君から逃げる事を赦して下さい

鳴宮鶉子

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GWは東京に帰らなかった。

大学を卒業して京都に出てきて2ヶ月しか経ってなく、6月28日放映開始のジプシー映画の試写会に出席するために、21、22日に東京に行かないといけないから。

それに、1人に慣れたかった。
ジプシーと角川書房の私の担当をしてるスタッフさんが、晴翔がわたしの居場所を聞いてきたと言ってた。
口留めしてたから、言わないでいて貰えた。

でも、ジプシーの試写会で、たぶん、晴翔に会う。
主題歌と挿入歌を晴翔が歌ってるから。
主題歌は晴翔と拓海がコラボで歌ってる。

試写会挨拶に呼ばれてるかはわからないけど、土曜日の夜の試写会はすぐにネットでトピックに上がる。
日曜日の早朝に京都に帰るつもりだったけれど、取材が入ってしまった。
ジプシーで小説を映画化して貰う事は大変名誉なことだから、ジプシー関係の仕事のみ、わたしは取材を受けてる。

自宅マンションの部屋で、ノートパソコンに向かって新作の小説を描こうとしても、手が止まる。

京都に出てきて、私は小説のストーリーが頭の中で流れず、スランプに陥っていた。
6月の終わりまでに1つ描きあげないといけないのに、手付かず状態。
大学時代に描きためた作品があるから、最悪、それを角川書房に提出すればいい。

ため息をついて、パソコンをシャットダウンさせた。




京都での1人の生活が寂しくて、5月の半ば、わたしは姫うずらの有精卵を取り寄せ、孵化させて飼いたいと思った。

すべて孵ったらお世話が大変だから、2つだけ取り寄せ、ブラジャーの中に入れて大切に温めた。

17日目に、左側に入れていた卵から、ひよこが孵った。

正直、私の体温で孵化するとは思ってなかった。
まさかの孵化で嬉しかった。

すぐに、保温ランプをセットし、孵化した子のお家を作った。

孵化したひよこは自力で立ち上がり、教えて貰ってないのに、1人で餌を食べ、水を飲んだ。たくましいなと思った。

その子に【ひより】と名付けた。
わたしをママと思い、懐いてくれた。

ひよりは、シルバーカラーのおっとりした可愛い女の子になった。

ひよりが産まれて来てくれたから、私は1人じゃ無くなった。


ひよりを連れて、6月21日に東京に帰ってきた。
ひとまず、ひよりを実家に預けに行き、ジプシーの事務所へ向かう。

6月の下旬、試写会挨拶にはクリームカラーのワンピースと白いニュールを合わせた。
予約していた美容院で髪をセットして貰って、ジプシーの事務所に着いたのが15時過ぎ。
試写会は18時から銀座のシネマスイッチで行われる。
挨拶は監督の宮澤監督と主役の声優を務めた俳優の2人だけでほっとした。

シネマスイッチに到着した。

初めに映画の試写をし、その後、挨拶をする運びで、関係者席で映画を観た。

映画のストーリーは、中学3年生の夏休みに、幼なじみの男の子と女の子がぶつかった衝撃で身体が入れ替わってしまうというありがちな内容。
偏差値が高い高校を目指してた女の子が入試直前まで元の身体にもどれなかったら、偏差値どん底の男の子が自分の代わりに入試に挑む事になるから合格は無理だとなげき、それを聞いて腹を立てた男の子が絶対に合格させてみせると意気込み、女の子に夏休みの間、みっちり勉強を教えて貰って、夏休み後の模試で見事合格判定を勝ち取る。
合格判定がとれて喜んで、2人で手を取り合って跳ねてたらバランスを崩し、おでこ同士をぶつけ、失神し、目覚めたら元の身体に戻った。
女の子と身体が入れ替わった事で賢くなった男の子は女の子と同じ高校を受ける。
2人とも合格し、それをきっかけに男の子が女の子に告白して付き合う事になるというハッピーエンドな話。

大学の卒論と同時に描きあげていて、大学入試の時の事を思い出して描いた。

晴翔と拓海は高2の時点でT大学の合否判定模試で合格判定出てたけど、わたしは出てなくて、2人がわたしに勉強を教えてくれた事を。

主題歌と挿入歌で、2人の歌声を久しぶりに聴き、涙がこぼれそうなところを堪え、映画が終わった後の舞台挨拶に立つ。

小説の作者だから、一言二言聞かれただけで終わった。

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