婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
288 / 756

朝の一幕(笑)

しおりを挟む
ビール祭りだった翌日の朝、水を求めてふらつく者がコンロ近くの台に近寄ってはカップに水を組汲んで飲み干しては離れて行く。
そんな中、キャスバルとトールはコンロの近くでかち合った。

「おっ、兄貴もか。あのビールって料理と合うけど、やたらと出るっていうかなぁ……後、朝は結構クルな。頭、イテーよ。」

トールは慣れ親しんだ様子で砕けた口調でキャスバルに話しかける。

「まぁな、飲みすぎるとクルな。でも、昨日の夜は大分レイに介抱して貰ったしな。そんなに頭は痛くないな。」

トールの顔が一瞬固まった。

「なぁ、兄貴。レイに介抱して貰ったのは分かったけど、昨日の夜は兄貴の番じゃなかったのか?」

「は?」

ふと、キャスバルは止まった。順番……か?ルークは昨日、俺の馬車に泊まるんじゃなかったのか?だが、俺の所には来てない。口ぶりからするとトールの所にも来てない。なら父上か?

「俺の所には来てない。」

「じゃあ、父上の所か。」

ルークは見た目や立場よりかなり真面目だ。エリーゼも、そんな真面目な所を気に入ってると思う。

「おー、早いな。ビールは朝、頭が痛むのが良くないな。」

父上がフラフラと歩いて来た。一人で。

「おはようございます、父上。ルークとはご一緒じゃないんですね。」

父上はゴクゴクと水を二杯三杯と飲み干して行く。

「む?ルークは、お前達と一緒だろう?」

ルークは父上と一緒じゃなかったの?なら……なら、どの馬車で夜を明かした?エリーゼか?エリーゼなのか?今のエリーゼなら、ありうる。確認を……確認をしないと……

「兄貴?」

「父上、トール。少し心配になってきた。心当たりがある、行ってくる……」

俺は走ってエリーゼの馬車へと向かった。
思い切りエリーゼの馬車の扉を開けて見たのは、エリーゼ達にひれ伏すような姿で手を組んで見詰めてたルークだった。なんでそんな姿で?
俺は何も言えずただエリーゼに責められないように馬車の中のルークを見つめた。
だが、エリーゼが……可愛いエリーゼが見た事の無い顔で俺を見たんだ……俺は胸の辺りから凍るような感覚を味わった。
しおりを挟む
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風
ファンタジー
気がついたら、俺は乙女ゲーの悪役令嬢になってました。 こいつは悪役令嬢らしく皆に嫌われ、周囲に味方はほぼいません。 完全没落まで一年という短い期間しか残っていません。 この無理ゲーの攻略方法を、誰か教えてください。 ライトオタクを自認する高校生男子・弓原陽が辿る、悪役令嬢としての一年間。 彼は令嬢の身体を得て、この世界で何を考え、何を為すのか……彼の乙女ゲーム攻略が始まる。 ※書籍化に伴いダイジェスト化しております。ご了承ください。(旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

処理中です...