同居人以上恋人未満〜そんな2人にコウノトリがやってきた!!〜

鳴宮鶉子

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眠気と胃もたれで気づく

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わたしが大翔とこんな関係になったきっかけは確かわたしが担当していた小児癌で長く入院していた3歳の女の子が亡くなくなった時だった。
とても懐いてくれていて向日葵のような笑顔を毎日見せてくれた子の命を救う事ができなくて、わたしはかなり落ち込んでしまった。

ずっと泣き続けて眠れないわたしを気づかい、大翔がわたしの部屋に来てわたしを抱きしめて添い寝をしてくれた。

その時にわたしから大翔に『抱いて』とキスもした事がない処女なのに迫って、大翔がわたしの気持ちに応える形でわたしと大翔は初めて身体を交わらせた。

わたしに懐いてくれてた子の死に直面した哀しさを拭うために、大翔と子供を作る行為で現実逃避をしようとしてた。

それは今も同じで、わたしが担当している患者さんが亡くなった日は、大翔は救急センターのバイトを休んでくれてわたしの側にいてわたしを優しく抱いてくれた。

わたしと大翔は付き合ってない。
わたしも大翔もお互い『好き』や『愛してる』という言葉を決して言わない。

大翔はわたしのことをどう思っているかはわからないけれど、わたしは大翔の事を愛してる。


1度やってしまうと一緒に住んでいるのもあり、ずるずると気づいたら毎日のように大翔と身体を交わらせてた。

ご飯を食べる感覚でわたしを当たり前のように抱く大翔。

「凛花は俺の三大欲求を全て満たしてくれる。美味しいご飯を作ってくれて、こうやって抱かせてくれて、家でゆっくり休ませてくれる。良い女だよ」

救急センターに行く前のカップラーメンを作るみたいな、ただ大翔の欲情を発散させる行為にわたしは不満を感じてた。

大翔が循環器外科医で心臓外科の専門医になるために、救急センターで救急医のバイトを始めたのが2年前の事。
救急搬送される病状の大半が脳卒中と心臓発作で、大翔は心臓のオペの経験を積む目的で救急センターでバイトをするようになった。

救急センターでバイトをするようになり、家で2人でゆっくり過ごす時間がなくなり、情事も手を抜かれてた。

そんなある日……2ヶ月ほど生理がきてない事に気づく。
そして、急に匂いに敏感になり、料理を作ろうとしたら気持ち悪くなり、胃がムカムカして食事も受け付けなくなった。

大翔は毎回必ず避妊を怠らなかった。
でもゴムをつけたからと100パーセント妊娠しないとは言い切れず、カップラーメンセックスなら妊娠するリスクは無いかもしれないけれど、月に2~3回ほど、週末にわたしへのご機嫌とりのつもりか大翔が丁寧にじっくり時間をかけて身体を繋げる行為を繰り返す事があり、もしかしたらその時にできてしまったのかもとわたしは頭によぎってしまった。


マンションの1階にある食品スーパーの中にある薬局で妊娠検査薬を購入をしてきて検査をしてみる事にした……。

妊娠検査薬を箱から出し説明書に目を通し、袋から検査薬を取り出して、トイレに駆け込んだ。

そして、妊娠しているかどうか妊娠検査薬の判定の窓と終了の窓をわたしはじっと見つめた。


ーーーものの30秒で終了の窓に縦線が出る前に判定の窓に縦線が出た,

お腹の中に赤ちゃんがいる事がわかり、思わずわたしはお腹に手をやった。

医師としてまだ修行中でこのタイミングで妊娠して出産をしたら医師としてのキャリアを築く事が難しくなる。

それでもわたしは大翔の子を妊娠して嬉しいと思い、産み育てたいと思った。

大翔は午後9時から午前2時まで救急センターに居て、午前2時半に帰ってきて速攻で布団の中に入って眠る。
そして、朝は8時に起きて8時半までに出勤してる。

睡眠時間が限られてる大翔に、わたしが妊娠した事をいつ伝えようかとわたしは悩んだ。


多忙な大翔とゆっくり話せる時間は無い。
ご飯を食べるか寝るかやるかの三大欲求を満たすためだけに家に帰ってきてるだけで、今の大翔にとっては睡眠時間確保が重要。

妊娠しているとわかったせいなのか悪阻の症状が強く出てしまい、料理を作る時のもわっとしたにおいが吐き気を起こさせた。
とはいえ、マスクをしてなんとかいつも通りに食事を準備する。

