婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 王宮にて

私は焦っていた。
陛下や息子達と話し合った感想、一人後宮に戻ってもその焦りは消えなかった。
王妃として暮らしてきて、こんなにも不安と焦燥に駆られた事は無かった。
愚かだが、やっと産まれた末の息子を可愛がっていたつもりが甘やかしていた事に気が付いたのは学園に入る15才の頃だった。
足りない学力やまともに振るう事が出来ない剣……
忙しさもあって、自分の子供は出来ると思い込んでいた。
事実、あの子以外は出来ていた。
同じようにしていたのに、あの子だけがあんな風になってしまった。
私の落ち度だ。
その落ち度で王都は……王都民は……
シュバルツバルト領の通行料や税を元に戻しても、昔に戻るだけだと考えていた。
それは私だけで無く、陛下もそう考えていたし言葉もあった。
なのに元に戻るどころか、それ以上に値がつり上がっていた。
帝国から入る物だけでなく、他領から運ばれる物も値が吊り上げられていた。
調べてみれば、高位貴族の領地の通行料や税は変わって無かった。
問題は下位貴族だった。
税も通行料も値上げしていたのだ。
慌てたのは私達だけでは無かった、寄親である高位貴族も慌てたのだ。
彼等は知らなかった。
ある者は早馬を飛ばし、ある者は兵を差し向けた。
彼等は寄子貴族の当主に詰め寄り、問いただした。
そして口々に出てきた言葉は、ドゥルテ男爵令嬢が婚姻するならばこの先自分達の子供や孫も婚姻できるかも知れない。
その為にも金は必要だ。と………取れる所から取らないで、どうするのか!と…………
彼等は自領の税も上げていた。
それでは民は苦しみ喘いでしまう…………
高位貴族の中には、怒りの余り寄子貴族を切り離した者もいた。
怒りを買った元寄子貴族は慌てたが、決して許すこと無く言葉どころか目線すら合わせなかった。
それらは全て私の影達が報せてくれた。
影達からの報せは次々と届く。
王都から数十人の民が……商人一家が幾つも店を手放した……と。
そしてもたらされたのは、シュバルツバルト家の帰領の報せだった。
シュバルツバルト家だけでなく、寄子貴族の全てとウナス伯爵家も同道する……と。
そこに商人達も同道すると………
シュバルツバルト家とウナス家は隣接している。
使う街道も通称・海塩街道と呼ばれる街道を使うのだろう……
奇しくもあの子が討伐に出向く直轄地へと続く街道……
これから民はどんどん流れてしまうだろう………
王都から民が消える………
それは王家から力が消える事に他ならない。
まるで坂を転がり落ちるような感覚に囚われ、ブルリと震える。
もし………もし、このまま…………

「大丈夫で御座いますか?お寒いのでしたら、膝掛けをお持ち致します。紅茶も入れ直しました……大丈夫で御座いますか?」

侍女頭が声をかけてくれた。
私の娘時代から、付いていてくれる彼女。
私は無理やり笑顔を作った、心配させたく無い。

「大丈夫よ。大丈夫………」
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