52 / 82
第52話 御家騒動
しおりを挟む── 可児炒藩 鱈場家 ──
鱈場可児乃介は、魯西亜から仕入れた新式火縄銃を見てほくそ笑んでいた。
憎き花咲家を破り、可児炒藩藩主の座に座ることを確信していた。
「花咲家なぞ、この新式火縄銃で一捻りにしてくれるわ !」
可児乃介は知らなかった。
花咲家も泥沼藩を通じて南蛮商人から武器を仕入れていることを……
「それで、火縄銃の他にも何かあるのか ?」
可児乃介の問にゼニガスキー=ベラボーナが、ニコニコしながら、
「もちろん、銭さえ頂ければ大筒から手投げ弾まで、いくらでも用意しますよ、お客様 」
「うーん、南蛮の武器は欲しいが先立つモノが……」
調子に乗って魯西亜から武器を買いまくっていたので、鱈場家の懐は寂しく成っていた。
「儂が藩主に成ってからの後払いでは駄目だろうか ?
花咲家さえ何とか出来たら、儂が藩主に成るのだ ! 」
ゼニガスキーが考える素振りをすると、すかさず可児乃介はゼニガスキーの手に銭を握らせた。
顔を見合せ、ニヤリと笑う両者は似た者同士だった。
「武器は融通出ませんが、兵は足りてますか ?
農民などより役に立つ兵を用意出来ますよ 」
藩主に成る為に目が濁っていた可児乃介は忘れていた。
御家争いで内戦などを起こせば、藩主どころか藩そのものが、お取り潰しになることを。
◇◇◇◇◇
【十兵衛side】
バタッ !
フゥ~。 左近さまのお願いとは云え、公儀隠密を気絶させるのは骨が折れる。
左近さま曰く、
『あまり廃藩が増えると浪人が増えて治安が悪く成るばかりでなく、潰された藩の浪人たちの恨みだけでなく、生き残っている藩が疑心暗鬼に成り、倒幕を考えることを恐れている』
と仰有っていた。
まったく、左近さまには敵わぬ。
どこまで、遠くを見ておいでなのか。
「普通に斬り捨てれば良いものを、左近さまは無茶を言いなさるな。
それが、あの御方の良いところでもあるのだが 」
「何を言う、主水 !
『斬り捨てるか、あえて生かすかは我等の判断に任せる』
とも仰有ったではないか !
今回の公儀隠密はありのままを報告する任務だったから生かしたが、捏造などの工作をしていたなら斬り捨てていたわ !」
正成と主水が口喧嘩を始めてしまった。
やれやれ、俺が喧嘩の仲裁をしなければならないとは恨みますぞ、左近さま。
御家争いを起こさせ無い為に半兵衛たち光矢忍者は両家の武器倉庫に忍び込んで、火薬を濡らして使い物に成ら無いように工作しているはずだ。
「なあ、十兵衛。 公儀隠密の妨害をして大丈夫なのか、左近さまは。
伊豆守さまが指揮しているのだろう、コイツらは 」
正成が疑問にもつのも仕方ない。
普通は伊豆守さまの命令だと思うからな。
「コイツら公儀隠密は、伊豆守さまの手の者では無いぞ。
伊豆守さまは、半蔵が率いている伊賀者を使っている。
コイツら甲賀忍者は幕府老中 邪菜凡乃介が独断専行で使っておるのだ。
伊豆守さまは、左近さまの献言を採用なされたから、むやみやたらに藩の取り潰しは控えるはずだ。
問題は邪菜が自分の手柄欲しさに暴走していることだな」
「幕府も一枚岩というわけでは無いと云うところか 」
主水の言葉が耳に痛かった……
── その後、幕府大目付 柳生但馬守宗矩が乗り出したことにより、鱈場家、花咲家、共に謹慎を申し付けられて、 可児炒藩の藩主は松葉家の可児蔵が選ばれたのであった ──
── ゼニガスキーは儲け損ない、大変悔しがったのである ──
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる