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発端
出会い
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「――はぁ!、はぁっ……!」
月明かりすら見えない森の中を、若い女が脅えた表情で駆けている。
息遣いは激しく、絶え絶えだが、女は止まろうとはしない。
――ザッ!、ザッ……!
女の背後から、2つの足音が迫って来ている――どうやら、女はこの足音から逃げている様だ。
「――あっ!?」
女は、草むらに足を捕られ、顔面から派手に転んだ。
「はぁ!、はぁぅっ……!」
痛みに顔を歪めながらも、女はまだ止まろうとはせず、草むらを這いつくばってでも逃げようとする。
だが、足首に走る痛みには耐えきれず、ついに側にある立派な枝振りの大木に寄りかかってしまった。
「へへっ、ようやく止まったかぁ……まったく、手こずらせやがって」
追って来た足音の一つから下卑た男の声が聞こえ、女の背筋に氷水の様に感じる、冷たい汗が流れる。
草むらをかき分け、ダラリと刀を提げた二人の男が女の前に立ち塞がる。
「いっ、いやっ!、来ないでっ!」
そんな女の叫びを無視し、一人の男が刀を振り上げる。
「――おい、待てよ」
「あ~ん?」
「なかなかの上玉だ♪、"一通り楽しんでから"でも、悪くはないだろう?」
制止した男は、イヤらしい笑みを見せ、女の顔と肢体を指差す。
雲の切れ間から覗く月明かりが照らす女の姿は、周りの暗さから解る様に、今の時分なら床から逃れて来たのだろうと、容易に推測出来る恰好だ。
そんな、白い長襦袢一枚という格好で、草むらにへたり込み、全身は草露に塗れ、そのたった一枚の襦袢も肌蹴ている様は――なるほど、なかなか扇情を擽るシルエットである。
「へっ!、助平め。
まっ、そもそも村人全員を始末するのが命令だからなぁ……確かに、"後"でも良いだろう」
男たちは、刀を地面に突き刺し、腰ひもを緩め始めた。
「――いっ!、いやっ!」
女は、男たちの会話と行動から、彼らが自分に何をしようとしているかを瞬時に理解した。
自分は――男たちに凌辱された後、殺されると。
女の恐怖から来る震えは、頂点に達しようとしていた。
「来ないでぇ!、来ないでっ!!」
女の叫びを完全に無視し、ニタニタと笑っている男の左手が女の肩へと伸びる――その時っ!
ザザザザッ!、ドガッ!
「――ぐあっ!」
女が寄りかかっていた大木の枝から、"何か"が女の前に落ちてきた。
「つぅ~!、何だ!?、一体――っ!」
顔に被さった葉を振り払い、男は大木に向き直る。
「――それは、こっちのセリフだ、バカ野郎」
枝から落ちて来たのは、"物"ではなく"人"――みすぼらしい風体の若い男だった。
この暗さでは、ハッキリと視認出来ないが――継ぎ接ぎや充て布だらけの汚れた着物を着流し、腰には、そんな風体とは釣り合わない、立派な鞘が提げられている。
若い男は、もの凄く不機嫌な態度で、身体にまとわりついた木の葉を払うと、ギロッと一瞥して周りを見渡す。
男たちは、ビクッと強烈な殺気を感じ取り、後退りをしたが、恐怖のあまり、目を閉じている女はそれに気付かない。
辺りを見渡した若い男は――"なるほど"とでも言っている様な得心した表情で、状況を察し、男たちへの殺気を強める。
「なっ!、何だてめえは?!」
若い男の態度に痺れを切らしたのか、男たちは刀を抜き、構えながら凄み返す。
「……他人が、やっと、ありついた寝床の下で、何をやってんのかと思ったら……」
緩んでいる男たちの腰ひもを見て、若い男はさらに嫌悪の表情を見せる。
「――何のつもりだ?、女一人に二人がかりで」
自分の身体に何も起きない事と、あの男たちとは違う気配に気付いた女が目を開ける。
「くっ!、この野郎!」
その瞬間、蹴られた方の男が刀を振り上げ、若い男に斬りかかる!
