婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
53 / 756

婚姻式の日  ~馬車の中では~

暗闇の中、灯りの魔法がこめられた魔道具の灯りが取り付けられた馬車が軽快なリズムで走って行く。

その馬車の中には4人の女性達がいた。

「一月の間、本当にご苦労さま。2人のお陰で仕事がしやすかったわ。」

フェリシアは上機嫌でシンシアとソニアを労う。
いつもこの4人はフェリシアの私室で、シルヴァニア本邸のある里と変わらない調子で毎日を過ごしていた。
他の使用人の前では取り繕っていたが、本当はかなり砕けた間柄であった。

「本当ですよ、何度説明してもやれ面倒くさいだの分からないだの……挙げ句の果てに、殿下に言えば済む事!と聞く耳持たないんですもの!まるっきり幼い子供と変わらない物言いで!」

我慢強いシンシアが、いきなり吐き出した。

「里にいた小さい子供の方が聞き分け良いですよね!」

ソニアも大概、毒舌の様だ………
 
「全くよ!バカみたいな事を言ってみたり………」

ため息交じりに吐き出した言葉に、ふと引っかかりを感じる。

「バカみたいなって?例えば?」

シンシアは顎に指を当て、思い起こしながら答えた。

「この世界は私が主人公なのよ?私の都合が良いように世界は変わるのよ?とか……なんか……ちよっと思い込みが激しいと言うか……変ですよね?」

確かにおかしい。
自分の都合の良いように世界が変わるなら、誰も苦労なんかしない。
例え違う世界で生きてきたのだとしても、エリーゼを見てる限り少々どころかかなり有り様が違う。
だいたい主人公とは、何ぞや?と言う話だ。
エリーゼに聞けば様々な事が分かるかも知れない。
的確な答えが返ってくるかもしれない。
だが、私のカンだがそれらは聞いてはいけない事柄のような気がする。

「そうね、大分おかしいわね。そんなおかしな娘に一月も付き合ってくれて助かったわ。シンシアとソニアは明日一日ゆっくりして頂戴。」

一日お休みにすれば気分も変わるかしら?

「えっ!嫌ですよ。」

「お休みは領地に帰ってからで!」

2人揃って、働きたいとは………

「明日のお仕度は、決まってるのですか?エミリ様。」

シンシア?エミリに何聞いてるの?

「私、支度前の湯浴みでフェリシア様をマッサージしたーい!」

ソニア…………何でマッサージなの?

「メリハリの無い体ってマッサージのし甲斐が無くって辛かったわ!」

え?

「分かるわ!あの子胸が幼くてらっしゃったから、湯浴みの手伝いも鶏ガラ洗ってるみたいで詰まらなかったわ。」

なる程………2人共、ガリガリの小娘に飽き飽きしてたのね。

「分かったわ。今日の湯浴みはたっぷり丁寧にお願いするわ。………でも、食事を先に済まさせてね。」

疲れた分、美味しいものが食べたいわ。
でも……あるかしら?できればエリーゼの作った甘いものがあると嬉しいけれど………

「邸に美味しいものがあると良いわ………」

「きっとありますよ。エリーゼ様がこっそり用意為さってますよ。」

エミリが即答してくれる、期待してしまうわ……

「なんと言っても、エリーゼ様はフェリシア様の事を慕ってますからね!」

エミリの言葉がジワジワと染みてくる。
そうだ、私の娘はそういった思いやりのある娘だわ。

そして馬車は慣れ親しんだ我が家の敷地へと入って行った。
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。