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襲撃
道程
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「――ふわぁぁぁぁっ……」
ソウタは、馬上で、大きくあくびをした。
閑話めいた、今のヤマカキでの件はさておき――ヨクセ商会の商隊に、荷役護衛の一人として加わり、大陸極東たるオウビの町を旅立ったソウタは、翼域中央部にあるオウクの都へと向っていた。
ソウタは、その翼域内の街道を単調に進む旅路に、正直言って、暇を持て余していた――それ故の大あくびである。
「はっはっはっ!、随分と豪快なあくびをしたなぁ!」
――そう言って、馬首を並べて来たのは、オリエにこの商隊の長を任されている、トウベイという男である。
トウベイは、四十半ばの小柄な男で、10代の頃からヨクセ商会にて働いている、ベテラン行商流者だ。
彼は、オリエから陸路の輸送を取り仕切る役目を任されていて、距離が近い分、荷の動きが激しいオウビ~オウク間の輸送では、こうして、自ら現場指揮に携わるコトもある。
「あっ、悪ぃね、トウベイさん」
ソウタは、あくびを見せた事を詫び、目元に滲んだ涙を拭った。
「はははっ!、良いってコトさ♪
コッチは、アンタが護衛に加わってくれて、助かってんだからさぁ」
トウベイは、そう言って快活に笑って見せ、話をしようと自分の馬をテンに併せ馬をさせる。
「なにせ、護衛募集に4人しか集まらんでよぉ……不安のまんま、出立しようかと思ってたトコで、本当に助かったわ」
「――そうだったらしいねぇ。
ヨクセの護衛は、給金も悪くないし、オウビからオウクまでだったら、往復たった五日でお役御免――命の危険があるとはいえ、戦える流者なら、割の良い仕事だと評判だったはずだけど」
ソウタは、顎の無精ひげを擦りながら考え込む。
「そりゃあねぇ――北コクエが、景気良いからさね。
だから、荷も大口が沢山動いてるしね」
ソウタの疑問に、トウベイはアッサリとそう回答した。
「――へ?、北コクエが?」
「――ほれ、去年あの……"選挙"、だったかぁ?
アレで、国守様――じゃなくて、あそこでは民守って、呼んでたんだったか?
そんな、お役目の人が替わってよぉ……その、新しい民守ってのが、ナニやら民者が流者みてぇな商売の仕方をするのを許して、そういう商売を始めたら、税も安くしてやるという、御布れを出したんだとっ!
それで、一気に北コクエの民者からの仕事が増えたんだとさ」
トウベイは、思いつく語意を精一杯使って、北コクエの経済情勢を説明する。
つまり――北コウオウでは、"選挙"の末に政権交代が起き、新たにリーダーとなった者が、経済構造の改革を行なったコトで景気が好転――故に、北コクエでは、モノもヒトも、オウビに匹敵する賑わいとなっているらしい――というコトだ。
「へぇ~っ!
だったら、ヨクセ商会さんのコトだ……抜かり無く、北コクエでの商売を拡大してるんじゃねぇの?」
ソウタは、若干嫌味っぽく、そう言って話題を茶化す。
「――たりめぇよぉ~っ!、ウチのお嬢は、ツクモ随一の商才とまで呼ばれてんだぜ?、機を読む勘の良さで、敵うヤツなんて、この世界にはいねぇよ~!」
トウベイは、自信タップリに、主であるオリエを褒め称えた。
――オリエが子供の頃から、ヨクセで働いているトウベイは、彼女の事をどうしても"お嬢"呼ばわりをしてしまう。
まあ、当のオリエも、そう呼ばれるコトを気にした体は無いのだが。
トウベイは、前方で3頭の馬が引く、大きな荷車を指差して――
「――今回の荷物だって、半分は、戦が迫ってるから需要が伸びそうな、食料や星石、武器や防具の製造に欠かせない鉄鉱石とかだが、残り半分は、北コクエで需要が伸びてる、反物とか飾り物なんだ。
西の山脈を越えさせるから、ホントはオウクで山越えの準備を整える腹積もりだったんだが、戦を控えてちゃ、旅支度や人集めも間々ならねぇだろうからよ、半分をオウクに置いたら、早々に"テンラク様"まで足を延ばして、そこで準備をする予定さね」
"テンラク"とは――クリン高原にある、都市の呼び名だ。
"様付け"であるコトからも解る様に、ミモト川のそれと同じく、聖地である天船に由来した地名で――
『天船の上にある都』
――という意味で、テンラクと名付けられている。
テンラクの場所は、降臨伝承で天船が着陸した際に、人々が始めてツクモの土を踏んだ場所だとされていて、現に街の地下には、天船そのものと思われる遺跡が埋まっており、天船の甲板部分を中軸に、テンラクの街を形成していった事は、考古学的にも確認されている…
クリ社などの国際機関の本部は、このテンラクに集結しており――威厳や国際的な重要さに加えて、経済の中心である、オウビに匹敵する賑わいがある都市だ。
「――で、ソウタよぉ~!、オウクまで、とは言わんで……山越えも、手伝って貰えねぇのかなぁ?
