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最終話:エピローグ・私たちの制服
しおりを挟む ……得票率、実に98パーセント。
それが、次期生徒会執行部選挙が叩き出した、歴史的な最終結果だった。
一部の特権階級による「私服化クーデター」は、一般生徒たちの怒涛の反発(と、ドン引き)によって見事に鎮圧された。
資金ゼロ、コネゼロの平凡な女子高生・卯月弥生は、圧倒的な支持を得て、私立ときめき高校の新しい生徒会長に就任したのである。
「はぁ……終わったぁ……」
選挙から数日後、生徒会室で山積みの引き継ぎ資料を前に、弥生は深く安堵の息を吐き出していた。窓の外から聞こえてくる中庭の喧騒も、以前のような殺伐とした演説ではなく、平和な昼休みの笑い声に戻っている。
ちなみに、あの強烈な「制服廃止派」の三人がどうなったかというと……
「いやー、制服の完全私服化は時代がまだ追いついてなかったわ。だから俺、方向性をピボット(路線変更)して、制服の『完全クリーニング&お直しサブスクリプション』事業を立ち上げることにした。これからは制服のメンテナンスをハックする時代っスよ」
江堀鷹は、自身の敗北を「早すぎたイノベーション」と自己完結させ、ちゃっかり制服関連のビジネスに寝返っていた。
相変わらずスマホを手放さず、今日も謎の横文字を並べて投資家(親)にプレゼンしているらしい。
「私服化がダメなら、せめて制服の素材をサスティナブルでエシカルなオーガニック・コットン100%にするよう、学校側にコミットメントを要求するわ! これが私の新しいSDGsよ!」
西口宏子は、ちゃっかり制服を着たまま(ただしスカーフの巻き方だけ謎のこだわりを見せながら)、新たなポリコレ的標的を見つけてヒステリックに活動を続けている。
『全校生徒の皆さん! 購買部の焼きそばパンの価格設定は、明らかに生徒からの搾取です! 私はパンの価格破壊を断行し、生徒の胃袋を解放します!!』
そして岸場晃子は、ターゲットを「制服」から「購買部のおばちゃん」に変え、今日も元気に赤いトラメガを握りしめて校内を練り歩いていた。
三者三様、まったく懲りていないし反省もしていないが、とりあえず「制服をなくす」という野望だけは完全に打ち砕かれたようだ。
彼らのたくましすぎるバイタリティに呆れつつも、弥生は思わずふふっと吹き出してしまった。
「まぁ、平和になったからいっか」
◇◇◇
翌朝
弥生は自室の姿見の前に立ち、今日も「鎧」を身に纏う。
袖を通すだけで背筋がピンと伸びる、シワひとつない真っ白なブラウス。
歩くたびに軽やかに揺れる、グレーとネイビーのチェック柄プリーツスカート。
上品な深い濃紺のブレザーに腕を通せば、左胸で金糸のエンブレムが誇らしげにキラリと光を反射する。
そして仕上げに、顔周りをパッと華やかに見せてくれるエンジ色のリボンを、キュッと綺麗なバランスで結び直した。
「うん、今日も完璧!」
鏡に向かって最高の笑顔を作る。
親の仕事や収入、お小遣いの額、ファッションセンスの有無。
そんな理不尽な格差や面倒くささをすべて包み込み、隠し、平等で平和な空間を作り出してくれる究極のアイテム。
お金持ちも、そうじゃない人も。
ちょっとクセの強い横文字大好きITボーイも、トラメガを持った過激な女の子も。
この服を着れば、みんな同じ「ときめき高校の仲間」になれるのだ。
玄関を開けると、早春の爽やかな風がブレザーの裾をふわりと揺らした。
(制服って、やっぱり最高!)
ピカピカに磨き上げたローファーの足音を響かせながら、卯月弥生は今日も元気に、大好きな制服と一緒に学校への道を歩き出すのだった。
──完 ──
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