巫女嫁取り争奪戦

鳴宮鶉子

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贅沢な恋人候補達

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『美月ちゃん、三谷財閥の隼人氏と安井財閥の翔真氏に誘われたら会って食事ぐらい行きなよ!!』

篤志宮司から電話がかかってきて、いきなり紹介された御曹司とのその後について追求された。

『日本を背負う財閥の御曹司と結婚しなさい!!神のために尽くした美月ちゃんと結婚した男は必ず成功を掴む。神通力を持って産まれたんだから、世のため人のためになることをしないと!!』

篤志宮司は財閥の御曹司の誰かと私を結婚させたいようで、御曹司からの誘いを無碍にする度に電話がかかってきて説教をされるから、御曹司に会って直接お断りする事にした。

多忙極まりない財閥の御曹司達。
2週間に1度誘いがくるかこないかで、本気で私を口説いてきてる気はしなかった。

三谷財閥の三谷隼人さんからの誘いを受け、銀座にあるプリンセスホテルの最上階にあるミシュラン星3のフレンチレストランへ連れて行って貰った。

「美月さんとやっと2人でお会いできて嬉しいです」
シャトー・ラトゥールで目を合わせ乾杯をし、口に含む。

財閥の御曹司なだけあり、最高級のワインをボトルでオーダーし、コース料理も特別に作ったものらしく見た目美しく味も最高だった。

「……三谷さん、申し訳ないですが結婚を視野に入れたお付き合いに関してお断りします」

最後のデザートを食べ終えたタイミングで、三谷隼人さんに伝えた。

食事中終始、三谷隼人さんがにこやかに話を続けてた。
私がシンガーソングライターとして出した曲や手がけたミステリー小説についての感想などをひたすら聞かされた。
悪い人ではない。でも、付き合う気にはなれない。

「……3月12日まではチャンスをくれ、友人として付き合って欲しい」
真剣な表情で真っ直ぐ見られた。

今まで男性から告白をされた事はなく、しかも眉目秀麗な大人の雰囲気が漂う男からの申し出を断る事ができない。

「……友達としてなら……」
押しに弱く、多忙な三谷財閥の御曹司で三谷住友フィナンシャルグループの専務執行役をしている三谷隼人さんは海外出張も多く、2週間に1度のペースで食事に行く約束を取り付け、黒塗りのベンツで自宅マンションまで送って貰った。

三井隼人さんとお会いした次の週の土曜日の夜に、安井財閥の安井翔真さんと品川プリンセスホテルでランチをする事になった。

「佐伯美月さん、俺の事、覚えてる?」
待ち合わせをした日本料理の店で安井翔真さんに声をかけられ、じっと翔真さんの顔を見ていて思い出した。

「……真宮くん!!」
「そう、親父の会社が倒産して親父とお袋が自殺した後、俺、お袋の実家に引き取られたんだ」

安井翔真さんは私が最後に付き合おうとした人で1番災難に巻き込まれた人。
頭が良くて、高校2年生の時に一緒に生徒会役員をし、生徒会長を務めた翔真さんに私は恋をしてしまった。

この気持ちは伝えたらいけないと思っていたけど、抑える事ができず、付き合ってはないけど常に一緒にいて、それ故に悲劇が起きてしまった……。

翔真さんのお父さんが起業して経営していたIT企業が倒産し、両親が亡くなり、母方の実家に引き取られたという噂は聞いてた。

高校を休みがちになりながらもコロンビア大学の経営学部に進学した翔真さん。
 まさか安田財閥の血筋でグループCEO候補になってるとは思わなかった。

「……佐伯さんにずっと会いたかった。俺、佐伯さんの事が中学校に入ってすぐの頃からずっと好きだった」

中高一貫校時代の事を思い出す。
クールで真面目で勉強もスポーツもできた翔真さん。
端正な美しい顔立ちに知的な綺麗な切れ長の目が印象的だった。

私も入学式の日に翔真さんを一目見て惹かれてた。

でも、特別選抜理系コースの翔真さんとはクラスが違うから接点がなく、生徒会に入るまでは話しかける事がなかった。
生徒会活動と早朝と放課後に一緒に勉強をするようになり、距離が縮まり、私が翔真さんの事を好きになってしまったから、彼は災に苛まれ、不幸のドン底に落ちてしまった。

「佐伯さん、再会だから、昔のよしみで友人としてでいいから、時々会ってくれないか?婚約者の候補として佐伯さんと再会できてよかった」

「……私でよければ、お手隙な時に誘って下さい」

私が翔真さんを奈落の底に落とした責任がある。
彼は1人で底から這い上がったけど、25歳過ぎたら災から御加護にかわるなら、翔真さんを幸せにしたいと私は思った。



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