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今さらそんな事を言われても
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遥希くんの大動脈縮窄症のオペ前の検査で、事前検査をしデータをまとめる。
「大丈夫。眠ってる間に終わってるから」
オペが近くなり、遥希くんが不安がって機嫌を損ね、だだをこねる事が多くなり、検査をしたくないと言って泣き出し、その度にわたしは抱きしめて落ちつかせた。
遥希くんの心臓は大動脈縮窄症だけでなく、心房中隔欠損症も併発していてかなり難しいオペになると桐島教授が言っていた。
遥希くんの小さな心臓にメスを入れるのにベテランの心臓専門の外科医も怖気付き、救急医として経験を積んでいるからと若手の大翔が抜擢されたと話してた。
小児外科医も遥希くんの心臓のオペを成功させる自信がなく、循環器外科に依頼した。
遥希くんの手術がそんなに難しいオペだとは思ってなかった。
遥希くんのオペの前の日、病院帰りに大翔のマンションに寄った。
勝手に入って良いか悩んだけれど鍵を開けた。
大翔が他の女性と同居を始めてたら気まずいなと思いつつ家の中に入った。
1ヶ月半ぶりに入る3年半暮らしたマンション。
かなり埃っぽく、リビングのドアを開けたらゴミ屋敷化していた。
ビニール袋のゴミ袋にカップラーメンのカップと割り箸が1週間分以上溜まってた。
そして、カッターシャツとスーツが紙袋の中に投げ込まれ、洗濯機の中に下着と靴下が大量に入っていた。
洗わずに新しい物を購入してるようだった……。
仕方がないから洗濯機を回し、全部屋のゴミを回収し1階のゴミ捨て場に捨て、マンション内にある21時まで開いてるクリーニングに出しに行った。
そして、部屋に戻り、掃除機をかけた。
大翔が帰ってこないから、1階にある食品スーパーに行き、大翔の好物の肉じゃがとブリの照り焼き、それと豆腐とわかめの味噌汁とほうれん草のお浸しの材料を購入し、部屋に戻り調理にかかった。
22時過ぎに玄関が開き、大翔がかえってきた。
リビングのドアを開け、わたしがキッチンの食卓テーブルに料理を並べてるのを見て大翔は驚いてた。
「……勝手に入ってごめん。忘れ物を取りにきたの。そしたら家の中が荒れ果てて、大翔、カップラーメン生活してるみたいだったから、明日の遥希くんの手術中に倒れたりされたら嫌だからちゃんとしたご飯作った。食べて」
味噌汁とご飯をよそい、大翔の席に置く。大翔は洗面所で手を洗い、席に着き、飢えるようにわたしの作った料理を口の中に頬張った。
大翔の前に座り、わたしも自分が作った料理を久しぶりに食べる。
最近は味付けに関しては母がしていたから勘が鈍ってないかと心配だったけど美味しくできてた。
「明日のオペ、大丈夫?」
「大丈夫。頭の中で何度もイメージしたから、小さい遥希くんの心臓をとなると怖かったりするけれど、手術ロボットスティーブを操作してオペするからミスはしない」
小児科医のわたしは内科的な治療法しか携わってなく、外科に関しては詳しくない。
病状はわかっても最新のオペに関して、手術ロボットの使用についてなどはさっぱりわからない。
「ご馳走さま。やっぱり凛花の作るご飯は最高に美味しい。生き返った気がする」
「……大翔、わたしが出て行ってから仕事から帰ってきてから何を食べてたの?1階に食品スーパーあるんだからお弁当とか買えるから食事には困らないよね?」
完食して幸せそうな表情を浮かべてる大翔を見て、気になったから聞いてみた。
「……何を食べても美味しく感じられなくて、食べるのが面倒臭くなって、カップラーメンとサプリで食事を終わらせてた」
そんな気はしたけれど、大翔の不健康極まりない食生活に医者の不養生で早死にするんじゃないかと心配になった。
わたしが出て行ってから1ヶ月半なのにかなり痩せやつれてる大翔を見るといたたまれなくなる。
大翔にお風呂をすすめた。
