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サロンにて
いそいそと自室に戻ろうとする娘を見て、私は心の中で本当に吹っ切れたのだと感じた。
貴族の娘としては婚約破棄など、屈辱の極みのようだが相手があれでは屈辱なぞどこ吹く風。
あの王子の有り様が酷すぎて、付き合いのある夫人達に「良かったわね」等と囁かれたわ。
そして1番の心配事も、この場にお出でるゴルゴダ帝国皇太子第5皇子ルーク殿下の存在でとりあえず不要になった。
これで暫くは、下心で近付こうとする愚かな男共は近寄れないでしょう。
まさか王国第3王子の次は帝国の皇子が出てくるなぞ、誰も……いえ、私すら予想していなかった。
「私がエリーゼ嬢の側に居る事を何故許していただけたのか、教えて貰えますか?シュバルツバルト侯爵夫人。」
「ルーク殿下、おおよその事は想像していらっしゃるのでは?」
…………思ったよりも聡いのかも知れない。
仮にも皇子という立場であったなら、それなりに教育されているのであろう。
にこやかな顔で居られるが、眦まで下げる念の入れよう……5番目なのが勿体ない気がするわ。
「そうですね、私が側に居る事で王国内の下心のある貴族は声を掛ける事すら出来ないでしょう。…………私が居る事で、エリーゼ嬢は帝国皇室及び貴族に輿入れする可能性を見せつけますか?」
中々良い答えよ。
でもね、王国の貴族達は思い出すべきなのよ……私がどこの誰だったのかを。
「可能性……ね。可能性はずっとあったのよ。ただ、忘れていただけ。私、前はフェリシア・ド・シルヴァニアと名乗ってましたのよ。」
カタッと立ち上がり、私を凝視するルーク殿下の顔はクルクルと様変わりした。
思い掛けない事だったかしら?
ストンと力尽きたように座った殿下は両手で顔を覆い「だからか……」と小さく呟いた。
意を決したのか両手を外し、真っ直ぐ私を見つめた。
「失礼だが、お父上は何方か教えて頂けますか?」
あら?随分と聞き分けが良いのかしら?
「アーネスト・コレミツ・ド・シルヴァニアですわ。」
「現宰相殿でしたか。それは、失礼致しました。」
やはり聡い、名前を聞いて即答してくるとは思わなかったわ。
少し位、時間が掛かるかと思っていたのに。
「そろそろ、割って入って良いかな?」
あら、旦那様が痺れを切らしてしまったわ。
「ルーク殿下、まずは我が娘に近付き感謝する。おかげで詰まらぬ些事に時間を割かなくて良くなりました。明日からの領地への旅も同道して頂けるとか……ですが、我が国は魔物の多い土地柄故己の身は己で守って頂きたい。宜しいかな?」
ま、旦那様ったら『感謝する。』とか言ったくせに手助けはしないなんて……
エリーゼ可愛さにルーク殿下を苛めるなんて仕方ない人。
「はい、本日の第3王子殿下の婚姻祝いも帝国から1人で王宮へと旅して参りました。昼間とはいえ、街道で度々魔物に遭遇しました。帝国とは違い、王国は実に魔物が多い。その王国でも、指折りのシュバルツバルト領の方々と共に旅を出来るのは嬉しい限りです。是非とも、指導して下さるとありがたいです。」
「ほぅ………なる程、では手助けは為ぬが指導は致そう。キャスバル、トールどちらかルーク殿下に付け。」
まぁ……旦那様ったら、指導とは名ばかりの娘婿育てかしら?
