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第一章:薄暮の月白
1-8.空を映す水面花
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-鯆- 鯨偶蹄目の海獣
鯨類の内、比較的大きい種類を鯨、比較的小さい種類を鯆と呼び、明確な区別はない。また、分類学上鯆に相当する系統群は存在しない。鯨と鯆が区別されるようになった経緯としては、古代から日本人がこの二種類を異なる生き物として呼び分けていたことに由来する。
多くは海に生息するが、淡水である川に生息する種類や、淡水と汽水域を行き来する種もいる。多くは肉食であり、魚類や頭足類などを捕食する。また、水分はあくまでも食料の魚類などから摂取する。歯はおよそ80本あるが食べるときは基本的に丸飲みにしている。
バビロニア神話では「賢者=知恵の神」とされ、「鯆は賢い」という言説が生まれた。ギリシャ神話では聖獣とされ、鯆を殺すことは重罪とされていた。
(参考資料:Wikipediaより)
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ーDeeds, not wordsー
ふと視線を上げる。のどかな風が過ぎ去って、静かに春へ向けて新芽をつける草花を揺らしていった。黄金と純白に彩られた♢の王宮、まだ春とは呼べないが、暖かな日差しが包む場所なのに……何故だろう、普段より少し静かで、普段より少し物寂しく思えてしまうのは。
手元に書き連ねられた丁寧で美しい筆跡は、♢の公用語の一つ。主に南の地域で使われている言語であり、この国のJACKとKINGが好んで使う言語だ。
今しがた目を通したその内容は、先日QUEEN OF CLUBへ送った親書の返答。ありきたりな内容ではあるが、貿易について前向きに検討したい旨、及び、ひいては近々二国間で会談を行いたい旨がつらつらと綴られている。
生真面目なこの国の君主は、返答が届いたこの文書をおそらく最優先で翻訳して届けてくれたのだろう。ありがたい限りだ。ふぅ……と一つ短い息を吐いて、今後の算段を脳内で画く。
貿易に関する予算案については、未だ新入りのQUEENを良しとしていない大臣たちに、こっぴどいまでに却下されてしまった。立場を気にしている場合ではないと言うのに……。国内の状況が本当に見えているのかと疑問さえ抱いてしまう。
しかし、却下されたならば仕方がない。その程度で折れるような柔な覚悟で、あの日KINGとの賭けにのったわけではない。
(……しばらくは、私個人の貯蓄で充てるしかなさそうですね……)
もとより、そのために資金を集めていた。むしろ、その日暮らしを続けながら、かき集めた資金が無駄にならなくてよかった。
さて…と庶務机に肘をついたとき、トントントンと窓辺から軽いノックがして振り返る。青い空をバックにした銀の烏が、その嘴で窓を叩いたようだ。その足には誰かの物と思われる帽子が掴まれている。……聡明な彼の鳥がいたずらに興じるとは珍しい……。
窓を開けると、飛び込んで来た烏は、そのまま机の上に帽子を落とした。そして、まるで何の悪さなど働いていないと言うように、帽子の横へ降り立った。
「……今度は何のつもりですか? 誰かに迷惑をかけるだなんて、あなたらしくない……」
親が子を、あるいは飼い主がペットを叱るような口調で咎めれば、まるで拗ねた子供のように、鳥はぷいと顔を背けた。
やれやれ……。遣い鳥の運んできた帽子を手に取れば、何の変哲もないテレスコープハット。この烏が、無意味にいたずらをするようには思えない。この帽子にも、きっと何かの意味があるのだろうが……
「……まさか、盗んできたわけではないですよね?」
冷たく睨むと、烏からはふるふると首を横に振るような動作をした。やはり、この鳥は人語を解しているとしか思えない。否、おそらく解している。
「はぁ……これでどうしろというのですか……」
しかし、会話が成り立たないというのは、全く困ったものだ。たった一つのヒントから、導かせたい回答を予想するのは無敗のギャンブラーとて困難極まりない。ため息の代わりに、行き場のない感情を吐き出して、今度こそ机に肘をつく。
仕方がない、これは後で城下の交番にでも落とし物として届けよう……。そう思考した直後、トントントン、と再度三つのノック音が響いた。今度は窓からではなく、彼女の前方のあるこの部屋の出入り口から。
「QUEEN、お仕事中申し訳ありません。来客でございます」
そして聞こえてくるメイドの声。
(おや……今日は来客の予定はなかったはずですが……)
「どうぞ」
見えるはずもないとわかっていながらも、反射的に首肯する。
入室許可が出たと言うのに、扉はすぐには開かれず、
「では、私はこれにして失礼いたします」
「あぁ、助かった。感謝する」
代わりに聞こえてくるのは話し声。どうやらメイドは、中まで立ち会う気はないらしい。
やがて、執務室の扉が開かれた。そして部屋に立ち入る長身な黒髪の青年。動物の目のような鋭い光を宿した金の目が、黒いメガネの向こうで輝いている。
「!」
「……おや」
目が合うと、一方は金の目を大きく見開いて、もう一方は赤い目で幾度か瞬いた。
そんな様子に、来客の青年は
「あー……なんだ、えぇと……久しぶり? だな。まさかこんなところで会うとは思わなかったが……」
とバツの悪い声を返す。
「え、えぇ……まさか、こんなところでお会いするとは……。こんにちは。いえ、初めましてでしょうか? JACK OF CLUB」
バツの悪い返答に、苦笑いを浮かべながらも彼女は丁寧に言葉を返した。この黒髪の青年は、件の貿易相手・♧のJACKたる人物だ。
「あぁ、まあ……なんだ……一応初めまして、と言っておく。……お前、QUEEN OF DIAMONDだったのか」
絵札として会話を交わすのはこれが初めてになるが、彼らにはそれ以前に面識があった。かといって、今まさに感動の再会…というわけではない。むしろ、記憶の片隅で忘却されていてもおかしくない、そんな脆い繋がり程度だ。
「まぁ……ひとまず、お座りください」
「いや、長話をするつもりはないんだ」
「せっかくですから……」
傍から見たらこの二人は不仲であるように思えたかもしれない。無論、そういうわけではないが……。
