同居人以上恋人未満〜そんな2人にコウノトリがやってきた!!〜

鳴宮鶉子

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結婚を勧められても……。

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遥希くんのオペは大成功し、循環器外科病棟の集中治療室に一晩だけいて小児科病棟に帰ってきた。

「神崎は手術ロボットスティーブの操作はうちのドクターの中で1番だからな」

遥希くんと一緒に大翔と桐島教授が小児科病棟にきた。
大翔くんの術後の経過についてタブレットの電子カルテを見て、良好なのを知り、ほっとする。
遥希くんは赤ちゃんの頃から頻繁に発作を起こし入院をしていた。
大翔が心臓をオペで正常な形に近づけたから、もう発作は起きなくなり、親元で普通の子と同じように暮らせるかもしれない。

「凛花ちゃん、今日はお祝いで豪華ディナーにでも行こうか。和香が太るから外食は控えたいと言ってたけど……」

遥希くんの病室を出て、桐島教授がプライベートな事を話し出し、桐島教授が実はわたしの実父と知らない大翔は目を見開き、誤解しているようだった。

「……お父さん、神崎先生に誤解されるのでプライベートな話はここでは辞めて下さい」

「凛花ちゃんがお父さんって言ってくれた、嬉しいな」

わたしが桐島教授の娘という展開も、小学生の頃から付き合いの大翔は意味がわからないといった感じだった。

「……凛花、お母さんが桐島教授と結婚したのか?」

「……違う。昔にお母さんと桐島教授が付き合ってて、わたしが桐島教授の血を引いた娘なだけ」

母娘は行いも似るのか大翔の子を身ごもり1人で産んで育てようとしているわたし。

「凛花、神崎と知り合いか?」

「……小学生の頃からの腐れ縁です。小学生の時は同じ塾に通っていて、中高大では同級生でした」

桐島教授にはわたしが妊娠している事は話してなく、普段気づかれない服装をこころがけてるか今のところバレてない。

「そっか、じゃ、神崎もくるか、豪華ディナー。和香が2Kg太ったから外食にはいかないって昨日電話をかけてきてね、これで誘いに行ったら完全に拒絶される。和香に一目でも会いたいんだけどな……。今日は3人でいこう」

平日に毎日のように桐島教授がうちに来ていて、銀座の有名店に連れて行ってくれるから、4回行くだけで確実におデブコースに突き進んでる気はしてた。

大翔を交えて3人で食事に行くなんてできたら避けたいけど、桐島教授の誘いで断りにくいから行くしか無かった。

仕事終わりの19時に関係者入り口の前で待ち合わせをする事になった。


銀座にある回らないお寿司のお店に連れて行って貰った。

「好きなネタを注文して」

と言われても時価価格の高級寿司になかなか手が出せない。
それに、マグロなどの大型魚は妊婦は食べない方が良いらしく、食べても大丈夫なネタもわからず戸惑う……。

「凛花ちゃん、極上マグロ頼もうか?」

「マグロはあまり……、鯛と平目をお願いします」

妊婦が食べたらいけない魚、ワースト1位を桐島教授が注文しようとして焦った。
妊娠してなかったら極上マグロなんて滅多に食べれないから喜んで飛びつくのに、DHAが多いアジやイワシなどの身体に良さそうなネタを注文させて貰った。

「凛花ちゃんと神崎、小学校からの付き合いなんだね。
私と凛花ちゃんのお母さんは大学が同じでね、ミスキャンパスで孤高な花みたいな和香に一目惚れしてね、なんとか口説き落として付き合ったけど、病院勤めを始めて勤めてた病院の理事長の策略で、和香が身を引いて私の前から去って行ったんだ。
和香と別れたくなくて、姑息だけど妊娠させて結婚しようと企んだら、和香は妊娠しても私に何も言わず去り、1人で育てた。
和香は本当に良い女だよ。私、和香と一緒になるために大阪循環器センタークリニックを退職する予定だった。
和香が去ってから、辞めて、和香が関東出身と話してたから関東の総合病院を転々としたよ。和香をずっと探してた……」

