婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
38 / 756

婚姻式の日 ~証立ての儀・グレース~

あの長い婚姻式も済み、残すは証立ての儀だけ。

私は甘ったれで愚かな所もあるが、それでも可愛い息子にと最愛の親友であるフェリシア様の御息女を婚約者にと薦めた。
その願いは夫に聞き入れられ、末の王子の元に来る義理の娘に歓喜した。
それなのに………私の願いは可愛い末の息子によって、儚く消えた。
可愛いと信じていた息子は唯々愚かな甘ったれなだけの男だった。
母たる私の思いも願いも、一瞬で潰えた………
王子も第3となれば余程頑張らねば先行きも不安であろうし、暮らしぶりを落とす事も難しい。
シュバルツバルト家の豊かさは、侯爵家としては断トツであった。
それこそ並み居る公爵家と同等かそれ以上と、調べた貴族達も太鼓判を押して………
そんな詮無いことをツラツラと考えながら、王子宮の契りの間を見渡す事の出来る小部屋に向かう。

契りの間………証立ての儀で初夜を迎えた後、夫と交わる為の部屋……
その為だけの部屋だが、宣言した子供を産むまではその部屋以外で夫と会う事が出来ない。
いや…会えるのかも知れないが朝から晩まで公務に追われ疲れ果てた体で、僅かな時間を割いて子作りに励んでくれる夫に無理な願いは出来なかった。
契りの間より高い位置にある小部屋からは、契りの間は丸見えで何一つ隠せず誰1人隠れる事等出来ない。
王族全員で嫁いで来た娘が、真なる純潔の乙女である証……その純血を捧げたのか見定める為の小部屋。
契りの間もこちらの小部屋も煌々と灯りがともされ、明るい……何一つ誤魔化す事等出来ぬ程に。

契りの間を見下ろせば、部屋の中には息子達の従僕や私の侍女等が部屋に待機していた。
証立ての儀を滞りなく進める為の人員であり、万が一の為の護衛でもある。
息子達は2人ずつ従僕を出したらしく、6人の従僕がベッドの両脇に3人ずつ配置されている。
私の侍女は息子が出入りする扉の近くに居た。

「ふむ………グレースよ、第3とは言え久方ぶりに低位貴族の令嬢を王族に迎えるが……上手くいくかな?」

陛下は私の隣に立ち、部屋を見下ろしながら問いかける。

「分かりませんわ。私には知り得ませんわ。」

5代前・4代前に嫁いできた低位貴族の令嬢以来……か……
あのお二方によって、婚姻式はがらりと変わった。
より厳しく、更に閉ざされた……いや、懸念はずっと在ったのだろうな……だからこそ厳しくなったのか……
軽くため息をついて、夫の顔を見る。

「愚かな事だ………親心が分からんとは………」

夫は憮然とした表情で契りの間を見つめながら、隣に居る私が何とか聞こえる程小さな声で呟いた。
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。