婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 9

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行進していく兵士達の前方に仰々しく2本の旗を立てて進む一団が居る、あの旗の紋章は知っている……キーエル男爵家のものだ。
あそこにジョシュアがいるのか……あの一団だけ武装の有り様が違うと言う事は、あの一団が男爵家の者達だからか……20人はいるのか?だが、ミヒャエルはどこにいる?前じゃないなら後ろか?後ろをチラリと見れば、やはり仰々しく旗を立てている一団が居た。
クズイ子爵家の旗を立てている一団は40人居た、自分の息子の為に子飼いの騎士をそれだけ付けるのか……
何だか俺は、自分が愛されてないかのように感じた。

「殿下、気になりますか?ですが、気落ちしないで下さい。彼等は騎士でありますが、我等は魔物の討伐に慣れた者達ばかりです。この旅は魔物の討伐です、誰かを威圧するためでも弱い者を追い回す事でもありません。…………気を抜けば人間を一撃で死に至らしめる事も出来る魔物だっております………たとえ小型でも牙猪は強いですしね。怪我をする事も日常茶飯事です、そういった魔物が相手なのです。正直、騎士を何人付けようとまともに魔物と対峙した事の無い者は足手まといなのです。」

シュタインの辛辣な物言いにビックリしたが、そうか……騎士は人相手に闘う者達で魔物の討伐には出向かわない。
………足手まとい………なぜ、足手まとい等とはっきり言ったのか……

「不思議そうなお顔ですな、足手まとい等と言ったのが分かりませんか?……………彼等は栄えある騎士です、魔物に手慣れた兵士の言う事なぞ聞きません。ましてや兵士の殆どは平民あがりです、彼等の騎士と言う誇りが彼等を追い詰めて行くのです。」

「追い詰めて行く?何がだ?」

俺の疑問に笑顔を消し、声を落として言われた。

「平民の言う事なぞ聞かない彼等は、驚く程簡単に魔物に殺される。何故、平民が盾とならないのだと問われるが乱戦状態になれば盾となるのは無理だと言うのだがね……分かっているのですよ、盾になるのは無理だと……でも言うしか無い、死んだ騎士達の親の手前言わざるをえない………少しでも、言う事を聞いてくれれば……正直、何度もそう進言したが受け入れては貰えませんでした。今回も出立前に説明しましたが、おそらく聞かれ無いでしょう。彼等は騎士の誇りと共にあるのです。」

シュタインは悔しそうに呟いた。
黙々と進む兵士達は大門前の広場に入って行く。

「変だな?何故、屋台が1軒も居ない?まだ、昼過ぎだぞ………」

「何を言ってる?屋台……?」

シュタインは困惑したように周りを見回しながら、俺の疑問に答えてくれた。

「雨でも降らない限り、何軒かは屋台が出ているものなのに1軒も無いなんて初めての事です。いくら何もかもが高くなったとは言え、それなりに商売出来ていたはずだ……いつもなら、昼前から夜まで出ているのだが………店じまいするには早すぎるし、元々出ていなかったのか?」

首を捻り困惑したままでも、行進は止まること無く進んで行く。
黙々と粛々と………
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