28 / 207
深淵
同行
しおりを挟む
「――レン~!、行くわよぉ~!」
威厳を放つ、木造の巨大な門の前で、オリエはそう声高にレンを呼んだ。
「はっ、はいっ!」
――と、門の中からレンはそそくさと慌しく、風呂敷に包まれた荷物を大事そうに抱えて出て来た。
「なぁに、そんなに慌てなさんな。
今日は何も、商談の類じゃあなく、娼街ん中で食堂開いている、知り合いの婆さんトコへ、茶飲みがてらに菓子を届けるだけなんだからさぁ」
――と、オリエは微笑ましい表情で、風呂敷の上をポンポンと軽く叩く。
「いっ、いえ。
今の私は、全てが勉強中の身の上ですから、常に緊張しているぐらいが、丁度良いのだと思っています」
対するレンは、キリっと身を正し、スッと付き従う様にオリエの後ろに立つ。
――レンが、オリエの下で働き出して7日が過ぎた。
つまり、今はヤマカキ事件から9日が経った、オウビの昼下がり――レンは、屋敷の家事を中心に、ヨクセの本店や常客への使い、オリエが屋敷不在の場合の来客への対応など、この7日間で様々な仕事を経験していた。
「――ホント、アンタが来てくれて助かってるよ。
特に、アンタの来客対応のおかげで、大口の注文を一つ、取れたしねぇ♪」
オリエは嬉しそうに、後ろに付き従うレンに語り掛けながら歩く。
「いえ、私は当たり前に、お茶をお出ししただけで……」
「――それが良かったのさぁ♪
約束も無く、直接にアタシを訪ねて来たお客だったからねぇ……留守番が居なかったら、他所に依頼が行っちまったトコだったんだよ」
レンの活躍でまとまった仕事というのは、海路を用いた北コクエへの反物の輸送案件――スヨウとコウオウが緊張状態というリスクで、困難となってしまった、路に因る北への輸送を、海路へとシフトする動きは――"ツクモ随一"の港町であるオウビには、まさに恰好のビジネスチャンス。
しかも、荷狩りが横行し出したとの報を受け、急に輸送プランが飛んだ作り手は、海路輸送を模索する事に手を焼いている状況――一歩の違いで、大口の契約を逃がす可能性は高いのである。
「"それに応対した娘は、礼儀も良くて、おまけに見目麗しい美少女だった!"――って、たいそう評判らしくてさぁ。
アンタ目当ての依頼も多いって、店先では言ってたねぇ」
――そう、オリエはニタニタと笑い、からかう様にレンにそう言って、振り向いて彼女の頬を人差し指で突く。
レンは、照れ臭そうに、顔を紅潮させて――
「そっ、そんな冗談ばかり言って……からかわないでくださいよぉ」
――と、オリエに抗議する口調で言う。
「アハハ!、そういや――ソウタは今頃、どうしているのかねぇ?」
進行方向に向き直りながら、思い付いた様に、オリエが突然、ソウタの話題に触れると、みるみるとレンの顔色は、先程の照れ隠しとは比較にならないほど、顔中が紅く染まる。
それを、横目で見ていたオリエは――
(あらぁ~……こりゃあ、本気で惚れてるわ。
でも、カタブツのアイツが、連れて来る間に"手を出した"とは、思い難いし……)
――レンの動揺っぷりに、彼女のソウタに対する感情をそう邪推した。
(――一気に火を点けたのは、別れ際に厩で会ったっていう時……かしら?
ソウタって――決して、美形じゃあないけど、自覚無しに、オンナ心を鷲掴みにする様な、言動や行動をするのよねぇ……自覚無しに)
オリエは、心中でソウタの人となりをそう評し、いつの間にか好かれているという、彼の特性とでも言うべきな大事なトコロを、2度も挙げて振り返った。
「ソッ!、ソウタさんが随伴した、商隊のトウベイさん――でしたっけ?
