凄腕ドクターは私との子供をご所望です

鳴宮鶉子

文字の大きさ
13 / 28

新生児外科医と胚培養士

しおりを挟む
「……あの条件を受け入れる女医っているのかな?」

「将来的に安達クリニックの院長になれるのはいいけど、ビジネスパートナーとして結婚して子供は体外受精で1人でしょ、私は無理」

「なんかね、久保先生と吉川先生、上野先生が安達助教に自分を好きになって貰う前提で交際してるみたいよ」

聞きたくなくても耳に入ってくる将生くんの婚活話。

ファーストコンタクトは安達教授。
大学病院に勤める産婦人科の医科診療医と専攻医、ほぼ全員とお見合いしたらしい。
将生くん自体は結婚する気がないと思われていて、王子を落とした女医が花嫁になれる的な婚活ゲームが産婦人科女医の中で繰り広げられている。

「倉沢先生、ランチ、ご一緒しませんか?」

深夜に救急母体搬送で病院から呼び出され、それから12時過ぎまで緊急帝王切開、新生児外科手術を5度繰り返す。
12時半過ぎに入院している患者さんの回診で産婦人科病棟にきたら、産婦人科医科診療医の久保先生と上野先生に捕まってしまった。

「病棟横のカンファレンスルームで一緒に食べません?安達助教にも声をかけてます」

「すみません。緊急帝王切開でいつ呼び出されるかわからないので、患者さんの回診をします」

「えっ、お昼食べないの!?15分ぐらいだよ。私、サンドイッチとおにぎらずを作ってきたの。たくさん作ったから、倉沢先生、いかがですか?」

カゴビスケットを見せられ、困る。
ランチタイムに手作り弁当バトルが繰り広げられてるらしい。


「愛花先生、今から昨夜出産された患者さんのところに、新生児の術後の経過を説明しにいくから着いてきて!!」

産科の執刀医は私だけと、新生児の執刀医は有馬先生。
次の日に1度は術後説明を兼ねて回診しないといけない。

「安達のやつ、婚活は勤務外でやれっていうの。胚培養が業務だから急患対応しないでいいかもしれないけど、こっちは休む暇なしでオペに追われてるって」

1度も回診に伺ってない患者さんのところに足を運び、赤ちゃんの状態を説明していく。

「……はい、すぐに向かいます。愛花先生、救急母体搬送きた。昼メシ、抜きだな」

産婦人科医院からの救急搬送。
超音波検査で見落とされたトリソミーもしくは疾患遺伝子のある胎児が母体搬送されてくる。

「首のむくみと心臓の逆流、21トリソミーだな。エコーで判断できる事なのに今まで見落としてたのか……」

母体搬送された胎児は妊娠23週5日推定体重315gの男の子。

「心内膜床欠損に、先天性横隔膜ヘルニア、帝王切開後に緊急手術必要だな」

20~23週で肺以外の内臓器官はほぼ完成するが、トリソミー疾患のある子は不完全な事が多い。

呼吸確保した後、ハイブリッド手術台でX線透視装置を使い、新生児の内臓部分を確認し、開腹手術を行う。

「やれるだけの事はやった。仕方がない」

在胎24週未満の生存率は40%。
新生児手術の成績が国内トップのこの病院でも65%しかない。

胎内で育んでいた子供を亡くした母親が泣き叫び嘆く姿を見るのがつらいから、私は新生児外科医にはなりたくなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1つ屋根の下で大嫌いなあいつとの同棲生活

鳴宮鶉子
恋愛
結婚適齢期なのに恋人がいないからと大嫌いなあいつとお見合いさそられ、しかも同棲生活をさせられる事になり……。

社畜、やり手CEOから溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
社畜、やり手CEOから溺愛されちゃいました

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

敏腕御曹司の愛が重た過ぎる件

鳴宮鶉子
恋愛
敏腕御曹司の愛が重た過ぎる件

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

手のかかる社長から狂愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
手のかかる社長から狂愛されちゃいました

旦那さま、誘惑させていただきます!

永久(時永)めぐる
恋愛
オタクで、恋愛には縁のない生活を送っていた佐久間桃子は、弁護士の久瀬厳と見合いの末、めでたく結婚した。 顔良し(強面だけれど)、スタイル良し、性格良し。非の打ちどころがない完璧な旦那様との新婚生活は楽しくて幸せいっぱい。 しかし、ひとつだけ気がかりがあった。 悩んだ彼女は大胆な計画を立てたけれど……? ※書籍化のため、2016年9月17日をもちまして本編及び一部番外編を引き下げました。 ※書籍化にあたりタイトルを少々変更いたしました。

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

処理中です...