婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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旅路 ルーク頑張る!

俺はエリーゼの声援を受けて、向こうで仕留めた牙猪の剥ぎ取りに向かう。
シュバルツバルト候が張り切って陣頭指揮をしているな……やっぱり娘に頼られる父親って特別なのかね?

「ご主人、どうしたにゃ?」

ノエルがグイッと背を伸ばして聞いて来る。
頭をと言うか、耳の裏辺りを指先で掻く。

「どうもしないよ、こっちであの牙猪をバラす手伝いをしないとな……さ、行こうか。」

キャスバルを探して歩き出すと、エリーゼと一緒に倒した大牙猪の剥ぎ取りに取り掛かっていた……しかも何人もの人が群がってる……改めて見ると、あのサイズは無いな……デカ過ぎる…………

「おっ!ルークも来たのか、あっちで待っていても良かったのにどうした?」

「あぁ、キャスバル!向こうで討伐したやつを俺の持ってるアイテムバッグに入れたらどうかと思って来たんだ。後、バラす手伝いをしてみたいと思って。」

うん、嘘は言ってない。
キャスバルが凄い笑顔で俺を見つめるけど、本音を言えば止めて欲しい。
色気が凄すぎて、何だか居たたまれない。

「助かる!あっちに分けたヤツがある、どんどんしまってくれ!全部向こうではらわたは置いてきたから、安心してくれ。」

……よくよく見ると、髪やら顔に血がついてらー……ヘタにイケメンだから、猟奇的だな。
逆らわず言う事を聞くのが得策だな、一応真ん中辺りに纏めているがあっちもこっちもバラしまくってるな……片っ端からしまって行くか。

「分かった、じゃあ行ってくる。ノエル、まずは真ん中辺りのヤツから片付けるぞ。」

軽く走って肉・骨・毛皮・牙と分けられた塊をどんどんアイテムバッグにしまっていく。
ちょっと手が届かない物はノエルが持って来てくれる、気の利くお供で非常に助かるし嬉しい。
…………取って入れての単純作業なのに疲れてきた……単純作業だからか?

「ルーク!デカ物が終わった、こっちに来てくれ!」

おっ!大牙猪の剥ぎ取り終了か、どれどれ…………バラすとエグい量だな…………

「随分ありますね……」

「あぁ、だが味は良い。旅の間のご馳走様だな。」

「なる程、人数も多いですし食べきれますね。」

大きいだけあって、何もかもがデカい……ノエルに持たせる訳にはいかないから待たせた……ん?笛?…………ハッとなってノエルを見るとノエルが笛を吹いてます。回復笛だよ、ありがとうノエル!疲れも吹き飛ぶよ!癒されるしな!

「ん?疲れが取れた……?まさか……」

「えぇ、この笛です。僅かですが疲れが取れます。」

キャスバルは気が付くのが早い、さすが次期侯爵と言う訳か。一緒にいた隊員達もニコニコしてノエルを見ている、ある意味アイドルだな……と思う。

「有能だな、エリーゼも連れていたし……俺はレイ以外を連れて歩こうとは思わんがルークとエリーゼは気が合うんだな。」

「そこぉ!余計な事を言うなぁっ!!」

……父親とは娘の恋愛事情には敏感だと言うが、侯爵のコレは入り婿に対するジェラシーを感じる(笑)名ばかりの婚約者だが、俺がエリーゼを好きなのがバレてるんだろうな。

「父上も大概諦めませんね!エリーゼの将来を考えたらルークが1番良い相手だって分かるでしょう!」

「分かってる!だが、俺の気持ちも考えろ!今まで我慢してきたんだ!」

何となく嫌な流れだな……早くしまって行こう……

「我慢してたのは父上だけじゃありませんよ!俺もトールも我慢してたんだからな!母上に至っては我慢のし過ぎで、何度俺達が怖い目にあったと思ってるんですか!」

「バカヤロウ!怖い目にあったのは俺もだろうが!むしろ俺の方が多いわ!」

あ……アホな親子げんかになる悪寒……

「おーい!こっちも終わったぞー!来てくれ-!」

トールに呼ばれた!なんて良いタイミングだ!

「ノエル、あっちだ!」

早急に離脱だ!走って離れるがまだ何かブツブツ言ってるのが聞こえたけど、聞こえない所まで逃げておこう!

「待たせた、ここにあるので終わりか?」

「あぁ、皆で解体したから早かったな。悪かったな、助かるよ。向こうは放っておいて構わないよ、ちょっとしたヤキモチだからさ。……エリーゼの事、頼む……可愛い妹だからさ、ルークが良いヤツで良かったと思ってる。」

トール……いずれ兄上になるキャスバルと言い、候は子育てが上手いんだな……そこは見習わなければいけない美点だ。

「ありがとうございます、まだ正式な婚約者ではありませんが本音を言えばエリーゼ嬢……いえ、エリーゼと末永く共に居たいと思ってます。」

ニカッと笑うトールはチャラ王子みたいだが、見た目と言うか雰囲気が柔らかいからそんな風に見えるだけで中身は硬派な好人物だと思ってる。

「おぅ!頼んだ!やっぱり、王都から離れて貴族の目が無い方が楽だわ。貴族らしい言葉遣いとか立ち居振る舞いとか、堅苦しいな……荒いが許してくれ。」

「俺も本当は皇子らしく振る舞うのは得意じゃないんで、気安く接して貰える方がありがたいです。」

俺もハハッと笑う、いつの間にか近くに寄って来ていた隊員達も笑っていた。

「ご主人!早くしまうにゃ!」

「おっ!悪かった!」

ノエルに催促されて残っていた解体済みの物をじゃんじゃんしまう。
全部しまい終えると向こうから候とキャスバルが歩いて来た。

「しまい終わったようだな、じゃあ本隊に帰って休むか。いつも通り交代で警戒に当たってくれ。ルーク!狭く感じるかも知れんが、俺の馬車に来い。」

え?…………候と一緒の馬車に…………ゾクリと寒気が腰の辺りから登ってくる……なんでだ…………

「はい、ありがとうございます。」

気を遣ってくれたんだろう、ありがたいのだが何故悪寒が去らないのか……気にしたら負けな気がする…………

「よし!後は任せたぞ!」

ーおぉぉぅぅ!ー
隊員達が一斉に応える姿に、胸が熱くなる……俺はこの人の義理の息子になるんだ、もっと鍛えて認められるようになりたい!そう思った。

「行くぞ!」

キャスバルに声を掛けられ。

「大丈夫だ、気に入られてる。」

トールに言われ、肩を叩かれる。

俺はノエルと手を繋いで、後を付いて行く。
朗らかに笑う候とキャスバルとトールが俺を待っていてくれた、その姿に胸が暖かくなる。
追いつくと候は又ノエルをヒョイと抱き上げ、俺はノエルと繋いでいた手が離れると思ったが候は俺の隣を俺に合わせて歩いてくれた。

「いつか子供が出来たら、分かる。」

そう言われ、候の……父の……夫としての振る舞いの一端を学んだ。
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