あの方のお話では、用がある女性……の下に、再び伺う用が出来たと聞いたのが、最後だと仰っていましたね」
――と、レンは、ソウタが会いに行ったという"女性"の事を、あからさまに気にしているのが解る言い方で、オリエの話のフリに応じる。
ちなみに――トウベイが金糸龍の指輪の意味を思い出し、会いに行った相手が、まさか皇だと知るのは、まだ若干後の事である。
「うん、トウベイと別れてから――今日でだいたい四日でしょ?
テンの脚なら、軽~く翼域を出ちゃうぐらい経ってるから、どうしてるのかと思ってね」
ソウタが商隊に加わり、オウビを発ってからオウクまでが2日半――支店の宿舎に一泊して計3日、その後の彼の動向を知る由が無いオリエは、レンの様子を見るに連れ、ふと頭を過ぎった疑問を吐露したのである。
「――てっきり、アンタの事を気にして、オウクでの用が済んだら、とんぼ返りして来ると、思ってたんだがね」
オウクからオウビまでは、荷無しならば1日半で着ける距離――用を済ませて、とんぼ返りをしたならば、悠々に着いているほど、時は経っている。
「――何か、大変な用がある様子でしたから、早々には戻られないと思っています」
レンは、別れ際のソウタの背中を思い返し、寂しそうにつぶやいた。
「――まっ、刀聖としても、イロイロと動かなくちゃならない時勢だしねぇ」
オリエは、そう言いながら、ふと目に止まった、路地に捨てられていた新聞を拾い上げる。
そこには――
『スヨウ第三軍、国境を越え皇国領に侵攻――コウオウでは、これに対し義兵隊が組織される報も――』
――という、戦時を告げる見出しが躍っていた。
その見出しを見たレンは――
「戦――始まるんですね」
――と、うつむきながら呟く。
「アイツ……"参戦するかも"って、ボソッと言ってたし――戻らないのは、そのせいかもね」
オリエは口を真一文字に結び、怪訝な表情を見せて、路地に置かれたくずかごに新聞を捨てた。
「ソウタさんが、戦に……」
レンは、背中をブルっと震わせ、心配そうにボソッとつぶやく。
レンは先日、皇の占報を見聞きした際、ソウタが言い渋っていた、ヤマカキ村襲撃の犯人が――スヨウ国境警備隊だったという事実を、オリエから伝え聞いていた。
彼女は――生まれ育った国が、自分たちに対して行った蛮行に、驚きも、うろたえもしなかった。
ただ、それから救ってくれた、ソウタに対する感謝の意を、再度述べただけで。
そんな達観した様と、今の彼女の懸命さを、ふと、思い返してオリエは――
(――過ぎたコトより、これからのコト、か。
可愛い顔してる割に、ホント、強い娘だよねぇ)
――と、関心していた。
そして、オリエは――
「あらあら?、戦は、心配するトコかい?、戦の現人神みてぇな、"刀聖サマ"を向こうに回してさぁ?」
――と、ケラケラと笑い声も混ぜて、レンをからかう。
「そう――なんですけど、私は、ソウタさんが戦っている姿を見た事が無いので……"お優しい方"という印象しかないのです」
レンは、ソウタの表情や言動を思い返し、不安げ声でそう言う。
「ああ、そっかぁ……森の中に、隠れていたんだっけ?、
なら、頼りがいの無いオトコだと思っても、仕方ないかぁ」
オリエも、ソウタの様子を思い浮かべ、苦笑しながら頬をポリポリと掻く。
「そっ!、そこまでは言ってませんよぉ!
優しくて……実は、強くて――とっても、素敵な方だと思っています!」
――と、レンは自分がソウタに抱く、彼への評をそう口にした。
結構、大胆な事を口走っている、自覚をせずに。
それを、聞いていたオリエは――
「――アハハ!、悪かったねぇ。
そんなに"素敵"だと思ってるオトコを、バカにされちゃあ、気分の良いモンじゃないわよねぇ?」
――と、爆弾発言に気付かせる様なエサを撒いて、更にレンをからかう。
「っ?!、オリエさぁ~ん~~~!」
レンは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにうつむきながら、オリエに抗議の視線を送る。
それを見てオリエは、憚る事無く笑い声を漏らし――
「――アハハハハッ!