「では、私が。レイも共に付いて、しかと指導致しましょう。ルーク殿下、これより私の事はキャスバルと呼び捨てて下さい。」
キャスバルったら、さっそく仲良くなろうとしてるわ。
フフッ……今まで、呼び捨てて良いなんて第3王子にすら言わなかったのにね。
気に入ったのね。
「ありがとうございます。ご指導よろしくお願い致します。」
言葉だけではなく、立ち上がり深々と頭を下げたわ。
どうしようかしら、私も気に入ってしまったわ。
あら、いやだ。
旦那様ったら、面白くないってお顔だわ。
貴族の娘としては婚約破棄など、屈辱の極みのようだが相手があれでは屈辱なぞどこ吹く風。
あの王子の有り様が酷すぎて、付き合いのある夫人達に「良かったわね」等と囁かれたわ。
そして1番の心配事も、この場にお出でるゴルゴダ帝国皇太子第5皇子ルーク殿下の存在でとりあえず不要になった。
これで暫くは、下心で近付こうとする愚かな男共は近寄れないでしょう。
まさか王国第3王子の次は帝国の皇子が出てくるなぞ、誰も……いえ、私すら予想していなかった。
「私がエリーゼ嬢の側に居る事を何故許していただけたのか、教えて貰えますか?シュバルツバルト侯爵夫人。」
「ルーク殿下、おおよその事は想像していらっしゃるのでは?」
…………思ったよりも聡いのかも知れない。
仮にも皇子という立場であったなら、それなりに教育されているのであろう。
にこやかな顔で居られるが、眦まで下げる念の入れよう……5番目なのが勿体ない気がするわ。
「そうですね、私が側に居る事で王国内の下心のある貴族は声を掛ける事すら出来ないでしょう。…………私が居る事で、エリーゼ嬢は帝国皇室及び貴族に輿入れする可能性を見せつけますか?」
中々良い答えよ。
でもね、王国の貴族達は思い出すべきなのよ……私がどこの誰だったのかを。
「可能性……ね。可能性はずっとあったのよ。ただ、忘れていただけ。私、前はフェリシア・ド・シルヴァニアと名乗ってましたのよ。」
カタッと立ち上がり、私を凝視するルーク殿下の顔はクルクルと様変わりした。
思い掛けない事だったかしら?
ストンと力尽きたように座った殿下は両手で顔を覆い「だからか……」と小さく呟いた。
意を決したのか両手を外し、真っ直ぐ私を見つめた。
「失礼だが、お父上は何方か教えて頂けますか?」
あら?随分と聞き分けが良いのかしら?
「アーネスト・コレミツ・ド・シルヴァニアですわ。」
「現宰相殿でしたか。それは、失礼致しました。」
やはり聡い、名前を聞いて即答してくるとは思わなかったわ。
少し位、時間が掛かるかと思っていたのに。
「そろそろ、割って入って良いかな?」
あら、旦那様が痺れを切らしてしまったわ。
「ルーク殿下、まずは我が娘に近付き感謝する。おかげで詰まらぬ些事に時間を割かなくて良くなりました。明日からの領地への旅も同道して頂けるとか……ですが、我が国は魔物の多い土地柄故己の身は己で守って頂きたい。宜しいかな?」
ま、旦那様ったら『感謝する。』とか言ったくせに手助けはしないなんて……
エリーゼ可愛さにルーク殿下を苛めるなんて仕方ない人。
「はい、本日の第3王子殿下の婚姻祝いも帝国から1人で王宮へと旅して参りました。昼間とはいえ、街道で度々魔物に遭遇しました。帝国とは違い、王国は実に魔物が多い。その王国でも、指折りのシュバルツバルト領の方々と共に旅を出来るのは嬉しい限りです。是非とも、指導して下さるとありがたいです。」
「ほぅ………なる程、では手助けは為ぬが指導は致そう。キャスバル、トールどちらかルーク殿下に付け。」
まぁ……旦那様ったら、指導とは名ばかりの娘婿育てかしら?
「では、私が。レイも共に付いて、しかと指導致しましょう。ルーク殿下、これより私の事はキャスバルと呼び捨てて下さい。」
キャスバルったら、さっそく仲良くなろうとしてるわ。
フフッ……今まで、呼び捨てて良いなんて第3王子にすら言わなかったのにね。
気に入ったのね。
「ありがとうございます。ご指導よろしくお願い致します。」
言葉だけではなく、立ち上がり深々と頭を下げたわ。
どうしようかしら、私も気に入ってしまったわ。
あら、いやだ。
旦那様ったら、面白くないってお顔だわ。
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