210 / 756
針仕事
しおりを挟む
アタシの名前はマリー。仕事はお針子をしてる。
亭主と子供を連れて、シュバルツバルト領へ侯爵様と一緒に旅をしてる。
亭主は大工で野営の時に荷馬車の補修とかして小遣い稼ぎをしている。
もっとも小遣い稼ぎしても、使う所は殆どない。
朝晩出る食事はお腹いっぱい食べてもタダだてだけでもありがたいのに、驚く程美味しい。
それだけじゃなくて、必ず食後に甘い物か果物が出される。
お貴族様だけかと思ったら、アタシ達平民達にも食べろ食べろと進めてくる。
今じゃ、遠慮無く子供達は走って貰いに行く始末。
旅が終わってから、ねだられたら困っちまうと思ったが使用人の女達は笑って大丈夫だと言っていた。なんでも領地は桃が特産品で、ナリの悪い物なんかは平民が買うには手頃な値段で平民はそいつを買って干したりして食べるらしい。
王都じゃ桃は贅沢品で干した物の欠片でも、中々口にすら出来なかった。
それなのに、侯爵様のご令嬢が自ら料理をしたりお菓子って新しい食べ物を振る舞って下さる。
初めて食べた時は甘くて甘くて、ホッペタが落ちるかと思ったよ……
おっと、いけない!考え事をしてても針を止めないのがお針子だ!うっかり止まりそうになっちまった。
荷馬車が動いてる時は危ないから、針は持たないが野営の時の止まった時にと仕事を頼まれた。
依頼者は侯爵様で、依頼は後からやって来た連中に服を縫ってくれって事だった。連中は殆どが着のみ着のままやって来たようだった。準備も碌々出来ずに金を出し合ったらしい。家財道具の殆どを売って金を作ったらしい……私達みたいに大した金もかからずに侯爵様と一緒に王都を出て来た者は幸運だった。
「よし、女物のドレス上がったよ!」
「お次は子供用だよ。」
「なんだい!ちっとも終わりゃあしない。」
「あはは!旅が終わるまでの仕事さぁ!」
「そうそう、やったらやった分だけはずんでくれるんだ。」
「ありがたいこったよ。」
「そりゃそうだ!子供用かい、どっちを作れば良いんだい?」
「どっちだって良いよ、どっちもいるんだからさぁ!」
「男物のシャツが出来たよ、アタシも子供用を縫うかね。」
「あいよ!」
お針子仲間と一緒に一生懸命縫う。
縫うのが仕事だからね!それにね、うちの子供が言うんだよ「お針子してる母さんはかっこいい」ってさ。
子供にそんな事言われたら嬉しいじゃないか。
だから、頑張れるだけ頑張るのさ。
亭主と子供を連れて、シュバルツバルト領へ侯爵様と一緒に旅をしてる。
亭主は大工で野営の時に荷馬車の補修とかして小遣い稼ぎをしている。
もっとも小遣い稼ぎしても、使う所は殆どない。
朝晩出る食事はお腹いっぱい食べてもタダだてだけでもありがたいのに、驚く程美味しい。
それだけじゃなくて、必ず食後に甘い物か果物が出される。
お貴族様だけかと思ったら、アタシ達平民達にも食べろ食べろと進めてくる。
今じゃ、遠慮無く子供達は走って貰いに行く始末。
旅が終わってから、ねだられたら困っちまうと思ったが使用人の女達は笑って大丈夫だと言っていた。なんでも領地は桃が特産品で、ナリの悪い物なんかは平民が買うには手頃な値段で平民はそいつを買って干したりして食べるらしい。
王都じゃ桃は贅沢品で干した物の欠片でも、中々口にすら出来なかった。
それなのに、侯爵様のご令嬢が自ら料理をしたりお菓子って新しい食べ物を振る舞って下さる。
初めて食べた時は甘くて甘くて、ホッペタが落ちるかと思ったよ……
おっと、いけない!考え事をしてても針を止めないのがお針子だ!うっかり止まりそうになっちまった。
荷馬車が動いてる時は危ないから、針は持たないが野営の時の止まった時にと仕事を頼まれた。
依頼者は侯爵様で、依頼は後からやって来た連中に服を縫ってくれって事だった。連中は殆どが着のみ着のままやって来たようだった。準備も碌々出来ずに金を出し合ったらしい。家財道具の殆どを売って金を作ったらしい……私達みたいに大した金もかからずに侯爵様と一緒に王都を出て来た者は幸運だった。
「よし、女物のドレス上がったよ!」
「お次は子供用だよ。」
「なんだい!ちっとも終わりゃあしない。」
「あはは!旅が終わるまでの仕事さぁ!」
「そうそう、やったらやった分だけはずんでくれるんだ。」
「ありがたいこったよ。」
「そりゃそうだ!子供用かい、どっちを作れば良いんだい?」
「どっちだって良いよ、どっちもいるんだからさぁ!」
「男物のシャツが出来たよ、アタシも子供用を縫うかね。」
「あいよ!」
お針子仲間と一緒に一生懸命縫う。
縫うのが仕事だからね!それにね、うちの子供が言うんだよ「お針子してる母さんはかっこいい」ってさ。
子供にそんな事言われたら嬉しいじゃないか。
だから、頑張れるだけ頑張るのさ。
193
あなたにおすすめの小説
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)
南野海風
ファンタジー
気がついたら、俺は乙女ゲーの悪役令嬢になってました。
こいつは悪役令嬢らしく皆に嫌われ、周囲に味方はほぼいません。
完全没落まで一年という短い期間しか残っていません。
この無理ゲーの攻略方法を、誰か教えてください。
ライトオタクを自認する高校生男子・弓原陽が辿る、悪役令嬢としての一年間。
彼は令嬢の身体を得て、この世界で何を考え、何を為すのか……彼の乙女ゲーム攻略が始まる。
※書籍化に伴いダイジェスト化しております。ご了承ください。(旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる