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世界への宿題
凶気の舞
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「母さん、みんな――カオリを放して貰うよ!」
コケツ衆の眼前に現われたタマは、目を鋭く据わらせ、獣の亜人種に取っては臨戦態勢である事を意味する、尾の先を立てる様で拳を構えた。
「くっ!、タマ――本当に敵方にっ!」
「――ったく、やり難いねぇ。
姐さんの娘……皆が妹みてぇに可愛がってた娘と、戦場で会うのはさっ!」
コケツ衆たちは、困惑した表情で武器を構え、同じ様に尾を立てる。
「おめぇらっ!、アタシは退けと言ったはずだぁ!、さっさとしねぇかいっ!」
――が、スズは突然一喝し、それに驚いたコケツ衆たちは振り向いて目を見張る。
「でっ!、でも!、姐さんとタマが――アンタら母娘が、マジに殺り合うトコなんて、アタシらは観たくねぇよっ!
姐さんこそ退いて、さっさと刀聖の野郎を抑えに――」
コケツ衆の一人が、熱心に留まる訳を話している間に、タマは、ゆらりと空気に溶け込む様な入りで、前へと駆け出し――
「!?、ぐわぁっ!」
――その一人のみぞおちに、強烈なボディーブローを叩き込み、打たれたその一人は悶絶して蹲る。
「そんな、気遣いなんて要らないんだよぉ……アタシは、母さんと殺り合えるのが楽しみで、ゾクゾクしてるんだからさぁ?」
タマは、狂気地味た表情でそう呟き、蹲った眼下の一人を一瞥する。
「そーいうこった――痛い思いをしたくなきゃ、アタシの言うとおりにしときな。
ハッキリ言って、邪魔なんだよぉ……これから始まる『楽しい母娘喧嘩』の周りを、他人がウロチョロしてんのはさぁ?」
タマの動きと、言葉に呼応する様に、スズはそんな事を呟きながら短槍を構える。
「――シロと合流して、さっさと退きな。
まだ、駆け出しとはいえ――親バカに聞こえるかもしれねぇが、あの娘の強さは、アンタらの手に負えるモンじゃあ……ねぇっ!」
「!」
一気にタマとの間合いを詰め、短槍を振るって突進して来たスズの一撃に、タマは押し込まれて後ろへと下がる。
「くっ!、姐さん!、アタシらは、アンタが娘に殺されるのも、アンタが娘を殺してくるのも――嫌だからねっ!?」
コケツ衆の皆は、そんな言葉を辛そうに言い残し、その場から退却を始めた。
「へへ、随分と、難しい事を言ってくれるねぇ――ココは、殺し合うトコだろうが」
「――そだね、それには賛成する……よぉっ!」
タマが放った浅い前蹴りを受け、スズは短槍を下げ、一旦距離を取る。
「ふふ――嬉しいねぇ♪
自分の娘が、更に強くなって目の前に出て来るのは、コケツの母親にとっては、冥利ってヤツだよ♪」
スズは、舌なめずりをし、楽しそうに自分の娘の雄々しい姿を見据えて目を細めた。
「母さん――アタシは、アンタを許さないっ!
友達のサトコを悲しませる手伝いをしたり、仲間のカオリをあんなに痛めつけたり、良くしてくれてたカツトシを殺った、アンタをっ!」
タマは、飛び込む様に距離を詰め、牽制を主とした連撃を放ち、スズはそれを短槍を操って巧みに受け流す。
「アンタ……コレ、"仕事"として、請けたモンじゃないのかい?」
「そうだよっ!、コウオウのみんなには、すっごく世話になったんだ!、その恩返しだよぉっ!」
二人は最接近し、手甲と短槍の刃が鍔競り合う恰好で密着し――
「前言撤回だ……ガッカリだよ!
一端の傭兵にさせるために、修行の旅に出した愛娘が、よもや、忠義だ恩義だって言う、ヒトの理屈に毒されてるとはねぇっ!」
――スズは、顔色を変えて激昂し、獰猛に威嚇して見せた。
「母親が、再教育してやらないとね。
てめぇが――誰かを殺して、それで得た金で飯を食ってく……"傭兵"って生業の娘だってコト、思い出させてあげるよ!」
スズは、短槍を退いてまたも距離を取り、その怒った形相のまま、全身を低く屈め短槍を構え直した。
「なっ……何なのだ?、この目の前の光景は……」
場面は、ほんの少しだけ移り、七人衆が集まっている御所のバルコニー。
ユキオを始めとした皆導志七人衆は、皆が皆とて顔面を蒼白させ、眼下で起きている光景を理解出来ず、前出した先程の呟きはその気持ちを表す、カズオが発した言葉だ。
その眼下で起きている光景とは――南コクエ兵数百人対、ソウタ唯一人という、端から見たら絶大な戦力差……な、はずの戦闘シーンだった。
だが、七人衆が当初、想像していたモノとは大きく違い――いや、真逆だと言うのが正しい様相であった。
たった一人が、数百人を翻弄し、辺りには次々と、その数百人たちの中から出来た死体の山が積まれて行く――そんな、想像だにし難い光景を前に、七人衆は一様に絶句して、先程のカズオの呟きは、その果てに溢したモノである。
「はっはっはっはっ!、そらそらぁ~っ♪、逃げ踊れよぉっ!」
被った鬼面を、返り血に因って真紅に染め、戦意を失い逃げようとする兵までもを追いかけて、ソウタは次々と惨殺の限りを尽くす――しかも、楽しげに笑いながら。
「――うっ、おえっ……」
その様を観かねたミズホなどは、ついに、嗚咽を漏らして先程食べていた物を吐き散らかした。
「……ダメだっ!、こんな光景――南コクエ軍が刀聖に蹂躙されている様など、占報に流してはならん!、止めろぉっ!、遮断しろっ!」
占報の送信を司っている指導同志が、放送を止めようと喚くが――集められた界気使いたちは、その指示を聞かず、カメラの役割を果たす界気鏡に、界気を送り続けている。
「貴様らぁっ!、止めろと言っているのが、聞こえんのかぁっ!?」
指導同志は苛立ちに耐え切れず、抜刀して一人の界気使いに斬りかかるっ!
――グサッ!
刀の切っ先が、肉に捻じ込まれる音がした――だが、指導同士の刀の切っ先は、まだ中空に晒されていて、血の一滴する着いてはおらず、界気使いたちの中にも、負傷者は見当たらない。
「――ぐふっ!?」
呻きの様な声が聞こえたのは、苦悶の表情で不思議気に辺りを見回す――指導同志、その人である。
「――止められるワケには、行かんのでな?
この占報こそが、刀聖様の策の肝である故」
そう言って、指導同志の背に、短刀状の暗器を突き立てているのは――ソウタと同様に、あの騒ぎを利して、群集の動きに紛れ、送信装置のある側に潜んでいたヨシゾウである。
ヨシゾウが、更に暗器を捻ると、その切っ先が至っている指導同志の心臓を深く抉り、指導同志は声も無く絶命する。
「たっ、助かりました……出来る限り、占報を続けよとのシュウイチ殿からのお達し――果たされぬかと思いました」
界気使いの一人が、ヨシゾウに目配せをしながら、険しい表情でそう呟いた。
「各々方の護衛はお任せくだされ――まあ、彼奴らとて、もはやこの場に気を向ける余裕は無いでしょうがね」
ヨシゾウは、皮肉っぽくそう言って、界気鏡を睨み――
(貴重な人材だからといって、自国の者ではなく、占領先の公者である界気使いを用いたのが、まずの失策よ。
さあ、共佑党――うぬらの愚かさを、世界に向けて披露すると共に、当世刀聖の恐ろしさを、世界中に染み渡らせるため、恰好の贄となって頂こうか……」
――レンズの反射に写った、舞でも踊るかの様に惨殺を繰り返す、ソウタの姿を見据えた。
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「くっ!、タマ――本当に敵方にっ!」
「――ったく、やり難いねぇ。
姐さんの娘……皆が妹みてぇに可愛がってた娘と、戦場で会うのはさっ!」
コケツ衆たちは、困惑した表情で武器を構え、同じ様に尾を立てる。
「おめぇらっ!、アタシは退けと言ったはずだぁ!、さっさとしねぇかいっ!」
――が、スズは突然一喝し、それに驚いたコケツ衆たちは振り向いて目を見張る。
「でっ!、でも!、姐さんとタマが――アンタら母娘が、マジに殺り合うトコなんて、アタシらは観たくねぇよっ!