給金も、お嬢に相談して……俺の責任を持って弾むでよぉ?」
――と、トウベイはすがる様な面持ちで、ソウタに護衛仕事の延長を申し出た。
「いくら、テンラク様で再募集をするとは言っても、護衛の人数の補充は、恐らく、たかが知れたモノになっちまうと思ってる――"オウビじゃ、名も知られた強さ"のおめぇが、終点まで護衛についてくれりゃあ、商隊の長としては、心強いんだけどよ」
トウベイは、ソウタに向けて合掌する様なポーズまでして、彼の説得を試みた。
確かに――街の性質上、公者が多いテンラクで、戦える流者を相当数集めるというのは、かなりキビしいのは見え見えである。
ちなみに――ソウタの事を、"オウビじゃ、名も知られた強さ"と、トウベイが評したのは、例の娼街で用心棒をしていた時の逸話が元だ。
さる娼婦を、傲慢不遜な理由でリンチしたヤクザ者が所属する、構成員が40名ほどの一家の下へ、ソウタは"たった一人で"殴り込みを敢行――お察しの通り、その一家を一晩で壊滅させた経緯がある。
それ以来、オウビの裏社会では――
『ヨクセのお嬢は、バケモノを飼っている!』
――と、畏敬を込めて、ソウタを評しているのだ。
「――悪ぃね、オウクには、ど~しても行かなきゃダメなトコロ……いや、"会わなくちゃならない人が居る"んだ」
ソウタは、申し訳なさそうに、そうトウベイを諭す。
「そっかぁ――おう!、二度は言わねぇっ!、実は……文書"で、お嬢に――
『――ソウタに、終点までの同行を願う様な、旅の邪魔をする無粋なコトはしないコト!』
――って、釘は刺されてたんだわ」
トウベイは、後頭部を掻きながら、眉間にシワを寄せてうな垂れて見せる。
「じゃあ――オリエさんに叱られるの覚悟で?、そう言われると、なんだか申し訳ないなぁ。
でも、人数は確かに少ないけど、三人は色んなトコで一緒に仕事をした事がある、結構、腕が立つ流者たちだし、弓を背負ってる、狼族の残りの一人だって、俺は初顔だけど、なかなかやりそうだぜ?」
ソウタは、護衛の仲間たちをそう評して、トウベイを安心させようと図る。
――彼が、ふと言った"狼族"とは……以前述べた"亜人種"の民族の通称である。
狼族は、まるで首から上だけ、狼の着ぐるみでも被っているかの様な容姿で、首から下はフツーの人間という見た目の亜人種だ。
パッと見は――"予算不足のコスプレ"といった見た目だが、近くで見て、触ってもみれば、なるほど確かに――ちゃんと、地肌から生えた体毛で覆われていて、体温もちゃんと感じるのである。
そんな見た目のとおり、ヒトの数十倍の視力、聴力、嗅覚を誇り、狩猟を得意とする者が多い種族である。
しかし、それはあくまでも"多い"だけで、狼族は亜人種の中でも、他民族からすれば適正が比較的ヒトに近く、狼族が勤めている仕事の種類は実に幅が広い。
「――"ギン"のコトかぁ?、そっかぁ、護衛仕事をすんのは、今回が初めてらしいから、どんなモンかと心配してたんだが」
「へ?、周りへの気の配り方とか、随分堂に入ってるって思ってたんだけど」
「なんでも――故郷では狩人を生業にしてて、今年はどうも獲物不足で、止む無く流者仕事を始めたんだと。
でも、ソウタのお墨付きなら、結構、アテに出来そうだなぁ」
「そんなに買い被らんでよ。
俺だって――流者になって、たかだか三年の若造なんだし」
ソウタが、そう謙遜して照れ臭そうにしていると、話にあったギンの駆る馬がスピードを緩め、二人に馬首を並べて来た。
