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聖狭間退却戦
下衆
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「――さぁて、どうする?
皇様と、次の大巫女様がああ言っても……まだ、俺に遊んで欲しいか?」
――と、包囲している八番隊員たちを見回し、ソウタは刀の柄を弄びながら、そう彼らに尋ねた。
「うっ……」
八番隊員たちは返答に困り、刀を構えたまま言葉に詰った。
「とっ!、刀聖様に、申し上げぇ~るっ!」
皆が押し黙る中、タケノリが逸早く刀を収め、そんな声を上げながら、ソウタの側へと駆け寄って来る。
ソウタの前で跪いたタケノリは、声音を震わせながら――
「――我らはこれまで、隊長の命ゆえに、その思慮を疑う事無く、その命に付き従って参りました。
さりとて――世界が"要"たる、三者の方々に矛を向けるという、此度の命に関しては……少なからずの疑義を抱いていた者も、大半にございました」
――と、隊長であるヤヒコへの不平を言い出した。
「!?、おいっ!、何を敵にぶちまける気だぁっ?!」
ヤヒコは血相を変えて、周りの隊員たちを掻き分け、タケノリを制そうと前へと進む。
「隊長は"大神官様を唆した、あの刀聖を殺す事こそが俺たちに課せられた使命!、俺たちの成すべき事!"――と、仰っていたのに、今の大神官様のお言葉の力強さは、唆されて言わされた事柄とは到底思えませぬ。
我ら天警士団員の使命は、世界の先導者たる、大巫女様が鎮座する聖地、テンラク様と翼域の治安を護る事――故に、当世刀聖様にお尋ね致したい!
我ら士団員が真に成すべき事は、今の大神官様の御言葉や、他の隊の行動からして、大神官様と共に、俗世から退く事なのでしょうか?」
タケノリは平伏したまま、自分が至った結論をソウタに打ち明けた。
「――あんの野郎ぉぉ~っ!」
それを聞き及んだヤヒコは歩みを早め、怒った様子で握った刀を震わせる。
「――俺に聞くな。
てめぇの好きにしたくて、何でも自分たちで決めてぇから、お前らは、政治から何からをひっくり返したいんだろ?
だったら……どうしたいのかは、てめぇで決めやがれ!、それが、てめぇらの望みだろうが!?」
ソウタは実に投げやりに、タケノリからの尋ねを一蹴する…
「――解り申した、でしたら……」
タケノリはそう言うと、鞘を腰から外して目の前の地面に置き、軍装を解き始める。
「不肖――士団員タケノリ!
此度の俗世からの撤退に、士団が一人として、末席に加えて頂きたい――無論っ!」
「!?、おいっ!、待てぇぇっ!」
ソウタは、同時に聞こえた金属音を、抜刀に因るモノだと察し――そしてそれは、自分へと向けたモノでもなく……
――ズブゥウウッ!
「むっ……謀反にぃ、加わったぁ、贖罪……として、絶ったっ!
このっ、"武士"が魂と!、こっ……心のみ、をぉ――っ!」
――自らのみぞおちへと突き刺し、横へと掻っ捌くためだとも察し――それを止めさせようと、ソウタは駆け寄るが、タケノリはスッキリとした表情で地面に横たわる。
「――っ!!!、だから……だからっ!、侍は面倒臭ぇんだよっ!」
ソウタは、悔しげに地面に拳を押し付け、絶命したタケノリの手から離れた、彼の刀を腹から抜き、血まみれなそれを地面に突き立てた。
「……」
タケノリの行為を目撃した、他の八番隊員たちの様子は真っ二つに分かれた。
彼を真似ようと軍装を脱ぎ始め、自刃の用意をし、それを実行する者と――その思いを解さずに、啞然として、その様子を見詰める者の二通りだった。
「――やめろぉっ!、自分の間違いに気付いたんならっ!、俺もシオリさんも責めはしねぇっ!
一緒に、樹海にシケ込んでくれても構わねぇんだぁっ!」
ソウタが、赦免と懐柔を盾に、自刃への流れをくい止めようとするが――それは止まらず、次々と自刃は行われて行った……
「――っ!!!、バカ野郎どもがぁっ!」
「――ふふ、あははははっ!」
悔しげに俯き、自刃した遺骸が多く転がる様子に、憤っているソウタの前に立ち、彼の姿を嘲笑う様な声が、この障害物がほとんど無い聖狭間に響き渡る。
「ホントに、ホントにバカだよなぁ?!、
ワケの解らねぇ理屈を並べて、てめぇで腹掻っ捌いて逝くなんてよぉ?!」
その声の主は、彼らを統べるべき存在であるヤヒコ――彼は、笑いを堪えきれない体で、楽しげに自分の顔を手で覆っている。
「俺が――俺たちが、やろうとしてる事は、こーいうバカげた思想をぶっ壊すためだっ!