あ~あっ!、笑ったわぁ……誰かが、側に居るのって、こーいうハナシを出来るのが良いのよねぇ」
――と、噛み締める様につぶやく。
「――レン」
そして、オリエはじっと、レンの目を覗き込んで――
「この七日間で、アンタがした一番の貢献はさ……"こーいう時間"を、くれたコトさ」
――と、嬉しそうな笑顔を見せて、彼女の額を人差し指でツンと突いた。
「オリエさん……」
レンは、オリエの言葉に寂しさを感じ、哀れむ様に彼女の瞳を見詰める。
「なんだか、辛気臭くしちまったかねぇ?
でも、死んだアンタの前任――おトキさんはさ?、アタシが子供の頃から、オヤジの下で屋敷を仕切っててね。
"拾われて来た"、アタシの世話も任されてて――母親代わり、みてぇなモンを亡くしたから、ちょいと落ち込んでたのさ」
オリエは足元の小石を蹴り、照れた様にレンから目を背ける。
「えっ?!、拾われ……って」
レンは、ふいとオリエが言った、彼女の素性に驚く。
「ん?、ああ、そういや、アンタは知らないんだったか。
アタシは、先代の養女さ――ヨクセを起こした、先代には子供が……跡取りが居なくてね。
とある娼婦が、売春の果てにデキちまった、捨てられちまうはずの赤子を……オヤジが拾って、商いのノウハウを叩き込んで、跡取りに仕立てたのが、このアタシ――」
オリエは自分を指差しして、淡々とそう説明する。
「――オウビの衆には、有名なハナシだから、つい知ってるモンだと思っちまったよ」
そう言ってオリエは、遠くに見えてきた、うらびれた街並みに目をやる。
「そんな生まれ、だからなんだろうねぇ……こんな薄汚ぇトコに、つい、足が向いちまうのはさ」
そう、オリエはつぶやき、目線をレンへと移し――
「勉強中だってんなら、見聞きさせてあげるよ――そのために、連れて来たんだしね。
この街の"汚ぇ部分"ってヤツをさ♪」
――と、ニヤリと笑って言った。
威厳を放つ、木造の巨大な門の前で、オリエはそう声高にレンを呼んだ。
「はっ、はいっ!」
――と、門の中からレンはそそくさと慌しく、風呂敷に包まれた荷物を大事そうに抱えて出て来た。
「なぁに、そんなに慌てなさんな。
今日は何も、商談の類じゃあなく、娼街ん中で食堂開いている、知り合いの婆さんトコへ、茶飲みがてらに菓子を届けるだけなんだからさぁ」
――と、オリエは微笑ましい表情で、風呂敷の上をポンポンと軽く叩く。
「いっ、いえ。
今の私は、全てが勉強中の身の上ですから、常に緊張しているぐらいが、丁度良いのだと思っています」
対するレンは、キリっと身を正し、スッと付き従う様にオリエの後ろに立つ。
――レンが、オリエの下で働き出して7日が過ぎた。
つまり、今はヤマカキ事件から9日が経った、オウビの昼下がり――レンは、屋敷の家事を中心に、ヨクセの本店や常客への使い、オリエが屋敷不在の場合の来客への対応など、この7日間で様々な仕事を経験していた。
「――ホント、アンタが来てくれて助かってるよ。
特に、アンタの来客対応のおかげで、大口の注文を一つ、取れたしねぇ♪」
オリエは嬉しそうに、後ろに付き従うレンに語り掛けながら歩く。
「いえ、私は当たり前に、お茶をお出ししただけで……」
「――それが良かったのさぁ♪
約束も無く、直接にアタシを訪ねて来たお客だったからねぇ……留守番が居なかったら、他所に依頼が行っちまったトコだったんだよ」
レンの活躍でまとまった仕事というのは、海路を用いた北コクエへの反物の輸送案件――スヨウとコウオウが緊張状態というリスクで、困難となってしまった、路に因る北への輸送を、海路へとシフトする動きは――"ツクモ随一"の港町であるオウビには、まさに恰好のビジネスチャンス。
しかも、荷狩りが横行し出したとの報を受け、急に輸送プランが飛んだ作り手は、海路輸送を模索する事に手を焼いている状況――一歩の違いで、大口の契約を逃がす可能性は高いのである。