そんな穏やかな誘いに、JACK OF CLUBと呼ばれた青年は短く悩んでから、
「……では、少しだけ」
室内に設けられたソファへ腰を下ろした。手短に済ませたいと思う反面で、これも何かの縁ならば、久々の会話を楽しみたいという感情もある。
彼が誘いに乗ったことを確認してから、彼女も彼の対面へと腰を下ろす。
「……して、今日は何の御用でしたか?」
「あぁ、その……今日はJACKとしてここに来たわけではなくてだな……」
「おや、そうだったのですか……。ならば、もっと早く言ってくださいな。焦りましたよもう……」
彼女も笑ってその堅苦しい空気を解けば、凝り固まった気まずさは窓の外へと流れていって、プライベートな空間へ成り代わった。
「悪かったな、私もまさかここで会うとは思わなかったんだ」
黒髪の青年も警戒を解いたように、硬い表情に僅かな笑みを浮かべて頷く。
「お久しぶりです、ノワールさん」
「あぁ、久しぶりだな。アルギス」
二人の関係性を端的に表現するならば、この通り、偽名で呼び合う程度の仲だ。相対したこの二十代半ばの青年の名はノワール・モンド・シュランゲ。約110年前からJACK OF CLUBの座についている者だ。
「あー……今日の用だが……悪い、あそこの帽子、私の物なんだ」
彼は、バツが悪そうに告げる。仕方がない、CLUBの第三位たるJACKともあろう人物が、烏如きに帽子を取られるなんて失態を、他国のQUEENに知られてしまったのだから。
「あぁ、私の遣いがご迷惑を……」
「いや、私の不注意だ。申し訳ない」
アルギスと呼ばれた銀髪のQUEENは、申し訳なさそうに机上のテレスコープハットをノワールへと渡した。
この黒髪のJACKこそが、彼女がQUEENの座に就く前に、当てにしようとしていた貿易相手の一人だ。彼女は彼がJACKであると事前に知っていたから良いものの、彼からすれば着任間も無い彼女がQUEENだと知る機会はなかったわけで……。
「まあ、これで私の要件は済んだわけだが……なんだ、とりあえず……着任おめでとう。できることならば、もっと正式な場で顔を合わせたかった」
と苦笑いで心情を吐露した。
それに対しては苦笑いを返すしかなく、
「ありがとうございます。とはいえ、まぁ……それは私も同じですよ」
「これで、貿易の件もマシに進みそうだな」
「えぇ、なんとか。QUEEN OF CLUBからも良い返答を受け取れましたし、あとは予算の問題ですかねぇ……」
と小さくため息を吐いた。
「……こんなところで会うとは思わなかったが……これも何かの縁だと言うならば、いつかの対価の代わりに、ここまでの旅路を聞かせて貰えないだろうか」
彼らが出会ったのは今から半世紀以上前になる。その時、何かの縁だからと、ノワールの経歴を聞きたがったのは、他でもないアルギスの方だ。そして、いつか再び会うことがあれば、と当時、彼女は貿易の件をJACK OF CLUBに打ち明けた。
そんな数奇な出会いから長く時は流れたが、次に語るのは彼女の番だろう。
「えぇ、構いませんよ。長くなりますが……」
「問題ない。どうせ大した予定もないからな」
なんて律儀な承諾をとる。そして客受けのお茶こそないが、彼女は淡々とこれまでの経歴を口ずさみ始めた……。
(第三章:逢魔に瑠璃へ続く……)
***
ーForte é quem, depois de tanto perder, reergue-se e segue lutandoー
風の音、波の音、水平線が永遠と続いている代わり映えのない風景。ここは甲板の上。船に乗るのは、記憶上初めてだが、こうも退屈だとは知らなかった。これならいっそ、嫌いな書類仕事でも持ってくれば良かったか……。もちろん、機密事項を王宮外に持ち出すなんれ言語道断であることはわかっているけれど。
ハンドレールに肘をついて、その上に顎を乗せる。あとどのくらいで到着するのだろう……。♧の言葉はほとんど分からない。絵札が口にした言葉は通じるが、その逆は通じない。つまりは、こちらが話している言葉は通じるが、相手の言葉が分からない。船に乗りたい旨と、必要とされた金銭は何とか渡せたものの、相手の言葉が分からないため到着時間までは汲み取れなかった。
始めは寝て過ごそうかとも思ったが、不規則な揺れと慣れない旅路に睡魔はやってこなかった。
(うぅ……退屈……。帰りは何か暇つぶしの物、買ってこなきゃ……)
ため息混じりに視線を水面へ向け、欠伸を吸い込みながら、再度視線を水平線に戻す。
「お……?」
そして、反射的に背を伸ばした。遠くにチラついた赤い旗は美しい♡の文様が描かれている。8.0と人並み外れた視力を持つ彼には、まだ周りには見えないその小さな国旗がよく見えた。
もうじき、この退屈な船旅も終わりそうだ。海の国・♡。空の国・♢とは無縁にも等しい、全くの異国。着いたらまずはどこへ行こいこうか……。
(……まずは、あの人に会いに行こうかな……。どこにいるんだろう……)
兄を名乗る赤髪の青年。あの不機嫌そうな人は、自分と同じJACKという役職を与えられたあの人は……。四六時中ではないだろうが、いるとすれば♡の王宮だろう。
JACK OF DIAMONDとしてのアポイントメントはとっていない。門前払いされたらどうしようか……。胸の内にひしめく不安を振り払うように首を横に振り、下船の準備のために船内へと戻っていった。
紅茶の香るアフターヌーン、中庭に降り注ぐ眩しい光を受けて、ガーデニングテーブルに並べられたティーセットはより一層輝いて見えた。ただ一つ、そんな美しい外観を壊している知人の突っ伏した頭を除いて。
「アンタ、邪魔なんやけど! せっかくのウチのお茶の時間が台無しやわ!」
強く訛った旧♡語を吐き出しているのは、茶色い髪の、二十代半ばの小柄な女性だ。彼女の視線の先にあるのは、自分の腕を枕替わりに突っ伏した、紅色の硬質な髪の青年。彼こそがJACK OF HEARTだ。現在は弟顔負けのサボり癖と、趣味に興じている様子だが……。
続けざまにいくつかの罵倒と悪口が女性から飛び出すが、赤髪のJACKは一向に起きる気配がない。
「はぁ~……もうえぇわ。てかなんなん、ウチの邪魔だけして寝とるとか!」
こちらのご機嫌ななめな小柄の女性は、件のJACKの上司にあたるこの国のQUEENだ。
なんの予定もない午後、ただのんびりとお茶をするこの時間を、QUEEN OF HEARTは好いていた。しかし、そういう時に限って、邪魔しに来るJACKを腹立たしくも思っていた。