その間に洗い物をして、合鍵を食卓テーブルの上に置いて帰ろうと目論んでいて、さっさと片付けをし、忍び足でカバンを持って玄関に向かうと、洗面所から出てきた大翔に手を掴まれた。
「東京メトロ線の最終が来るからもう帰る。お母さんが心配するし」
髪からポタポタと水滴が落ち、トランクス1枚の姿で慌てて出てきた大翔の姿に、目をそらしてしまう。
大翔は長身で身体も引き締まっていてら、知的な端正な顔立ちをしている。
その色男の色気ダダ漏れ姿に、赤面してしまう……。
「……帰さない。凛花、戻ってきて。俺、凛花がいないとダメなんだ。凛花、愛してる。俺の側にいてくれ」
潤んだ目で大翔に見つめられ、動けなくなる。
「大翔……、髪を乾かして服を着て」
「その間に凛花が帰るかもしれないから、凛花がリビングに戻ってくれたら着替える」
11月終わりで暖房をつけるほどではないけれど寒い季節になった。
仕方がないからリビングに戻り、母に嘘だけど大学時代の友達の家に泊まるとLINEメッセージを送った。
髪を乾かしユニックロの部屋着を着た大翔がリビングに入ってきた。
そして、わたしがここを出て行く時に外に干していて回収し忘れてたユニックロの部屋着と下着をわたしに渡してきた。
「凛花もお風呂に入って来て」
23時半を過ぎていてらもう寝ないと明日の仕事に支障が出るから、お風呂に入って自分が使ってた部屋で寝る事にした。
「凛花、一緒に寝よ」
買い置きの歯ブラシを出して歯を磨き、洗面所から出てリビングに行き、冷蔵庫の中に入れてたミネラルウォーターを飲んでると、ソファーに座ってスマホをいじってた大翔がわたしに近づいてきた。
「凛花が出て行って、寝つけないんだ。睡眠時間も足りないのに寝つけなくて、俺、倒れそうになりながら仕事してる」
循環器外科医として心臓のオペに携わってる大翔のとんでもない発言にギョッとする。
絶対に失敗したらいけない命に関わる仕事をしてるのに、栄養失調と睡眠不足で倒れそうな中でオペに携わってるって、医師として失格な気がする。
「オペ中は全神経を集中させて取り組んでるからミスはしない。俺、実績はうちの病院で1番だから。
救急医のバイトで難関な症例を検査無しでメスで身体を開いてオペしたりしてるし、ミスなんてしない」
わたしが冷たい眼差しを向けてたから焦って弁解する大翔。
大翔の目の下にはクマができていて、端正な顔立ちが3割ぐらい残念になってる。
「……添い寝だけだよ。お腹の中に赤ちゃんいるし」
「……わかってる。凛花のお腹の中で俺の子が育ってるんだから、凛花を抱いたりしない」
大翔に肩に腕を回され、大翔の部屋の中に入れられ、大翔が布団のシーツと枕カバーを変えた後に、手を引かれて布団の中に入った。
「お腹、大きくなってきたな。ここに俺の子がいるんだよな」
わたしが大翔に背を向けて寝ようとしたら、大翔がお腹に腕をまわし、わたしのお腹を触った。
「もう5ヶ月半だからね……」
そうわたしが大翔に話していたら、お腹の中で蹴られてる感じがし、大翔の方を見るとなぜか嬉しそうだった。
「おっ、これって胎動だよな。腹の子とタッチした」
初の胎動でわたしも大興奮だけど、大翔と同じテンションになりたくないから抑えた。
「大翔、もう寝て。明日のオペに響く」
「じゃ、凛花を抱きしめながら眠らせて。凛花、愛してる。だから、帰ってきて。そして、俺と結婚してこの子を一緒に育てさせて」
大翔に抱きしめられた。大翔の温かい胸の中で。心臓の音を聞きながらわたしは大翔より先に眠りについた。
大翔はわたしが愛想尽かして同居解消して出て行ったのを自覚してるのか、お腹を触るのと抱きしめる以上の事はしてこなかった。
朝起きて、ご飯を炊いて昨日の夜に多めに作った肉じゃがをおかずに朝ごはんを食べ、大翔と一緒に病院へ向かった。
一緒に住んでいたときはギリギリまで寝てる大翔とは別々に出勤してた。
今日はわたしが起きたら自然と大翔が起き、大翔がわたしの側を片時も離れず、常に一緒にいた。
マンションを出る時に、
『凛花、凛花がここに戻ってくるのを俺は待ってる。凛花愛してる』