「"それに応対した娘は、礼儀も良くて、おまけに見目麗しい美少女だった!"――って、たいそう評判らしくてさぁ。
アンタ目当ての依頼も多いって、店先では言ってたねぇ」
――そう、オリエはニタニタと笑い、からかう様にレンにそう言って、振り向いて彼女の頬を人差し指で突く。
レンは、照れ臭そうに、顔を紅潮させて――
「そっ、そんな冗談ばかり言って……からかわないでくださいよぉ」
――と、オリエに抗議する口調で言う。
「アハハ!、そういや――ソウタは今頃、どうしているのかねぇ?」
進行方向に向き直りながら、思い付いた様に、オリエが突然、ソウタの話題に触れると、みるみるとレンの顔色は、先程の照れ隠しとは比較にならないほど、顔中が紅く染まる。
それを、横目で見ていたオリエは――
(あらぁ~……こりゃあ、本気で惚れてるわ。
でも、カタブツのアイツが、連れて来る間に"手を出した"とは、思い難いし……)
――レンの動揺っぷりに、彼女のソウタに対する感情をそう邪推した。
(――一気に火を点けたのは、別れ際に厩で会ったっていう時……かしら?
ソウタって――決して、美形じゃあないけど、自覚無しに、オンナ心を鷲掴みにする様な、言動や行動をするのよねぇ……自覚無しに)
オリエは、心中でソウタの人となりをそう評し、いつの間にか好かれているという、彼の特性とでも言うべきな大事なトコロを、2度も挙げて振り返った。
「ソッ!、ソウタさんが随伴した、商隊のトウベイさん――でしたっけ?
あの方のお話では、用がある女性……の下に、再び伺う用が出来たと聞いたのが、最後だと仰っていましたね」
――と、レンは、ソウタが会いに行ったという"女性"の事を、あからさまに気にしているのが解る言い方で、オリエの話のフリに応じる。
ちなみに――トウベイが金糸龍の指輪の意味を思い出し、会いに行った相手が、まさか皇だと知るのは、まだ若干後の事である。
「うん、トウベイと別れてから――今日でだいたい四日でしょ?
テンの脚なら、軽~く翼域を出ちゃうぐらい経ってるから、どうしてるのかと思ってね」
ソウタが商隊に加わり、オウビを発ってからオウクまでが2日半――支店の宿舎に一泊して計3日、その後の彼の動向を知る由が無いオリエは、レンの様子を見るに連れ、ふと頭を過ぎった疑問を吐露したのである。
「――てっきり、アンタの事を気にして、オウクでの用が済んだら、とんぼ返りして来ると、思ってたんだがね」
オウクからオウビまでは、荷無しならば1日半で着ける距離――用を済ませて、とんぼ返りをしたならば、悠々に着いているほど、時は経っている。
「――何か、大変な用がある様子でしたから、早々には戻られないと思っています」
レンは、別れ際のソウタの背中を思い返し、寂しそうにつぶやいた。
「――まっ、刀聖としても、イロイロと動かなくちゃならない時勢だしねぇ」
オリエは、そう言いながら、ふと目に止まった、路地に捨てられていた新聞を拾い上げる。
そこには――
『スヨウ第三軍、国境を越え皇国領に侵攻――コウオウでは、これに対し義兵隊が組織される報も――』
――という、戦時を告げる見出しが躍っていた。
その見出しを見たレンは――
「戦――始まるんですね」
――と、うつむきながら呟く。
「アイツ……"参戦するかも"って、ボソッと言ってたし――戻らないのは、そのせいかもね」
オリエは口を真一文字に結び、怪訝な表情を見せて、路地に置かれたくずかごに新聞を捨てた。
「ソウタさんが、戦に……」
レンは、背中をブルっと震わせ、心配そうにボソッとつぶやく。
レンは先日、皇の占報を見聞きした際、ソウタが言い渋っていた、ヤマカキ村襲撃の犯人が――スヨウ国境警備隊だったという事実を、オリエから伝え聞いていた。
彼女は――生まれ育った国が、自分たちに対して行った蛮行に、驚きも、うろたえもしなかった。