そんないつもと変わらない♡王宮の午後三時少し過ぎ、今日に限っては彼女のお茶を邪魔しに来るのは件のJACK一人ではなかったらしい。軽い足音が近づいてきて、視界の端に黒いワンピースと白いエプロンが視界に映った。
「休憩中すみません……。QUEEN、JACK、来客が……」
困った様子で二人へ声をかけたのは、♡王宮のメイド。こんなに天気の良い日の午後を、来客で潰されるとはとんだ凶日だ。とは言え、QUEENに急な来客が来るのはある程度慣れたことで、盛大にため息をつきながら仕方なしにとティーカップを置いた。
来客だと示された方角は中庭の入口で、どことなくオドオドとした情けない人影が目に入る。
(あぁいう輩は、好かんのやけどなぁ……)
自分の意思をはっきり持たない者ははっきり言って嫌いだ。……まあ、自分の意思をはっきり示す赤髪のJACKが好きかと聞かれれば、否な訳だが……。
「……あ。えっと……」
光の最奥にある中庭側からは、人影の立つ廊下は影になってほとんど見えない。……が、そんな情けない切り出しを口にしながら姿を表したのは、存外見知った人物で……。
「わっ! トワちゃんやんっ!」
半ば反射的に駆け寄り、挨拶としてのハグを送る。
「えっ! あっ! QUEEN OF HEART……? どうして僕の名前を……」
見上げれば、困惑を強く浮かべた赤茶色の目が見下ろしていた。記憶の中よりも随分背が伸びて、低くなっていた声。服越しにも感じる靱やかで逞しい体格……。あんなに小さかった少年が、知らぬ間にこうも立派になっているとは……。
「大きなったなぁっ……! いつの間に……って言うても、もう70年くらい経っとるもんなぁ……。そらしゃぁないわ」
と一人で納得して、QUEEN OF HEARTは嬉しそうに哀愁に浸る。
「え、えぇと……」
どう声を返せばいいのか、と桃髪のJACKが眉根を寄せていると、
「うぁっ」
なんて声をあげながら、QUEENが強制的に引き剥がされた。何事かと思えば、いつの間にやら目を覚ましていた赤髪のJACK、もとい、招かれざる客の兄が、QUEEN OF HEARTの首根っこを掴んで引き離したらしい。
「……ったく、うるせぇぞ。俺の昼寝邪魔すんじゃねぇ」
「はぁ? アンタがウチの邪魔しに来たんやん! 文句あんなら、部屋で寝とりゃぁえぇやろ!」
放っておいたら、永遠に口喧嘩を始めそうな♡の絵札を
「え、えっと……あの、ちょっと待って。色々わかんないから、教えて欲しいんだけど……」
と制止して、何とか穏便のことを進めようと言葉を探す。でなければ、わざわざ退屈すぎる船旅に耐えて、遠路遥々♡までやってきた意味がなくなってしまう。
桃髪のJACKこと、マローネ・ニービオのその様子を見て、ようやく乱心のQUEENは事情を察したようだ。
「……そか、忘れてまっとるんやっけ」
そう一言で核心を突いた。おそらく彼女も、マローネの過去を知っている人物の一人だろう。何か話しを聞ければ良いが……。
なんて思考していると、話の早いQUEENはマローネの頼みに則って、
「あー……なんや、一応……初めまして、言ぅといた方がえぇんかな。ウチはQUEEN OF HEARE。名前は……そぉやなぁ……本名は、ちゃんと思い出してから呼んで欲しいで……フィーリア・フェールって名乗っとくわ。フェールでえぇよ」
と自己紹介をしてくれた。忘れてしまってはいるが、どうやらマローネは、彼女の本名を知っているらしい。
「えっと……じゃあ、フェールさん。……と、えぇっと……ロッソ、さん……で、いいのかな……?」
その言葉に、フェールは思わず吹き出して、
「他人行儀な! あははっ、あかん、お腹痛いわっ!」
と盛大に笑い転げ、ロッソの舌打ちが続く。
「えっ!? あ、え、えっと、じゃあ兄ちゃんで……」
「……ッチ」
結局、どう呼んでも気に入らないじゃないか。紅髪のJACKは不機嫌そうに眉根を寄せた。
「……んで、何の用やった?」
会話が一段落したところで、フェールから声をかける。例え自分のことをすっかり忘れてしまっていたとしても、彼女にとってマローネ・ニービオという人物は、大切な人に他ならないのだから。
「うん、あーえぇっと……その、僕、ここの出身? らしいから、なにかわかるかなぁ……と思って……」
しかし、何か明確な見立てがあるわけでも、計画がある訳でもなく、もしかしたら、という不確定なものに縋って来ただけ。故に、ここへ来て特にやりたいことがある訳でもない。回答に困りながら、笑顔の良く似合う顔で眉根を八の字に下げる。
「ふぅん……ま、そーやろぅなぁ……。ウチで良かったら話したろか? 昔のこと」
八方塞がりを体現したような表情に、情けをかけるかの如く首を傾げてみる。背が離れたって、結局その弱々しい根性は昔から変わっていないようだ。なんて、胸中で苦笑いを浮かべて。
「え、ぇっと……じゃあ、お願いしてもいい? 他に頼れそうな人もいないし……」
困ったように、彼女に頼む。その視線は一瞬、兄の方へ向いたが……
「あはは、アンタ、当てにならんって!」
その視線の意味に気づいて、フェールもロッソを見上げて盛大に笑い声をあげた。
「……るせぇよ」
不機嫌そうな声と共に、フェールはロッソに軽く頭を小突かれる。
「いったぁい! 何すんのもう! この短気! 野蛮人っ!」
「自業自得だろうが。文句言ってんじゃねぇよ」
首根っこを掴んでいた手を払い除け、くるりと振り返って頬を膨らませる。そんな可愛らしい抗議の様子は、傍から目にも彼らの仲が良いとわかる。
(良いなぁ……。♡は仲が良いんだね……)
なんて、マローネは、疎外感を胸中で呟いた。着任からまだ日の浅いQUEENとは、とてもではないがあんな関係は築けると思えない。
彼にとっての祖国はここであり、帰るべき国はここであるはずなのに……何故だろう、♡の国土を踏んでいても、♡の王宮にいても、感じるのは疎外感と孤独ばかり。思い浮かぶのは皮肉な程に♢のことばかりで、本当に自分の国へ帰ってきたのか不安になるほどだ。
(……思い出したら、また違うのかな……)
……もしも、失っているもの全てを取り戻したら、自分は変わってしまうんだろうか? 今あるこの思いは、今の自分は、どこに消えるのだろうか……。
ぐるぐると答のない疑問ばかりが脳裏を埋めつくし、ようやく過去を知る糸口を掴んだというのに……何故だろう。どことなく、怖い。全てを知った時、自分は自分のままで居られるだろうか……。
