。

会っても仕事優先で雑に扱われるから鬱屈に感じるのと、それだけでなく女の感で大貴に私以外の誰かがいるという予感がするから。

私立中高一貫女子校時代の友人達に誘われ女子会に参加した時に、大貴との関係について相談をしたら、

『仕事が忙しいからって、ホテルでご飯食べて、部屋で一発抜いたらすぐに帰るってありえない!!しかも、いつもそうなんでしょ。ソミーの子会社の社長になりたくて結奈といるんじゃない。仕事しか興味ないようにみえて、他所に女を作ってたりして!!』

友人達も私と同意見で、大貴に対する好きだという気持ちがこの時からじわじわと薄れていった。

「結奈、俺のマサチューセッツ工科大学時代の友人、桐嶋遥翔。卒業後にAppleとGoogleで一緒に働いてた」

朔兄がアメリカから呼び寄せたマサチューセッツ工科大学を首席で卒業した頭脳明晰な人工知能開発のスペシャリストは日本人だった。

180cm以上ありそうな身長に引き締まった身体。
目鼻が整ってる綺麗な顔立ちに銀フレームの眼鏡。
そして、仕立てのいい三つボタンのスーツをカッコよく着こなしてる姿から仕事ができるオーラが漂ってきて、知的なエリート感が滲み出ている。


『プリえもん開発のために遥翔を呼び寄せた。ソミーの新規事業開発を任せられるのは遥翔しかいない。遥翔、プリえもんが完成したら次は不思議道具を頼むぞ!!』

桐嶋さんの両肩に手を置き、朔兄が無理難題を押しつける。

小学校卒業後にアメリカへ渡り、ギフデット教育を受けた桐嶋さん。
しかも、4年飛び級をしてマサチューセッツ工科大学に入学したそうで、かなり優秀な人だと知る。

でも、食べ物を燃料に動く感情があるロボットやドコデモドアにタイムマシーンを開発するのはさすがに無理だと思う。


手始めに自立学習機能付きの10ヵ国語を瞬時に判断して受け答えができる観光案内アンドロイドと、買い物カゴの商品をスキャンし売り場案内ができるレジスタッフアンドロイド、そして癌探知機能付きの医療手術ロボットの開発に着手する。

人工知能のスペシャリストの桐嶋さんが組むプログラムは“強いAIの水準”で、感情があるような錯覚を感じるぐらい高度な物だった。

ターミーネーターやプリえもんのような映画やアニメなどで出てくるイメージのAIは、本当に人間のように考えて感情も持っている。このようなAIを“強いAI”と表現されていて、桐嶋さんが手がけたAIは認知能力もっと言うと精神性を備えるプログラムでまさにそれで私は鳥肌がたった。

ニューラルネットワークと呼ばれる脳の特性を計算上のシミュレーションによって表現する数学モデルで、機械学習や深層学習といった仕組みによって人の手を介さずに人工知能が自ら情報をもとに学習していく事を可能にし、大量のデータを読み込ませて、そのデータからパターン認識させ、データにラベリングをして、あたかも人間が思考しているような形で見事なぐらいにコンピューターに思考をさせた。

「遥翔、さすがだ!!プリえもんが完成する未来が見えてきた!!」

「朔弥さん、……プリンを燃料にするのは無理ですよ。アブえもんでオイルを飲んで動くアンドロイドロボットは可能だとは思いますが」

「油はつまらないな。サケえもんで酒を飲んで動くのがいいな。テキーラを飲んだらスーパーマンみたいに空を飛ぶ事ができるとかできたら面白いな」

「……無理です」

朔兄のアホ発言に桐嶋さんと一緒に冷たい眼差しを向ける。
桐嶋さんは人に限りなく近いアンドロイドロボットを開発する気はする。

新技術研究所AIロボット開発部に、桐嶋さんは早朝から深夜までいる。
黙々と無表情でパソコンのキーボードを叩いている姿は、整いすぎた容姿なのもありアンドロイドロボットに思えてしまう。

ーー そんな桐嶋さんに惹かれていく私がいた。


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