ZERO

おむらいす

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邂逅

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イギリスの田舎町の小さな家にいつもと変わらぬ朝が訪れた。

小鳥の囀りと共に目を覚ました少年は、寝ぼけた顔で自分の部屋をでる。

「おはよう。レイ。」

食卓には朝食を用意する金髪の女性がいた。

眠たげな顔をしながら席についたこの少年は レイ・ラウェル 

食卓を囲む女性と同じ黄金色の髪と黒い眼をもつ彼は春を迎えつい先日14歳になった。この地方では少し珍しい黒い瞳を除けばごくごく普通の少年である。

「ミラおばさんおはよう…」

目をこすりながら少年は返事を返す。パンを頬張りながら少年は話を続ける。

「おじさんはもう仕事に行ったの?」

ミラは応える。「ええ。つい先ほど家を出たわ。せっかくの休みだから朝食は一緒に食べたかったって拗ねていたわよ?」  

「そっか…もう少し早く起きればよかったなあ」
少年は照れくさそうにそう言った。


おじさん、おばさんと呼ぶように彼女らはレイの両親ではない。

六年前、1人身寄りのないレイを2人は自分の子供のように受け入れたのだ。

六年前家や家族、記憶さえもないレイはただふらふらと道を歩き、たどり着いた小さな公園で過ごしていた。相当な苦しさはあったが生きるためにできることはなんでもしていた。