「……トワちゃん?」
唐突に本名を呼ばれ、意識は現実へと引き戻される。見れば、怪訝な顔でフェールが見上げていた。
「え? あれ? どうしたの?」
「やから、知りたいんやろ、昔のこと。教えたるで着いて来てって言うたやん?」
「そ、そうだっけ……? ごめん、ちょっと考え事してて……」
いつの間にか進んでいた話に、置いていかれていた現状。咄嗟にいつも通りの笑顔を取り繕って、曖昧な返答で相槌を打った。
(……知りたくてここまで来たんじゃん。……今更何言ってるのさ……)
着いてこいと言ったフェールの背中は、明らかに自分より小さいのに、長い年月を歩んできた威厳がある。そして、あんなやり取りをしていたにも関わらず、自分の立場だけはよく理解してるのだろう。彼女を守るようにやや斜め後ろを連れ立って歩くJACK OF HEARTは、面倒くさそうに、こちらに一瞥の視線だけを送った。
わかっている。前に進まないだなんて選択肢、初めから存在しないことくらい……。そう自分に言い聞かせて、前を行く二人の背を追った。
案内されたのはQUEEN OF HEARTの執務室……ではなく、フィーリア・フェールの寝室だ。同じく王宮で寝泊まりしている彼故に、それを疑問に思うことはないけれど……
「……入らんの?」
ドアを開き、綺麗に整頓された部屋へ招き入れようとするフェールは、ただ首を傾げた。何故だかマローネはその部屋の前で立ち尽くして、入ることを渋っているようだ。
「……ぇ、えっと、その……女の子の寝室に、そう易々と入って良いのかなぁ……って……」
これ以上ないほどにバツの悪そうな表情で、視線を逸らした彼の耳は、ほんのりと朱色に染まっている。何がどうという訳では無いし、他に何か深い意味がないということくらいわかっているが……78年生きてもなお、彼の時は心も身体も20のままで止まっている。
フェールは、一瞬意表を突かれたようなきょとんとした表情を浮かべてから、
「何を今更っ! 昔はよぅウチの部屋来とったやん! それともなん? ウチのJACKの目の前で、ウチのこと、ベッドにでも押し倒したいん?」
フェールは口角をにんまりと釣り上げた。心底楽しくて仕方ないという表情だが、初心な青年への嫌がらせには全力を尽くすつもりだと示しているようにしか見えない。
「なんでそういうこというのさっ! そんなわけないでしょ!」
ぽぽぽぽっと頬まで赤く染めて、首を横に振り否定するも、その場面だけを切り取ったら勘違いが生まれても仕方がない。そんな様子にフェールは満足気に笑って、
「からかっただけやん、本気にしんといてよ!」
とマローネを部屋へ引き込んだ。
彼女の寝室は、ピンクと白を基調とした、いかにも女の子らしい部屋だ。慣れた様子でソファへ腰掛ける自分の兄の隣に、微妙な距離感を置いて座る。ちらりと覗き見たロッソの横顔は明らかに退屈そうで、いつも通りに不怪訝そうだ。
(……この前はお酒入っちゃって、あんまり気にしなかったけど……)
少し硬質な紅色の癖毛と金茶色のつり目。柔らかな桃色の髪と赤茶色のたれ目の彼と、外見だけで見ればあまり似ていない。
(……この人が、僕の兄ちゃん、なんだよね……。……なんだろう……。変な感じ……)
兄だと言われても、実感が湧くはずもなく……。
視線を上げれば、フェールは何やら本棚を漁っており、まだこちらに戻ってくる様子は無さそうだ。
「……んだよ」
代わりに隣の金茶色の目が動き、その奥の♡の象徴を示す瞳孔と目が合う。それだけ無言で見つけられれば気にするなという方が難しい。
「……い、いやぁ……君が兄ちゃんなんだなぁ……って思っただけだよ」
歯切れの悪い言葉を返し、それ以上は……と目を逸らす。
「……悪いか」
「そ、そういうのじゃなくて……ほ、ほら、なんか……実感わかないっていうか……」
性格も凡そ真逆だろう。むしろ似ている部分を探す方が難しいかもしれない。一体どれほどの時を共に過ごしたのか記憶にもないけれど……自分は彼を兄として慕っていたのだろうか……?
「……あの、さ……」
気まずさを拭うように言葉を口にしようとした時、
「あ、あったわ。はい、これな」
半ば割り込む形で目の前の机へ一冊の本のようなものが置かれる。顔をあげれば、
「なんなん、この空気? アンタらほんと似てへんなぁ……」
なんて言いながら、ため息を吐き出したフェールと目が合った。
「え、えっと……これは?」
「日記。かなり昔のやけど」
「日記……?」
「アンタらが小さかった頃の、な。あの頃は可愛かったのに! 知らんうちに大きなってまって!」
頬を膨らませて抗議するように、しかしどこか儚く、虚しく、寂しそうに笑う彼女の表情に、喉に詰まりかけた言葉は消え果てた。忘れられる悲しみなど、想像もできない。
数秒の無言が流れてから、フェールは二人と相対する席へ座り、ゆっくりと息を吐き出した。
「さて……と。始めよか。長ぁい昔話にはなるけど……寝たら怒るでな?」
なんて笑いながら日記を開く。そして、彼女はその口から過ぎし日々を紡ぎ始める……。
(第二章:黄昏の深紅へ続く……)
【3-2.空を映す水面花】
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ー登場人物ー(トランプ史700年現在)
名前:黒羽 烏兎
偽名:クローネ・アルギス
役職:QUEEN OF DIAMND
能力:烏の知らせ(嫌な予感に気づく能力)
外見:銀髪、赤眼
出身:♤
性別:女
象徴:烏 / 銀
備考:♧へ行ったことがある
名前:茶岳 飛羽
偽名:マローネ・ニービオ
役職:JACK OF DIAMOND
能力:ーー
外見:桃髪、赤茶色の目
出身:♡
性別:男
象徴:茶 / 鳶
備考:船に乗った記憶は無い
名前:ーー
偽名:オルカ・ロッソ
役職:JACK OF HEART
能力:湾曲(ものを曲げる能力)
外見:赤髪、金茶色の目
出身:♡
性別:男
象徴:赤 / 鯱
備考:QUEEN OF HEARTと意外と仲が良い
名前:ーー
偽名:ノワール・モンド・シュランゲ
役職:JACK OF CLUB
能力:ーー
外見:黒髪、金眼、黒メガネ
出身:ーー
性別:男
象徴:黒 / 蛇
備考:QUEEN OF DIAMONDの貿易相手候補
名前:ーー
偽名:フィーリア・フェール
役職:QUEEN OF HEART