ただ、それから救ってくれた、ソウタに対する感謝の意を、再度述べただけで。
そんな達観した様と、今の彼女の懸命さを、ふと、思い返してオリエは――
(――過ぎたコトより、これからのコト、か。
可愛い顔してる割に、ホント、強い娘だよねぇ)
――と、関心していた。
そして、オリエは――
「あらあら?、戦は、心配するトコかい?、戦の現人神みてぇな、"刀聖サマ"を向こうに回してさぁ?」
――と、ケラケラと笑い声も混ぜて、レンをからかう。
「そう――なんですけど、私は、ソウタさんが戦っている姿を見た事が無いので……"お優しい方"という印象しかないのです」
レンは、ソウタの表情や言動を思い返し、不安げ声でそう言う。
「ああ、そっかぁ……森の中に、隠れていたんだっけ?、
なら、頼りがいの無いオトコだと思っても、仕方ないかぁ」
オリエも、ソウタの様子を思い浮かべ、苦笑しながら頬をポリポリと掻く。
「そっ!、そこまでは言ってませんよぉ!
優しくて……実は、強くて――とっても、素敵な方だと思っています!」
――と、レンは自分がソウタに抱く、彼への評をそう口にした。
結構、大胆な事を口走っている、自覚をせずに。
それを、聞いていたオリエは――
「――アハハ!、悪かったねぇ。
そんなに"素敵"だと思ってるオトコを、バカにされちゃあ、気分の良いモンじゃないわよねぇ?」
――と、爆弾発言に気付かせる様なエサを撒いて、更にレンをからかう。
「っ?!、オリエさぁ~ん~~~!」
レンは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにうつむきながら、オリエに抗議の視線を送る。
それを見てオリエは、憚る事無く笑い声を漏らし――
「――アハハハハッ!
あ~あっ!、笑ったわぁ……誰かが、側に居るのって、こーいうハナシを出来るのが良いのよねぇ」
――と、噛み締める様につぶやく。
「――レン」
そして、オリエはじっと、レンの目を覗き込んで――
「この七日間で、アンタがした一番の貢献はさ……"こーいう時間"を、くれたコトさ」
――と、嬉しそうな笑顔を見せて、彼女の額を人差し指でツンと突いた。
「オリエさん……」
レンは、オリエの言葉に寂しさを感じ、哀れむ様に彼女の瞳を見詰める。
「なんだか、辛気臭くしちまったかねぇ?
でも、死んだアンタの前任――おトキさんはさ?、アタシが子供の頃から、オヤジの下で屋敷を仕切っててね。
"拾われて来た"、アタシの世話も任されてて――母親代わり、みてぇなモンを亡くしたから、ちょいと落ち込んでたのさ」
オリエは足元の小石を蹴り、照れた様にレンから目を背ける。
「えっ?!、拾われ……って」
レンは、ふいとオリエが言った、彼女の素性に驚く。
「ん?、ああ、そういや、アンタは知らないんだったか。
アタシは、先代の養女さ――ヨクセを起こした、先代には子供が……跡取りが居なくてね。
とある娼婦が、売春の果てにデキちまった、捨てられちまうはずの赤子を……オヤジが拾って、商いのノウハウを叩き込んで、跡取りに仕立てたのが、このアタシ――」
オリエは自分を指差しして、淡々とそう説明する。
「――オウビの衆には、有名なハナシだから、つい知ってるモンだと思っちまったよ」
そう言ってオリエは、遠くに見えてきた、うらびれた街並みに目をやる。
「そんな生まれ、だからなんだろうねぇ……こんな薄汚ぇトコに、つい、足が向いちまうのはさ」
そう、オリエはつぶやき、目線をレンへと移し――
「勉強中だってんなら、見聞きさせてあげるよ――そのために、連れて来たんだしね。
この街の"汚ぇ部分"ってヤツをさ♪」
――と、ニヤリと笑って言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる