オトノミヤ

真夜中の抹茶ラテ

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プロローグ

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 かつて、世界は音楽と共にあった。時にコミュニケーションの手段として、時に自己表現のために、また時に神仏への捧げものとして。誰もが当たり前のように歌を歌い、言葉として音を奏でていた。それは生活の一部であると言えるほどに。
 音楽は言語の壁を越え、あらゆる意思疎通を可能とする。その特性から、精霊との対話に用いられ、魔法に転用までされるようになった。かつて、世界はあらゆるものが音楽と共にあったのだ。

 しかしいつしか時代は流れる。人々は不要なものを切り捨て、生活をより豊かに、より便利に変えていく。その中で音楽もまた変化していった。旋律は失われ、歌詞は文法に、言葉はやがて文字となり、無音のままに意思疎通が可能となった。
 そして音楽は廃れた。繁栄の影で。日常から切り離され、未だにそれを好く者のための単なる娯楽へと落ちぶれた。
 人々は言う。皆口々に。まるで合言葉のように。「音楽には詳しくない」「よくわからない」と……



 ここに、一つの星がある。星の名を「オトノホシ」。この星には、オトモドキと呼ばれる人型の生き物が生息している。
 彼らは、誰かの音の記憶とその人物の願いが星のカケラに宿った生き物だ。その命の素となった記憶の持ち主はオーナーと呼ばれる。その顔も名前も知らずとも、オーナーは自らの命の所有者であり、信仰の対象だ。
 オーナーに忘れられれば彼らは死ぬ。世界から音楽が消えれば、オーナーたちはその胸の内に秘めた音の記憶を忘れていく。それ故に、世界から音楽が失われていくことは、彼らの生死に直結していた。

 「この星の存続のために、世界に音楽を取り戻さなければ」

 これは、そんな使命を抱えた一人の少女の旅物語だ。



製作開始:2023年7月6日
執筆開始:2025年9月28日
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