能力:ーー
外見:茶髪、橙目
出身:ーー
性別:女
象徴:桃 / 鯆
備考:JACK OF DIAMONDの過去を知る人物
鯨類の内、比較的大きい種類を鯨、比較的小さい種類を鯆と呼び、明確な区別はない。また、分類学上鯆に相当する系統群は存在しない。鯨と鯆が区別されるようになった経緯としては、古代から日本人がこの二種類を異なる生き物として呼び分けていたことに由来する。
多くは海に生息するが、淡水である川に生息する種類や、淡水と汽水域を行き来する種もいる。多くは肉食であり、魚類や頭足類などを捕食する。また、水分はあくまでも食料の魚類などから摂取する。歯はおよそ80本あるが食べるときは基本的に丸飲みにしている。
バビロニア神話では「賢者=知恵の神」とされ、「鯆は賢い」という言説が生まれた。ギリシャ神話では聖獣とされ、鯆を殺すことは重罪とされていた。
(参考資料:Wikipediaより)
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ーDeeds, not wordsー
ふと視線を上げる。のどかな風が過ぎ去って、静かに春へ向けて新芽をつける草花を揺らしていった。黄金と純白に彩られた♢の王宮、まだ春とは呼べないが、暖かな日差しが包む場所なのに……何故だろう、普段より少し静かで、普段より少し物寂しく思えてしまうのは。
手元に書き連ねられた丁寧で美しい筆跡は、♢の公用語の一つ。主に南の地域で使われている言語であり、この国のJACKとKINGが好んで使う言語だ。
今しがた目を通したその内容は、先日QUEEN OF CLUBへ送った親書の返答。ありきたりな内容ではあるが、貿易について前向きに検討したい旨、及び、ひいては近々二国間で会談を行いたい旨がつらつらと綴られている。
生真面目なこの国の君主は、返答が届いたこの文書をおそらく最優先で翻訳して届けてくれたのだろう。ありがたい限りだ。ふぅ……と一つ短い息を吐いて、今後の算段を脳内で画く。
貿易に関する予算案については、未だ新入りのQUEENを良しとしていない大臣たちに、こっぴどいまでに却下されてしまった。立場を気にしている場合ではないと言うのに……。国内の状況が本当に見えているのかと疑問さえ抱いてしまう。
しかし、却下されたならば仕方がない。その程度で折れるような柔な覚悟で、あの日KINGとの賭けにのったわけではない。
(……しばらくは、私個人の貯蓄で充てるしかなさそうですね……)
もとより、そのために資金を集めていた。むしろ、その日暮らしを続けながら、かき集めた資金が無駄にならなくてよかった。
さて…と庶務机に肘をついたとき、トントントンと窓辺から軽いノックがして振り返る。青い空をバックにした銀の烏が、その嘴で窓を叩いたようだ。その足には誰かの物と思われる帽子が掴まれている。……聡明な彼の鳥がいたずらに興じるとは珍しい……。
窓を開けると、飛び込んで来た烏は、そのまま机の上に帽子を落とした。そして、まるで何の悪さなど働いていないと言うように、帽子の横へ降り立った。
「……今度は何のつもりですか? 誰かに迷惑をかけるだなんて、あなたらしくない……」
親が子を、あるいは飼い主がペットを叱るような口調で咎めれば、まるで拗ねた子供のように、鳥はぷいと顔を背けた。
やれやれ……。遣い鳥の運んできた帽子を手に取れば、何の変哲もないテレスコープハット。この烏が、無意味にいたずらをするようには思えない。この帽子にも、きっと何かの意味があるのだろうが……
「……まさか、盗んできたわけではないですよね?」
冷たく睨むと、烏からはふるふると首を横に振るような動作をした。やはり、この鳥は人語を解しているとしか思えない。否、おそらく解している。
「はぁ……これでどうしろというのですか……」
しかし、会話が成り立たないというのは、全く困ったものだ。たった一つのヒントから、導かせたい回答を予想するのは無敗のギャンブラーとて困難極まりない。ため息の代わりに、行き場のない感情を吐き出して、今度こそ机に肘をつく。
仕方がない、これは後で城下の交番にでも落とし物として届けよう……。そう思考した直後、トントントン、と再度三つのノック音が響いた。今度は窓からではなく、彼女の前方のあるこの部屋の出入り口から。
「QUEEN、お仕事中申し訳ありません。来客でございます」
そして聞こえてくるメイドの声。
(おや……今日は来客の予定はなかったはずですが……)
「どうぞ」
見えるはずもないとわかっていながらも、反射的に首肯する。
入室許可が出たと言うのに、扉はすぐには開かれず、
「では、私はこれにして失礼いたします」
「あぁ、助かった。感謝する」
代わりに聞こえてくるのは話し声。どうやらメイドは、中まで立ち会う気はないらしい。
やがて、執務室の扉が開かれた。そして部屋に立ち入る長身な黒髪の青年。動物の目のような鋭い光を宿した金の目が、黒いメガネの向こうで輝いている。
「!」
「……おや」
目が合うと、一方は金の目を大きく見開いて、もう一方は赤い目で幾度か瞬いた。
そんな様子に、来客の青年は
「あー……なんだ、えぇと……久しぶり? だな。まさかこんなところで会うとは思わなかったが……」
とバツの悪い声を返す。
「え、えぇ……まさか、こんなところでお会いするとは……。こんにちは。いえ、初めましてでしょうか? JACK OF CLUB」
バツの悪い返答に、苦笑いを浮かべながらも彼女は丁寧に言葉を返した。この黒髪の青年は、件の貿易相手・♧のJACKたる人物だ。
「あぁ、まあ……なんだ……一応初めまして、と言っておく。……お前、QUEEN OF DIAMONDだったのか」
絵札として会話を交わすのはこれが初めてになるが、彼らにはそれ以前に面識があった。かといって、今まさに感動の再会…というわけではない。むしろ、記憶の片隅で忘却されていてもおかしくない、そんな脆い繋がり程度だ。
「まぁ……ひとまず、お座りください」
「いや、長話をするつもりはないんだ」
「せっかくですから……」
傍から見たらこの二人は不仲であるように思えたかもしれない。無論、そういうわけではないが……。
そんな穏やかな誘いに、JACK OF CLUBと呼ばれた青年は短く悩んでから、
「……では、少しだけ」
室内に設けられたソファへ腰を下ろした。手短に済ませたいと思う反面で、これも何かの縁ならば、久々の会話を楽しみたいという感情もある。