ギンのシルエットは、ヒトの身体の部分が痩躯ではあるが、背丈は長身で、逞しさも滲み出ている、ガッチリと引き締まった身体つきで、首から上の"狼の部分"は、青毛に覆われたシャープな顔立ちである。
ソウタとトウベイは、狼族特有の並外れた聴力で、ギンに今の会話を聞かれてしまったかと、気まずい顔をして目を合わせる。
「――商隊長さん、前方の茂みに、何か――いや、"誰か"居るぞ」
二人の、そんな様子は歯牙にも掛けず、ギンはしゃがれた声で、ささやく様にそう言った。
「!?、なぁにぃ――!」
トウベイがそう反応した瞬間、ソウタも他の護衛衆も、ギンの発言をちゃんと聞いていて、隊全体に一斉に緊張が奔る!
「前の茂み――って、しばらくは、街道の砂利道が……」
トウベイが、首を傾げてそうつぶやくと――
「――いやっ!、狼族の目なら、もっと先まで見渡せる!、他に……気付いたコトは?!」
――ソウタは、状況を察して、ギンに更なる情報を求める。
ギンは、ソウタの指図の前からクンクンと鼻を鳴らし、その茂みに居る、その"誰か"の詳細をニオイから探る。
「人間族のニオイ――とは、少し違う?、でも、狼族ではないな……」
ギンは、首を傾げながら鼻に神経を集中し、同時に自分も臨戦態勢を取ろうと、背中の弓を取り出し、矢をつがえ始める。
「――俺が先駆けするっ!、ギンは俺の周りを注視して、矢で援護出来る様にしててくれっ!」
ソウタは、皆にそう言い残し、テンに駆け足の指示を出す。
「わかった――任せろ」
ギンは、それだけを言って、茂みを標的に弓の弦を引き絞った。
ソウタは、馬上で、大きくあくびをした。
閑話めいた、今のヤマカキでの件はさておき――ヨクセ商会の商隊に、荷役護衛の一人として加わり、大陸極東たるオウビの町を旅立ったソウタは、翼域中央部にあるオウクの都へと向っていた。
ソウタは、その翼域内の街道を単調に進む旅路に、正直言って、暇を持て余していた――それ故の大あくびである。
「はっはっはっ!、随分と豪快なあくびをしたなぁ!」
――そう言って、馬首を並べて来たのは、オリエにこの商隊の長を任されている、トウベイという男である。
トウベイは、四十半ばの小柄な男で、10代の頃からヨクセ商会にて働いている、ベテラン行商流者だ。
彼は、オリエから陸路の輸送を取り仕切る役目を任されていて、距離が近い分、荷の動きが激しいオウビ~オウク間の輸送では、こうして、自ら現場指揮に携わるコトもある。
「あっ、悪ぃね、トウベイさん」
ソウタは、あくびを見せた事を詫び、目元に滲んだ涙を拭った。
「はははっ!、良いってコトさ♪
コッチは、アンタが護衛に加わってくれて、助かってんだからさぁ」
トウベイは、そう言って快活に笑って見せ、話をしようと自分の馬をテンに併せ馬をさせる。
「なにせ、護衛募集に4人しか集まらんでよぉ……不安のまんま、出立しようかと思ってたトコで、本当に助かったわ」
「――そうだったらしいねぇ。
ヨクセの護衛は、給金も悪くないし、オウビからオウクまでだったら、往復たった五日でお役御免――命の危険があるとはいえ、戦える流者なら、割の良い仕事だと評判だったはずだけど」
ソウタは、顎の無精ひげを擦りながら考え込む。
「そりゃあねぇ――北コクエが、景気良いからさね。
だから、荷も大口が沢山動いてるしね」
ソウタの疑問に、トウベイはアッサリとそう回答した。
「――へ?、北コクエが?」
「――ほれ、去年あの……"選挙"、だったかぁ?