レイと1人の少女が出会ったのはそんな生活をはじめて間もない頃のことであった。

明るい性格の少女はすぐにレイと仲良くなり、身寄りのないレイを心配し両親に相談をした。

少女の両親はためらうことなく家に来なさい。と優しくレイに告げたのであった。実の子供のように愛情を注いでくれた2人にレイは今でも深く感謝をしている。



過ごした日々はとても温かく思い出と呼べるものもたくさんできた。4人で写った写真はリビングに今でも大きく飾られている。

しかし、少女との別れはあまりに急だった。少女はある日突然姿を消してしまったのだ。

反抗的な気持ちから家を出るようなタイプではなく、犯罪が起こるような町ではない。両親や町の人が団結して捜索をしてもこれっぽっちの成果もでなかったのだ。

まるで神隠しにあったように人が消えてしまう事件は当時世界中で起きていた。

それだけいろいろなところで起きているのにも関わらず1人も見つからず、少しの手がかりも掴めなかったのである。

4年という月日が経過した今でも謎のまま。怪事件という言葉で収拾を付けるしかなくなってしまったほどであった。

4年が経った今でもミラは写真を眺めては悲しい顔をしているし、その姿を見てなぜ消えたのが自分でなかったのか。とレイはいつもやるせない気持ちに包まれていた。


「レイ。そろそろ行く時間でしょう?」ボーッと写真を眺めていたレイは時計に視線を移す。

「あ、もうこんな時間!急がなくちゃ!」
慌てながら食器をかたし鞄を背負う。

「行ってきます!」扉を勢いよく開け飛び出すレイの後ろで「行ってらっしゃい」とミラが微笑んでいる。


何ら変わらないいつも通りの朝。この時少年はこの後起こりうる自分の運命に気づいてはいなかった。

学校への道でいつも通りの朝は唐突に終わりを告げた。

レイの周り一体が暗闇に包まれた
まだ時刻は8時前。どんなに雨が降っていてもこんなに暗くなることは無い。

「なんだこれ…」レイが呟くと同時に声が響き始めた。

「スベテヲ…ゼロ…ニ」

レイは慌てて辺りを見渡すが人の姿は見当たらない。

「全てをゼロに!」

言葉は頭の中に響き渡る。


「なんだよこれ…」レイは頭を抱え込み崩れ落ちる。苦しそうな声をあげながらレイの意識は遠のいていく…




           「すべてをゼロに」





意識を取り戻し瞼をゆっくりと上げるとそこには鬱蒼と生い茂る森林がひろがっていた。

木々に囲まれて光が届かないのか、ただ時が夜でらあるのかはわからないが暗い森の中をレイはゆっくりと歩き出す。

途方にもない道なのではないかと考えてしまってはダメだと足早に歩みを進めてからもう1時間はたっただろうか

「なんでこんなところにいるんだよ…ここどこだよ…」

泣きそうになりながらも歩みをすすめると暗がりの中にうっすらと灯りがみえてきた

「灯り…誰かいるかもしれない…」

重くなっていた足取りを早め、足場の悪い中かけていく。

灯りのもとに辿り着くと小さな木でできた家があった。

「おや。こんなところにお客さんとは珍しいのう」

後ろからする声に呼吸が止まりそうになりながらもレイは平然を装い振り返る。

そこには小さな老人が立っていた。

「こんにちは…」レイは恐る恐る言葉を出す…

「時間的にはこんばんは かのう。元の世界では 昼 じゃったのかな?」 小さな丸メガネから見つめる眼はとても優しい眼差しだった。

今が夜であることを確認したレイは普段耳にすることのないワードに反応する。

「元の世界…?ここはどこなんです…?」


そう聞かれることをわかっていたかのように老人は話し始める。


「ここは日本じゃよ。おぬしも名前くらいは知っておるじゃろう?」

たしかにその名前には聞き覚えはあった。だがしかし、レイは返答に困り言葉を探していた。

なぜならその日本という国は百年前に世界から姿を消したのである。レイも名前は知っていた。がそれは教科書の中の話である。


もはや本当にあったことを証明することの方が難しいのである。

レイ達のような世代からすればもはやお伽話に出てくる場所のような認識のところに今自分がいると言われてもからかわれているのではないかと勘ぐってしまう。

しかし老人の眼はとても嘘をついているようには見えなかった

レイはしばらく考えていたが埒も明かず、素直に全て聞いてしまおうと口を開いた。

その瞬間 レイの喉元にヒンヤリとした感触が広がった。


視線を自分の首に落とすとナイフと呼ぶには大きすぎるであろうサイズの刃物が自分に突き立てられいる。


こんな大きさの刃物なんてプラスチックのオモチャでしかみたことがない。

老人との話で気を緩めてしまっていた…鼓動は高まり汗がふきで流ようであった。何もできず唾をゴクリと飲み込むと老人が口を開いた。



「これこれ…そう気を逸るでない…この少年は客人じゃよ。それを下ろしなさいウタや。」

そういうとウタと呼ばれた少年はレイに向けていた剣を下ろした。

「チュウ老師。本当にこいつは敵じゃないんですか!?」


訝しげな表情でレイを眺める少年はレイより背丈こそは大きいが年齢はさほど変わらないように見えた。

「こんな世界で武器ひとつ持たずに歩くものが敵とは思えんよ。ましてやこの森は危険な生物がやまほどおるんじゃ…」


なだめる老人の言葉をただレイはボーッと聞き入っていた。

「この子も飛んできたのじゃ。お前さんと同じようにの。まあ確かに飛んでくるにしてはこの場所に出るのは不思議じゃがのう…」

「こんなところで立ち話もなんじゃ。夜も遅い…中で話そう…。ウタ。食事でも出しておやり…」
そう言うと老人は家の中へと入っていった。

ボケッとしているとウタにお前もくるんだよ と手を引かれレイは家の中へと入っていった。

久しぶりの明るい空間と温かい料理にレイは張り詰めた緊張を少しずつほどいていった…。

「まずは、自己紹介かの。ワシはチュウ。この世界ではチュウ老師と呼ばれることが多いが…まあなんてことはない。ただの老いぼれじゃ。ここにおるのは ウタ 若く気難しいところもあるが悪いやつじゃないぞえ…。」



