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第15話:銀河震撼、新たなる伝説の序章
しおりを挟むマツダイラ・モトヤス率いるミカワ艦隊がオワリ星系を去ってから数日。 キヨス・ベースは、戦勝の後処理と、来るべき「銀河布武」への準備で、新たな活気に満ちていた。
オダ・ノブナガは、自室の巨大な戦術ディスプレイの前に立ち、広大な銀河の星図を眺めていた。彼の視線は、もはやオワリという一点に留まってはいない。
「ヒデヨシ、銀河の反応はどうか ?」
背後に控えるハシバ・ヒデヨシに、ノブナガは問いかけた。 ヒデヨシは、この数日間、クラン・ノブナガの全ての情報網を駆使し、「オケハザマの戦い」の報が銀河全域にどのような影響を与えているかを調査していた。
「はっ。 殿、まさに銀河は震撼しております。
こちらが、各方面からの情報をまとめた報告書にございます」
ヒデヨシは恭しくデータパッドを差し出した。
ノブナガはそれを受け取ると、指先で素早くスクロールさせながら内容に目を通し始めた。
まず、旧スルガ・コンステレーション。
イマガワ・ヨシモトという絶対的指導者を失った巨大な星系連合は、案の定、混乱の極みにあった。 ヨシモトの後継者を巡る内紛の兆し、辺境星系の離反の動き、そして何よりも、クラン・ノブナガという未知の勢力に対する恐怖と警戒。
もはや、かつての銀河有数の大国としての威光は見る影もない。
「……ふん、烏合の衆とはこのことよ。
ヨシモト亡き後のスルガなど、もはや恐るるに足らず。
いずれ、腐った果実のように自ら落ちるであろう」
ノブナガは冷ややかに評した。
次に、他の大星系連合の反応。
北方に位置し、かねてよりスルガと覇を競っていたタケダ・シンゲン星域は、スルガの弱体化を好機と捉えつつも、突如として台頭したノブナガに対して強い警戒心を示しているという。
「『オワリの若獅子、恐るべし。その牙、いずれ我らにも向けられんとは限らぬ』……か。面白いことを言う」
西方の浅瀬星雲に拠点を置くアザイ・アサクラ同盟は、表向きは静観の構えを見せているが、水面下ではノブナガに使者を送る準備を進めているとの情報もある。
彼らは、ノブナガを利用して自らの勢力拡大を目論んでいるのかもしれない。
「どいつもこいつも、狐と狸の化かし合いよな。だが、それもまた銀河の常か」
ノブナガは、それぞれの勢力の思惑を冷静に分析していく。
そして、銀河中央政府……あってなきが如き存在となりつつある「アズチ幕府」の反応。
彼らは、この辺境での出来事を「局地的な紛争」と片付けようとしているが、一部の進歩的な官僚や知識人の間では、「オダ・ノブナガ」の名が囁かれ始めているという。
旧時代の権威に陰りが見え始めた今、新たな時代の到来を予感させる存在として。
「幕府の連中も、いつまでも安穏とはしていられまい。
時代のうねりは、既に始まっているのだからな」
さらに、ヒデヨシの報告は、虐げられてきた小規模な独立星系や、圧政に苦しむ星系の民衆が、ノブナガの勝利に希望を見出しているという情報も伝えていた。
彼らにとって、ノブナガは旧体制を打ち破る解放者、あるいは新たな時代の旗手として映っているのかもしれない。
「……民の声、か。それもまた、無視できぬ力よな」
ノブナガは、しばしその項目に目を留めていた。
データパッドの最後には、銀河系の主要な超光速通信ネットワークで配信されているニュースや、著名な歴史家、軍事評論家たちの論評がまとめられていた。
「『オケハザマの戦い――銀河史の転換点』」
「『彗星の如く現れた戦略家、オダ・ノブナガ。彼の戦術は、既存の宇宙艦隊戦の常識を覆すものだ』」
「『これは単なる辺境の勝利ではない。旧時代の巨星の墜落と、新時代の覇者の出現を銀河全域に知らしめる、歴史的事件である』」
専門家たちの言葉は、ノブナガの功績を最大限に称賛し、その名を一躍銀河中に轟かせる結果となっていた。
全ての報告に目を通し終えたノブナガは、静かにデータパッドを置いた。ノブナガの表情は、満足とも、あるいは新たな決意を固めた者の厳粛さとも取れる、複雑な色を浮かべていた。
「……ヒデヨシ、銀河は我々が思う以上に、この勝利に注目しているようだな」
「はっ。 もはや、クラン・ノブナガは銀河の辺境の一小勢力ではございませぬ。
殿の名は、良くも悪くも、銀河全域に知れ渡りました」
「そうか…」
ノブナガは再び、眼前の広大な銀河星図へと向き直った。
無数の星々が、まるで彼を試すかのように煌めいている。
オケハザマの勝利は、確かに大きな一歩だった。 だが、それは同時に、彼がこれから乗り越えなければならない、さらに巨大な壁の存在をも示唆していた。
警戒する旧勢力、利用しようと近づく者、そして、ノブナガに希望を託す無数の人々。その全てを背負い、ノブナガは進まねばならない。
ノブナガの視線は、オワリ星系を遥かに越え、銀河の中心部、そしてその先の未だ見ぬ宙域へと注がれていた。
「銀河布武……」
その言葉が、再び彼の口から漏れた。
それは、もはや単なるスローガンではない。 ノブナガの生涯を賭けた、壮大なる野望そのものだった。
「……面白い。実に面白いではないか、この銀河という盤面は」
ノブナガの瞳の奥には、これから始まるであろう数多の戦いと、その先に見据える統一された銀河の未来が、鮮明に映し出されているかのようだった。
新たなる伝説の序章は、今まさにそのクライマックスを迎え、次なる章への扉が開かれようとしていた。
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