「!」
その瞬間、若い男の目つきが――変わるっ!
――ズバッ!
若い男は腰に提げていた鞘から一気に抜刀し、斬りかかってきた男の上半身を逆袈裟懸けに両断した!
男は――『えっ……?』という表情で、自分の状況を見た後――
「――ぎゃぁぁぁっ!」
――と、声を挙げて絶命した。
恐怖に震えていた女も、強姦を提案した方の男も、目の前で行われた惨劇を呆然と眺めている。
ハッ!、――と、我に返った生きている方の男は、後退りしながら刀を投げ捨てると、震える諸手を振って"自分は戦う気はない!"というジェスチャーをする。
「――まっ!、待てよ、兄ちゃん……」
先ほどの光景を見て、こいつはヤバい!!!!と、察した男は、許しを乞うように情けない声を出す。
そして、説得する様に――
「ねっ、寝てるところで悪かったなぁ……どっ、どうだ?、あっ、兄ちゃんも一緒に楽しんだら?」
――と、媚びる様に挙げた提案に、若い男は耳を振るわせて反応する。
男は"脈アリ"と踏んで、畳み掛ける様に更に提案する。
「みっ、見たところ兄ちゃん、流者だろ?
なかなかの上玉だぜぇ~?、この機会を逃すのは損だぜぇ~!」
男は、どこかの客引きの様に、饒舌に撒くし立てる。
その様子を見ていた若い男は、刀をだらりと提げたまま――
「――はぁ~……」
――と、大きなため息を吐き――
「――そんなゲスな命乞いするなんて、胸の"鳳凰"が泣くぜ?」
――そう告げて、切っ先を男の胸に向けた。
よく見れば――男は胸当てを着けていて、そこには小さく鳳凰の紋が象られいる。
「――只の野盗の類いじゃないだろ?、"スヨウ"のお侍さんよぉ?」
その言葉を聞いた男は、表情を一変させ、直ぐ様刀を拾って、若い男に斬りかかる!
――ガキンッ!
刃を合わせた2人は、ギリギリと鍔迫り合いを始める。
「図星――か。
なるほどね、素性に気付かれたからには、殺るしか無ぇ……そーいう事かい」
若い男は静かにそうつぶやき、涼しい顔で競り合いに応じている。
そんな争いに痺れを切らした男は、一旦距離を置き――
「――やあぁぁぁっ!」
――と、気合いを込めて再度、勢いを付けて斬りかかった!
しかし、若い男は冷ややかな表情のまま、そんな裂帛の斬撃を受け止め、軽ぅ~く弾き返すと――
――ズバァッ!
――と、一刀の下に男を切り捨てた。
若い男は、切り捨てた男の骸を一瞥し、刀を腰に提げた鞘に収めた。
そして、若い男が震えたまま呆然としている、女の肩に手を置くと――
「――いやぁぁぁぁっ!、助けてください!、殺さないでぇぇぇっ!」
――と、女の恐怖心が頂点に達して錯乱し、再び叫び声を上げ始めた。
「――ちょ!、ちょっと待って!
