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囚われの皇
囚われの皇
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「……」
「――ふんっ、あなたがサトコ、ですか……」
ここは、オウクにある"仮牢"――言わば、拘置所に当たる建物の中である。
その内の一つに収監されている、やつれた表情でうな垂れている女性は、当世皇サトコ――鉄格子を境に、彼女と対しているのは、共佑党筆頭同志ユキオである。
「――貴様あっ!、この世界の象徴たる皇様を呼び捨てにするなど!、ツクモが民としてはあり得ない言動ぉっ!、恥を知れぇっ!」
真向えの牢に入れられ、喚き散らしているのはカオリ――サトコと比べると、彼女はまだまだ血気盛んで、ユキオへ嚙みつかんばかりに喰ってかかる。
ちなみに――二人とも、囚人服の様に着せられているのは"民衣"――南コクエの全ての民に、均一的に配布され、それを着て暮らす事が義務付けられている服である。
南コクエには"着飾る自由"は存在しない――貧富の差を失くすために、贅沢の典型とも言える服飾活動は禁忌とされ、皆が均一……しかも、安価で生産がし易い、この"民衣"と呼ばれる極々シンプルな造りの着物しか、纏う事は事実上認められないのである。
「ふふ……"この世界の象徴"とは、また大層な標榜だこと――"民の富を略取する事で生きる害虫"とでも呼ぶ方が相応しのでは?」
「!!!!!!、貴っ様ぁぁぁぁぁっ!、そこになおれぇぇぇぇぇっ!
我が長槍にてっ!、串刺しにしてくれよぉぉっ!」
ユキオに随伴する、皆導志七人衆の一人――ミズホという女が、サトコの顔を一瞥して言った暴言に、カオリは烈火の如く怒り、掴んでいる鉄格子を激しく揺する。
「ミズホさん――言い得て妙とは思いますが、せめて"石潰し"、いや、"社会のお荷物"で、留めて置きませんと」
「!!!!、うわぁっ!、うわあああっ!、殺すっ!、貴様らぁっ!、絶対に殺――」
ユキオが、補足として言った言葉を機に、カオリの怒りは頂点に達し、狂気に似た面持ちで鉄格子の間に手を捻じ込み、彼の手首を掴まんと、手を伸ばすが――
「――?!、ぐはぁっ……」
――カオリのみぞおちに、槍……いや、"短槍の柄"が喰い込み、その一撃で彼女はもんどり打って倒れ込む。
「――ったく、るさいねぇ。
ココは、イヤでも音が反響するんだ……ぎゃあぎゃあ喚くじゃないよ、お嬢ちゃん」
その一撃をくれたのは、得物の形状で誰かが丸解かりなスズ。
彼女は、腹を抑えて悶絶するカオリの姿を見やって、そう言い捨てた。
「この国も、アンタ自身も――悲しいかな負けたのさ、共佑党との戦にね。
まあ、アンタに限っては、"アタシにも負けた"っていうオマケも付くがね♪」
「!!!!、くぅ……っ!」
猫耳を震わせ、喜々としてスズが放ったその言葉に、悶えるカオリは腹部の痛みとは違った意味での苦悶の表情をする。
そう――カオリとスズ、この二人の間にはちょっとした遺恨が出来ていた。
だが、それに関しては、後の講釈まで待って頂こう……
「私に――その皇に、何の御用なのです?
『皆を導く』という、尊い貴方たちが?」
サトコは、目を瞑ったまま、自分を一瞥しているユキオたちに向けて、自虐混じりにそう呟いた。
「ようやく、口を開きましたか――"神の子孫を気取る詐欺師"、サトコよ」
ユキオは、ニヤっと笑い、座っている彼女と目線の高さを合わせる様に、その場に屈む。
「しかし――"尊い"は、頂けませんね。
その様に、"古き考え"に当てはめる物言いは、やめていただきたい」
ユキオは、相変らず微笑を浮べてはいるが、明らかに不満気にそうサトコに言う。
「貴方たちは――自らを、民を、国を"導く七人"であると、標榜しているのでしょう?
