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新生児外科医と胚培養士
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「……あの条件を受け入れる女医っているのかな?」
「将来的に安達クリニックの院長になれるのはいいけど、ビジネスパートナーとして結婚して子供は体外受精で1人でしょ、私は無理」
「なんかね、久保先生と吉川先生、上野先生が安達助教に自分を好きになって貰う前提で交際してるみたいよ」
聞きたくなくても耳に入ってくる将生くんの婚活話。
ファーストコンタクトは安達教授。
大学病院に勤める産婦人科の医科診療医と専攻医、ほぼ全員とお見合いしたらしい。
将生くん自体は結婚する気がないと思われていて、王子を落とした女医が花嫁になれる的な婚活ゲームが産婦人科女医の中で繰り広げられている。
「倉沢先生、ランチ、ご一緒しませんか?」
深夜に救急母体搬送で病院から呼び出され、それから12時過ぎまで緊急帝王切開、新生児外科手術を5度繰り返す。
12時半過ぎに入院している患者さんの回診で産婦人科病棟にきたら、産婦人科医科診療医の久保先生と上野先生に捕まってしまった。
「病棟横のカンファレンスルームで一緒に食べません?安達助教にも声をかけてます」
「すみません。緊急帝王切開でいつ呼び出されるかわからないので、患者さんの回診をします」
「えっ、お昼食べないの!?15分ぐらいだよ。私、サンドイッチとおにぎらずを作ってきたの。たくさん作ったから、倉沢先生、いかがですか?」
カゴビスケットを見せられ、困る。
ランチタイムに手作り弁当バトルが繰り広げられてるらしい。
「愛花先生、今から昨夜出産された患者さんのところに、新生児の術後の経過を説明しにいくから着いてきて!!」
産科の執刀医は私だけと、新生児の執刀医は有馬先生。
次の日に1度は術後説明を兼ねて回診しないといけない。
「安達のやつ、婚活は勤務外でやれっていうの。胚培養が業務だから急患対応しないでいいかもしれないけど、こっちは休む暇なしでオペに追われてるって」
1度も回診に伺ってない患者さんのところに足を運び、赤ちゃんの状態を説明していく。
「……はい、すぐに向かいます。愛花先生、救急母体搬送きた。昼メシ、抜きだな」
産婦人科医院からの救急搬送。
超音波検査で見落とされたトリソミーもしくは疾患遺伝子のある胎児が母体搬送されてくる。
「首のむくみと心臓の逆流、21トリソミーだな。エコーで判断できる事なのに今まで見落としてたのか……」
母体搬送された胎児は妊娠23週5日推定体重315gの男の子。
「心内膜床欠損に、先天性横隔膜ヘルニア、帝王切開後に緊急手術必要だな」
20~23週で肺以外の内臓器官はほぼ完成するが、トリソミー疾患のある子は不完全な事が多い。
呼吸確保した後、ハイブリッド手術台でX線透視装置を使い、新生児の内臓部分を確認し、開腹手術を行う。
「やれるだけの事はやった。仕方がない」
在胎24週未満の生存率は40%。
新生児手術の成績が国内トップのこの病院でも65%しかない。
胎内で育んでいた子供を亡くした母親が泣き叫び嘆く姿を見るのがつらいから、私は新生児外科医にはなりたくなかった。
「将来的に安達クリニックの院長になれるのはいいけど、ビジネスパートナーとして結婚して子供は体外受精で1人でしょ、私は無理」
「なんかね、久保先生と吉川先生、上野先生が安達助教に自分を好きになって貰う前提で交際してるみたいよ」
聞きたくなくても耳に入ってくる将生くんの婚活話。
ファーストコンタクトは安達教授。
大学病院に勤める産婦人科の医科診療医と専攻医、ほぼ全員とお見合いしたらしい。
将生くん自体は結婚する気がないと思われていて、王子を落とした女医が花嫁になれる的な婚活ゲームが産婦人科女医の中で繰り広げられている。
「倉沢先生、ランチ、ご一緒しませんか?」
深夜に救急母体搬送で病院から呼び出され、それから12時過ぎまで緊急帝王切開、新生児外科手術を5度繰り返す。
12時半過ぎに入院している患者さんの回診で産婦人科病棟にきたら、産婦人科医科診療医の久保先生と上野先生に捕まってしまった。
「病棟横のカンファレンスルームで一緒に食べません?安達助教にも声をかけてます」
「すみません。緊急帝王切開でいつ呼び出されるかわからないので、患者さんの回診をします」
「えっ、お昼食べないの!?15分ぐらいだよ。私、サンドイッチとおにぎらずを作ってきたの。たくさん作ったから、倉沢先生、いかがですか?」
カゴビスケットを見せられ、困る。
ランチタイムに手作り弁当バトルが繰り広げられてるらしい。
「愛花先生、今から昨夜出産された患者さんのところに、新生児の術後の経過を説明しにいくから着いてきて!!」
産科の執刀医は私だけと、新生児の執刀医は有馬先生。
次の日に1度は術後説明を兼ねて回診しないといけない。
「安達のやつ、婚活は勤務外でやれっていうの。胚培養が業務だから急患対応しないでいいかもしれないけど、こっちは休む暇なしでオペに追われてるって」
1度も回診に伺ってない患者さんのところに足を運び、赤ちゃんの状態を説明していく。
「……はい、すぐに向かいます。愛花先生、救急母体搬送きた。昼メシ、抜きだな」
産婦人科医院からの救急搬送。
超音波検査で見落とされたトリソミーもしくは疾患遺伝子のある胎児が母体搬送されてくる。
「首のむくみと心臓の逆流、21トリソミーだな。エコーで判断できる事なのに今まで見落としてたのか……」
母体搬送された胎児は妊娠23週5日推定体重315gの男の子。
「心内膜床欠損に、先天性横隔膜ヘルニア、帝王切開後に緊急手術必要だな」
20~23週で肺以外の内臓器官はほぼ完成するが、トリソミー疾患のある子は不完全な事が多い。
呼吸確保した後、ハイブリッド手術台でX線透視装置を使い、新生児の内臓部分を確認し、開腹手術を行う。
「やれるだけの事はやった。仕方がない」
在胎24週未満の生存率は40%。
新生児手術の成績が国内トップのこの病院でも65%しかない。
胎内で育んでいた子供を亡くした母親が泣き叫び嘆く姿を見るのがつらいから、私は新生児外科医にはなりたくなかった。
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