大丈夫、大丈夫っ!、俺は、キミの味方だから……ほら、これ!」
――と、転がっている男たちの屍を指差すが――
「!!!!!!!!、いやぁぁぁぁぁぁっっっっ!、助けて!、助けてぇぇっ!」
これぞ、正に"焼け石に水"――女は、更に脅えっぷりが激しくなった。
「あ~!、もう!、どうすればぁ……」
――と、少し頭を巡らせた若い男は、刀を鞘ごと地面に落とした。
「ほら!、俺は丸腰だ!、何もしない!、何もしないからっ!」
若い男は、そう切なそうに懇願する。
「いやぁぁっ!、――あっ!、えっ……?、ふぇっ……?」
女は、少しずつ落ち着きを取り戻し、泣き叫ぶ事を止め始めた。
「ふぃ~っ……やっと、治まってくれたかぁ……」
――と、若い男は安堵の声を上げ――
「――で、一体、何があったんだい?」
――優しい声音で女に問いかけた。
若い男の優しい声音を聞き、少しだけ安堵した女は、声を震わせながらゆっくりと口を開いた。
「むっ、村が――襲われて、父さんも、かっ、母さんも、殺、されてぇ……」
涙混じりに語る女の表情は、思い出すだけでも辛そうに、顔は引きつったままである。
「押し入れに、隠れていた私も、見つかり、そうになって……もう、無我夢中で、逃げて……」
女は、ついに堪えきれなくなり、両手で顔を覆い泣き出した。
「――そうか。
村って、近くにあるっていう、"ヤマカキ村"かい?」
女は若い男の問いに、泣きじゃくりながらもコクンと、小さく頷いた。
「女の子が逃げて来れるって事は、案外近かったんだなぁ……もうちょい、脚を伸ばすべきだったか」
――と、若い男はブツブツと呟くと、女の肩に再度手を置き――
「――わかった、様子を見て来てやるから、ここで待ってな」
――と言って、地面に置いた刀入りの鞘を拾い、腰に提げて小さく口笛を吹いた。
すると、大木の後ろから、一頭の派手な栃栗毛の馬の首がヌウッと伸びてきた。
「コイツは、俺の馬だ。
コイツの側にいれば、とりあえず森の獣とかは寄って来ないだろうから」
男が説明していると、馬は女の全身の匂い嗅ぎ『よろしく!』とでも言うように、鼻息を女の顔にかけた。
「――解ったね?、ここを動くんじゃないよ?」
若い男の問い掛けに、女は力強く頷いた。
「よし!、じゃあ、行ってくるっ!」
若い男は踵を返して、村がある方向へ駆け出した。
月明かりすら見えない森の中を、若い女が脅えた表情で駆けている。
息遣いは激しく、絶え絶えだが、女は止まろうとはしない。
――ザッ!、ザッ……!
女の背後から、2つの足音が迫って来ている――どうやら、女はこの足音から逃げている様だ。
「――あっ!?」
女は、草むらに足を捕られ、顔面から派手に転んだ。
「はぁ!、はぁぅっ……!」
痛みに顔を歪めながらも、女はまだ止まろうとはせず、草むらを這いつくばってでも逃げようとする。
だが、足首に走る痛みには耐えきれず、ついに側にある立派な枝振りの大木に寄りかかってしまった。
「へへっ、ようやく止まったかぁ……まったく、手こずらせやがって」
追って来た足音の一つから下卑た男の声が聞こえ、女の背筋に氷水の様に感じる、冷たい汗が流れる。
草むらをかき分け、ダラリと刀を提げた二人の男が女の前に立ち塞がる。
「いっ、いやっ!、来ないでっ!」
そんな女の叫びを無視し、一人の男が刀を振り上げる。
「――おい、待てよ」
「あ~ん?」
「なかなかの上玉だ♪、"一通り楽しんでから"でも、悪くはないだろう?」
制止した男は、イヤらしい笑みを見せ、女の顔と肢体を指差す。
雲の切れ間から覗く月明かりが照らす女の姿は、周りの暗さから解る様に、今の時分なら床から逃れて来たのだろうと、容易に推測出来る恰好だ。
そんな、白い長襦袢一枚という格好で、草むらにへたり込み、全身は草露に塗れ、そのたった一枚の襦袢も肌蹴ている様は――なるほど、なかなか扇情を擽るシルエットである。
「へっ!、助平め。
まっ、そもそも村人全員を始末するのが命令だからなぁ……確かに、"後"でも良いだろう」
男たちは、刀を地面に突き刺し、腰ひもを緩め始めた。
「――いっ!、いやっ!」
女は、男たちの会話と行動から、彼らが自分に何をしようとしているかを瞬時に理解した。
自分は――男たちに凌辱された後、殺されると。
女の恐怖から来る震えは、頂点に達しようとしていた。
「来ないでぇ!、来ないでっ!!」
女の叫びを完全に無視し、ニタニタと笑っている男の左手が女の肩へと伸びる――その時っ!