刀聖っ!、あいつらをバカだと思うなら、何でお前は俺たちの邪魔をする?!」
ヤヒコは、鬼面越しにソウタの顔へと刃を突き付け、矛盾に思える彼の行動と言動を問い質す。
「へへ――確かにそうだな、自刃なんてモンは、本当にバカげてる」
ソウタはなんと、ヤヒコの主張に同調を示してみせ、地面に突き立てたタケノリの刀を抜き放ち、それをヤヒコの顔に突き付け返したっ!
「!!!」
「――だがなぁっ⁈、どんなバカげた事でも!、それが脈々と受け継がれて来たのにはっ!、ちゃんとした意味があるからなんだよっ!、それを繋いできた人たちの、"思い"と一緒にっ!
おめぇらはっ!、それを勝手に踏み躙って!、それを繋いで行こうとしている人たちを泣かせて、あまつさえ死にも追いやった!
それはぁっ!、刀聖が思う、邪な行いに他ならないっ!」
驚くヤヒコに、ソウタは荒げた声でそう告げると、彼の刀を弾いて見せる。
「ほら!、来いよ――俺が憎いんだろう?
刀聖は、自由を!、平等を渇望する!、"新しきツクモの民"にとって、それを阻もうとする許し難い悪鬼なんだろうが!?
光刃は使わないでやる――その悪鬼を殺した、大手柄を立ててみせろよっ!」
ソウタは、最大限の挑発をヤヒコに投げ、光刃の柄も地面へと放り、凄んだ表情のままに彼を睨み付ける。
「――おうよっ!、光の刀を持たないてめぇなんて!、ちいと腕が立つだけのただの流れ者だぁっ!」
ヤヒコが激昂と共に、刀を振り上げると――
「――隊長っ!、助太刀致しますっ!」
――自刃に及ばなかった、数十人の八番隊員もそれに呼応し、彼の直衛に付いた。
「けっ!、大手柄の好機と思って、ワラワラと湧いて来たか。
やっぱ、この場に至って自刃を選ばない様なヤツは――腹ん中が真っ黒いヤツばっかだって事か」
ソウタは溜め息を吐き、呆れ気味にそう呟くと、彼の姿がゆらりと陽炎の様に歪み、まさに神速と言って良い勢いで駆け出したっ!
皇様と、次の大巫女様がああ言っても……まだ、俺に遊んで欲しいか?」
――と、包囲している八番隊員たちを見回し、ソウタは刀の柄を弄びながら、そう彼らに尋ねた。
「うっ……」
八番隊員たちは返答に困り、刀を構えたまま言葉に詰った。
「とっ!、刀聖様に、申し上げぇ~るっ!」
皆が押し黙る中、タケノリが逸早く刀を収め、そんな声を上げながら、ソウタの側へと駆け寄って来る。
ソウタの前で跪いたタケノリは、声音を震わせながら――
「――我らはこれまで、隊長の命ゆえに、その思慮を疑う事無く、その命に付き従って参りました。
さりとて――世界が"要"たる、三者の方々に矛を向けるという、此度の命に関しては……少なからずの疑義を抱いていた者も、大半にございました」
――と、隊長であるヤヒコへの不平を言い出した。
「!?、おいっ!、何を敵にぶちまける気だぁっ?!」
ヤヒコは血相を変えて、周りの隊員たちを掻き分け、タケノリを制そうと前へと進む。
「隊長は"大神官様を唆した、あの刀聖を殺す事こそが俺たちに課せられた使命!、俺たちの成すべき事!"――と、仰っていたのに、今の大神官様のお言葉の力強さは、唆されて言わされた事柄とは到底思えませぬ。
我ら天警士団員の使命は、世界の先導者たる、大巫女様が鎮座する聖地、テンラク様と翼域の治安を護る事――故に、当世刀聖様にお尋ね致したい!
我ら士団員が真に成すべき事は、今の大神官様の御言葉や、他の隊の行動からして、大神官様と共に、俗世から退く事なのでしょうか?」
タケノリは平伏したまま、自分が至った結論をソウタに打ち明けた。
「――あんの野郎ぉぉ~っ!」
それを聞き及んだヤヒコは歩みを早め、怒った様子で握った刀を震わせる。
「――俺に聞くな。
てめぇの好きにしたくて、何でも自分たちで決めてぇから、お前らは、政治から何からをひっくり返したいんだろ?
