現実(こっち)でユーチューバー、異世界(あっち)で冒険者やってます

三國氏

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新たな依頼を探してみた 其の一

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 想像を遥かに超えた異世界のコーラ、コラーを使ったおそらく史上最大規模のメントスコーラにより、無事依頼を達成した俺達。
 それを見た冒険者からは鳴り止まむ拍手喝采に、町を救った英雄ともてはやされたわけだが。
 私の心境は今大変複雑である。

「なぁ~、オタ~、どうにかなりませんか~」

「無理っしょ。流石にグロすぎ、モザイク入れたとしてもこれをYouTubeに流すのはやめたほうが良さげ。いっそマニア向けのグロ動画専門サイトに流す?」

「いや、それはちょっと。はぁ、マジかぁ。やっと有名になれると思ったのにこれかぁ」

 派手な動画を撮りたいと言ったが、流石に今回はやり過ぎてしまった。
 折角危険も顧みず成し遂げたあの飛竜討伐の動画だったが、メントスコーラの威力で頭が吹き飛ぶ衝撃映像ということでお蔵入りが決定した。
 というのが事の顛末というか、今回のオチである。

「いつまでも落ち込んでんなよケン。何もない広い場所でメントスコラーの実験やって動画あげればいいだろ?」

「それじゃ違うんだよなかつ。異世界に来てみんなの期待を最大値まで膨らませてるのに、そこでメントスとコラーを混ぜるだけなんて、そりゃ勿体無いってもんだぜ。異世界最初の動画は絶対派手に盛り上がるやつじゃなきゃ」

「だったらあれをお前のケツにくっつけて、空飛べばいいじゃん。それなら派手だろ?」

「いや、飛竜の頭が吹っ飛ぶの見たろ?俺のケツが吹っ飛んじまうぜ?」

 なかつは本気でそう考えてそうで少し怖い。
 いくら表情に乏しいとはいえ、せめて冗談を言う時くらいは表情を変化させてほしいものだ。
 変化があるとすれば、小馬鹿にしたように小さく鼻で笑う程度である。

「そりゃ随分と汚ねぇ花火だ」

 そして俺となかつの会話の最後に、オタが毒舌を吐いて締める。
 というのは昔っからの三人の会話流れなので慣れている。
 できればもうちょい俺に優しく接してほしいものだが。

 それはともかくとして、絶好の機会を逃した今俺が欲しいのは新たな企画のネタだ。

「そういえばあの冒険者が魔法使いがうんたらって言ってたよな。やっぱいるのかな魔法使えるやつ、異世界だしさ」

「かもな。……まぁ、なんでもあるだろ向こうに行けば」

 何の気なしに言ったであろうなかつの言葉だったが、その言葉は俺のネガティヴを吹き飛ばした。
 結局のところ色々と全てが謎のまま。
 しかしよくよく考えてみれば動画のネタなんて向こうに行けば困ることはないと、なかちーの言葉に気付かされた。

 なんせ向こうは未知が満ち満ちた異世界。
 向こうの出来事全てが動画のネタに簡単に化けること間違いない。

 最高のネタは得た。
 あとは異世界にもう一回行って、何か面白そうな企画を考えれば順次上手くいくはず。
 ようやく気持ちを切り替えることに成功し、俺は再び異世界に行くことを提案すると決意した。

「あのさ───」

 しかし、その出鼻を見事に挫くようにチャイムが鳴る。
 もちろん友人が来るとか宅配を頼んだとかそういう記憶もない。
 あるとすればアレしかないだろう。

「ふぅ、ちょっと行ってくる」

「いや、俺も行く」

「某も」

 三人で玄関へと向かいドアノブに手を掛け一旦止まる。
 大きく息を吸って大きく息を吐く。
 ノブをゆっくり回して隙間から覗き込むように顔を出す。

「宅配便です。サインを」

 ここに越してから一度も宅配を頼んだことはないが、ここの担当はやはりこの女性らしい。
 まだ少女のようなあどけなさの残る声、サイズが合わず腕の裾を折る小柄な背丈の割に、胸と腰の辺りはキツいのだと訴えかけてくる膨らみ。

 こうなるとどんな女性なのかとも気になるのだが、僅かに小包への好奇心が勝った。

 受領書にサインし小包を受け取る、今回は前回よりも少し軽い気がした。
 前回小包を受け取った時より慎重に小鼓を部屋へと持ち帰り、ハサミの刃の部分でテープを切る。
 誰も口を開かず静寂に包まれた部屋には、箱を開ける音のみが響いた。

「封筒と……あとこれは紐か?」

「ケンとりあえず封筒を開けよう、多分また何を入れたか聞いてあるはずだ。あと今回はちゃんと中身全部出せよ」

「わかってるよ。あと、一応カメラ回しといて」

 カメラを手に持ってるくせに、完全にそのことを忘れていたなかつが無言のまま電源を入れた。
 封を切り上下に振って中身を全部手に収める。
 今回も手紙だけでなく他数枚の紙が手に乗っている。

「じゃあまず手紙から。えーなになに。今回の飛竜討伐ご苦労じゃった。期待以上の成果に我も満足しておる。流石はYouTuberと言ったところか。というわけで諸君らの働きに対し、我は冒険者組合への登録と、新たなミッションを用意してやった。気を抜くことなく邁進されたし。by神」