彼が誘いに乗ったことを確認してから、彼女も彼の対面へと腰を下ろす。
「……して、今日は何の御用でしたか?」
「あぁ、その……今日はJACKとしてここに来たわけではなくてだな……」
「おや、そうだったのですか……。ならば、もっと早く言ってくださいな。焦りましたよもう……」
彼女も笑ってその堅苦しい空気を解けば、凝り固まった気まずさは窓の外へと流れていって、プライベートな空間へ成り代わった。
「悪かったな、私もまさかここで会うとは思わなかったんだ」
黒髪の青年も警戒を解いたように、硬い表情に僅かな笑みを浮かべて頷く。
「お久しぶりです、ノワールさん」
「あぁ、久しぶりだな。アルギス」
二人の関係性を端的に表現するならば、この通り、偽名で呼び合う程度の仲だ。相対したこの二十代半ばの青年の名はノワール・モンド・シュランゲ。約110年前からJACK OF CLUBの座についている者だ。
「あー……今日の用だが……悪い、あそこの帽子、私の物なんだ」
彼は、バツが悪そうに告げる。仕方がない、CLUBの第三位たるJACKともあろう人物が、烏如きに帽子を取られるなんて失態を、他国のQUEENに知られてしまったのだから。
「あぁ、私の遣いがご迷惑を……」
「いや、私の不注意だ。申し訳ない」
アルギスと呼ばれた銀髪のQUEENは、申し訳なさそうに机上のテレスコープハットをノワールへと渡した。
この黒髪のJACKこそが、彼女がQUEENの座に就く前に、当てにしようとしていた貿易相手の一人だ。彼女は彼がJACKであると事前に知っていたから良いものの、彼からすれば着任間も無い彼女がQUEENだと知る機会はなかったわけで……。
「まあ、これで私の要件は済んだわけだが……なんだ、とりあえず……着任おめでとう。できることならば、もっと正式な場で顔を合わせたかった」
と苦笑いで心情を吐露した。
それに対しては苦笑いを返すしかなく、
「ありがとうございます。とはいえ、まぁ……それは私も同じですよ」
「これで、貿易の件もマシに進みそうだな」
「えぇ、なんとか。QUEEN OF CLUBからも良い返答を受け取れましたし、あとは予算の問題ですかねぇ……」
と小さくため息を吐いた。
「……こんなところで会うとは思わなかったが……これも何かの縁だと言うならば、いつかの対価の代わりに、ここまでの旅路を聞かせて貰えないだろうか」
彼らが出会ったのは今から半世紀以上前になる。その時、何かの縁だからと、ノワールの経歴を聞きたがったのは、他でもないアルギスの方だ。そして、いつか再び会うことがあれば、と当時、彼女は貿易の件をJACK OF CLUBに打ち明けた。
そんな数奇な出会いから長く時は流れたが、次に語るのは彼女の番だろう。
「えぇ、構いませんよ。長くなりますが……」
「問題ない。どうせ大した予定もないからな」
なんて律儀な承諾をとる。そして客受けのお茶こそないが、彼女は淡々とこれまでの経歴を口ずさみ始めた……。
(第三章:逢魔に瑠璃へ続く……)
***
ーForte é quem, depois de tanto perder, reergue-se e segue lutandoー
風の音、波の音、水平線が永遠と続いている代わり映えのない風景。ここは甲板の上。船に乗るのは、記憶上初めてだが、こうも退屈だとは知らなかった。これならいっそ、嫌いな書類仕事でも持ってくれば良かったか……。もちろん、機密事項を王宮外に持ち出すなんれ言語道断であることはわかっているけれど。
ハンドレールに肘をついて、その上に顎を乗せる。あとどのくらいで到着するのだろう……。♧の言葉はほとんど分からない。絵札が口にした言葉は通じるが、その逆は通じない。つまりは、こちらが話している言葉は通じるが、相手の言葉が分からない。船に乗りたい旨と、必要とされた金銭は何とか渡せたものの、相手の言葉が分からないため到着時間までは汲み取れなかった。
始めは寝て過ごそうかとも思ったが、不規則な揺れと慣れない旅路に睡魔はやってこなかった。
(うぅ……退屈……。帰りは何か暇つぶしの物、買ってこなきゃ……)
ため息混じりに視線を水面へ向け、欠伸を吸い込みながら、再度視線を水平線に戻す。
「お……?」
そして、反射的に背を伸ばした。遠くにチラついた赤い旗は美しい♡の文様が描かれている。8.0と人並み外れた視力を持つ彼には、まだ周りには見えないその小さな国旗がよく見えた。
もうじき、この退屈な船旅も終わりそうだ。海の国・♡。空の国・♢とは無縁にも等しい、全くの異国。着いたらまずはどこへ行こいこうか……。
(……まずは、あの人に会いに行こうかな……。どこにいるんだろう……)
兄を名乗る赤髪の青年。あの不機嫌そうな人は、自分と同じJACKという役職を与えられたあの人は……。四六時中ではないだろうが、いるとすれば♡の王宮だろう。
JACK OF DIAMONDとしてのアポイントメントはとっていない。門前払いされたらどうしようか……。胸の内にひしめく不安を振り払うように首を横に振り、下船の準備のために船内へと戻っていった。
紅茶の香るアフターヌーン、中庭に降り注ぐ眩しい光を受けて、ガーデニングテーブルに並べられたティーセットはより一層輝いて見えた。ただ一つ、そんな美しい外観を壊している知人の突っ伏した頭を除いて。
「アンタ、邪魔なんやけど! せっかくのウチのお茶の時間が台無しやわ!」
強く訛った旧♡語を吐き出しているのは、茶色い髪の、二十代半ばの小柄な女性だ。彼女の視線の先にあるのは、自分の腕を枕替わりに突っ伏した、紅色の硬質な髪の青年。彼こそがJACK OF HEARTだ。現在は弟顔負けのサボり癖と、趣味に興じている様子だが……。
続けざまにいくつかの罵倒と悪口が女性から飛び出すが、赤髪のJACKは一向に起きる気配がない。
「はぁ~……もうえぇわ。てかなんなん、ウチの邪魔だけして寝とるとか!」
こちらのご機嫌ななめな小柄の女性は、件のJACKの上司にあたるこの国のQUEENだ。
なんの予定もない午後、ただのんびりとお茶をするこの時間を、QUEEN OF HEARTは好いていた。しかし、そういう時に限って、邪魔しに来るJACKを腹立たしくも思っていた。
そんないつもと変わらない♡王宮の午後三時少し過ぎ、今日に限っては彼女のお茶を邪魔しに来るのは件のJACK一人ではなかったらしい。軽い足音が近づいてきて、視界の端に黒いワンピースと白いエプロンが視界に映った。