ほうれん草の白和え、瓜と油揚げの煮物、鶏と根菜の煮物、きんぴらごぼう、ひじきの煮物、ポテトサラダ、イカと大根の煮物。

週末に作り置きする総菜。

週に4~5回救急センターにバイトに行く大翔。
救急要請もあるから週6で出勤してる。
シフトが組まれてる物はカレンダーに書き込んで貰ってて、今日は14時から22時までの予定で夜間の心臓発作による救急搬送で早朝に帰ってくる事が予想つく。
お昼ご飯はうどんと天ぷらとほうれん草のおひたしにし、大翔の夜ご飯用のお弁当に鶏の唐揚げと卵焼きを作った。

11時過ぎに起きてきた大翔。昨日も午前4時過ぎに帰ってきて、患者が来ない時間は仮眠できるみたいだけど、心臓関係の急患は多く、毎日3~5人緊急オペをしてるらしい。

起きてきてリビングのソファーに座ってぼんやりしてる大翔にコーヒーと脳の血糖値を上げるために小さなお菓子をを入れて持って行き、昼ごはんを用意する事にした。


海老と穴子と蓮根と茄子の天ぷらを揚げ、温かいうどん、そして鯛飯をお茶碗によそい大翔の席に置く。
わたしは冷たいうどんを用意し、リビングのソファーでいつのまにか眠ってしまった大翔を起こして昼御飯にする事にした。

「凛花、体調が悪いの?」

冷たいうどんでも喉に通らず、食が進まないわたしを大翔が心配そうに見てくる。

「……あのね、わたし、赤ちゃんができたみたいなの」

大翔がわたしの体調を気遣って声をかけてくれたタイミングに、赤ちゃんができた事を伝えた。

大翔を見ると驚いて固まっていた。 

大翔的に気をつけてたのにわたしが妊娠してしまって、どうしようと困ってるんだと思う。

「大翔、わたしは産みたいけど、大翔とわたしは恋人同士ではないもんね。責任をとってとは言わない。だから、産んでいい?」

大翔が何も言わないのが不安になり、わたしは泣きそうになる。
大翔的にわたしが妊娠した事は不本意なんだと思う。
大翔から感謝の言葉はかけて貰っても、好きだとか愛してるとかを言われた事は1度もない。

「堕ろせなんて言えない。ごめん、気をつけてたのに妊娠させてしまった。
凛花と俺は同居人だもんな。
俺、心臓外科医として修行の身で多忙だから家事や食事面どころか凛花が許してくれるからって抱いてた。
凛花がこんな俺でも、夫としてお腹の子の父親として受け入れてくれるなら結婚して欲しい」

大翔からの赤ちゃんができたから仕方がないから結婚しよう的なプロポーズ……。

大翔が救急センターでバイトを始めてから、助け合うために同居しているはずなのが、わたしはいつのまにか大翔の家政婦で情婦になってた。

大翔にとってわたしは都合がいい女だったのかもしれない。

「……ごめん。わたし、1人でこの子を産んで育てる。だから、この同居生活を解消させて欲しい。
大翔は天才心臓外科医って言われて見た目もカッコいいから、看護師や女医から人気だからすぐに一緒に住んで大翔のサポートをしてくれる人が見つかるよ」

大翔が昼御飯を全て食べ終えてたから、大翔と向き合って座っているのが苦痛だから食器を片付ける事にした。

大翔も14時からバイトがあるからシャワーを浴びて出勤準備し、家から出て行った。

いつも通り、夜ご飯用のお弁当と水筒をキッチンの机の上に置いてたら持って行ってた。

大翔が出て行ってからわたしは1階のスーパーにダンボールを買いに行き、衣類と私物をダンボールに詰めて、黒猫宅急便を呼び、実家に荷物を送った。

実家から病院まではJRで20分かかるけれど、大翔との同居を早々に解消したかった。
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