婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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スキャンダル 五代前・王太子妃の話

これは今から五代前の国王様の頃の話です。

当時の国王様には二人の王子が居り、どちらも金色の髪と空のような青い瞳をお持ちでした。
ご両親であられた、国王夫妻も金色の髪と空のような青い瞳だったからです。
二人はすくすくと育ち、兄は十五才の時王太子となりました。
王太子は幼少の頃、王都から少しだけ離れた所に領地を持つ侯爵令嬢と婚約致しました。
二人は見目麗しく、端から見てもお似合いでした。
二人は同じような金色の髪と青い瞳だったからです。
この麗しい二人が、やがて自分達が支える王に成る事はとても素晴らしい事だと貴族達は信じておりました。

ところが、王太子がより多くの知識を学ぶ為に入った学園に通い出してから何かが変わってしまったのです。

王太子は子供の頃に、いずれ自分を近くで支える為の存在が与えられておりました。
それらは皆、同い年の少年でした。
宰相の息子・宮廷魔道師長の息子・近衛騎士団総長の息子
彼等は王太子の取り巻きとして、同じように学園に通っておりました。

王太子をはじめ、取り巻きの少年達も婚約者が居たのにもかかわらず位の低い男爵令嬢に心を奪われてしまったのです。
かの男爵令嬢も金色の髪と青い瞳を持っていましたが、その容姿はまるで月の様に美しく大人びた侯爵令嬢と違い可愛らしく明るいお日様の様でした。

王太子が学園を卒業し、国内外の貴族達に婚姻式を行う日取りを発表する夜会が始まろうとした時でした。
その時、王太子は婚約者だった侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡し男爵令嬢と婚姻する事を発表しました。
失意で倒れ伏した侯爵令嬢はご両親に連れられ、領地へと帰って行き暫くの間王都に戻って来る事はありませんでした。

王太子はご両親である国王夫妻を説き伏せ、男爵令嬢と婚約し半年もせずに婚姻しました。
この当時、王太子と男爵令嬢のロマンスは王都で知らぬ者が無い程にもて囃され若い娘達は胸をときめかしました。

王太子妃となった男爵令嬢は、王太子の愛を受けあっという間に懐妊成されました。
この報せは国王夫妻をはじめ、貴族達も国民達も喜び喝采しました。

だが、幸せに包まれた王国に突然の訃報が訪れました。

後一・二ヶ月もすれば王太子妃が赤子をお生みになる。
新たな王族の誕生を、お祝いしようと王国民が皆心待ちにして居たのにです。

王太子妃が赤子と共に突然亡くなり、その事で深く傷付いた王太子が病を患ってしまった。

あれ程までに愛し合い、輝かんばかりのお二人が……
王国民は悲しみに暮れ、王太子が早く良くなる様に心の底から願っていましたが一月もせず王太子も亡くなってしまいました。

王太子と王太子妃は厳かに葬られ、弟の王子が新たな王太子となりました。
王太子は幼い頃からの婚約者と婚姻し、末永くお幸せに過ごしました。


これが、王国民に知らされたお話です。

真実は違います。

婚姻し、王太子に愛され懐妊したと思っていた王太子妃でした。
ところが、王太子妃は婚姻する前に懐妊していたのです。
婚姻式より半年も経った頃には、王太子妃の胎は膨れあがり臨月を迎えたかの様でした。
王国民が誕生を心待ちにする、実に二ヶ月前に赤子が生まれたのです。

茶色い髪と緑の瞳の赤子でした。

王太子にも王太子妃にも似ていない赤子。
ただ、国王夫妻も王太子も……そして王太子妃本人もこの赤子と同じ色を持つ人物に心当たりがありました。

王太子の取り巻きの一人である、宰相の息子でした。

宰相は赤子が生まれそうだと知らされた時から、王宮に詰め今か今かと待っておりました。
赤子が生まれたと知らされ、たった一人呼ばれて不信感を抱きながらも赤子と対面し驚き激昂しました。
何故、王太子妃がお生みになった赤子が息子と同じ色なのか!と。
宰相は父である前に、国王様に忠実な臣下でした。
直ぐさま息子を呼び出し、国王夫妻と王太子夫妻の前に引き摺り出し生まれて間もない赤子を見せました。
宰相の息子は驚きましたが、反省する事も無く言い放ちました。
「あぁ、俺の子を生んでくれたのか!」
と……この言葉に怒りを抑えられなかった宰相は、護身用にと持っていた短剣を息子の胸に穿ち絶命させました。
宰相も己の命でもって詫びようとしましたが、今までの忠義と誠意を無くしたくなかった国王様が力尽くで止めこの先も国に尽くしてくれるよう諭しました。

国王様は怒り悲しみ、この不忠義な王太子妃と赤子を許す事が出来ませんでした。
不義を働き、違う種で生まれた赤子を王家に迎える事など許される訳がありません。
直ぐさま王太子妃と赤子には毒杯が与えられ、絶命致しました。
愛した妻は自分より先に他の男の種を胎に受け、懐妊し赤子を生んだ。
この数ヵ月、どれ程楽しみにしていたか心待ちにしていたか……
王太子は絶望に打ちのめされました。
子供の頃から傍にいた、友と信じていた者にも裏切られたのです。

王太子はフラフラと力無く、その部屋を後にしました。
王太子は生きる気力を失い、ベッドに伏したまま食事を取ることも無くみるみる痩せ細り涙を零しながら最後は眠るように亡くなりました。


そして、この事件を切欠に王家に嫁ぐ娘の純血を如何様にして確認するか議論されました。
暗い部屋では確認出来ない。
権力があれば、侍女などを抱き込む事は容易く誤魔化す事など難しく無い。
枕などの下にこっそり血の入った小瓶を仕込んでおけば、寝入った後を見計らって血を撒けば分からぬだろう。
様々な意見が出された結果。

嫁ぐ娘は王家立ち合いの元にその純血を捧げる事とする。
部屋は暗くする事無く、白い寝具がかけられたベッドの上で行う事とする。
枕や掛布など、身を隠す物は何一つあってはならない。
身一つでベッドに上がり、何一つ持たない事を証明し自らの手で持って秘所を晒し捧げる事。
捧げられた後、その純血を王家が見届け確かに乙女であった事を確認する事とする。

王家に嫁ぐ娘の心を挫くような、恥辱に塗れるような掟が決められた。
だが、二度とこの様な事があってはならないと国王様も王妃様も認めました。
また新たな王太子も認め、婚約者の令嬢も事情を知っていたため受け入れました。
どれ程辛く恥ずかしくとも、不義密通の疑いを掛けられる事に比べれば耐える事が出来ました。
だが、自分の次代に嫁いで来る娘達には少しでも心構えが出来るように高位貴族には僅かでも教えておくようにと
定められた。

こうして証立ての儀が決められました。
ただ、やはり知ってはいても抗う娘が出た為に押さえ込んだり介助する為の従僕や侍女が近くで待機するようになりました。
これにより、証立ての儀は決して抗う事無き儀式となり高位貴族の娘達はより己を律し例え王家に嫁ぐ訳じゃなくても夫となる方に純血は捧げるものだと教え込まれるようになっていきました。
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