婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 25

バタバタと慌ただしく兵士達は天幕の間を駆け回り、緊張した面持ちでキョロキョロと暗闇や繁みを見回す。
あの魔物がどこにいるのか分からない以上、ヘタに動けないのだろう……こんな時にエリーゼが教えてくれた事が役に立つなんて……
俺にはサッパリだったけど、分からなくても良いから聞いておくだけでも違う……そう言われた事の意味が今になって分かるなんて……

伝令が走って間もなく、屈強な男達を連れたシュバルツバルト候が来た。
シュバルツバルト候の後ろには、あの皇子とエリーゼも居た。何故、女性であるエリーゼを伴って来るんだ……娘が可愛くないのか?幾ら強いと言っても淑女として育ってきた令嬢だろう……相手は大型なんだぞ……

「やつは雷狼!狼系最大の魔物だ!怯めば即座に襲ってくる、決して逃げるような真似はするな!」

シュバルツバルト候は大声で皆に聞こえるように叫んだ。
あんな大きい魔物相手に逃げるな!だと……随分と無茶を言う。
それにしても、何故エリーゼは向こうを見ている?あの皇子もだ。

「シュバルツバルト候、エリーゼ嬢は何故あちらを……」

そう言ったシュタインの顔が瞬時に凍りついたかのように強張った。

「一体、何だと……」

エリーゼとあの皇子が見ている方を目を凝らして見て、俺の体がビシリと固まり恐怖で動けなくなった。
月光を浴びて浮かび上がるように見える白っぽい岩肌の上に、黒い大きな狼が居た。
時折チカチカと光る青い光が、狼の体毛の上を流れるように光る。
その光で狼の大きさが良く分かってしまう。
巨大な岩の上なのに、かなり大きいと感じる……あんなのに立ち向かうと……!冗談じゃない!
だが、逃げれば襲ってくると……
俺は目を背ける事も出来ずに、あの青黒い狼を見つめた。
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