だったら……どうしたいのかは、てめぇで決めやがれ!、それが、てめぇらの望みだろうが!?」
ソウタは実に投げやりに、タケノリからの尋ねを一蹴する…
「――解り申した、でしたら……」
タケノリはそう言うと、鞘を腰から外して目の前の地面に置き、軍装を解き始める。
「不肖――士団員タケノリ!
此度の俗世からの撤退に、士団が一人として、末席に加えて頂きたい――無論っ!」
「!?、おいっ!、待てぇぇっ!」
ソウタは、同時に聞こえた金属音を、抜刀に因るモノだと察し――そしてそれは、自分へと向けたモノでもなく……
――ズブゥウウッ!
「むっ……謀反にぃ、加わったぁ、贖罪……として、絶ったっ!
このっ、"武士"が魂と!、こっ……心のみ、をぉ――っ!」
――自らのみぞおちへと突き刺し、横へと掻っ捌くためだとも察し――それを止めさせようと、ソウタは駆け寄るが、タケノリはスッキリとした表情で地面に横たわる。
「――っ!!!、だから……だからっ!、侍は面倒臭ぇんだよっ!」
ソウタは、悔しげに地面に拳を押し付け、絶命したタケノリの手から離れた、彼の刀を腹から抜き、血まみれなそれを地面に突き立てた。
「……」
タケノリの行為を目撃した、他の八番隊員たちの様子は真っ二つに分かれた。
彼を真似ようと軍装を脱ぎ始め、自刃の用意をし、それを実行する者と――その思いを解さずに、啞然として、その様子を見詰める者の二通りだった。
「――やめろぉっ!、自分の間違いに気付いたんならっ!、俺もシオリさんも責めはしねぇっ!
一緒に、樹海にシケ込んでくれても構わねぇんだぁっ!」
ソウタが、赦免と懐柔を盾に、自刃への流れをくい止めようとするが――それは止まらず、次々と自刃は行われて行った……
「――っ!!!、バカ野郎どもがぁっ!」
「――ふふ、あははははっ!」
悔しげに俯き、自刃した遺骸が多く転がる様子に、憤っているソウタの前に立ち、彼の姿を嘲笑う様な声が、この障害物がほとんど無い聖狭間に響き渡る。
「ホントに、ホントにバカだよなぁ?!、
ワケの解らねぇ理屈を並べて、てめぇで腹掻っ捌いて逝くなんてよぉ?!」
その声の主は、彼らを統べるべき存在であるヤヒコ――彼は、笑いを堪えきれない体で、楽しげに自分の顔を手で覆っている。
「俺が――俺たちが、やろうとしてる事は、こーいうバカげた思想をぶっ壊すためだっ!
刀聖っ!、あいつらをバカだと思うなら、何でお前は俺たちの邪魔をする?!」
ヤヒコは、鬼面越しにソウタの顔へと刃を突き付け、矛盾に思える彼の行動と言動を問い質す。
「へへ――確かにそうだな、自刃なんてモンは、本当にバカげてる」
ソウタはなんと、ヤヒコの主張に同調を示してみせ、地面に突き立てたタケノリの刀を抜き放ち、それをヤヒコの顔に突き付け返したっ!
「!!!」
「――だがなぁっ⁈、どんなバカげた事でも!、それが脈々と受け継がれて来たのにはっ!、ちゃんとした意味があるからなんだよっ!、それを繋いできた人たちの、"思い"と一緒にっ!
おめぇらはっ!、それを勝手に踏み躙って!、それを繋いで行こうとしている人たちを泣かせて、あまつさえ死にも追いやった!
それはぁっ!、刀聖が思う、邪な行いに他ならないっ!」
驚くヤヒコに、ソウタは荒げた声でそう告げると、彼の刀を弾いて見せる。
「ほら!、来いよ――俺が憎いんだろう?
刀聖は、自由を!、平等を渇望する!、"新しきツクモの民"にとって、それを阻もうとする許し難い悪鬼なんだろうが!?
光刃は使わないでやる――その悪鬼を殺した、大手柄を立ててみせろよっ!」
ソウタは、最大限の挑発をヤヒコに投げ、光刃の柄も地面へと放り、凄んだ表情のままに彼を睨み付ける。
「――おうよっ!、光の刀を持たないてめぇなんて!、ちいと腕が立つだけのただの流れ者だぁっ!」
ヤヒコが激昂と共に、刀を振り上げると――
「――隊長っ!、助太刀致しますっ!」
――自刃に及ばなかった、数十人の八番隊員もそれに呼応し、彼の直衛に付いた。
「けっ!、大手柄の好機と思って、ワラワラと湧いて来たか。
やっぱ、この場に至って自刃を選ばない様なヤツは――腹ん中が真っ黒いヤツばっかだって事か」
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