「休憩中すみません……。QUEEN、JACK、来客が……」
困った様子で二人へ声をかけたのは、♡王宮のメイド。こんなに天気の良い日の午後を、来客で潰されるとはとんだ凶日だ。とは言え、QUEENに急な来客が来るのはある程度慣れたことで、盛大にため息をつきながら仕方なしにとティーカップを置いた。
来客だと示された方角は中庭の入口で、どことなくオドオドとした情けない人影が目に入る。
(あぁいう輩は、好かんのやけどなぁ……)
自分の意思をはっきり持たない者ははっきり言って嫌いだ。……まあ、自分の意思をはっきり示す赤髪のJACKが好きかと聞かれれば、否な訳だが……。
「……あ。えっと……」
光の最奥にある中庭側からは、人影の立つ廊下は影になってほとんど見えない。……が、そんな情けない切り出しを口にしながら姿を表したのは、存外見知った人物で……。
「わっ! トワちゃんやんっ!」
半ば反射的に駆け寄り、挨拶としてのハグを送る。
「えっ! あっ! QUEEN OF HEART……? どうして僕の名前を……」
見上げれば、困惑を強く浮かべた赤茶色の目が見下ろしていた。記憶の中よりも随分背が伸びて、低くなっていた声。服越しにも感じる靱やかで逞しい体格……。あんなに小さかった少年が、知らぬ間にこうも立派になっているとは……。
「大きなったなぁっ……! いつの間に……って言うても、もう70年くらい経っとるもんなぁ……。そらしゃぁないわ」
と一人で納得して、QUEEN OF HEARTは嬉しそうに哀愁に浸る。
「え、えぇと……」
どう声を返せばいいのか、と桃髪のJACKが眉根を寄せていると、
「うぁっ」
なんて声をあげながら、QUEENが強制的に引き剥がされた。何事かと思えば、いつの間にやら目を覚ましていた赤髪のJACK、もとい、招かれざる客の兄が、QUEEN OF HEARTの首根っこを掴んで引き離したらしい。
「……ったく、うるせぇぞ。俺の昼寝邪魔すんじゃねぇ」
「はぁ? アンタがウチの邪魔しに来たんやん! 文句あんなら、部屋で寝とりゃぁえぇやろ!」
放っておいたら、永遠に口喧嘩を始めそうな♡の絵札を
「え、えっと……あの、ちょっと待って。色々わかんないから、教えて欲しいんだけど……」
と制止して、何とか穏便のことを進めようと言葉を探す。でなければ、わざわざ退屈すぎる船旅に耐えて、遠路遥々♡までやってきた意味がなくなってしまう。
桃髪のJACKこと、マローネ・ニービオのその様子を見て、ようやく乱心のQUEENは事情を察したようだ。
「……そか、忘れてまっとるんやっけ」
そう一言で核心を突いた。おそらく彼女も、マローネの過去を知っている人物の一人だろう。何か話しを聞ければ良いが……。
なんて思考していると、話の早いQUEENはマローネの頼みに則って、
「あー……なんや、一応……初めまして、言ぅといた方がえぇんかな。ウチはQUEEN OF HEARE。名前は……そぉやなぁ……本名は、ちゃんと思い出してから呼んで欲しいで……フィーリア・フェールって名乗っとくわ。フェールでえぇよ」
と自己紹介をしてくれた。忘れてしまってはいるが、どうやらマローネは、彼女の本名を知っているらしい。
「えっと……じゃあ、フェールさん。……と、えぇっと……ロッソ、さん……で、いいのかな……?」
その言葉に、フェールは思わず吹き出して、
「他人行儀な! あははっ、あかん、お腹痛いわっ!」
と盛大に笑い転げ、ロッソの舌打ちが続く。
「えっ!? あ、え、えっと、じゃあ兄ちゃんで……」
「……ッチ」
結局、どう呼んでも気に入らないじゃないか。紅髪のJACKは不機嫌そうに眉根を寄せた。
「……んで、何の用やった?」
会話が一段落したところで、フェールから声をかける。例え自分のことをすっかり忘れてしまっていたとしても、彼女にとってマローネ・ニービオという人物は、大切な人に他ならないのだから。
「うん、あーえぇっと……その、僕、ここの出身? らしいから、なにかわかるかなぁ……と思って……」
しかし、何か明確な見立てがあるわけでも、計画がある訳でもなく、もしかしたら、という不確定なものに縋って来ただけ。故に、ここへ来て特にやりたいことがある訳でもない。回答に困りながら、笑顔の良く似合う顔で眉根を八の字に下げる。
「ふぅん……ま、そーやろぅなぁ……。ウチで良かったら話したろか? 昔のこと」
八方塞がりを体現したような表情に、情けをかけるかの如く首を傾げてみる。背が離れたって、結局その弱々しい根性は昔から変わっていないようだ。なんて、胸中で苦笑いを浮かべて。
「え、ぇっと……じゃあ、お願いしてもいい? 他に頼れそうな人もいないし……」
困ったように、彼女に頼む。その視線は一瞬、兄の方へ向いたが……
「あはは、アンタ、当てにならんって!」
その視線の意味に気づいて、フェールもロッソを見上げて盛大に笑い声をあげた。
「……るせぇよ」
不機嫌そうな声と共に、フェールはロッソに軽く頭を小突かれる。
「いったぁい! 何すんのもう! この短気! 野蛮人っ!」
「自業自得だろうが。文句言ってんじゃねぇよ」
首根っこを掴んでいた手を払い除け、くるりと振り返って頬を膨らませる。そんな可愛らしい抗議の様子は、傍から目にも彼らの仲が良いとわかる。
(良いなぁ……。♡は仲が良いんだね……)
なんて、マローネは、疎外感を胸中で呟いた。着任からまだ日の浅いQUEENとは、とてもではないがあんな関係は築けると思えない。
彼にとっての祖国はここであり、帰るべき国はここであるはずなのに……何故だろう、♡の国土を踏んでいても、♡の王宮にいても、感じるのは疎外感と孤独ばかり。思い浮かぶのは皮肉な程に♢のことばかりで、本当に自分の国へ帰ってきたのか不安になるほどだ。
(……思い出したら、また違うのかな……)
……もしも、失っているもの全てを取り戻したら、自分は変わってしまうんだろうか? 今あるこの思いは、今の自分は、どこに消えるのだろうか……。
ぐるぐると答のない疑問ばかりが脳裏を埋めつくし、ようやく過去を知る糸口を掴んだというのに……何故だろう。どことなく、怖い。全てを知った時、自分は自分のままで居られるだろうか……。
「……トワちゃん?」
唐突に本名を呼ばれ、意識は現実へと引き戻される。見れば、怪訝な顔でフェールが見上げていた。
