結婚目前で婚約破棄された私を救ってくれたのは、競合会社の御曹司でした

鳴宮鶉子

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奥さんの元婚約者の境遇 side 優司

平日は視察で灯里は全国各地を渡り歩いている。
東京の自宅に戻ってくるのは金曜日の夜。
接待という仕事をなんとか交わし、なるべく早く帰宅するよう努めている。

21時過ぎにLINE通知が鳴った。
札幌に新規建設するラグジュアリーホテルのデザインとフランチャイズオーナー募集の件で札幌支部の支店長とzoomで話していたから、すぐに中身を確認する事ができなかった。

「……元婚約者と居酒屋!?」

パソコンの電源を落とし、社長室を飛び出す。
焼け木杭に火がついたで浮気をされたら溜まったもんじゃない。
5分前にメッセージが送られてきたから、まださほど飲んでないはず。
酔い潰れた灯里を口説き落として即日に結婚に持ち込んだのもあり、酔った弾みに浮気とかされかねないから、気が気でない。

赤坂のオフィスから出て、タクシーで八重洲北口に向かう。
混雑していて15分もかかってしまった。

コロン禍なのもあり、全席個室。
灯里に“迎えにきた”とLINEメッセージを送るも既読にならず、店員に席までの案内をお願いするも、「藤坂様はいらっしゃいませんが?」と言われ、慌てる。


「優司さん、わざわざ、ごめんなさい!!」

灯里が個室から出てきて、俺に駆け寄ってきた。

「すみません、21番の部屋の松田ですが、1人追加でお願いします。後、飲み放題3人に変更で、彩コース3人、お願いします!!」

酷い扱いを受けてきたとはいえ、家族と元婚約者と同族経営の会社の事だから、気になるのだろう。

「……なんかね、陥れられて妊娠させたみたいなんだけど、妊婦でウェディングドレスは着れないと勝手に堕胎され、結婚式は挙げたけど籍は入れず破談にして、ツーリストインも退職したらしいの」

個室に入る前に灯里から聞かされた元婚約者の現状が悲惨過ぎ、理解についていけなかった。
俺が個室に入ると松田潤也は頭を下げた。

「初めまして、松田潤也です」

「初めまして、永峰優司です」

灯里の元婚約者との対面は、お互い気まずい。
松田潤也は灯里にまだ気がある。
灯里を取り戻すために接触してきたのかもしれない。

「ツーリストインを退職したのでルポグループで雇ってくれないですか?」

「私のせいで潤也さんの人生を台無しにしてしまった。潤也さんが仕事できる人なのは保証する。だから、ルポグループで雇ってくれませんか!!」

経済学部国内最高峰の私立大学卒で仕事に関しても実績がある人だから、どこにでも雇って貰えそうなのに、ルポグループ就職したいと申し出てこられ、困る。
灯里の手前断る事はできず、スカウトで雇う事を決めた。
支社送りにしたいが、灯里から反感買いそうだからできない。

灯里と松田潤也を接触させたくない。 
灯里を失いそうで不安に駆られた。

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