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七之助&栞 編

愛は地球を救う と言うらしいけど愛だけでは食べていけないよね ! ⑥

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【栞side】

 副岡田さんに抱きしめられているサファイアとさくらちゃんを見ていた。
 二匹共、すごく嬉しそうに副岡田さんに甘えている。

 いいなぁ~ …………ハッ !

 わたし、うらやましいと思ったのだろう。
 やだ、恥ずかしい。

 副岡田さんは、ウチの本屋のお客様なのに何を考えているのかしら、わたし。
 年齢差を考えなさいよ、栞 !

 でも、副岡田さんは浮気するようには見えないし優しそうなのは、サファイアやさくらちゃんがなついている処からも理解出来る。
 包容力もありそうだし、わたし では無いハズなのにドキドキしている。

 気のせい、気のせい、これは気のせいだわ。
 サファイアが無事に見付かった嬉しさを勘違いしているだけなんだから !

 平常心、平常心、何時もの接客スマイルで対応しないと !
 サファイアを副岡田さんから受け取ろうとしたら、

「キャン キャン ! 」

 あの鳴き声は、マッケンロー !
 不味いわ、誠さんと副岡田さんを会わはせたくは無いわ。
 そうでなくても、ご近所さんから私の彼氏だと勘違いされていると云うのに、副岡田さんに誤解されたら、どうしよう……

「やあ、こんにちは、栞さん。
 今日こそは、良い返事を期待していますよ ! 」

 須々木野すすきのまこと

 同じ市内にあるスポーツセンターのテニスサークルのコーチであり、須々木野さんの父親は大企業の重役らしく、大豪邸に住んでいる。

 三男らしく、ご近所のおばさんは『良い物件』だと勧めてくるけど、圭一さんに婚約破棄された私としては、もう男の人と付き合いたく無いのが本音…………なんだけど……

「スミマセン、須々木野さん。
 本屋の仕事もあるので、何度もお断りしているように、今はテニスをする余裕もテニスに興味もありません 」

 テニス経験者ならともかく、未経験者の私を しつこく誘ってくる須々木野さん。

 顔は、にこやかでスポーツマンでさわやかさで人気があるらしいけど……そう、交際もせまられているけど、どうしても一線を引いてしまう。
 正直、こういうグイグイ来るタイプが苦手なの。

「キャン キャン ! 」

 須々木野さんの愛犬マッケンローは、白いフワフワとしたポメラニアンで、何時もえてばかりで好きになれない。
 須々木野さんは、
『撫でても大丈夫 ! 』と言うけど、やっぱり噛み付かれそうで恐いわ。

 そんなマッケンローが、副岡田さんが抱いているサファイアとさくらちゃんに気がついて吠え始めてしまった。

「キャン キャン キャン キャン キャン  !
 キャン キャン キャン キャン キャン ! 」

 ア~、うるさい !

 吠えまくるマッケンローを放置して、なおも私を誘ってくる須々木野さん。

「本屋なんて、どうせアルバイトでしょう !
僕は、スポーツセンターにも顔が効くから、スポーツセンターの事務に正社員として働かない ?
 時給、お給料も凄く違うはずだよ 」

 この本屋は私の祖父母のお店なんですけど !
 そんな事を知らないとしても、本屋をバカにされているようで腹がたちます。

「キャン キャン キャン キャン キャン  !
 キャン キャン キャン キャン キャン ! 」

 吠え続けるマッケンローにようやく気がついた須々木野さんは副岡田さんを見ながら、

「貴方は誰ですか、失礼でしょう !
 僕と栞さんの話を立ち聞きするなんて !
 マッケンローが恐がるから、その汚い野良猫を連れて立ち去ってください !
 いい歳をして迷惑な人ですね ! 」

 後からやって来て、好き勝手な事を言う須々木野さんに文句を言おうとしたら、

 ジィーーー  (×2)

 サファイアとさくらちゃんがマッケンローや須々木野さんを恐がるどころか、静かに見つめていると、

「キャイ~ン ! 」

 マッケンローが震えながら須々木野さんの後ろに隠れてふるえてしまった。

 ガタガタと震えるマッケンローを抱き上げた須々木野さんは忌々いまいましそうに、

「不気味な猫だな !
 だから、猫なんて嫌いなんだ !
 僕の大事なマッケンローを恐がらせるなんて、本当に失礼な人だな、謝りたまえ ! 」

 …………アァ、こういう人なんだ、須々木野さんは。

 それに比べて、副岡田さんは静かに黙って立っていた。
 反論も謝罪もすること無く、静かに立っていた。 
 そんな副岡田さんと一緒に静かに須々木野さんとマッケンローを見詰めているサファイアとさくらちゃん。

 ペットは飼い主に似ると云うけど、どうやら本当みたいだと思っていたら、どんどん須々木野さんの顔色も悪く成っていき、

「失礼、栞さん !
 急に用事を思い出したので、僕は仕事に戻ります。
 どうか、良く考えてくださいね ! 」

 そう言い残して、もと来た道を帰って行った。
 何故か、須々木野さんが震えて見えるのは気のせいかしら ?
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