「え? あれ? どうしたの?」
「やから、知りたいんやろ、昔のこと。教えたるで着いて来てって言うたやん?」
「そ、そうだっけ……? ごめん、ちょっと考え事してて……」
いつの間にか進んでいた話に、置いていかれていた現状。咄嗟にいつも通りの笑顔を取り繕って、曖昧な返答で相槌を打った。
(……知りたくてここまで来たんじゃん。……今更何言ってるのさ……)
着いてこいと言ったフェールの背中は、明らかに自分より小さいのに、長い年月を歩んできた威厳がある。そして、あんなやり取りをしていたにも関わらず、自分の立場だけはよく理解してるのだろう。彼女を守るようにやや斜め後ろを連れ立って歩くJACK OF HEARTは、面倒くさそうに、こちらに一瞥の視線だけを送った。
わかっている。前に進まないだなんて選択肢、初めから存在しないことくらい……。そう自分に言い聞かせて、前を行く二人の背を追った。
案内されたのはQUEEN OF HEARTの執務室……ではなく、フィーリア・フェールの寝室だ。同じく王宮で寝泊まりしている彼故に、それを疑問に思うことはないけれど……
「……入らんの?」
ドアを開き、綺麗に整頓された部屋へ招き入れようとするフェールは、ただ首を傾げた。何故だかマローネはその部屋の前で立ち尽くして、入ることを渋っているようだ。
「……ぇ、えっと、その……女の子の寝室に、そう易々と入って良いのかなぁ……って……」
これ以上ないほどにバツの悪そうな表情で、視線を逸らした彼の耳は、ほんのりと朱色に染まっている。何がどうという訳では無いし、他に何か深い意味がないということくらいわかっているが……78年生きてもなお、彼の時は心も身体も20のままで止まっている。
フェールは、一瞬意表を突かれたようなきょとんとした表情を浮かべてから、
「何を今更っ! 昔はよぅウチの部屋来とったやん! それともなん? ウチのJACKの目の前で、ウチのこと、ベッドにでも押し倒したいん?」
フェールは口角をにんまりと釣り上げた。心底楽しくて仕方ないという表情だが、初心な青年への嫌がらせには全力を尽くすつもりだと示しているようにしか見えない。
「なんでそういうこというのさっ! そんなわけないでしょ!」
ぽぽぽぽっと頬まで赤く染めて、首を横に振り否定するも、その場面だけを切り取ったら勘違いが生まれても仕方がない。そんな様子にフェールは満足気に笑って、
「からかっただけやん、本気にしんといてよ!」
とマローネを部屋へ引き込んだ。
彼女の寝室は、ピンクと白を基調とした、いかにも女の子らしい部屋だ。慣れた様子でソファへ腰掛ける自分の兄の隣に、微妙な距離感を置いて座る。ちらりと覗き見たロッソの横顔は明らかに退屈そうで、いつも通りに不怪訝そうだ。
(……この前はお酒入っちゃって、あんまり気にしなかったけど……)
少し硬質な紅色の癖毛と金茶色のつり目。柔らかな桃色の髪と赤茶色のたれ目の彼と、外見だけで見ればあまり似ていない。
(……この人が、僕の兄ちゃん、なんだよね……。……なんだろう……。変な感じ……)
兄だと言われても、実感が湧くはずもなく……。
視線を上げれば、フェールは何やら本棚を漁っており、まだこちらに戻ってくる様子は無さそうだ。
「……んだよ」
代わりに隣の金茶色の目が動き、その奥の♡の象徴を示す瞳孔と目が合う。それだけ無言で見つけられれば気にするなという方が難しい。
「……い、いやぁ……君が兄ちゃんなんだなぁ……って思っただけだよ」
歯切れの悪い言葉を返し、それ以上は……と目を逸らす。
「……悪いか」
「そ、そういうのじゃなくて……ほ、ほら、なんか……実感わかないっていうか……」
性格も凡そ真逆だろう。むしろ似ている部分を探す方が難しいかもしれない。一体どれほどの時を共に過ごしたのか記憶にもないけれど……自分は彼を兄として慕っていたのだろうか……?
「……あの、さ……」
気まずさを拭うように言葉を口にしようとした時、
「あ、あったわ。はい、これな」
半ば割り込む形で目の前の机へ一冊の本のようなものが置かれる。顔をあげれば、
「なんなん、この空気? アンタらほんと似てへんなぁ……」
なんて言いながら、ため息を吐き出したフェールと目が合った。
「え、えっと……これは?」
「日記。かなり昔のやけど」
「日記……?」
「アンタらが小さかった頃の、な。あの頃は可愛かったのに! 知らんうちに大きなってまって!」
頬を膨らませて抗議するように、しかしどこか儚く、虚しく、寂しそうに笑う彼女の表情に、喉に詰まりかけた言葉は消え果てた。忘れられる悲しみなど、想像もできない。
数秒の無言が流れてから、フェールは二人と相対する席へ座り、ゆっくりと息を吐き出した。
「さて……と。始めよか。長ぁい昔話にはなるけど……寝たら怒るでな?」
なんて笑いながら日記を開く。そして、彼女はその口から過ぎし日々を紡ぎ始める……。
(第二章:黄昏の深紅へ続く……)
【3-2.空を映す水面花】
------------
ー登場人物ー(トランプ史700年現在)
名前:黒羽 烏兎
偽名:クローネ・アルギス
役職:QUEEN OF DIAMND
能力:烏の知らせ(嫌な予感に気づく能力)
外見:銀髪、赤眼
出身:♤
性別:女
象徴:烏 / 銀
備考:♧へ行ったことがある
名前:茶岳 飛羽
偽名:マローネ・ニービオ
役職:JACK OF DIAMOND
能力:ーー
外見:桃髪、赤茶色の目
出身:♡
性別:男
象徴:茶 / 鳶
備考:船に乗った記憶は無い
名前:ーー
偽名:オルカ・ロッソ
役職:JACK OF HEART
能力:湾曲(ものを曲げる能力)
外見:赤髪、金茶色の目
出身:♡
性別:男
象徴:赤 / 鯱
備考:QUEEN OF HEARTと意外と仲が良い
名前:ーー
偽名:ノワール・モンド・シュランゲ
役職:JACK OF CLUB
能力:ーー
外見:黒髪、金眼、黒メガネ
出身:ーー
性別:男
象徴:黒 / 蛇
備考:QUEEN OF DIAMONDの貿易相手候補
名前:ーー
偽名:フィーリア・フェール
役職:QUEEN OF HEART
能力:ーー
外見:茶髪、橙目
出身:ーー
性別:女
象徴:桃 / 鯆
備考:JACK OF DIAMONDの過去を知る人物
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