それは、"尊き者の所業"なのでは?」
「――ですから、"古き考えに当てはめるのは"と言いました。
人とは本来、何事にも平等でなければならない存在――尊いも、卑しいも無いのです。
今のツクモは、その基本的な事柄が成されていない――だから、共佑党が立ち上がっただけ。
まあ、そんな当然の行為と志は、あなたの様な祖先から続く詐欺師一族の者には解からないでしょうけど」
サトコの最大限の尊重を、そう切り捨てたユキオの態度に、サトコは小さな溜め息で応じ――
「――では、もう一度尋ねましょう。
私に……何の用ですか?」
――目を見開き、真っ直ぐにユキオの瞳を見詰め、彼へ再びそう問うた。
「用とは二つ――まず一つに、神言の間……でしたか?
あの中へと至る方法を教えてください――同志の皆さんが、扉を開けられずに困っています」
ユキオは、穏やかにそう言って、サトコの反応を試す様な目配せをする。
「あの中にっ!、皆から搾取した蓄財を隠しているのだろうっ!?
うぬら特権を得た者のやる事など、全てお見通しだぁっ!」
ユキオの問いに呼応して、もう一人の随伴者――皆導志七人衆の一人で、大柄な中年男であるカズオは、激昂してサトコの胸座を掴む。
「――っ!?、うわああああっ!、皇様ぁ!
くっそぉぉぉっ!、出せえぇぇっ!、ここから出せぇぇぇぇっ!」
サトコへの蛮行に、苦しみから立ち直り掛けていたカオリは、再度怒り狂い牢の中で暴れ出す。
「おい……そいつぁちと、やり過ぎじゃあないのかい?
この娘の神具だけじゃ、あの部屋の扉は開かないってハナシだ――それを、この娘が試して見せるのにも、アタシは立ち会ったし直にも観た。
そいつを改めて訊くのは、今更だろうよ?」
スズも、カズオの行為には嫌悪の表情を覗かせ、意外にもサトコを庇う体でそう尋問に割って入る。
「その猫族の言うとおりです。
神言の間は私――皇と、一人以上の神具所持者が揃わなければ、中に入る事は叶わない封がされている場所。
開けたければ、五人の内のどなたかを連れて来るしかありません」
「ですから、その五人の内の一人である刀聖――いえ、"あなたの恋人"を、一体何処に逃がしたのです?
私たちが真に知りたいのは、ソコなのですよ」
サトコが、言い飽きた態度で言った、神言の間へと入るための封印の解説に向けて、ユキオは被さる様にそう口を挟む。
ユキオたちは――まだ、この時点では、流洲の関での南コクエ軍大敗の報は知らない。
「あの"刀聖"とかいう存在は、何かを成すワケでもないのに、迷信染みた伝承を笠に着て、人心を乱しています。
あの伝承は、私たちが目指す共営社会には要らない妄言――ですから、あの者にも共営社会の名の下に、裁きを与えねばならないのです」
ユキオは、目を据わらせ、サトコへその目を見詰め返す。
「――はっはっはっ!、刀聖様を裁くだとぉ?
聞いて呆れるぅ!、刀聖様の光刃によって、裁かれるのは貴様らの方だっ!」
カオリは、嬉々としてそう喚き、狂ったような笑いを獄中に響かせる。
「ふっ――妄言とは、まさにその勘違いの事を言うのです。
確かに、クリ社への使者をお願いして、その費用をお出ししたのは事実です――しかし、刀聖と私は恋人同士ではありませんっ!」
サトコは、キッパリと認めるトコロは認め、そして堂々と、刀聖との熱愛疑惑を否認した。
(……恋人同士に成れるモノなら、むしろ成りたかったですよぉ!)
心中では――そんな愚痴めいた言葉を垂れ流してはいるが。
「ふん――まあ、良いでしょう。
それにしても、あの部屋を開けるにも『神具』ですか。
まったく――"神"などという、御伽草子の中の世迷言を、いつまでもいつまでも振り翳しているから、自分たちが敗れたとは思わないのですか?」
ユキオは、侮蔑の眼差しでサトコを睨み――
「――それ故に、民に配分されるべき土地をその様な世迷言を盾に眠らせ、みなさんを潤す機会を逸している。
なのにっ!、皇たち――いえ、君主という、"あるまじき存在"たちは、替わらずにその不当な利益を貪り、嫌が応にもそれを奪い取るっ!
その様な所業こそが、万人に対する罪だと思わないのですかっ!?」
――と、演説染みた問答を始めた。
「民からのその様な不満は、改善せねばならぬ事柄であると、皇に限らず、各国の長たちもまた、様々な手を打っています」
「それでは温いのですよっ!
