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婚約破棄した男の末路
しおりを挟む「お前とは婚約破棄する」
昼食でにぎわう食堂で、大声を張り上げたのは婚約者のジャン。
その言葉に目を丸くしたララは伯爵家のご令嬢だ。
「何を言ってるのでしょうか?」
「お前にはもううんざりなんだ。やれ勉強をしろ。マナーがどうのと」
それはいちいち言わなければならないほどジャンがひどいからだ。
成績は後ろから数えた方が早く、それなのにがらの悪い人達と遊んでばかり。
そんな友人の影響を受けて、とても同じ貴族とは思えないほどにマナーが悪いのだ。
婚約者として言いたくはないが、言わざるを得ないのである。
本当はララだってうんざりしている。
ジャンの言葉はむしろララが言いたい言葉だ。
あまりの素行の悪さに、ララの両親も婚約解消に向けて動いていた最中のこれである。
ジャンの両親はララの伯爵家から多額の借金をしている。
それ故にララとの縁を逃すまいと中々話が進まなかったのだが、向こうから言ってきてくれたのなら好都合。
その後ジャンの家がどうなろうが関係ない。
ララ酷く冷めた眼差しで口角を上げた。
「承知いたしました。では、これにサインを」
そう言って差し出した婚約破棄の書類。
何故こんなものを持ち歩いてるのかと言えば、ジャンが素行の悪い友人達にそそのかされて婚約を破棄しようとしていたのを知っていたからだ。
まさかこんな衆人環視のなかで言われるのは想定外だったが。
だがまあいい。
「ふん、用意がいいな」
ララの内心など知らずジャンは言われるままにサインした。
これでララは自由だ。
心からの笑みを浮かべてララは最後に深く頭を下げてその場を去った。
しばらくして、ジャンの家が没落したと聞かされたが、ララは幼馴染みの初恋の人の隣で笑っていた。
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