わたしと大翔は急な呼び出しがあるかもしれないからお酒は飲めない。
でも、大学で教鞭をとるのが主な仕事の桐島教授は日本酒を飲んでた。

「和香と凛花ちゃんを一緒に育てたかった……」

しかも泣き出し、困った。話してる内容も大翔に聞かせたくないような内容で、席を外し、お手洗いの前で母にLINE通話をかけた。
そして、母に来て貰って、桐島教授を怒って貰う事にした。

タクシーで駆けつけてくれた母と、大翔と桐島教授がいる席に戻る。

桐島教授は大翔の肩に腕を回し、母への想いを語ってるようだった……。

「神崎くん、お久しぶり。こんなのが教授だから苦労するね。もう遅い時間だし、凛花を連れて帰ってくれるかな。神崎くんのマンションでもうちでもどちらでもいいから。
……理人(桐島教授)、貴方、いい加減にしなさいよ!!」

こめかみに怒りマークが浮かんでる母。
大翔に、わたしを大翔のマンションに連れていく事を容認するのはどうかと思うけど、桐島教授の相手を任せて店を出る事にした。

店を出て、流れのタクシーに乗り込む。

タクシーの運転手に大翔は自分のマンションの住所を伝えてた。

「……わたし、自分のうちに帰る」

「凛花のお母さんがうちに連れて行っていいって言ってたし、うちに泊まれ。遥希くんのオペを完璧にこなしたんだからご褒美をくれてもいいだろ」

わたしの左手をぎゅっと握ってる大翔……。
タクシーの中で言い合いするのもあれだから流され、大翔のマンションにきた。

「スーパーで何か買って帰ろう」

時価の回らない高級寿司のお店だったのと水銀が気になってまともにたべれてなかったから、スーパーでローストビーフとマカロニサラダを購入してから大翔の住む部屋に向かった。

一昨日に掃除をしたからまだ散らかってはないけれど、流しにカップラーメンのカップが1つあるのが目についた。

「大翔、カップラーメンが好きなの?」

「……違う。1人だと面倒だからついついカップラーメンが食事になるだけ」

大翔がわたしの下着と大翔の長袖のシャツを持ってきてわたしに渡してきた。

「シャワー浴びておいで。凛花の下着はあっても室内着は残ってないから、俺のシャツを着て」

お言葉に甘えて、先にシャワーを浴びた。
妊娠して胸が膨らんだからブラジャーはきついからつけなかった。

わたしがシャワーから出ると入れ替わりに大翔がシャワーを浴びて、リビングの応接で、テレビを見ながら買ってきたおかずをつつく。

「大翔、明日はバイトないの?」

「14時からだから大丈夫」

明日は土曜日。
回診で病院に1度顔を出さないといけないけど休みだから、夜中の1時を過ぎてるのに起きてた。

買ってきたお惣菜を食べきり、プラスチックの容器を洗ってゴミ袋に入れた。

歯磨きをして、自分の部屋に入ろうとしたら、腕を掴まれ、大翔の部屋に連れて行かれた。

「……凛花、結婚してくれ。この子の子育てに関わらせて。救急のバイトはもう辞める。料理はできないけど、掃除とか手伝うから。子供が産まれたら、オムツ変えとかお風呂入れたりとかするから、家事と子育てを全て凛花に押し付けないから俺と結婚してここで一緒に暮らして欲しい」

大翔に手を引かれベッドの中に入り、抱きしめられて言われた。

桐島教授から、母とわたしを一緒に育てたかったとぐだぐだと聞かされたのもあるのか、大翔はわたしと子育てをしたいと言い出した。


「……ちょっと考えさせて。即答はできないよ。今日はもう寝よう」

妊娠してから疲れやすいのもあるのか睡眠時間は足りてるのに、眠たかった。

大翔に抱きしめられ、今日も先に眠ってしまった。
大翔と同居していた時、こうやっで大翔と一緒に寝る事はなかった。
夜の情事の後も大翔の睡眠を妨害したらいけないとわたしはシャワーを浴びた後に部屋に戻って1人で眠ってた。