それに、何をしようとも結局はっ!、あなたたちは自分たちの利益が削がれる様な改革は行わないっ!
だからぁっ!、この世界には荒療治が必要なのですっ!、徹底的で、根本的な革命がぁっ!」
サトコが、冷静に今までの様々な尽力についてそう述べると、ユキオは激昂し始め、拳を握って鉄格子越しに彼女へ詰め寄る。
「貴方がたの主張――語る思想の崇高さは理解出来ます。
しかしっ!、それは民たちに、個々の欲を捨てさせ、個々が社会全体のために奉仕すべきという、貴方がたの言う理想では……そこに暮らす民の心に、幸福は生まれませんっ!」
詰め寄るユキオに対し、サトコは毅然とした態度で、そう力強く反論した。
「ふんっ!、君主どもの支配から脱し、富や地位、能力の差などに縛られず、皆が同等の暮らしが出来る事こそがっ!、唯一無二の幸福であろうて!」
サトコの反論を受け、ナニかがキレた様にユキオは熱っぽくそう叫び、憤怒の表情で彼女を睨み付け、対するサトコも、変わらず毅然とした面持ちで、彼の眼光を真っ直ぐ見詰める。
「ふん!、私とした事が――詐欺師一族の小娘が語る世迷言などに、熱くなってしまいましたね。
ですが、おかげで二つ目の用は既に済みました」
ユキオは落ち着こうと、両手で自分の顔を覆い、指の間から相変らず、サトコの毅然とした態度を睨む。
「これまでの所業を悔い改め――共に共営社会の実現に奉じる気があるのならば、その罪を免じ、同志の末席に加えてやりましょうと伝えるつもりで来ましたが、その答えは、今の問答でもはや明白!」
ユキオは、眉間にシワを寄せ、顔をワナワナと震わせた両手で覆い――
「――オウクに生まれし娘、サトコよ。
汝を、我らが掲げるコクエ共和国憲法に基づく法にて、これまでの所業を裁くため、四日後の夕刻――オウクが広場にて、公開裁判を行うっ!」
――緩んだ口元を晒しながら、サトコへとそう告げるのだった。
「――ふんっ、あなたがサトコ、ですか……」
ここは、オウクにある"仮牢"――言わば、拘置所に当たる建物の中である。
その内の一つに収監されている、やつれた表情でうな垂れている女性は、当世皇サトコ――鉄格子を境に、彼女と対しているのは、共佑党筆頭同志ユキオである。
「――貴様あっ!、この世界の象徴たる皇様を呼び捨てにするなど!、ツクモが民としてはあり得ない言動ぉっ!、恥を知れぇっ!」
真向えの牢に入れられ、喚き散らしているのはカオリ――サトコと比べると、彼女はまだまだ血気盛んで、ユキオへ嚙みつかんばかりに喰ってかかる。
ちなみに――二人とも、囚人服の様に着せられているのは"民衣"――南コクエの全ての民に、均一的に配布され、それを着て暮らす事が義務付けられている服である。
南コクエには"着飾る自由"は存在しない――貧富の差を失くすために、贅沢の典型とも言える服飾活動は禁忌とされ、皆が均一……しかも、安価で生産がし易い、この"民衣"と呼ばれる極々シンプルな造りの着物しか、纏う事は事実上認められないのである。
「ふふ……"この世界の象徴"とは、また大層な標榜だこと――"民の富を略取する事で生きる害虫"とでも呼ぶ方が相応しのでは?」
「!!!!!!、貴っ様ぁぁぁぁぁっ!、そこになおれぇぇぇぇぇっ!
