婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 5

俺はこぼれ落ちる涙を見せたくなくて、両腕で顔を覆った。
俺は、この旅で見殺しにされるのかもしれない。
いや……多分見殺しにされるのだろう。
今まで兄上達は一度も、討伐なぞ行かなかった。
…………いや……違う………直轄地に視察に…………
そうだ……直轄地に視察と言っていたが、女中達が直轄地の魔物討伐だと噂していた。
逃げ込んだ繁みの中で何度も聞いた……
兄上達が帰ってくる度、女中達が素敵だの男らしいだの……抱かれたいだの…………
俺はただの視察だと、ずっと思ってた……だけど本当は討伐だったなら?
男らしく魔物を討伐してきた兄上達………
怪我らしい怪我も無く、王宮に帰ってきていた兄上達………
俺は怪我も無く、ここに帰って来れるのか?
剣も得意じゃない魔法も得意じゃない。
お飾りで行く……ろくろく戦え無い俺を、誰が敬う?
それでも、行かねば王命に逆らったと処罰される。
俺は……
責任ある王子として、行かねばならない……
もぅ、逃げる事を許して貰えない。
例え死ぬと分かっていても……

ーコンコンコンー
「失礼致します、ジークフリート殿下。此度の討伐の旅で殿下の共を致します、シュタインと申します。」

シュタイン?誰だ?
許しも無く、ズカズカと入ってきた筋骨隆々の男を見つめた。

「ハッハッハッ、先日大部隊長に就任致しました。こう、見えても大型討伐に参加した事もあります。此度の旅は小型から中型を討伐すると聞いておりますし、気楽に行きましょう。」

「大型?小型から中型?何のことだ?」

いったい何の話しだ?さっぱり分からん。

「魔物の大きさですな。大型は身の丈よりかなり大きいものを指します。中型は身の丈より少し大きいか身の丈位のもの、小型は弱いものや身の丈より小さいものの事を言います。此度は牙猪や角兎、ゴブリンやスライムあたりを討伐して行くのですよ。目的地も直轄地に行って、折り返してくる旅程ですしね。」

大きさで変わるのか………

「大型はそんなに大きいのか……やはり強いのか?」

しまった、思わず声に出てしまった!

「大きいですな!私はシュバルツバルト侯爵次期様と行きましたが、白大兎とか言って身の丈の倍はあろうかと言う奴の討伐に行きましてな!大きな爪で殴られれば、死ぬから気を付けろ!と言われましてな……大きな氷の塊を一撃で砕く奴の強さは恐ろしかった……次期様がトドメを刺しまして、いやぁ……さすがシュバルツバルト侯爵の次期様だと皆口々に言ったものです。」

…………そんなに凄いのか…………
侯爵も……その息子達も、そんなのに立ち向かってたのか……………
エリーゼはそんな胆力のある家族に支えられてるのか…………

「もし、俺がエリーゼと一緒になっていたら………」

しまった、また声に出てしまった!

「そりゃあ、シュバルツバルト侯爵様か次期様か弟殿か誰が同道したでしょうな!誰が同道したとしても、皆様大型討伐にたけておりますし殿下はのんびり待つだけで良かったでしょうな!」

そうだったのか………
シュバルツバルト侯爵は、そんなに強かったのか………
俺は何も知らなかった……
ただの田舎の侯爵だと思っていた、でも違うんだな……
俺の知らない事が、もっとある?
あぁ……あるんだろうな……………
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