姐さんこそ退いて、さっさと刀聖の野郎を抑えに――」
コケツ衆の一人が、熱心に留まる訳を話している間に、タマは、ゆらりと空気に溶け込む様な入りで、前へと駆け出し――
「!?、ぐわぁっ!」
――その一人のみぞおちに、強烈なボディーブローを叩き込み、打たれたその一人は悶絶して蹲る。
「そんな、気遣いなんて要らないんだよぉ……アタシは、母さんと殺り合えるのが楽しみで、ゾクゾクしてるんだからさぁ?」
タマは、狂気地味た表情でそう呟き、蹲った眼下の一人を一瞥する。
「そーいうこった――痛い思いをしたくなきゃ、アタシの言うとおりにしときな。
ハッキリ言って、邪魔なんだよぉ……これから始まる『楽しい母娘喧嘩』の周りを、他人がウロチョロしてんのはさぁ?」
タマの動きと、言葉に呼応する様に、スズはそんな事を呟きながら短槍を構える。
「――シロと合流して、さっさと退きな。
まだ、駆け出しとはいえ――親バカに聞こえるかもしれねぇが、あの娘の強さは、アンタらの手に負えるモンじゃあ……ねぇっ!」
「!」
一気にタマとの間合いを詰め、短槍を振るって突進して来たスズの一撃に、タマは押し込まれて後ろへと下がる。
「くっ!、姐さん!、アタシらは、アンタが娘に殺されるのも、アンタが娘を殺してくるのも――嫌だからねっ!?」
コケツ衆の皆は、そんな言葉を辛そうに言い残し、その場から退却を始めた。
「へへ、随分と、難しい事を言ってくれるねぇ――ココは、殺し合うトコだろうが」
「――そだね、それには賛成する……よぉっ!」
タマが放った浅い前蹴りを受け、スズは短槍を下げ、一旦距離を取る。
「ふふ――嬉しいねぇ♪
自分の娘が、更に強くなって目の前に出て来るのは、コケツの母親にとっては、冥利ってヤツだよ♪」
スズは、舌なめずりをし、楽しそうに自分の娘の雄々しい姿を見据えて目を細めた。
「母さん――アタシは、アンタを許さないっ!
友達のサトコを悲しませる手伝いをしたり、仲間のカオリをあんなに痛めつけたり、良くしてくれてたカツトシを殺った、アンタをっ!」
タマは、飛び込む様に距離を詰め、牽制を主とした連撃を放ち、スズはそれを短槍を操って巧みに受け流す。
「アンタ……コレ、"仕事"として、請けたモンじゃないのかい?」
「そうだよっ!、コウオウのみんなには、すっごく世話になったんだ!、その恩返しだよぉっ!」
二人は最接近し、手甲と短槍の刃が鍔競り合う恰好で密着し――
「前言撤回だ……ガッカリだよ!