わたしを抱きしめ、わたしの耳元で囁いた大翔。
それから病院まで、大翔はわたしの手を繋いでた。
「大丈夫。眠ってる間に終わってるから」
オペが近くなり、遥希くんが不安がって機嫌を損ね、だだをこねる事が多くなり、検査をしたくないと言って泣き出し、その度にわたしは抱きしめて落ちつかせた。
遥希くんの心臓は大動脈縮窄症だけでなく、心房中隔欠損症も併発していてかなり難しいオペになると桐島教授が言っていた。
遥希くんの小さな心臓にメスを入れるのにベテランの心臓専門の外科医も怖気付き、救急医として経験を積んでいるからと若手の大翔が抜擢されたと話してた。
小児外科医も遥希くんの心臓のオペを成功させる自信がなく、循環器外科に依頼した。
遥希くんの手術がそんなに難しいオペだとは思ってなかった。
遥希くんのオペの前の日、病院帰りに大翔のマンションに寄った。
勝手に入って良いか悩んだけれど鍵を開けた。
大翔が他の女性と同居を始めてたら気まずいなと思いつつ家の中に入った。
1ヶ月半ぶりに入る3年半暮らしたマンション。
かなり埃っぽく、リビングのドアを開けたらゴミ屋敷化していた。
ビニール袋のゴミ袋にカップラーメンのカップと割り箸が1週間分以上溜まってた。
そして、カッターシャツとスーツが紙袋の中に投げ込まれ、洗濯機の中に下着と靴下が大量に入っていた。
洗わずに新しい物を購入してるようだった……。
仕方がないから洗濯機を回し、全部屋のゴミを回収し1階のゴミ捨て場に捨て、マンション内にある21時まで開いてるクリーニングに出しに行った。
そして、部屋に戻り、掃除機をかけた。
大翔が帰ってこないから、1階にある食品スーパーに行き、大翔の好物の肉じゃがとブリの照り焼き、それと豆腐とわかめの味噌汁とほうれん草のお浸しの材料を購入し、部屋に戻り調理にかかった。
22時過ぎに玄関が開き、大翔がかえってきた。
リビングのドアを開け、わたしがキッチンの食卓テーブルに料理を並べてるのを見て大翔は驚いてた。
「……勝手に入ってごめん。忘れ物を取りにきたの。そしたら家の中が荒れ果てて、大翔、カップラーメン生活してるみたいだったから、明日の遥希くんの手術中に倒れたりされたら嫌だからちゃんとしたご飯作った。食べて」
味噌汁とご飯をよそい、大翔の席に置く。大翔は洗面所で手を洗い、席に着き、飢えるようにわたしの作った料理を口の中に頬張った。
大翔の前に座り、わたしも自分が作った料理を久しぶりに食べる。
最近は味付けに関しては母がしていたから勘が鈍ってないかと心配だったけど美味しくできてた。
「明日のオペ、大丈夫?」
「大丈夫。頭の中で何度もイメージしたから、小さい遥希くんの心臓をとなると怖かったりするけれど、手術ロボットスティーブを操作してオペするからミスはしない」
小児科医のわたしは内科的な治療法しか携わってなく、外科に関しては詳しくない。
病状はわかっても最新のオペに関して、手術ロボットの使用についてなどはさっぱりわからない。
「ご馳走さま。やっぱり凛花の作るご飯は最高に美味しい。生き返った気がする」
「……大翔、わたしが出て行ってから仕事から帰ってきてから何を食べてたの?1階に食品スーパーあるんだからお弁当とか買えるから食事には困らないよね?」
完食して幸せそうな表情を浮かべてる大翔を見て、気になったから聞いてみた。
「……何を食べても美味しく感じられなくて、食べるのが面倒臭くなって、カップラーメンとサプリで食事を終わらせてた」
そんな気はしたけれど、大翔の不健康極まりない食生活に医者の不養生で早死にするんじゃないかと心配になった。
わたしが出て行ってから1ヶ月半なのにかなり痩せやつれてる大翔を見るといたたまれなくなる。
大翔にお風呂をすすめた。
その間に洗い物をして、合鍵を食卓テーブルの上に置いて帰ろうと目論んでいて、さっさと片付けをし、忍び足でカバンを持って玄関に向かうと、洗面所から出てきた大翔に手を掴まれた。
「東京メトロ線の最終が来るからもう帰る。お母さんが心配するし」