大翔の心臓の音を聞きながら眠る心地良さ。
目覚めもよくて、わたしが起きると大翔も目を覚ます。
寝すぎて11時過ぎに起きたから近くのカフェでブランチをして、救急センターにバイトへ行く大翔と別れ、家に帰った。

家に帰ると玄関に男物の革靴があり、リビングには誰もいない事から母の部屋に2人がいる事が予想できる。

部屋に服を着替えに行こうとしたら、母の部屋から母の荒い息遣いが聞こえ、居づらくて昨日着ていた服のまま家を出た。

あんなに桐島教授の事を拒絶していた母だけど、昔愛していた人で子を宿し産んで育てるぐらいの思い入れの相手だからか、元サヤに戻って、56歳なのに男女の営みをしていたのに驚いた。

母はわたしと同年代にしか見えず、桐島教授も若ぶりで40代前半にしか見えない……。

最近お腹が出てきたから、おしゃれなマタニティー服を探しに新宿に行く事にした。

母と桐島教授が同居を始めたら、実の両親だけど、夜と早朝に情事の声や音を聞かされるのは嫌だから、通勤ラッシュの電車に乗るのが怖いからそれを理由に1人暮らしを始めようかと頭によぎった。

夕方に家に戻ると桐島教授はまだいた。
そして、母からの報告……。

「この人と結婚したから」

休日対応の役所の窓口で戸籍謄本を取り寄せ、母と桐島教授は、スピード婚していた。

「今日から、この人、ここに住むから……」

1階で母が小児科医院を営んでるから、桐島教授がうちで暮らす事になったらしい。

「おめでとう。2人の邪魔をしたらいけないから、わたし、家出るね」

母の部屋はわたしの隣で、夜と早朝に夫婦の営みの音を聞かされたら堪らないと思うわたしは、家から出たかった。

「凛花は私達の娘だし、孫が産まれたらお世話が大変でしょ」

「えっ、凛花ちゃん、妊娠してたの!!」

わたしがシングルマザーになろうとしてるのを初めて知った桐島教授は驚いてた。

「父親は!!医者なら私が責任を取らせ……」

「理人(桐島教授)、凛花の思うようにさせてやって。ほっといても凛花も元サヤに戻るから。口を出さない」

母にビシッと言われ、黙る桐島教授。

「わたしは凛花の実の父親と凛花がきっかけで結婚したから。凛花、神崎くんとよく話し合いなさい。神崎くんは凛花と結婚して夫婦になって子供を育てたいと思ってる。
こないだ、仕事を休んで昼休みの時間にわたしに会いに来て話してくれたよ」

「神崎って……うちの外科医の神崎大翔か!!」

大翔が母に会いにきて、わたしと結婚をしたいと話してた事に驚いた。
桐島教授が母の隣で『凛花ちゃん、何かあったら私が神崎にその度に注意するから、結婚し!!』等、言って、わたしに大翔と結婚する事を勧めてくる。

母と桐島教授とこの家で暮らすのがきつく感じ、今日買ったマタニティー用の服を持って家を出た。

どうしようか悩んだけれど、大翔のマンションに行き、大翔に話して自分が使ってた部屋にしばらく住まわせて貰おうと思った。

桐島教授がわたしが妊娠していてお腹の子が大翔の子だとわかった以上、大翔に何か言ってきそうだからバレた事を伝えないといけない。

大翔の家に入り、自分の部屋に入る。
ここを出た日と全く変わらない状態が保たれてた。
衣類と普段使ってる物以外は全部置いて行ってた。

窓を開けて空気の入れ替えをしながら掃除機をかけ、シャワーを浴びて、ベッドに転がって料理雑誌を読んでたら眠くなり、そのまま眠ってしまった。


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