【完結】ギャラクティック・オケハザマ:新星ノブナガの黎明

月影 流詩亜

文字の大きさ
16 / 18

第15話:銀河震撼、新たなる伝説の序章

しおりを挟む

 マツダイラ・モトヤス率いるミカワ艦隊がオワリ星系を去ってから数日。 キヨス・ベースは、戦勝の後処理と、来るべき「銀河布武」への準備で、新たな活気に満ちていた。

 オダ・ノブナガは、自室の巨大な戦術ディスプレイの前に立ち、広大な銀河の星図を眺めていた。彼の視線は、もはやオワリという一点に留まってはいない。

「ヒデヨシ、銀河の反応はどうか ?」

 背後に控えるハシバ・ヒデヨシに、ノブナガは問いかけた。 ヒデヨシは、この数日間、クラン・ノブナガの全ての情報網を駆使し、「オケハザマの戦い」の報が銀河全域にどのような影響を与えているかを調査していた。

「はっ。 殿、まさに銀河は震撼しております。
こちらが、各方面からの情報をまとめた報告書にございます」

 ヒデヨシは恭しくデータパッドを差し出した。
 ノブナガはそれを受け取ると、指先で素早くスクロールさせながら内容に目を通し始めた。
 まず、旧スルガ・コンステレーション。
 イマガワ・ヨシモトという絶対的指導者を失った巨大な星系連合は、案の定、混乱の極みにあった。 ヨシモトの後継者を巡る内紛の兆し、辺境星系の離反の動き、そして何よりも、クラン・ノブナガという未知の勢力に対する恐怖と警戒。
 もはや、かつての銀河有数の大国としての威光は見る影もない。

「……ふん、烏合の衆とはこのことよ。
 ヨシモト亡き後のスルガなど、もはや恐るるに足らず。
 いずれ、腐った果実のように自ら落ちるであろう」

 ノブナガは冷ややかに評した。

 次に、他の大星系連合の反応。
 北方に位置し、かねてよりスルガと覇を競っていたタケダ・シンゲン星域は、スルガの弱体化を好機と捉えつつも、突如として台頭したノブナガに対して強い警戒心を示しているという。

「『オワリの若獅子、恐るべし。その牙、いずれ我らにも向けられんとは限らぬ』……か。面白いことを言う」

西方の浅瀬星雲に拠点を置くアザイ・アサクラ同盟は、表向きは静観の構えを見せているが、水面下ではノブナガに使者を送る準備を進めているとの情報もある。
 彼らは、ノブナガを利用して自らの勢力拡大を目論んでいるのかもしれない。

「どいつもこいつも、狐と狸の化かし合いよな。だが、それもまた銀河の常か」

 ノブナガは、それぞれの勢力の思惑を冷静に分析していく。

 そして、銀河中央政府……あってなきが如き存在となりつつある「アズチ幕府」の反応。
 彼らは、この辺境での出来事を「局地的な紛争」と片付けようとしているが、一部の進歩的な官僚や知識人の間では、「オダ・ノブナガ」の名が囁かれ始めているという。
 旧時代の権威に陰りが見え始めた今、新たな時代の到来を予感させる存在として。

「幕府の連中も、いつまでも安穏とはしていられまい。
 時代のうねりは、既に始まっているのだからな」

 さらに、ヒデヨシの報告は、虐げられてきた小規模な独立星系や、圧政に苦しむ星系の民衆が、ノブナガの勝利に希望を見出しているという情報も伝えていた。
 彼らにとって、ノブナガは旧体制を打ち破る解放者、あるいは新たな時代の旗手として映っているのかもしれない。

「……民の声、か。それもまた、無視できぬ力よな」

 ノブナガは、しばしその項目に目を留めていた。
データパッドの最後には、銀河系の主要な超光速通信ネットワークで配信されているニュースや、著名な歴史家、軍事評論家たちの論評がまとめられていた。

「『オケハザマの戦い――銀河史の転換点』」

「『彗星の如く現れた戦略家、オダ・ノブナガ。彼の戦術は、既存の宇宙艦隊戦の常識を覆すものだ』」

「『これは単なる辺境の勝利ではない。旧時代の巨星の墜落と、新時代の覇者の出現を銀河全域に知らしめる、歴史的事件である』」

 専門家たちの言葉は、ノブナガの功績を最大限に称賛し、その名を一躍銀河中に轟かせる結果となっていた。

 全ての報告に目を通し終えたノブナガは、静かにデータパッドを置いた。ノブナガの表情は、満足とも、あるいは新たな決意を固めた者の厳粛さとも取れる、複雑な色を浮かべていた。

「……ヒデヨシ、銀河は我々が思う以上に、この勝利に注目しているようだな」

「はっ。 もはや、クラン・ノブナガは銀河の辺境の一小勢力ではございませぬ。
 殿の名は、良くも悪くも、銀河全域に知れ渡りました」

「そうか…」

ノブナガは再び、眼前の広大な銀河星図へと向き直った。
 無数の星々が、まるで彼を試すかのように煌めいている。

 オケハザマの勝利は、確かに大きな一歩だった。 だが、それは同時に、彼がこれから乗り越えなければならない、さらに巨大な壁の存在をも示唆していた。
 警戒する旧勢力、利用しようと近づく者、そして、ノブナガに希望を託す無数の人々。その全てを背負い、ノブナガは進まねばならない。

 ノブナガの視線は、オワリ星系を遥かに越え、銀河の中心部、そしてその先の未だ見ぬ宙域へと注がれていた。

「銀河布武……」

 その言葉が、再び彼の口から漏れた。
 それは、もはや単なるスローガンではない。 ノブナガの生涯を賭けた、壮大なる野望そのものだった。

「……面白い。実に面白いではないか、この銀河という盤面は」

 ノブナガの瞳の奥には、これから始まるであろう数多の戦いと、その先に見据える統一された銀河の未来が、鮮明に映し出されているかのようだった。

 新たなる伝説の序章は、今まさにそのクライマックスを迎え、次なる章への扉が開かれようとしていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...