婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 30

ゆっくりと目の前に居た一行、多くの軍馬と豪奢な馬車から粗末な荷馬車までがゆるゆると進んで行く。
長い事使われていると一見して分かる街道を進んで行く。
俺達は新しく作られた広く美しい街道を進んで行く。
馬上から離れつつあるシュバルツバルト侯爵一行を見れば、あの帝国の皇子が軍馬よりも大きい黒馬に跨がっていた。あの馬は前にも見た……あの皇子の馬なのか……!今……笑った?気の……せいじゃ……ない。
前について進む俺を……嘲笑うように……見間違いじゃない!あいつは俺を嘲笑った……

「ジークフリート殿下、気にしてはなりません。彼の皇子に勝てる者は我が国にはおりません。」

帝国の一皇子が……!

「ジークフリート殿下、帝国と王国では国力が大きく違います。それだけではありません、ジークフリート殿下……ジークフリート殿下はたった一人で帝国へ行けますか?」

「行ける訳がないだろう!どれ程魔物がいると……」

そうだ……俺は一人じゃ王国を出る事すら出来ない……

「そうです、彼の皇子は一人で王都までやって来たのです。お供はあの黒馬だけで。その胆力や勇気、先日垣間見た剣技……ジークフリート殿下は彼の皇子の足元にすら及びません。」

「分かってる……」

「立場も強くあられる……本当に分かっておいでですか?……今、我が国の貴族達はどうなってるかご存知ですか?今の貴族達は二分されているのですよ。」

「二分?どう言う事だ?」

何?何で、そんな事になってる?二分って……いったい……

「領地を守る者と守らない者です。守る者はことごとく領地に帰り、領民の為に動いている。守らぬ者は王都に留まり安穏と暮らしている。」

「何を言ってる、皆祝いに来てくれたではないか。誰も帰っては居らぬだろう。」

シュタインは深くため息をついた。俺は何かおかしい事を言ったのか?

「当主とその夫人は居りました。だが、ご子息は?次期当主と目される方がどれ程居ましたか?」

俺には分からなかった。あの場に居た青年貴族は次期当主になるような者達ではなかったのか?

「分からないですか?……高位貴族に限って言えば、シュバルツバルト侯爵家だけです。他の公爵家、侯爵家、伯爵家は誰一人居ませんでした。当主の代わりに領地に帰ったのです、領地を……領民を守る為に。」

「なぜだ……どうして、領地に帰る事が守る事になるんだ……」

俺には全く分からなかった。シュタインはただただ残念そうな顔で俺を見ていた。

「この先、王国内は荒れるでしょう。王都から民の流出するでしょうね、でも民はどこに行くのでしょう。きっと豊かな地を目指して行くでしょう。王国で最も豊かな領地はどこだかご存知ですか?」

「いや……」

「そうでしょうね、知っていなかったからでしょう……我が国で最も豊かなのはシュバルツバルト侯爵領です。最も豊かで最も強い私兵を持つ辺境侯。それ故、王家は何とか縁故を結びたかった。」

何も言えなかった……知らなかった事ばかり……誰も教えてくれなかった…………違う、知ろうとしなかった。何も……国の事もエリーゼの事も、嫌な事から逃げて……俺はバカだ……
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