我が長槍にてっ!、串刺しにしてくれよぉぉっ!」
ユキオに随伴する、皆導志七人衆の一人――ミズホという女が、サトコの顔を一瞥して言った暴言に、カオリは烈火の如く怒り、掴んでいる鉄格子を激しく揺する。
「ミズホさん――言い得て妙とは思いますが、せめて"石潰し"、いや、"社会のお荷物"で、留めて置きませんと」
「!!!!、うわぁっ!、うわあああっ!、殺すっ!、貴様らぁっ!、絶対に殺――」
ユキオが、補足として言った言葉を機に、カオリの怒りは頂点に達し、狂気に似た面持ちで鉄格子の間に手を捻じ込み、彼の手首を掴まんと、手を伸ばすが――
「――?!、ぐはぁっ……」
――カオリのみぞおちに、槍……いや、"短槍の柄"が喰い込み、その一撃で彼女はもんどり打って倒れ込む。
「――ったく、るさいねぇ。
ココは、イヤでも音が反響するんだ……ぎゃあぎゃあ喚くじゃないよ、お嬢ちゃん」
その一撃をくれたのは、得物の形状で誰かが丸解かりなスズ。
彼女は、腹を抑えて悶絶するカオリの姿を見やって、そう言い捨てた。
「この国も、アンタ自身も――悲しいかな負けたのさ、共佑党との戦にね。
まあ、アンタに限っては、"アタシにも負けた"っていうオマケも付くがね♪」
「!!!!、くぅ……っ!」
猫耳を震わせ、喜々としてスズが放ったその言葉に、悶えるカオリは腹部の痛みとは違った意味での苦悶の表情をする。
そう――カオリとスズ、この二人の間にはちょっとした遺恨が出来ていた。
だが、それに関しては、後の講釈まで待って頂こう……
「私に――その皇に、何の御用なのです?
『皆を導く』という、尊い貴方たちが?」
サトコは、目を瞑ったまま、自分を一瞥しているユキオたちに向けて、自虐混じりにそう呟いた。
「ようやく、口を開きましたか――"神の子孫を気取る詐欺師"、サトコよ」
ユキオは、ニヤっと笑い、座っている彼女と目線の高さを合わせる様に、その場に屈む。
「しかし――"尊い"は、頂けませんね。
その様に、"古き考え"に当てはめる物言いは、やめていただきたい」
ユキオは、相変らず微笑を浮べてはいるが、明らかに不満気にそうサトコに言う。
「貴方たちは――自らを、民を、国を"導く七人"であると、標榜しているのでしょう?
それは、"尊き者の所業"なのでは?」
「――ですから、"古き考えに当てはめるのは"と言いました。
人とは本来、何事にも平等でなければならない存在――尊いも、卑しいも無いのです。
今のツクモは、その基本的な事柄が成されていない――だから、共佑党が立ち上がっただけ。
まあ、そんな当然の行為と志は、あなたの様な祖先から続く詐欺師一族の者には解からないでしょうけど」
サトコの最大限の尊重を、そう切り捨てたユキオの態度に、サトコは小さな溜め息で応じ――
「――では、もう一度尋ねましょう。
私に……何の用ですか?」
――目を見開き、真っ直ぐにユキオの瞳を見詰め、彼へ再びそう問うた。
「用とは二つ――まず一つに、神言の間……でしたか?
あの中へと至る方法を教えてください――同志の皆さんが、扉を開けられずに困っています」
ユキオは、穏やかにそう言って、サトコの反応を試す様な目配せをする。
「あの中にっ!、皆から搾取した蓄財を隠しているのだろうっ!?
うぬら特権を得た者のやる事など、全てお見通しだぁっ!」
ユキオの問いに呼応して、もう一人の随伴者――皆導志七人衆の一人で、大柄な中年男であるカズオは、激昂してサトコの胸座を掴む。
「――っ!?、うわああああっ!、皇様ぁ!
くっそぉぉぉっ!、出せえぇぇっ!、ここから出せぇぇぇぇっ!」
サトコへの蛮行に、苦しみから立ち直り掛けていたカオリは、再度怒り狂い牢の中で暴れ出す。
「おい……そいつぁちと、やり過ぎじゃあないのかい?
この娘の神具だけじゃ、あの部屋の扉は開かないってハナシだ――それを、この娘が試して見せるのにも、アタシは立ち会ったし直にも観た。
そいつを改めて訊くのは、今更だろうよ?」
スズも、カズオの行為には嫌悪の表情を覗かせ、意外にもサトコを庇う体でそう尋問に割って入る。
「その猫族の言うとおりです。
神言の間は私――皇と、一人以上の神具所持者が揃わなければ、中に入る事は叶わない封がされている場所。
開けたければ、五人の内のどなたかを連れて来るしかありません」
「ですから、その五人の内の一人である刀聖――いえ、"あなたの恋人"を、一体何処に逃がしたのです?