2人の名前もしれたところでレイも口を開く。

「僕はレイ。レイ・ラウェルっていうんだ。」

「暖かそうな名前だな。」とウタが零すとチュウ老師は話をつづけた。

「さて、なにから話そうかのう。」

ゆっくりと話し始める老人の言葉に耳を傾け、少しずつ話す言葉を自分の知識に加えていった。

今いる場所が消えたとされていた日本であること。
日本という国は厳密には消えたのではなく隠れている状態に近いということ。

「この世界…いまの日本には不思議な力を使うことのできる者達が集まっておるのじゃ。なぜ使えるようになったのかは分からぬ。突如としてそのような力に目覚めたのじゃ。」

「ふしぎな…ちから…?」
あっけらかんとした表情のレイをみて老人は実際目で見た方が早い。ともっていた杖をふるった。

「わぁ…」 レイは開いた口がふさがらなかった。レイの見ている後継はアニメや漫画のなかでしか見ることのできないようなものだったのだ。

食べ終わった食器は列をなして台所へ向かっていく。
リズムをとるようにスポンジやタワシが泡をたて、暖炉に火が灯され暖かな空間を作り上げた。

「このように不思議な力があるんじゃ。今この日本にいる者達にはな…。」
 
なんて素敵な世界なんだろう。とレイは目を輝かせていたが老人の声が低くなる。

「このような力の使い方ならば、日本を隠すような真似はせんかった。力は使い方なのじゃ。簡単に物を壊すことも、人を殺めることもできてしまうのじゃ…この力には…。だからワシら数人で日本という国に壁を張ったのじゃ。日本とそのほかの国が関与できないようにの…そしてほかの世界で力に目覚めた者を日本に飛ぶように設定したのじゃ…」

世界から日本が消えたわけを理解し、自分が日本にきたわけを理解したところでレイに一つの疑問が生まれる

「…じゃあ僕にもその力があるの?」

「まあ…おそらくはそうじゃろうなあ。今までに例外はなかったしのう…じゃがそのへんの話はまた明日じゃ。今日は疲れておるじゃろう。寝ておきたらお主の力を見てみよう…。」

「こっちだぜ」とウタに案内されながらベットへと連れていかれる。

「悪いな。滅多に客人なんてこねえもんだから少し汚ねえが我慢してくれや」 

このまま野宿を覚悟していたレイにはこの現状は天国に思えた。

横になって今日教えてもらったことを復習しようと思ったが気づいた時にはもう夢の中であった…。


「…い。…おい…おいってば。」

体が揺さぶられていた。

「ん…。」目を開くと太陽に照らされた部屋と、肩を揺さぶるウタの姿が見えた。

「おい。いい加減に起きろよ飯の時間だ。」

ウタはぶっきらぼうにそう言うと部屋を出ていった。
壁にかかった時計に目をやると、もうすでに正午を過ぎていた。

(こんなに眠ってたのか…えっと…昨日話したところに行けばいいのかな…)

のそのそと起き上がり部屋を出て、昨晩3人で話した部屋へ向かう。

「やあ、おはよう。よく眠れたかの?」 チュウ老師は優しく微笑んでいた。

並べられた料理に一つの空席を見つけレイはその席についた。

「おはようございます…すいません。こんな時間まで寝てしまって…。」

ホントだぜ…と愚痴を零すウタの声を遮り、チュウ老師は話し始める。

「食事が済んだら、さっそく昨日言った力を試してみようかのう。レイ。お主にも何かしらの力があるはずじゃ。…まあすぐに使えるかは別物じゃがのう…。」


食事を済ませた一行は外の庭。昨日レイとチュウ老師が出会った場所へ向かった。昨日の暗い時のイメージと違い、とても暖かな場所にレイは感じた。


「力の見方は簡単じゃ。この石をももって自分をさらけ出せばよい。」

そう言って手渡された石は手のひらを2つ使ってもおさまりきらないような大きさであったが、不思議と重くはなかった。

透明な水晶に近いその石は「己呼路石こころいし」 と呼ばれ自分自身の深くまで心を見つめることができるらしい。

手にはとってみたもののどうしていいかわからないレイはチュウ老師に尋ねる。
「自分をさらけ出すって…どうしたらいいんですか?」

「なぁに。自分がどういう人間なのか。どうありたいのかを考えればいいだけじゃよ。難しいことなどなにもない。」

椅子に座り、本を読みながらチュウ老師は気長にやりなさい と声をかけた

ウタは そんなすぐにできっこないと自分の修行のすぶりを続けていた。


(自分がどうありたいか…僕は…)


