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討伐の旅 26
「じょっ……冗談じゃないっ!あんなのが出るなんて聞いてないっ!」
叫んだのはジョシュアだった。
俺は顔だけを声のする方に向けた。
ピカピカに磨かれた金属製の武装、同じ誂えの剣と盾……よく見知った顔の筈の友人が理解したくない言葉を口汚く唾を飛ばしながら叫んで踵を返して走った。
ー背中を見せるなっ!ー
侯爵が叫んだけれど、どこか遠くからの声に聞こえた。
天幕のあちこちから、同じ誂えの姿の騎士達が現れジョシュアを追って馬達のいる場所へと向かい始めた。
「動くなっ!」
誰の声だろう……あぁ、多分シュバルツバルト候だな……俺は動かそうとした体をピタリと止めジョシュア達を見ていた。
一瞬の事だった。
逃げるジョシュアを青黒い……巨大な狼が押さえつけ、大きな叫び声をあげるジョシュアの上半身を噛み千切った。
信じられない程の血と地面にぶちまけられた腸。
「クソがぁッ!上等だぁっ!」
聞き覚えのある声が……聞いた事も無い、下品な言葉を紡いだ。
青黒い巨大な狼はジョシュアの騎士達を次々となぎ倒し、噛み殺したり巨大な爪で斬り殺した……
ジョシュアの騎士達は、誰一人立っても居なければ生きてもいなかった。
ヤメロッ!
待てっ!
エリーゼッ!
後ろから聞こえる叫びにビクンと体が跳ねる。
そうだ!エリーゼ!エリーゼが来ているのに!
何が起きたのか分からなかった。
あの青黒い巨大な狼の目の前にエリーゼが立って居た。
「やめろぉ!逃げろ!逃げてくれ!エリーゼ!」
訳も分からず叫んだ!
イヤだっ!イヤだ!イヤだ!イヤだ!お前がジョシュアみたいに噛み千切られるなんて!やめてくれっ!
「クソがぁッ!お前の相手は私だぁっ!追いかけて来るがイイ!」
何か叫んだと思ったら、凄まじい勢いでどこかへと消えた。
青黒い巨大な狼はエリーゼを追うように、天幕を飛び越えて消えた……
「野営地から離れた!行くぞっ!」
シュバルツバルト候の叫び声が聞こえた。
どこに……何で……エリーゼ…………ジョシュア…………
目の前に広がる、さっきまで人間だったモノ達を見つめた。体中から力が抜け、まともに立っていられず膝をついた。
「殿下っ!ジークフリート殿下っ!腑抜けている場合ではありません!エリーゼ様は、被害を最小に抑える為に野営地から離れたのです!シュバルツバルト候もです!我等も微々たるものですが助力しに参りましょう!殿下っ!あれら亡骸は後でも良いのです!今は、大型をどうにかしなければ我等とて生きる事が出来ないのです!生きる為に立って下さいっ!」
生きる……為…………
そ……うだ……生き……なけれ……ば……
「キーエル殿はシュバルツバルト候の言葉を聞けなかった!逃げなければ、生き残れる可能性があった!殿下はっ!殿下は逃げも隠れもしなかった!だから今、生きてらっしゃるっ!エリーゼ様が何故、逃げるように背中を見せたかっ!殿下っ!」
そうだ……そうだっ!エリーゼ!
「行……かな……行かなければっ!エリーゼッ!エリーゼが危ないっ!」
既に野営地に残っていたのは、後方支援の者達と俺とシュタインだけだった。
俺はガクガクと震える体で戦う音のする方に進む。
ノロノロとした歩みが少しずつ早くなって、野営地を抜ける頃には焦る気持ちと共に走り出していた。
叫んだのはジョシュアだった。
俺は顔だけを声のする方に向けた。
ピカピカに磨かれた金属製の武装、同じ誂えの剣と盾……よく見知った顔の筈の友人が理解したくない言葉を口汚く唾を飛ばしながら叫んで踵を返して走った。
ー背中を見せるなっ!ー
侯爵が叫んだけれど、どこか遠くからの声に聞こえた。
天幕のあちこちから、同じ誂えの姿の騎士達が現れジョシュアを追って馬達のいる場所へと向かい始めた。
「動くなっ!」
誰の声だろう……あぁ、多分シュバルツバルト候だな……俺は動かそうとした体をピタリと止めジョシュア達を見ていた。
一瞬の事だった。
逃げるジョシュアを青黒い……巨大な狼が押さえつけ、大きな叫び声をあげるジョシュアの上半身を噛み千切った。
信じられない程の血と地面にぶちまけられた腸。
「クソがぁッ!上等だぁっ!」
聞き覚えのある声が……聞いた事も無い、下品な言葉を紡いだ。
青黒い巨大な狼はジョシュアの騎士達を次々となぎ倒し、噛み殺したり巨大な爪で斬り殺した……
ジョシュアの騎士達は、誰一人立っても居なければ生きてもいなかった。
ヤメロッ!
待てっ!
エリーゼッ!
後ろから聞こえる叫びにビクンと体が跳ねる。
そうだ!エリーゼ!エリーゼが来ているのに!
何が起きたのか分からなかった。
あの青黒い巨大な狼の目の前にエリーゼが立って居た。
「やめろぉ!逃げろ!逃げてくれ!エリーゼ!」
訳も分からず叫んだ!
イヤだっ!イヤだ!イヤだ!イヤだ!お前がジョシュアみたいに噛み千切られるなんて!やめてくれっ!
「クソがぁッ!お前の相手は私だぁっ!追いかけて来るがイイ!」
何か叫んだと思ったら、凄まじい勢いでどこかへと消えた。
青黒い巨大な狼はエリーゼを追うように、天幕を飛び越えて消えた……
「野営地から離れた!行くぞっ!」
シュバルツバルト候の叫び声が聞こえた。
どこに……何で……エリーゼ…………ジョシュア…………
目の前に広がる、さっきまで人間だったモノ達を見つめた。体中から力が抜け、まともに立っていられず膝をついた。
「殿下っ!ジークフリート殿下っ!腑抜けている場合ではありません!エリーゼ様は、被害を最小に抑える為に野営地から離れたのです!シュバルツバルト候もです!我等も微々たるものですが助力しに参りましょう!殿下っ!あれら亡骸は後でも良いのです!今は、大型をどうにかしなければ我等とて生きる事が出来ないのです!生きる為に立って下さいっ!」
生きる……為…………
そ……うだ……生き……なけれ……ば……
「キーエル殿はシュバルツバルト候の言葉を聞けなかった!逃げなければ、生き残れる可能性があった!殿下はっ!殿下は逃げも隠れもしなかった!だから今、生きてらっしゃるっ!エリーゼ様が何故、逃げるように背中を見せたかっ!殿下っ!」
そうだ……そうだっ!エリーゼ!
「行……かな……行かなければっ!エリーゼッ!エリーゼが危ないっ!」
既に野営地に残っていたのは、後方支援の者達と俺とシュタインだけだった。
俺はガクガクと震える体で戦う音のする方に進む。
ノロノロとした歩みが少しずつ早くなって、野営地を抜ける頃には焦る気持ちと共に走り出していた。
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