私たちが真に知りたいのは、ソコなのですよ」
サトコが、言い飽きた態度で言った、神言の間へと入るための封印の解説に向けて、ユキオは被さる様にそう口を挟む。
ユキオたちは――まだ、この時点では、流洲の関での南コクエ軍大敗の報は知らない。
「あの"刀聖"とかいう存在は、何かを成すワケでもないのに、迷信染みた伝承を笠に着て、人心を乱しています。
あの伝承は、私たちが目指す共営社会には要らない妄言――ですから、あの者にも共営社会の名の下に、裁きを与えねばならないのです」
ユキオは、目を据わらせ、サトコへその目を見詰め返す。
「――はっはっはっ!、刀聖様を裁くだとぉ?
聞いて呆れるぅ!、刀聖様の光刃によって、裁かれるのは貴様らの方だっ!」
カオリは、嬉々としてそう喚き、狂ったような笑いを獄中に響かせる。
「ふっ――妄言とは、まさにその勘違いの事を言うのです。
確かに、クリ社への使者をお願いして、その費用をお出ししたのは事実です――しかし、刀聖と私は恋人同士ではありませんっ!」
サトコは、キッパリと認めるトコロは認め、そして堂々と、刀聖との熱愛疑惑を否認した。
(……恋人同士に成れるモノなら、むしろ成りたかったですよぉ!)
心中では――そんな愚痴めいた言葉を垂れ流してはいるが。
「ふん――まあ、良いでしょう。
それにしても、あの部屋を開けるにも『神具』ですか。
まったく――"神"などという、御伽草子の中の世迷言を、いつまでもいつまでも振り翳しているから、自分たちが敗れたとは思わないのですか?」
ユキオは、侮蔑の眼差しでサトコを睨み――
「――それ故に、民に配分されるべき土地をその様な世迷言を盾に眠らせ、みなさんを潤す機会を逸している。
なのにっ!、皇たち――いえ、君主という、"あるまじき存在"たちは、替わらずにその不当な利益を貪り、嫌が応にもそれを奪い取るっ!
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――と、演説染みた問答を始めた。
「民からのその様な不満は、改善せねばならぬ事柄であると、皇に限らず、各国の長たちもまた、様々な手を打っています」
「それでは温いのですよっ!
それに、何をしようとも結局はっ!、あなたたちは自分たちの利益が削がれる様な改革は行わないっ!
だからぁっ!、この世界には荒療治が必要なのですっ!、徹底的で、根本的な革命がぁっ!」
サトコが、冷静に今までの様々な尽力についてそう述べると、ユキオは激昂し始め、拳を握って鉄格子越しに彼女へ詰め寄る。
「貴方がたの主張――語る思想の崇高さは理解出来ます。
しかしっ!、それは民たちに、個々の欲を捨てさせ、個々が社会全体のために奉仕すべきという、貴方がたの言う理想では……そこに暮らす民の心に、幸福は生まれませんっ!」
詰め寄るユキオに対し、サトコは毅然とした態度で、そう力強く反論した。
「ふんっ!、君主どもの支配から脱し、富や地位、能力の差などに縛られず、皆が同等の暮らしが出来る事こそがっ!、唯一無二の幸福であろうて!」
サトコの反論を受け、ナニかがキレた様にユキオは熱っぽくそう叫び、憤怒の表情で彼女を睨み付け、対するサトコも、変わらず毅然とした面持ちで、彼の眼光を真っ直ぐ見詰める。
「ふん!、私とした事が――詐欺師一族の小娘が語る世迷言などに、熱くなってしまいましたね。
ですが、おかげで二つ目の用は既に済みました」
ユキオは落ち着こうと、両手で自分の顔を覆い、指の間から相変らず、サトコの毅然とした態度を睨む。
「これまでの所業を悔い改め――共に共営社会の実現に奉じる気があるのならば、その罪を免じ、同志の末席に加えてやりましょうと伝えるつもりで来ましたが、その答えは、今の問答でもはや明白!」
ユキオは、眉間にシワを寄せ、顔をワナワナと震わせた両手で覆い――
「――オウクに生まれし娘、サトコよ。
汝を、我らが掲げるコクエ共和国憲法に基づく法にて、これまでの所業を裁くため、四日後の夕刻――オウクが広場にて、公開裁判を行うっ!」
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