ザザザザッ!、ドガッ!
「――ぐあっ!」
女が寄りかかっていた大木の枝から、"何か"が女の前に落ちてきた。
「つぅ~!、何だ!?、一体――っ!」
顔に被さった葉を振り払い、男は大木に向き直る。
「――それは、こっちのセリフだ、バカ野郎」
枝から落ちて来たのは、"物"ではなく"人"――みすぼらしい風体の若い男だった。
この暗さでは、ハッキリと視認出来ないが――継ぎ接ぎや充て布だらけの汚れた着物を着流し、腰には、そんな風体とは釣り合わない、立派な鞘が提げられている。
若い男は、もの凄く不機嫌な態度で、身体にまとわりついた木の葉を払うと、ギロッと一瞥して周りを見渡す。
男たちは、ビクッと強烈な殺気を感じ取り、後退りをしたが、恐怖のあまり、目を閉じている女はそれに気付かない。
辺りを見渡した若い男は――"なるほど"とでも言っている様な得心した表情で、状況を察し、男たちへの殺気を強める。
「なっ!、何だてめえは?!」
若い男の態度に痺れを切らしたのか、男たちは刀を抜き、構えながら凄み返す。
「……他人が、やっと、ありついた寝床の下で、何をやってんのかと思ったら……」
緩んでいる男たちの腰ひもを見て、若い男はさらに嫌悪の表情を見せる。
「――何のつもりだ?、女一人に二人がかりで」
自分の身体に何も起きない事と、あの男たちとは違う気配に気付いた女が目を開ける。
「くっ!、この野郎!」
その瞬間、蹴られた方の男が刀を振り上げ、若い男に斬りかかる!
「!」
その瞬間、若い男の目つきが――変わるっ!
――ズバッ!
若い男は腰に提げていた鞘から一気に抜刀し、斬りかかってきた男の上半身を逆袈裟懸けに両断した!
男は――『えっ……?』という表情で、自分の状況を見た後――
「――ぎゃぁぁぁっ!」
――と、声を挙げて絶命した。
恐怖に震えていた女も、強姦を提案した方の男も、目の前で行われた惨劇を呆然と眺めている。
ハッ!、――と、我に返った生きている方の男は、後退りしながら刀を投げ捨てると、震える諸手を振って"自分は戦う気はない!"というジェスチャーをする。
「――まっ!、待てよ、兄ちゃん……」
先ほどの光景を見て、こいつはヤバい!!!!と、察した男は、許しを乞うように情けない声を出す。
そして、説得する様に――
「ねっ、寝てるところで悪かったなぁ……どっ、どうだ?、あっ、兄ちゃんも一緒に楽しんだら?」
――と、媚びる様に挙げた提案に、若い男は耳を振るわせて反応する。
男は"脈アリ"と踏んで、畳み掛ける様に更に提案する。
「みっ、見たところ兄ちゃん、流者だろ?
なかなかの上玉だぜぇ~?、この機会を逃すのは損だぜぇ~!」
男は、どこかの客引きの様に、饒舌に撒くし立てる。
その様子を見ていた若い男は、刀をだらりと提げたまま――
「――はぁ~……」
――と、大きなため息を吐き――
「――そんなゲスな命乞いするなんて、胸の"鳳凰"が泣くぜ?」
――そう告げて、切っ先を男の胸に向けた。
よく見れば――男は胸当てを着けていて、そこには小さく鳳凰の紋が象られいる。
「――只の野盗の類いじゃないだろ?、"スヨウ"のお侍さんよぉ?」
その言葉を聞いた男は、表情を一変させ、直ぐ様刀を拾って、若い男に斬りかかる!