髪からポタポタと水滴が落ち、トランクス1枚の姿で慌てて出てきた大翔の姿に、目をそらしてしまう。
大翔は長身で身体も引き締まっていてら、知的な端正な顔立ちをしている。
その色男の色気ダダ漏れ姿に、赤面してしまう……。
「……帰さない。凛花、戻ってきて。俺、凛花がいないとダメなんだ。凛花、愛してる。俺の側にいてくれ」
潤んだ目で大翔に見つめられ、動けなくなる。
「大翔……、髪を乾かして服を着て」
「その間に凛花が帰るかもしれないから、凛花がリビングに戻ってくれたら着替える」
11月終わりで暖房をつけるほどではないけれど寒い季節になった。
仕方がないからリビングに戻り、母に嘘だけど大学時代の友達の家に泊まるとLINEメッセージを送った。
髪を乾かしユニックロの部屋着を着た大翔がリビングに入ってきた。
そして、わたしがここを出て行く時に外に干していて回収し忘れてたユニックロの部屋着と下着をわたしに渡してきた。
「凛花もお風呂に入って来て」
23時半を過ぎていてらもう寝ないと明日の仕事に支障が出るから、お風呂に入って自分が使ってた部屋で寝る事にした。
「凛花、一緒に寝よ」
買い置きの歯ブラシを出して歯を磨き、洗面所から出てリビングに行き、冷蔵庫の中に入れてたミネラルウォーターを飲んでると、ソファーに座ってスマホをいじってた大翔がわたしに近づいてきた。
「凛花が出て行って、寝つけないんだ。睡眠時間も足りないのに寝つけなくて、俺、倒れそうになりながら仕事してる」
循環器外科医として心臓のオペに携わってる大翔のとんでもない発言にギョッとする。
絶対に失敗したらいけない命に関わる仕事をしてるのに、栄養失調と睡眠不足で倒れそうな中でオペに携わってるって、医師として失格な気がする。
「オペ中は全神経を集中させて取り組んでるからミスはしない。俺、実績はうちの病院で1番だから。
救急医のバイトで難関な症例を検査無しでメスで身体を開いてオペしたりしてるし、ミスなんてしない」
わたしが冷たい眼差しを向けてたから焦って弁解する大翔。
大翔の目の下にはクマができていて、端正な顔立ちが3割ぐらい残念になってる。
「……添い寝だけだよ。お腹の中に赤ちゃんいるし」
「……わかってる。凛花のお腹の中で俺の子が育ってるんだから、凛花を抱いたりしない」
大翔に肩に腕を回され、大翔の部屋の中に入れられ、大翔が布団のシーツと枕カバーを変えた後に、手を引かれて布団の中に入った。
「お腹、大きくなってきたな。ここに俺の子がいるんだよな」
わたしが大翔に背を向けて寝ようとしたら、大翔がお腹に腕をまわし、わたしのお腹を触った。
「もう5ヶ月半だからね……」
そうわたしが大翔に話していたら、お腹の中で蹴られてる感じがし、大翔の方を見るとなぜか嬉しそうだった。
「おっ、これって胎動だよな。腹の子とタッチした」
初の胎動でわたしも大興奮だけど、大翔と同じテンションになりたくないから抑えた。
「大翔、もう寝て。明日のオペに響く」
「じゃ、凛花を抱きしめながら眠らせて。凛花、愛してる。だから、帰ってきて。そして、俺と結婚してこの子を一緒に育てさせて」
大翔に抱きしめられた。大翔の温かい胸の中で。心臓の音を聞きながらわたしは大翔より先に眠りについた。
大翔はわたしが愛想尽かして同居解消して出て行ったのを自覚してるのか、お腹を触るのと抱きしめる以上の事はしてこなかった。
朝起きて、ご飯を炊いて昨日の夜に多めに作った肉じゃがをおかずに朝ごはんを食べ、大翔と一緒に病院へ向かった。
一緒に住んでいたときはギリギリまで寝てる大翔とは別々に出勤してた。
今日はわたしが起きたら自然と大翔が起き、大翔がわたしの側を片時も離れず、常に一緒にいた。
マンションを出る時に、
『凛花、凛花がここに戻ってくるのを俺は待ってる。凛花愛してる』
わたしを抱きしめ、わたしの耳元で囁いた大翔。
それから病院まで、大翔はわたしの手を繋いでた。
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