「前回と文面が違いすぎるな、あとナメてる」

「前回は代筆か?でもロリ神なら許すべし」

 二人の言う通り確かに文面が違い過ぎた、なんかもう凄く偉そうなのだ。あと字もだいぶ下手になっていた。

「ロリ神とはどこにも書いてないけど、一度会って話をしたいもんだな。住所はこちらのしか書いてないし、相手がどこにいるのかもわからないけど」

 そのあとしばらく愚痴をこぼし、俺達の意識は再び小包へと戻る。

「こっちが冒険者組合の登録証か?で、この紐……長さ的にいうとネックレスか?プレゼントにしてはだいぶ安っぽいな」

 茶色の紐に銅みたいな木の飾りとしてついたネックレスとおぼしきもの。
 木の飾りは薄く丸いチップになっており、焼印が刻まれている。

「ふーん、こっちは冒険者の証みたいなものだろうな。クレジットカードみたいに上のランクになればシルバーとかゴールドになるってとこか」

「流石なかつ、それで新たなミッションってのは?」

「それはわからない、前回みたくミッションの内容が書いてない。あえて隠しているのか、単に書き忘れたのか。今回の手紙の字が下手なことを考慮すると、今回の手紙の主はアホ。つまり後者の可能性も捨て切れないわけだが……結論から言えば行ってみないとわからないだな」

「よし、じゃあ行ってから考えよう」

 どちらにせよ俺達は暇だ。
 異世界に来いというならいつでも行く準備はできている。
 というか呼ばれなくたって新たな動画作成のためすぐ行くつもりだったので問題は何もない。

 ほとんど準備するものもないので、十分としないうち身支度を済ませ玄関の前に三人とも集まった。

「よし、通行証も持ったし忘れ物はないな」

 通行証と呼ばれるあの赤い石は、手に持っているだけで異世界に行けると判明した。
 こちらの世界と完全隔離されてしまったかもと思ったが、あの石を持たずに玄関を開けるといつも通り外に出られることを確認したので間違いない。

 覚悟を決めたような二人の力強い返答を聞き、ドアノブに手を掛ける。

「行くぞ、今回こそちゃんとYouTubeに載せられるやつを撮る」



 玄関を抜けると再び異世界にある空き地へと出た。
 ただし今回は何をすればいいのかもはっきりしていないため、事前の打ち合わせ通りとりあえず冒険者組合へと向かう。
 空き地から徒歩で十分ほど歩くと、一際大きな建物が待ち構えている。

「それじゃあなかつ、この辺りからカメラ回してくれ。せっかくだし冒険者組合の中も撮っておこう」

「りょ、回したぞ」

 ここからはいつも以上にガンガン喋る仕事モードに入るため、俺は意識的に心のテンションゲージを数段階引き上げる。

「前回は他の冒険者に邪魔され入らなかった冒険者組合ですが、今回の俺達は一味違う。なぜならこれがあるからです」

 首から下げたペンダントと冒険者組合の登録証をカメラの前に突き出す。
 しかしというべきか、やはりここで悔やまれるのは昨日の飛竜討伐の動画が上げられないということだろう。
 あれがあったからこそ登録証とかを貰えたのに、それを見せられないとなると説明やら何やら面倒になる。

「話せば長くなりますが、かなり掻い摘んで説明すると。僕ら依頼を受けてこの異世界で飛竜討伐をしたんですよー。でもなんやかんやで動画がグロくなってYouTube上げられなかったっていう。とにかく今回は面白くてグロくないやつ上げれることを祈ってます。ちなみに今回はまだ僕らも依頼内容聞いてないんすよね。というわけで着きました、これがリドネル冒険者組合です」

 上手い具合に説明を終え、道の突き当たりにドンと居を構える組合に辿り着いた。
 最近喋りの方もだいぶ上達してきたのではという、自負とともにドアを開け放つ。

「たのもー」

 中にいた冒険者達の射すくめられるような視線が一斉に集まるも、俺達だと気付き視線から鋭さは消えた。
 そしてその代わりと言ってはなんだが場はざわめき立つ。

「あれがたった三人で飛竜の群れを倒した猛者か」
「飛竜を吹き飛ばすほどの爆裂の魔法使いの三人組らしいな」
「いや、魔法使いではなくゆーちゅーばー?とかいうジョブらしいぞ」

 羨望の眼差しという、普段向けられることのない視線は逆にやり辛い。
 ただし動画としては悪くないだろう、大の大人達が凄い凄いと褒め称えるだけでもインパクトはなかなかの物。
 敢えて視線に応えることなく、堂々と胸を張り視線の嵐の中を突き進み受付嬢らしき人を目指した。

「この時の某達はまだ知らなかった。こんなに気楽に冒険者組合に来たのはこれが最初で最後だったということに……」

「おいっオタ、変なフラグ立てんのやめろって」

 不吉なことを言いだしたオタにツッコミを入れ、木の床を踏み鳴らし進む。
 しかしその言葉のせいか、受付嬢の眩い笑顔に僅かに陰が刺したように見えた。
 ような気がするし、気の所為のような気もした。
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