私立ときめき高校・制服防衛戦線!

月影 流詩亜

文字の大きさ
5 / 6

最終話:エピローグ・私たちの制服

しおりを挟む

​ ……得票率、実に98パーセント。

 それが、次期生徒会執行部選挙が叩き出した、歴史的な最終結果だった。

​ 一部の特権階級による「私服化クーデター」は、一般生徒たちの怒涛の反発(と、ドン引き)によって見事に鎮圧された。
 資金ゼロ、コネゼロの平凡な女子高生・卯月弥生は、圧倒的な支持を得て、私立ときめき高校の新しい生徒会長に就任したのである。

​「はぁ……終わったぁ……」

​ 選挙から数日後、生徒会室で山積みの引き継ぎ資料を前に、弥生は深く安堵の息を吐き出していた。窓の外から聞こえてくる中庭の喧騒も、以前のような殺伐とした演説ではなく、平和な昼休みの笑い声に戻っている。

​ ちなみに、あの強烈な「制服廃止派」の三人がどうなったかというと……

​「いやー、制服の完全私服化は時代がまだ追いついてなかったわ。だから俺、方向性をピボット(路線変更)して、制服の『完全クリーニング&お直しサブスクリプション』事業を立ち上げることにした。これからは制服のメンテナンスをハックする時代っスよ」

 江堀鷹は、自身の敗北を「早すぎたイノベーション」と自己完結させ、ちゃっかり制服関連のビジネスに寝返っていた。
 相変わらずスマホを手放さず、今日も謎の横文字を並べて投資家(親)にプレゼンしているらしい。

​「私服化がダメなら、せめて制服の素材をサスティナブルでエシカルなオーガニック・コットン100%にするよう、学校側にコミットメントを要求するわ! これが私の新しいSDGsよ!」

 西口宏子は、ちゃっかり制服を着たまま(ただしスカーフの巻き方だけ謎のこだわりを見せながら)、新たなポリコレ的標的を見つけてヒステリックに活動を続けている。

​『全校生徒の皆さん! 購買部の焼きそばパンの価格設定は、明らかに生徒からの搾取です! 私はパンの価格破壊を断行し、生徒の胃袋を解放します!!』

 そして岸場晃子は、ターゲットを「制服」から「購買部のおばちゃん」に変え、今日も元気に赤いトラメガを握りしめて校内を練り歩いていた。

​ 三者三様、まったく懲りていないし反省もしていないが、とりあえず「制服をなくす」という野望だけは完全に打ち砕かれたようだ。

 彼らのたくましすぎるバイタリティに呆れつつも、弥生は思わずふふっと吹き出してしまった。
​「まぁ、平和になったからいっか」


​ ◇◇◇


​ 翌朝

 弥生は自室の姿見の前に立ち、今日も「鎧」を身に纏う。
​ 袖を通すだけで背筋がピンと伸びる、シワひとつない真っ白なブラウス。
 歩くたびに軽やかに揺れる、グレーとネイビーのチェック柄プリーツスカート。
 上品な深い濃紺のブレザーに腕を通せば、左胸で金糸のエンブレムが誇らしげにキラリと光を反射する。

 そして仕上げに、顔周りをパッと華やかに見せてくれるエンジ色のリボンを、キュッと綺麗なバランスで結び直した。

​「うん、今日も完璧!」

​ 鏡に向かって最高の笑顔を作る。

 親の仕事や収入、お小遣いの額、ファッションセンスの有無。
 そんな理不尽な格差や面倒くささをすべて包み込み、隠し、平等で平和な空間を作り出してくれる究極のアイテム。

​ お金持ちも、そうじゃない人も。

 ちょっとクセの強い横文字大好きITボーイも、トラメガを持った過激な女の子も。

 この服を着れば、みんな同じ「ときめき高校の仲間」になれるのだ。

​ 玄関を開けると、早春の爽やかな風がブレザーの裾をふわりと揺らした。

​(制服って、やっぱり最高!)

​ ピカピカに磨き上げたローファーの足音を響かせながら、卯月弥生は今日も元気に、大好きな制服と一緒に学校への道を歩き出すのだった。


​ ──完 ──

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...