アレで、国守様――じゃなくて、あそこでは民守って、呼んでたんだったか?
そんな、お役目の人が替わってよぉ……その、新しい民守ってのが、ナニやら民者が流者みてぇな商売の仕方をするのを許して、そういう商売を始めたら、税も安くしてやるという、御布れを出したんだとっ!
それで、一気に北コクエの民者からの仕事が増えたんだとさ」
トウベイは、思いつく語意を精一杯使って、北コクエの経済情勢を説明する。
つまり――北コウオウでは、"選挙"の末に政権交代が起き、新たにリーダーとなった者が、経済構造の改革を行なったコトで景気が好転――故に、北コクエでは、モノもヒトも、オウビに匹敵する賑わいとなっているらしい――というコトだ。
「へぇ~っ!
だったら、ヨクセ商会さんのコトだ……抜かり無く、北コクエでの商売を拡大してるんじゃねぇの?」
ソウタは、若干嫌味っぽく、そう言って話題を茶化す。
「――たりめぇよぉ~っ!、ウチのお嬢は、ツクモ随一の商才とまで呼ばれてんだぜ?、機を読む勘の良さで、敵うヤツなんて、この世界にはいねぇよ~!」
トウベイは、自信タップリに、主であるオリエを褒め称えた。
――オリエが子供の頃から、ヨクセで働いているトウベイは、彼女の事をどうしても"お嬢"呼ばわりをしてしまう。
まあ、当のオリエも、そう呼ばれるコトを気にした体は無いのだが。
トウベイは、前方で3頭の馬が引く、大きな荷車を指差して――
「――今回の荷物だって、半分は、戦が迫ってるから需要が伸びそうな、食料や星石、武器や防具の製造に欠かせない鉄鉱石とかだが、残り半分は、北コクエで需要が伸びてる、反物とか飾り物なんだ。
西の山脈を越えさせるから、ホントはオウクで山越えの準備を整える腹積もりだったんだが、戦を控えてちゃ、旅支度や人集めも間々ならねぇだろうからよ、半分をオウクに置いたら、早々に"テンラク様"まで足を延ばして、そこで準備をする予定さね」
"テンラク"とは――クリン高原にある、都市の呼び名だ。
"様付け"であるコトからも解る様に、ミモト川のそれと同じく、聖地である天船に由来した地名で――
『天船の上にある都』
――という意味で、テンラクと名付けられている。
テンラクの場所は、降臨伝承で天船が着陸した際に、人々が始めてツクモの土を踏んだ場所だとされていて、現に街の地下には、天船そのものと思われる遺跡が埋まっており、天船の甲板部分を中軸に、テンラクの街を形成していった事は、考古学的にも確認されている…
クリ社などの国際機関の本部は、このテンラクに集結しており――威厳や国際的な重要さに加えて、経済の中心である、オウビに匹敵する賑わいがある都市だ。
「――で、ソウタよぉ~!、オウクまで、とは言わんで……山越えも、手伝って貰えねぇのかなぁ?
