婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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青氷の薔薇 8 注意!このお話は過去のお話です!

秋に咲く薔薇は色が美しく見える。そう紅茶を頂きながら思っていた。
王国の紅茶は色が濃く、香りも強いのにあっさりとした味わいだった。紅茶の茶葉は地域で色も香りも変わる、嫌いでは無いわ。

「フェリシア様、こちらの紅茶は飲みやすいですね。色が濃いので、さぞや味も濃いのかと思ったら見た目と違って驚きました。」

エミリも驚いたようだ。王国に来たけれど、これから馬車で王都まで長旅なのかと思うと少し辛いわね。
それにこの街を散策してみたいのだけど、時間は取れるのかしら?
そんな楽しい時間は、妙に甲高い中年男性の声と男らしい若者の声で中断された。部屋の前まで続き、扉が開いた。
余りの騒がしさに扉を注視していた。入って来たのは街長だと言われた男と始めても見る若い男だった。

「おくつろぎの所、失礼する。私はこのシュバルツバルト領領主シュバルツバルト侯爵の息子でハインリッヒと言う。年はあなた方帝国の方と同じ十五になる。学園までの道中、私とシュバルツバルト領の領兵が護衛しながら王都へと向かう。明日一日この街でゆっくり過ごして頂き、明後日王都に向け出発しようと思う。もし、何かあるようなら言って欲しい。」

部屋に入るなり、大声でそう告げたハインリッヒと名乗る男は私と同い年だった。しかもシュバルツバルト侯爵の息子ですって?では、先程の大きな鳥に立ち向かって行った者達と共に行ったと言う?
カタリと立ち上がり、良く顔を見てやろうと近付く。

「ん?ご令嬢がいると聞いていたが、先程は恐ろしい思いをさせたようで申し訳なかった。」

文句をつけようと思った。そんな私の目の前の男は帝国の男とは違う男だった。
帝国の名ばかりの貴族令息や鍛錬の足りない兵士なんて目じゃない。高い身長にスラリと伸びた手足。でも、それよりも目を引くのは青銀の髪と深い青の瞳だった。
声も耳障りが良い……私はいったいどうしたと言うの?
ジッと見つめてくる瞳に早鐘のように鳴り響く自分の胸の音に何故?と思う。

「どうかなされましたか?」

しまった。ああ、でも文句なんて言えないわ。

「私はフェリシア・ド・シルヴァニア公爵家の娘です。この度、王国の学園に交換留学の為に来ました。明日一日こちらで過ごせるのは、とても嬉しいですわ。ハインリッヒ様とお呼びしても?」

ニカッと笑った顔に更に胸が早くなる。

「勿論。シルヴァニア嬢、王都まで宜しく頼む。」

私……どうしたというのかしら……ハインリッヒ様に名前を呼ばれたいと思ってる。

「ハインリッヒ様、私の事はどうか名前で呼んで下さいませ。」

フッと真顔になられたかと思ったら、視線が絡んで……図々しいと思われたかしら?

「ではフェリシア様と呼んでも?」

嬉しくて笑みが溢れる。

「ええ、ハインリッヒ様。これから宜しくお願い致しますわ。」

今まで心が揺れる事無く過ごして来たのに、王国に来て愚かしいと思った男に心が揺れ好意を抱いた。
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