婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 それぞれの夕暮れ・2

ジョシュアは渡された干し肉を、ジッと見つめていた。
夕食と言われて渡されたのだが、今まで食べた事の無い物をどうやって食べれば良いのか分からずにいた。
キョロキョロと見回せば、兵士達がそのまま齧っている。

「そのまま齧るのか………」

ジョシュアはおそるおそる干し肉を少し齧る………が肉は硬く噛み切る事が出来なくて噛みつづける。
ずっと噛みつづけると、少しずつ肉が柔らかくなり味が染み出してくる。
兵士が目の前に立ち、いかにも堅そうなパンを差し出している。
ジョシュアは干し肉をガジガジと噛みながら、空いた手でパンを受け取る。
グイと干し肉を噛み切ろうと、力任せに歯を食いしばる。

「大丈夫ですか?不慣れな干し肉だと、一苦労なさるでしょう?」

優しげな兵士が馴れ馴れしく声を掛けて来て、ジョシュアは少しだけ不満顔を露わにする。

「ハハッ、平民が気安く声を掛けてくるなんてって顔ですね。ですがね、キーエル男爵令息………討伐隊には結構貴族令息が混じっている事を知っておいた方が良い。隊長はシュタイン伯爵家の出ですし、俺はフォレスター伯爵家の出ですよ。クズイ子爵令息についている兵士長はオーリス伯爵家の出ですよ。」

ジョシュアは驚いた顔を隠す事なぞ出来なかった、自分だけで無くミヒャエルに付いている兵士に伯爵家の者がいる事にただただ驚くばかりだった。

「今回はジョシュア殿やクズイ子爵令息がいる事で余計な揉め事を避ける為に、高位貴族令息が入ってるんだ。………頑張って干し肉食っちまえ、特別に生肉焼いてやるからさ。」

フォレスター伯爵家の出だと言った兵士を見送り、生肉を焼いて貰える事に内心小躍りし干し肉を一心不乱に齧るジョシュアだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ぅおーい!干し肉は行き渡ったかぁ!パンを回せよ!後、ワイン回してくれ!」

先頭の兵士達はげらげらと笑いながら、ワインを回し飲みながら干し肉やパンを毟るように齧っていた。

交代で寝る為に組まれた天幕の前に焚き火が焚かれ、兵士達は暖を取っていた。

「今回は貴族の坊ちゃんが混じってるけど、この討伐隊って本当の平民なんて半数以下だよな?」

「今回はそうだよな!兵士長は全員伯爵家の出だよな!なっ!兵士長様!」

ガッハッハッと大声で快活に笑う大男も実家は伯爵家だったが、長兄が伯爵家を継いで久しく彼は七男で早々に家を出て所帯を持った兵士一本槍な男だった。

「おう、あっちから良い匂いがするな!うちも肉焼こうぜ!角兎が取れただろう、あいつら焼いて食おう!角と皮は荷馬車の素材入れに放りこんどけ!」

あちこちから、歓声が上がりバタバタと兵士達は走り回る。
やがて肉だけになった角兎が焚き火で焼かれ出し、香ばしい匂いが漂う。
兵士達はワインを回し飲みながら、歌を唄い肉が焼けるのを待つ。
今夜が無事に過ごせるよう、明日も一日元気で過ごせるよう願った歌を唄いながら。
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