レイが深い思考の海に潜って行った瞬間レイを包むような形で大きな光の柱が空を貫いた。

「おいおい…嘘だろ…。こんな早く…ってかなんだこのでかさ…」ウタは目を丸くするばかりか、もっていた剣を落としていた。

(ほう…。何か特殊なものをもってるとは思ったがここまでとはの…)

「やめじゃ。レイ。もうやめじゃ。」
チュウ老師はゆっくりとレイから石をとりあげる。

「え?」レイは目を閉じ深く考えていたため慌てて目を開ける。
「ぼく…やっぱり素質なかったですかね…。」そうおどおどと問いかけるレイにウタが飛びつく。「おまえ!すげえよ!こんなすげえ力持ってたなんてな!!!」

「力?僕…力を使えたの?」

何が何だかわからないレイにチュウ老師はこう告げた。
「あそこに空き缶が見えるじゃろ。あれに向かってボールを投げるように力を使ってみなさい。あの石に触れれば力の存在に体が気づく。もうお主は力を使えるはずじゃ」

5メートルほど離れた場所に置かれた空き缶を見つめレイは手を上げた。
(力をつかうイメージ…ボールを投げるように…)
上げた手を思いっきり空き缶目がけ振り下ろした。

キュゥゥゥンと音をたて力は掌にあつまり 光線となった。その光線は空き缶はおろか正面に見えるものを消し飛ばした。

「ほっほっほっ ボールどころかこれでは大きな槍じゃのう! じゃが力の加減は苦手そうじゃのう」

老師は少しはしゃぐような声で笑みを浮かべる。

「レイ。お主の力は 陽の力じゃ。なかなかその力を持つ者はおらんのじゃぞ…。」

「陽の…力…?」自分に力があることに喜びつつも、普通に生きてきた自分にこれまでの力があることにレイは怖さを覚えていた。

「陽の力…お前らしくていいじゃねえか!!」 ウタが嬉しそうに話す。

「僕らしい…?」

「ああ!レイって光って意味だろ?ピッタリじゃねえか!」

「そうなんだ…」とレイはウタの言葉でこの怖くも思えた自分の力を少し誇らしく思えていた。

(ほう…ウタはてっきり僻むと思っておったがのう…どうやらレイを随分と気に入ったようじゃな…)

「さて。力を確認したところで、レイ。お主には力以外のことを教えねばならん。」

そうしてレイは日々はチュウ老師とウタと共にこの世界のことや力の使い方を学んでいった。

この世界は大きく分けると二つの組織に別れている。

力を誇示することを好み、過激な思想で世界を自分達のものにしようと企む組織 「zero」 

そのzeroの考え方に意義を唱え、反発するレジスタンス。「wish」

この二つの組織が争いあい、領土を広げていくのであるという。

その者の個性などにより、様々な力をもつこの世界の戦いで勝敗をわけるのは数でも兵器でもなく 特別な力を持つ者達の存在であった。

「エトの力。」 その力を持つ12人の存在が戦いにおいて何よりも影響を及ぼすのである。

先ほど勝敗を分けるのは兵器ではない。と言ったが人の形をしているだけで兵器にちかいかもしれぬ。と老師は語った。

剣と魔法を使い、レイとウタは組手を行っていた。
今日も剣同士のぶつかりあう金属音が聞こえる。「ウタのそれ…重くないの?」 ウタの振るう剣はウタの背丈ほどの大きな剣であった。

「もう慣れちまったからなあ。」これも修行のたまものだな!とウタは笑う。

レイは1度ウタの剣を貸してもらったが重くて到底震えずもっと小さな剣と杖をチュウ老師からいただいていた

右手に杖をもち左手にもつ剣で身を守るスタイルである。




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