――ガキンッ!
刃を合わせた2人は、ギリギリと鍔迫り合いを始める。
「図星――か。
なるほどね、素性に気付かれたからには、殺るしか無ぇ……そーいう事かい」
若い男は静かにそうつぶやき、涼しい顔で競り合いに応じている。
そんな争いに痺れを切らした男は、一旦距離を置き――
「――やあぁぁぁっ!」
――と、気合いを込めて再度、勢いを付けて斬りかかった!
しかし、若い男は冷ややかな表情のまま、そんな裂帛の斬撃を受け止め、軽ぅ~く弾き返すと――
――ズバァッ!
――と、一刀の下に男を切り捨てた。
若い男は、切り捨てた男の骸を一瞥し、刀を腰に提げた鞘に収めた。
そして、若い男が震えたまま呆然としている、女の肩に手を置くと――
「――いやぁぁぁぁっ!、助けてください!、殺さないでぇぇぇっ!」
――と、女の恐怖心が頂点に達して錯乱し、再び叫び声を上げ始めた。
「――ちょ!、ちょっと待って!
大丈夫、大丈夫っ!、俺は、キミの味方だから……ほら、これ!」
――と、転がっている男たちの屍を指差すが――
「!!!!!!!!、いやぁぁぁぁぁぁっっっっ!、助けて!、助けてぇぇっ!」
これぞ、正に"焼け石に水"――女は、更に脅えっぷりが激しくなった。
「あ~!、もう!、どうすればぁ……」
――と、少し頭を巡らせた若い男は、刀を鞘ごと地面に落とした。
「ほら!、俺は丸腰だ!、何もしない!、何もしないからっ!」
若い男は、そう切なそうに懇願する。
「いやぁぁっ!、――あっ!、えっ……?、ふぇっ……?」
女は、少しずつ落ち着きを取り戻し、泣き叫ぶ事を止め始めた。
「ふぃ~っ……やっと、治まってくれたかぁ……」
――と、若い男は安堵の声を上げ――
「――で、一体、何があったんだい?」
――優しい声音で女に問いかけた。
若い男の優しい声音を聞き、少しだけ安堵した女は、声を震わせながらゆっくりと口を開いた。
「むっ、村が――襲われて、父さんも、かっ、母さんも、殺、されてぇ……」
涙混じりに語る女の表情は、思い出すだけでも辛そうに、顔は引きつったままである。
「押し入れに、隠れていた私も、見つかり、そうになって……もう、無我夢中で、逃げて……」
女は、ついに堪えきれなくなり、両手で顔を覆い泣き出した。
「――そうか。
村って、近くにあるっていう、"ヤマカキ村"かい?」
女は若い男の問いに、泣きじゃくりながらもコクンと、小さく頷いた。
「女の子が逃げて来れるって事は、案外近かったんだなぁ……もうちょい、脚を伸ばすべきだったか」
――と、若い男はブツブツと呟くと、女の肩に再度手を置き――
「――わかった、様子を見て来てやるから、ここで待ってな」
――と言って、地面に置いた刀入りの鞘を拾い、腰に提げて小さく口笛を吹いた。
すると、大木の後ろから、一頭の派手な栃栗毛の馬の首がヌウッと伸びてきた。
「コイツは、俺の馬だ。
コイツの側にいれば、とりあえず森の獣とかは寄って来ないだろうから」
男が説明していると、馬は女の全身の匂い嗅ぎ『よろしく!』とでも言うように、鼻息を女の顔にかけた。
「――解ったね?、ここを動くんじゃないよ?」
若い男の問い掛けに、女は力強く頷いた。
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