給金も、お嬢に相談して……俺の責任を持って弾むでよぉ?」
――と、トウベイはすがる様な面持ちで、ソウタに護衛仕事の延長を申し出た。
「いくら、テンラク様で再募集をするとは言っても、護衛の人数の補充は、恐らく、たかが知れたモノになっちまうと思ってる――"オウビじゃ、名も知られた強さ"のおめぇが、終点まで護衛についてくれりゃあ、商隊の長としては、心強いんだけどよ」
トウベイは、ソウタに向けて合掌する様なポーズまでして、彼の説得を試みた。
確かに――街の性質上、公者が多いテンラクで、戦える流者を相当数集めるというのは、かなりキビしいのは見え見えである。
ちなみに――ソウタの事を、"オウビじゃ、名も知られた強さ"と、トウベイが評したのは、例の娼街で用心棒をしていた時の逸話が元だ。
さる娼婦を、傲慢不遜な理由でリンチしたヤクザ者が所属する、構成員が40名ほどの一家の下へ、ソウタは"たった一人で"殴り込みを敢行――お察しの通り、その一家を一晩で壊滅させた経緯がある。
それ以来、オウビの裏社会では――
『ヨクセのお嬢は、バケモノを飼っている!』
――と、畏敬を込めて、ソウタを評しているのだ。
「――悪ぃね、オウクには、ど~しても行かなきゃダメなトコロ……いや、"会わなくちゃならない人が居る"んだ」
ソウタは、申し訳なさそうに、そうトウベイを諭す。
「そっかぁ――おう!、二度は言わねぇっ!、実は……文書"で、お嬢に――
『――ソウタに、終点までの同行を願う様な、旅の邪魔をする無粋なコトはしないコト!』
――って、釘は刺されてたんだわ」
トウベイは、後頭部を掻きながら、眉間にシワを寄せてうな垂れて見せる。
「じゃあ――オリエさんに叱られるの覚悟で?、そう言われると、なんだか申し訳ないなぁ。
でも、人数は確かに少ないけど、三人は色んなトコで一緒に仕事をした事がある、結構、腕が立つ流者たちだし、弓を背負ってる、狼族の残りの一人だって、俺は初顔だけど、なかなかやりそうだぜ?」
ソウタは、護衛の仲間たちをそう評して、トウベイを安心させようと図る。
――彼が、ふと言った"狼族"とは……以前述べた"亜人種"の民族の通称である。
狼族は、まるで首から上だけ、狼の着ぐるみでも被っているかの様な容姿で、首から下はフツーの人間という見た目の亜人種だ。
パッと見は――"予算不足のコスプレ"といった見た目だが、近くで見て、触ってもみれば、なるほど確かに――ちゃんと、地肌から生えた体毛で覆われていて、体温もちゃんと感じるのである。
そんな見た目のとおり、ヒトの数十倍の視力、聴力、嗅覚を誇り、狩猟を得意とする者が多い種族である。
しかし、それはあくまでも"多い"だけで、狼族は亜人種の中でも、他民族からすれば適正が比較的ヒトに近く、狼族が勤めている仕事の種類は実に幅が広い。
「――"ギン"のコトかぁ?、そっかぁ、護衛仕事をすんのは、今回が初めてらしいから、どんなモンかと心配してたんだが」
「へ?、周りへの気の配り方とか、随分堂に入ってるって思ってたんだけど」
「なんでも――故郷では狩人を生業にしてて、今年はどうも獲物不足で、止む無く流者仕事を始めたんだと。
でも、ソウタのお墨付きなら、結構、アテに出来そうだなぁ」
「そんなに買い被らんでよ。
俺だって――流者になって、たかだか三年の若造なんだし」
ソウタが、そう謙遜して照れ臭そうにしていると、話にあったギンの駆る馬がスピードを緩め、二人に馬首を並べて来た。
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「!?、なぁにぃ――!」
トウベイがそう反応した瞬間、ソウタも他の護衛衆も、ギンの発言をちゃんと聞いていて、隊全体に一斉に緊張が奔る!
「前の茂み――って、しばらくは、街道の砂利道が……」
トウベイが、首を傾げてそうつぶやくと――
「――いやっ!、狼族の目なら、もっと先まで見渡せる!、他に……気付いたコトは?!」
――ソウタは、状況を察して、ギンに更なる情報を求める。
ギンは、ソウタの指図の前からクンクンと鼻を鳴らし、その茂みに居る、その"誰か"の詳細をニオイから探る。
「人間族のニオイ――とは、少し違う?、でも、狼族ではないな……」
ギンは、首を傾げながら鼻に神経を集中し、同時に自分も臨戦態勢を取ろうと、背中の弓を取り出し、矢をつがえ始める。
「――俺が先駆けするっ!、ギンは俺の周りを注視して、矢で援護出来る様にしててくれっ!」
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