一端の傭兵にさせるために、修行の旅に出した愛娘が、よもや、忠義だ恩義だって言う、ヒトの理屈に毒されてるとはねぇっ!」
――スズは、顔色を変えて激昂し、獰猛に威嚇して見せた。
「母親が、再教育してやらないとね。
てめぇが――誰かを殺して、それで得た金で飯を食ってく……"傭兵"って生業の娘だってコト、思い出させてあげるよ!」
スズは、短槍を退いてまたも距離を取り、その怒った形相のまま、全身を低く屈め短槍を構え直した。
「なっ……何なのだ?、この目の前の光景は……」
場面は、ほんの少しだけ移り、七人衆が集まっている御所のバルコニー。
ユキオを始めとした皆導志七人衆は、皆が皆とて顔面を蒼白させ、眼下で起きている光景を理解出来ず、前出した先程の呟きはその気持ちを表す、カズオが発した言葉だ。
その眼下で起きている光景とは――南コクエ兵数百人対、ソウタ唯一人という、端から見たら絶大な戦力差……な、はずの戦闘シーンだった。
だが、七人衆が当初、想像していたモノとは大きく違い――いや、真逆だと言うのが正しい様相であった。
たった一人が、数百人を翻弄し、辺りには次々と、その数百人たちの中から出来た死体の山が積まれて行く――そんな、想像だにし難い光景を前に、七人衆は一様に絶句して、先程のカズオの呟きは、その果てに溢したモノである。
「はっはっはっはっ!、そらそらぁ~っ♪、逃げ踊れよぉっ!」
被った鬼面を、返り血に因って真紅に染め、戦意を失い逃げようとする兵までもを追いかけて、ソウタは次々と惨殺の限りを尽くす――しかも、楽しげに笑いながら。
「――うっ、おえっ……」
その様を観かねたミズホなどは、ついに、嗚咽を漏らして先程食べていた物を吐き散らかした。
「……ダメだっ!、こんな光景――南コクエ軍が刀聖に蹂躙されている様など、占報に流してはならん!、止めろぉっ!、遮断しろっ!」
占報の送信を司っている指導同志が、放送を止めようと喚くが――集められた界気使いたちは、その指示を聞かず、カメラの役割を果たす界気鏡に、界気を送り続けている。
「貴様らぁっ!、止めろと言っているのが、聞こえんのかぁっ!?」
指導同志は苛立ちに耐え切れず、抜刀して一人の界気使いに斬りかかるっ!
――グサッ!
刀の切っ先が、肉に捻じ込まれる音がした――だが、指導同士の刀の切っ先は、まだ中空に晒されていて、血の一滴する着いてはおらず、界気使いたちの中にも、負傷者は見当たらない。
「――ぐふっ!?」
呻きの様な声が聞こえたのは、苦悶の表情で不思議気に辺りを見回す――指導同志、その人である。
「――止められるワケには、行かんのでな?
この占報こそが、刀聖様の策の肝である故」
そう言って、指導同志の背に、短刀状の暗器を突き立てているのは――ソウタと同様に、あの騒ぎを利して、群集の動きに紛れ、送信装置のある側に潜んでいたヨシゾウである。
ヨシゾウが、更に暗器を捻ると、その切っ先が至っている指導同志の心臓を深く抉り、指導同志は声も無く絶命する。
「たっ、助かりました……出来る限り、占報を続けよとのシュウイチ殿からのお達し――果たされぬかと思いました」
界気使いの一人が、ヨシゾウに目配せをしながら、険しい表情でそう呟いた。
「各々方の護衛はお任せくだされ――まあ、彼奴らとて、もはやこの場に気を向ける余裕は無いでしょうがね」
ヨシゾウは、皮肉っぽくそう言って、界気鏡を睨み――
(貴重な人材だからといって、自国の者ではなく、占領先の公者である界気使いを用いたのが、まずの失策よ。
さあ、共佑党――うぬらの愚かさを、世界に向けて披露すると共に、当世刀聖の恐ろしさを、世界中に染み渡らせるため、恰好の贄となって頂こうか……」
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